「谷崎潤一郎原案 / TANIZAKI TRIBUTE」プロジェクト、映画『悪魔』の初日舞台挨拶が、2月24日、東京・テアトル新宿にて行われ、主演の吉村界人をはじめ、共演の大野いと、前田公輝、遠藤新菜と、藤井道人監督が登壇した。
日本のみならず、世界でも高い人気を誇る谷崎潤一郎の近代日本文学。人間の業ともいえるマゾヒズム、フェティシズム、甘美な毒に酔う人間の性。多くの作品が映画化されてきたなか、3人の映画監督が、谷崎作品を原案に現代劇として完成させた。第一弾・内田英治監督の『神と人との間』、第二弾・ウエダアツシ監督の『富美子の足』に続く、「TANIZAKI TRIBUTE」第三弾は藤井道人監督がメガホンを取った『悪魔』。強迫観念に襲われ続ける主人公・佐伯（吉村）が、魔性の色気を漂わせる高校生・照子（大野）に惑わされ、死の恐怖からくる妄想に苦悩する姿を描き出すサスペンス・スリラーだ。
藤井監督は「面白い作品がたくさんある中、『悪魔』は尻切れトンボで終わっている。どうしても続きが気になって、絶版の『続・悪魔』を読んでみたら、佐伯の心の深い部分が現代に置き換えて解釈してもすごく共感できたんです。これにトライしたいと思いました」と製作の動機を明かした。
学生時代から谷崎作品を良く読んでいたという吉村は、「『悪魔』は読んでなかったんですが、出演オファーがきて、好きな作家の登場人物を演じられる･･･。俳優ってこういういいことがあるんですよね。いい職業についたなと思って（笑）」と本作の出演を喜ぶ。役作りについて聞かれると、「役に憑依するということではなくて、佐伯という人間はずっと昔から僕の心の中にいて」と言い、「今でも、“俺はやれるのか！”と自問自答して考える自分がいる。もともと僕の中に佐伯はいたので（役に対する）苦労はなかったですね」と答えた。
大野は、「自分とは正反対の女の子だったので、難しかったです」と役作りに苦労した様子も、「でも、男の人を誘惑することって楽しそうだなと思って役に挑みました」とニッコリ。
一方、照子の親戚で佐伯と対峙する鈴木役の前田は、自身の役がらを「台本を読んで、“何があったんだろう？”と思うくらい行動がおかしい人物」と分析。「でも、それは照ちゃんへの愛情表現。だから僕は撮影現場で大野さんの王子様でいようと。照ちゃんを守ろうという清らかな気持ちでいました」と、独自の解釈で役に臨んだようだ。
佐伯の大学の同級生・あゆみ役を演じた遠藤は「ストーリーのキーパーソンとなる役。みんな様子がおかしい人ばかりの中、あゆみはかなり普通だと思うんです。なので、（あゆみを見て）救いというか、ちょっとホッとしてもらえるといいなと思います」とコメント。
映画のタイトルにちなみ、「悪魔だなと思う人は？」と問われると、吉村は、「二つの目で捉えて、セリフに頼るなと言う藤井監督が悪魔的にきつかったです」と苦笑い。
前田は「吉村界人です！」と答え、「悪魔的なスケジュールの中、この日のために駆けつけた悪魔です」と、この舞台挨拶のため、新作の撮影真っ只中の福岡から急きょ帰京した吉村を称えた。
遠藤が「この映画の大野さんの小悪魔っぷりに魅了されました。何なんですかね、あの目は！(笑)。凄いです」と大野の魔性ぶりを絶賛すると、遠藤に向かって大野が「好きです！大好き！」とラブコールし、会場の笑いを誘っていた。
最後に吉村が「この映画は明るい映画じゃないです。でも、そういう映画が全てではないと思う。登場人物全員が心弱き者なんです。役者として社会的にそういった立場の人を演じることが出来て嬉しいし、今後もそうでありたいと思います」とメッセージを伝え、舞台挨拶を締めくくった。
TANIZAKI TRIBUTE 第三弾『悪魔』
～天使にも似た悪魔ほど人を惑わすものはない～
＜STORY＞
⼤学⼊学のため上京した佐伯（吉村界⼈）は、閑静な住宅街にある林邸に下宿する。林家には⼤家の千枝、⾼校⽣ながら魔性の⾊気と魅⼒を持つ千枝の娘・照⼦（⼤野いと）、そして、照⼦を偏愛する林家の親戚にあたる鈴⽊（前⽥公輝）が住んでいた。佐伯は、いつも死の恐怖に怯え、アルコールにおぼれ、幻覚に苦しみ、⼤学にもなじめない。そして、下宿先では、照⼦が佐伯の部屋へ頻繁に訪れ、⼩悪魔のように佐伯の⼼を惑わしていくのだった。次第に親密になっていくふたりの様⼦を⾒た鈴⽊は、佐伯に対し、照⼦に近づかないよう警告をする。反発する佐伯は、妄想をエスカレートさせ、遂に・・・
◆監督：藤井道⼈
◆出演：吉村界⼈ ⼤野いと 前⽥公輝 遠藤新菜 / ⼭下容莉枝 ほか
Ⓒ2018 Tanizaki Tribute 製作委員会
公式サイト：http://tanizakitribute.com
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