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舞台『キスより素敵な手を繋ごう』中村誠治郎、早野実紗、大神拓哉インタビュー「絶対に後悔させない舞台なので、ぜひ観てほしい!」

2022年6月15日(水)~6月19日(日)東京・シアターサンモールにて、6月26日(日)福岡・北九州芸術劇場(中劇場)にて、舞台『キスより素敵な手を繋ごう』が上演される。

本作は、キムラ真が率いる劇団ナイスコンプレックス唯一のオリジナルラブストーリーとして記憶障害の刑事と、彼を支え愛し続ける妻の物語として12年前に誕生。リメイクや再演を重ね2021年、主演の倉持裕樹役に中村誠治郎を迎えて上演し、好評を得た。

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このたび中村誠治郎、裕樹の妻・玲子役を初演から演じる早野実紗、本作品に初参加となる今田聖弥役の大神拓哉にインタビュー取材を実施した。

3人はそろって福岡県出身。本公演では作品初となる地方公演として福岡・北九州での上演が予定されている。再演への意気込みと地元公演にかける熱い想いについて語っていただいた。

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前回の公演は絶対になぞらない! この座組だからこそできることを

――稽古が始まって、現時点でどんな手ごたえを感じていますか?

中村:裕樹役を昨年も演じましたが、新しい作品をやっているような、まっさらな気持ちで挑んでいます。絶対に前回の公演をなぞりたくないと思っているので、DVDも一切見ずに稽古に入りました。改めて気付くことが多くて「あんなに読み込んだのに、昨年の俺はバカだったのか」と思うぐらいです。でも楽しく、新鮮に稽古していますね。早野さんが昨年と違う感じで仕掛けてくださいますし、キャストも変わっているので、それがまた楽しくて。人が変わるとこんなに違うんだという楽しさがあります。

早野:この作品が生まれて10年以上が経ちますが、最初は作品の解釈を考えることもなく、ストーリーを観ている人が理解できるように成立させるところからスタートしたと記憶しています。座組によって、「そっか」という気付きがあって、今回は「だから玲子は、こういう選択をしているんだな」という発見や、それ以外の登場人物についても、同じセリフなのに「この人が言うと、こうなるんだ」みたいなものが感じられるのは楽しいです。

公演を重ねたから、この物語の中で繰り広げられる生活は理解しているけれど、演者が変わると違いも楽しめるし、玲子自身がなんでそういう人間になったのかというところを深めているので、めっちゃ難しいですが、とても楽しいです。

――本作ではいろいろな出来事が起きますが、初参加の大神さんは今の時点でどのように感じていますか?

大神:僕は昨年のDVDを観させていただきました。今回、今田聖弥という役を演じるのですが、聖弥は引きこもりで、自分の殻に閉じこもってる男の子なんです。でも玲子が切り盛りする下宿にいることで、だんだん人との接触や温もりを感じていって、かなり成長していきます。言葉数が少ない子なので、ひとこと一言、絞り出したワードを大切に言いたいなと思っています。

今回5度目の上演ということで、僕にしかできない今田聖弥を表現できたら、いいなと思っていますし、今は今田聖弥という役を頑張ってつかんでいる途中ですね。

――おっしゃるとおり今田聖弥は言葉数が少ない子ですけど、実は重要な役割を担いますよね。

大神:そうなんですよ。物語の最後、裕樹がとても重要な行動を取ることのきっかけとなるパスをポンと渡します。言葉数が少ない子なのに、重要なところに必ずいて、意外に人の背中を押してあげる役割でもあるんですよね。そうすることで彼自身も成長していくんです。

たぶん自分のことを全然分からない子だったと思うんですが、人を見る目がある。そういうことを通して自分のことを知っていく彼自身の物語が背景にあるんじゃないかなと感じています。

――中村さんと早野さんが、座組によってこんなに違ってくるんだというお話をされました。どんな違いがあって、それはご自身の役作りにどのように影響をしていますか?

中村:キャストのみんなが、これまでその役を演じてきた人の真似をしていないんです。「自分がこの役をやるなら、こう解釈する」という感じで演じているので、そこが楽しいです。それに合わせて、僕も前回とは違う芝居にできますから。

――中村さんは記憶障害の刑事役ということで、何度も同じセリフを繰り返すのですが、どのように変化をつけていますか?

中村:昨年はただセリフを繰り返していたんですけど、今回は相手の反応を見て芝居を変化させています。

「あれ? 俺の告白に対してあまり響いていないな」と思うと、気持ちは変わってきます。俺の告白に対して「私もあなたを愛しています」と言われOKしてもらえた時の歓喜の具合も変わってくるので、そこは違うなと思いますね。

物語の最後、裕樹が本当の喜びを得る瞬間があります。まだそのシーンを稽古していないのですが、その時に歓喜の具合をどう変化させるか…そういったところが楽しいですね。

――玲子さんは素晴らしい女性だなと思いましたが…。

早野:そうですか? 自分勝手ですよ(笑)。

中村:怖いですよ(笑)。

早野:私が舞台を観る側だったら、玲子だけでなくて、登場人物のどこに感情移入をするか共感するかは、年齢やタイミングで違うと思います。「この女、最悪だ!」と思う人もいれば、「その気持ち分かる」という人もいる。年齢を重ねていくと分かる部分があるから、いろいろな年齢層の方人に観見てもらいたいです。

中村:1周まわって「分かる!」って言う人もいるだろうし。

早野:そうそう! 玲子みたいな人はあり得ないというけど、いるんですよ。それを皆さんに伝えるためにはどうあるべきかというのを、今ちょっと考えています。

大神:僕は最初に台本を読んだ時に、怖かったです。玲子が記憶の保てない裕樹のために、毎日同じことを再現するわけですが、それに下宿人を付き合わせるんですよ。僕だったらその下宿、出ていくって思っちゃいました(笑)。ですから、ホラーの要素がある話なのかな…と感じてしまいました。

そのあとにDVDを見て「ああ、なるほど」と思ったんですが、僕みたいな解釈をする人もいるだろうし「ラブとは何だろう?」ということをいろいろ考えました。愛って、他の人が違う角度で見たら「それってstrangeだよ」みたいな。

――演じている早野さんは玲子に対してどのように思っていますか? 共感しますか?
早野:共感となるとすごく難しいですけれど、でも玲子みたいに、身近な人には「そのくらい分かってるよ!」ってめっちゃ腹を立てたり、カチーンときたりすることがあります。私、実はかなり気が短いんですよ(笑)。普段はみんなのお姉さんでいようって思っているんですけど…。

中村:怖っ! めちゃくちゃ優しいと思ってたのに(笑)。

早野:(笑)。あとは何にスイッチが入るかは分からないけれど、全部を見ようと努力はしているけれど、玲子のように一つのことに集中してしまうほうなので、玲子との共通点を見つけることで、より玲子として生きることができるような気がします。「あなたもこんな一面を持っているんじゃないですか」という感じを見せられるようにしたいです。

作品初の地方公演では、セリフを博多弁に

――本作品として初めての地方公演を福岡で行います。皆さんの地元でもありますし、座組の中にも福岡や九州出身の方たちがいらっしゃるとのことですが、地元で公演することへの想いをお聞かせください。

中村:セリフを博多弁にするという話もあって、博多弁で芝居をしたことがないから未知数ですね。たぶん自然に出てくるような気はしますけど、出てこないところは、無理やり博多弁にしないようにします。キムラさんの台本って自分の言葉に変換しやすいんですよ。普段自分が言うような言い方に近いので、それを博多弁にするだけですから、超楽しみです。

――プライベートではわりと博多弁は出るほうですか?

中村:近しい人と話す時は出ますね。地元の人たちと集まった時に東京の言葉で話すとめちゃくちゃ言われるよね?

大神:そう! めちゃくちゃいじられる。「わっ!東京人ぶっちょー」って(笑)。

中村:福岡の人たちと集まっている時に、東京の人と電話して「あ、そうだよ」なんて言うと「東京に染まっとーねー」って絶対に言われる(笑)。

大神:標準語に抵抗はありませんでしたか?

早野:東京に出てきてすぐは、なよなよしているような感じがしてたけど、私自身も「○○しよっちゃろ?」と言いたいところを「〇〇してるんでしょ…」と言ったりしてた…。

中村:俺も標準語を話している男を見ると「こいつ、めっちゃ、なよなよしてる!」って思ってました。(一同爆笑)

――今回は北九州劇術劇場(中劇場)で公演するということで、楽しみですね。

大神:僕、初舞台が北九州劇術劇場(中劇場)なんですよ。

中村:俺の初舞台は、(東京公演の会場となる)シアターサンモールだよ。

大神:え!すごい! しかも初舞台の時はこけら落としだったので、僕の芸歴は北九州劇術劇場と同じなんです。小劇場は何度も出演してきましたが、中劇場はそれ以来なので、すごくうれしいですし、運命を感じています。

――今回の作品でどんなところをアピールしていきたいですか?

中村:(力強く)この作品は、物語の全部がつながっているから、全部です!

早野:福岡公演で博多弁を使うというのは、今年の座組だからこそできることなので、見どころなのかなと思います。あとは劇中で下宿のみんなが企むお芝居があるんですけど、役のシャッフルがあったりするので、誰がどの役をやるかによって伝わり方が変わってくると思います。全く同じ舞台になる回はないので、東京も福岡も生で観るのが一番かなと思いますね。

大神:僕の実家は劇場の近くにあるので、近所の人が「町内みんなで行くよ!」と言ってくれています。東京で20年間培ってきたものを、キムラさんの素敵な脚本で自分のものにして表現していきたいですね。

――この記事を読んでいる読者にメッセージをお願いいたします。

大神:この話は裕樹と玲子その妻がメインのお話ですが、その裏に群像劇があって緻密な会話がたくさんあります。しかもこの物語の構造はとても斬新だと思うので、そこも楽しんでもらえたらと思います。

早野:今を共有するのは今しかできないので、この瞬間を逃さないでくださいとお伝えしたいです。昨年観た人も「今のあなたで観てみて!」という感じです。昨年は思いもしなかったことに気付いたりすることができる、いろいろなポイントがある物語になっています。

中村:好きな映画を人に勧めるように、この作品をお勧めしたいです。とにかく観に来てくださったら、何かしら感じてもらえると思うので、コロナ禍で劇場へ来るのは勇気がいるかもしれませんが、ぜひ観に来てほしいです。芝居は、お客さまんに観てもらうことで初めて成立しますし、お客さまん自身が出演者の一人として物語を一緒に作っていく感じがします。そうやって共有できるのがたまらなく楽しいので、絶対に後悔させないから観に来てください!

(取材・文・撮影:咲田真菜)

▼公演概要▼
ナイスコンプレックス N35 舞台『キスより素敵な手を繋ごう』
東京:2022年6月15日(水)〜6月19日(日)シアターサンモール
福岡:2022年6月26日(日)北九州芸術劇場(中劇場)
【キャスト】
中村誠治郎/早野実紗、護あさな、小笠原健、梅田悠、伊藤優衣、藤本結衣、山中健太、大神拓哉/七味まゆ味、林野健志/森山栄治
【スタッフ】
作・演出:キムラ真  ドラマトゥルク:大久保悠依  歌曲原案・歌唱:紅林里美
主催・企画制作:ナイスコンプレックス
【チケット】
全席指定、税込、前売当日共通
★U25 シート:2,500円(25歳〜16歳対象) ★B席:3,500円 ★A席:4,800円
★S席(お土産なし):6,500円 ★S席(お土産付き):8,000円
★Nシート:10,000円(前方席・特別お土産付き) ※前売のみ
★「これから」シート:1,000 円(15 歳以下又は 65 歳以上の方、グッズ券 1,000 円分付き)
※U25 シート、「これから」シートのご予約は劇団扱いのみ
公式HP http://naikon.jp/  Twitter @gekidan_naikon #Nキス

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