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音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』観劇レポート

3度目の上演となる音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』が、草月ホールにて10月5日に幕を開けた。
稽古場取材を見て、是非とも観劇したいと劇場にでかけ、10月7日昼公演を観劇した。

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愛加あゆ 和田琢磨  原田優一

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物語の舞台はドイツ、瀧廉太郎(和田琢磨)の留学先の部屋。
瀧の東京音楽学校時代の友人、岡野貞一(原田優一)が東京から仕事でドイツにやってきて、瀧の部屋を訪ねるところから話は始まる。

だが瀧は不在だった。
同じアパートには、日本人で初めて音楽でヨーロッパに留学してきた幸田幸(愛加あゆ)が住んでおり、彼女の身の回りの世話をしているフク(星野真理)が連絡してくれたおかげで、瀧がアパートに戻ってくる。

同じ東京音楽学校で学んだ瀧、岡野、幸田。ここで原田と愛加によって1曲目の唱歌が歌われる。

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この舞台では「唱歌がいい」とは聞いていた。
だがこれほどにいいとは思いもしなかった。 1曲目からがっしりと心つかまれ、美しい歌声に心洗われる心地になった。

歌のうまさは折り紙つき、本作も3度目の出演となる原田優一はもちろん、今回が初出演となる愛加あゆの歌声が美しい。唱歌が心に沁みるとは…実に思いがけない驚きと感動に包まれた。
そして、その感動は舞台の終わりまで、何曲か歌われるすべての曲で繰り返された。
唱歌を聞いて、舞台を観ながらも頭の中に景色が広がるような・・・・そんな状態に自分がなるとは…まったく思いもしなかった。

舞台上では、隠してきた瀧の事情が次第に明らかになってくる。

絶体絶命の瀧…彼を支えたのは…
その物語の行方は稽古場取材の記事からご覧ください(ネタバレあり)。

くどい台詞は無しに登場人物たちの性格までも一瞬で分かってしまう不思議さこそ、演劇の面白さだろう。
緊張感あふれる物語の中に、原田が生み出す笑いが絶妙なタイミングでこぼれだし、心地よい芝居のテンポを作っていく。
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愛加は豊かな音楽の才能と女性らしさの両方を兼ね備えた女性を、星野は芯の強さを秘めた女性を、明るく潔く見せてくれる。
和田はイケメンを眼鏡の奥にそっとしまいこんで、心も体も窮地にある瀧廉太郎を時に抑えて、時に爆発させて見せた。

物語半ばからラストまで、観客は涙をぬぐい続け、客席からは時に嗚咽する声がもれるほど。
熱い感動を呼ぶ切ない希望を描いて、これほど温かな作品を他に知らない。生きる意味をじっくりと、しかも前向きに考えさせてもらった。

広い年代の方に訴え、楽しんでもらえる上質の作品だからこそ、3度目の上演となったのだと、改めて感じた。

公演は10月10日(月・祝)まで。 お見逃しなく!

公演名:音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』
公演日程:2016年10月5日(水)~10日(月・祝)@草月ホール
脚  本:登米裕一 演出:板垣恭一
出 演:原田優一、愛加あゆ、和田琢磨、白又敦・服部武雄(Wキャスト)、
佐野瑞樹、星野真里
ピアニスト:YUKA
チケット料金:S席8,000円、1階席6,800円、2階席6,000円、3階席3,300円  ※未就学児童入場不可
お問合せ:株式会社ショウビズ 03-3415-8832 http://www.show-biz.jp