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木村聖哉、舞台「金魚の行方」で新境地へ!「俳優としてターニングポイントになる作品」 観客に問いかける“優しさ”の意味とは?

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「ヒラタオフィス+TAAC」の新作舞台「金魚の行方」が11月7日より上演される。

本作は、ひきこもりの息子を社会復帰させようと自立支援団体に預けるも、その団体が「引き出し屋」と呼ばれる悪徳な業者かもしれないと疑いはじめ、息子を奪還しようとする母親を通して、今の社会を描き出す。

物語で“ひきこもり”の息子・江森晴を演じるのは、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンの切原赤也役のほか、俳優として活躍の場を広げている木村聖哉。どうして引きこもっているのか、自分でもわからなくなってきている晴、水槽の中の金魚と自分を重ね合わせる青年・・・社会派舞台に初挑戦する木村さんに意気込みを語ってもらった。

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― まず、本公演出演のお話が来た時のお気持ちをお聞かせいただけますか?

僕がこれまで関わってきた舞台とは世界が違うというか、今回はより深いところまで考えてお芝居をしなければ、観ている方に伝わらない作品だなと思いました。芝居は大好きなので、お話をいただいた時は嬉しかったです。間や沈黙の時間も多い作品なので、その中で心を通わす芝居ができるのはとても楽しみでした。

― 後方席の方にも表情が伝わるぐらいの劇場の広さですから、客席の反応も直に体感できそうな舞台になりそうですね。

そうなんです。沈黙の状態で感情をどう表現するのか・・・難しいところですが、いま稽古でいろいろ考えながら進めています。これまでは声や動きで伝えることができましたが、今回はそれができない。その上で細かなところまで伝えていかないといけないので。

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― 今回演じられる晴は、冒頭ではあまりセリフがありません。そこをどう演じていこうと考えていますか?

僕自身は思ったことを言葉にして伝えるほうなので、晴は全く違うタイプだなと思いました。それでも僕の中にもネガティブな感情や心を閉ざす感覚は少なからずあるので、自分の中にある感情と晴を照らし合わせながら演じていきたいと思っています。

― 自分の中から感情を出していく感じでしょうか。晴に共感することはありましたか?

晴のセリフに「報われないなと思うんですけど、でも報われるほど頑張ってないか」という言葉があるのですが、その言葉はすごく共感します。自分も、報われないなというか、なかなか結果が出ないことが多かったので。自分でも努力が足りないことは分かっているんです。必死に頑張ったつもりでも、結果が出ない以上は自分の実力が伴っていないからなのですが、やはり落ち込みますよね。

― ほかにも、晴とご自身が似ていると思うところはありますか?

あります。期待されたりすると、身動きが取れなくなってしまうのはよく分かります。例えば、人の誕生日プレゼントを考えるのが苦手です。「喜んでくれなかったらどうしよう」と考えると、もう身動きが取れなくなってしまって。どうしたらいいか分からないから、無難なものになってしまうんです。

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― 逆に、晴の価値観や行動で、ご自身には絶対ないと思うようなところはありますか?

僕は初めてのことを知ったら、それは良いものとして受け取れます。「知れてよかった」と思いますね。基本的に一旦は何でも受け入れる、来るものは拒まないタイプです。“違うな”と思ったときは、相手に正直に伝えます。

― 正直に伝えるということも「優しさ」ですね。晴も「本当の優しさ」について言及する場面がありますが、木村さんが考える「優しさ」とは?

先ほど、考えすぎて身動きが取れなくなってしまうと言いましたが、逆に自分だったら相手が考えてくれるだけで嬉しいので、考えてあげるということも「優しさ」なのかなと思います。その結果が、相手にとって嬉しかったか嬉しくなかったかは別として。

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―「引きこもり」という役を演じますが、役作りのために参考にしたことなどはありますか?

演出家のタカイさんから、実際にひきこもりをサポートする施設の話をしていただいたので参考にしました。

― ところで、この施設に関する「引き出し屋」という存在はご存じでしたか?

いえ、知りませんでした。この作品のお話をいただいた時に初めて聞きました。

― その話を聞いた時に感じたことは?

そんなものは存在しないと思っていました。幻みたいな感覚で、うわさ話というか、フィクションの話かと。でも、映像資料を観て、そういうこともあるのかもしれないと驚きました。

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― 晴は表情や佇まいがとても重要になると思いますが、彼の内なる感情をどのように出していきたいと考えますか?

難しいですね。連れ出し時に暴れてしまう子もいるそうです。晴は暴れたり、強く自分を出して表現する人ではないので、どう伝えたらいいのか・・・、今はまだ答えが出ていない段階です。手探りで頑張っています。

― 物語の序盤に、晴が水槽の金魚を見て自分と重ねているような場面がありますが、その金魚に対して、晴は何を考えていると思いますか?

たぶん、晴は家から出たい気持ちはあると思います。でも、金魚は水槽でしか生きることができないので、その部分を重ねて「俺ら、出たいのに出られないよな」と思って見ているんじゃないかと。金魚は人に飼われないと生きられないということを、初めて知りました。

― そして、晴とお母さんとの関係も物語のキーなのではないでしょうか。お母さんのセリフ量も凄いですが、実際に関西弁のシャワーを浴びた感覚はいかがですか?

お母さんのセリフ量、本当にすごいです。晴としては「うるさいな」と感じるけど(笑)。役者さんとしてとても素敵な方で、本当に“お母さん”という感じでした。優しくて、最初から楽しい稽古になりそうだなと思いました。ここまで一人の人と深くキャッチボールができる芝居は今までなかったので、特に物語の最後のほうでどうやって対峙していくのか、自分自身も楽しみです。皆さんにもぜひ注目していただきたいです。

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― 社会的な問題を題材に表現しているお芝居ではありますが、人としての考え、感情の揺れなど、いろんな受け止め方がありそうですね。

ここに出てくる人々の考え方は、誰の立場になっても意外と納得できて「しょうがないか」と思ってしまう。しかし、その優しさや愛をそのまま「これは優しさだから」と受け取れない場合もある。それがとてもリアルで、「優しさ」という言葉の意味がとても深いんです。

― 少し話が変わりますが、劇中の晴のように木村さんご自身が今までやりたかったけれど、できていないことはありますか?

僕はけっこう欲望に忠実なので、やりたいことはやってきていると思いますが(笑)。歌を習いたいです。ちゃんとレッスンを受けたことがないので。ダンスは得意ですが、もっと自分を磨きたいですね。

― では、もし晴にお料理を作ってあげるとしたら、何を食べさせてあげたいですか?

カニクリームコロッケです。

― クリームコロッケがお好きなんですか?

好きです。というか僕、オムライスとカニクリームコロッケしか作れないんですよ。

― カニクリームコロッケを作れる男子ってすごいです!

よく“飛び級”って言われます(笑)。でも、その2つしか作れない。カレーも作れないです。
地味にホワイトソースを作るのが好き。そういう地道な作業が好きなんです。

― なるほど。でも、そのお料理は晴じゃなくても誰でも喜びますよ。お友達に振る舞ったりしましたか?

いえ、家で作って食べるだけです。今度機会があれば(笑)。

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― ところで、タイトルの「金魚の行方」をどう感じましたか?

金魚に重なる部分は一つだけじゃない。この人にとっての金魚、あの人にとっての金魚というように、この作品にはそれぞれの金魚がいるのかなと思います。なので、この作品を観て自分自身にとっての金魚、その行方を考えてもらえたらいいのではないかと感じています。

― それでは、木村さんは俳優としてこれからどのように飛躍していきたいと考えていらっしゃいますか?

映像でも活躍できる俳優になっていきたいです。具体的に目標にしている俳優の方はいませんが、朝ドラや大河ドラマ、映画にもたくさん出たいです。まずは一歩一歩経験を重ねて、色々なお芝居に挑戦していきたいです。そういう意味でも、この作品は自分にとってターニングポイントになる作品だと思っています。

― 今後挑戦してみたい作品や役はありますか?

一人二役を演じてみたいです。「YASHA -夜叉-」の伊藤英明さんが衝撃的だったので。ほかにも色んな役に挑戦したいです。

― では最後に、舞台を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

この舞台から、いろいろな思いを受け取ってほしいです。自分のこと、親や子供のこと、友達にとっての優しさについて考えていただけたら嬉しいです。それぞれの立場になって観ると、また見え方も変わってくるかもしれません。ぜひ、何度も観てください。

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【木村聖哉(Seiya Kimura)】
2004年9月10日生まれ、東京都出身。
特技 ダンス、アクロバット、殺陣。
主な出演作品は、映画『光を追いかけて』(成田洋一監督 21年)、『あゝ荒野』(岸善幸監督 17年)、『僕だけがいない街』(平川雄一朗監督 16年)、
ドラマでKTV『青のSP-学校内警察・嶋田隆平-』(21年)、NHK BS『世界はひばりを待っている』(15年)、NHK連続テレビ小説『まれ』(15年)、
朗読劇『また、桜の国で』(吉村卓也演出 25年)、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン(三浦香演出 24年)、舞台『わたしの幸せな結婚』-帝都陸軍オクツキ奇譚- (三浦香演出 23年)、に出演。

ヒラタオフィス+TAAC「金魚の行方」チラシ_表

舞台「金魚の行方」

ある日、家の金魚が姿を消した——。
【あらすじ】
母はひきこもりの息子をどうにかしたいと考え、自立支援を謳う団体に息子を預け、社会復帰を願った。しかし、その自立支援団体で死亡事故が発生する。母は、悪徳な「引き出し屋」ではないかと疑いはじめ、引き出し屋から息子を奪還しようとするのだった・・・。

※引き出し屋とは…家族からの依頼を受け、社会復帰・自立支援対象であるとみなした人間を、宿泊施設に連行し、そこでの生活や労働を強いる業者のこと。近年、利用者の死亡事故などが発生し問題となっている。

【作・演出】タカイアキフミ
【出演】枝元萌、木村聖哉、イトウハルヒ、板場充樹、鈴木球予、廣川三憲
【⽇程】2025 年11⽉7 ⽇(金)〜 11⽉16 ⽇(日)
【会場】サンモールスタジオ(〒160-0022 東京都新宿区新宿1-19-10 サンモール第3 マンションB1)
公式サイト:https://www.taac.co/kingyo