
映画『ゴールド・ボーイ』(2024)で製作総指揮をとった白金(KING BAI)が自ら企画し、監督を務め、『宮本から君へ』(19)『MOTHER マザー』(20)『正欲』(23)等を生み出してきた脚本家・港岳彦と再タッグを組み映画化。
本作は、コロナ禍を乗り越えてもなお、真偽不明な怪情報やフェイクニュースが世に溢れ、ネット上で拡散され、真実が覆い隠されていく、そんな現代社会のカオスな実像を空恐ろしくなるほどのリアリティと圧巻のエネルギーで痛烈に描き切った、衝撃の社会派ドラマ。
富山県の小さな町を舞台に、ワクチンを接種した翌朝に妻を亡くした主人公・信治(演:成田凌)が、妻の遺影を掲げ病院の前で抗議を続ける様子を見た新聞記者・福島美波(演:沢尻エリカ)が撮った奇跡の1枚の写真によって、信治は“反ワクチンの象徴”に祭り上げられていき、次第にSNSに飲み込まれて翻弄されていく姿を描き出す。
今回、派手好きでSNSでの動画配信やアイドルの推し活に夢中な妻・明希を演じた山谷花純さんにインタビューを敢行! これまで演じたことのない役がらへの挑戦も、登山の空気に包まれながら臨んだという彼女に、撮影を振り返りながら今の想いを語ってもらった。

― 今回は山谷さんのパーソナルなイメージとはかなり違う、挑戦的な役だったのではないでしょうか?
そうですね。自分とはあまり関わりのない世界を生きることができたと思います。(動画)配信の活動をしている人が身近にいないので、新しい世界を開かせてもらいました。
― 最初に脚本を読まれたとき、演じられる明希にどのような印象を持たれましたか?
明希はとても不器用な承認欲求の提示の仕方をする女性だなという印象がありました。言葉と思いが真逆すぎて、伝わることも伝わらない。その歯がゆさみたいなものをすごく感じました。
― ご自分にない部分を役として表現しなければいけなかったと思うのですが、役作りで苦労はありましたか。
普段あまり動画配信を見ないので、今回クランクインする前にいくつか拝見させていただきました。役作りは毎回どの役でもそうですが、お相手の役者さんと対面して初めて成立したり、生まれるものがあるので、それをとても大切にしています。現場に行くまで成田さんがどういうお芝居をされるのか、とても楽しみにしていました。変に凝り固まって準備していくと、マッチしなかったときに対処できなくなってしまうので、余白を持ちながら臨みました。

― 今回も現場に入ってから、その場の雰囲気や対峙する成田さんとの空気感を大事にされたのですね。
そうですね。これまで富山に行く機会もあまりなかったのですが、その土地の空気や色でも、湧き出る感情があると思うんです。本当にそこにいるということを意識して、カメラの前に立っていました。
― 富山に行かれたのは初めてですか?
かなり前にお仕事で行ったことがありますが、街を散策したり景色を見たりというのは今回が初めてでした。
― 今回はオールロケでしたが、そういうところからも役に及ぼす影響があったということですか?
確かにありました。立山連峰が撮影を重ねるうちに表情を変えていって、雪が積もって白くなっていくのを見ながら撮影現場に向かっていると「時間は有限だな」と思って。本当に限りある時間の中で、今日も撮影頑張ろう! どこまで残せるかわからないけど今をちゃんと生きよう!と、その山の景色を見ながら思いました。

― 監督がオーディションで山谷さんを選ばれた際に、「内面から溢れ出る力、生命力がある」と仰ったそうですが、ご自身で感じるものはありましたか?
監督のお言葉は、ありがたくて本当に嬉しく思います。物語の冒頭で、物語の主軸になる出来事のきっかけを作る、幕開けを任された役どころだったので、SNSのことや問題の発展になる出来事は、観客の皆さんの記憶に強く刻まないと「何の話をしていたんだっけ?」となってしまうので、なるべくインパクトがあるように、強く!強!くということは意識して演じました。
― とてもインパクトの強い冒頭だと思います。その強い印象のままお顔は全編通して出ていますよね。
遺影でずっと登場させていただいています(笑)。生存しているシーンでは、あまりカメラを意識していませんでした。話をしているところや、彼女の内面を見てほしかったので、冒頭のシーンや進次との2人のシーンは「私がどんな顔をしていたかではなく、私と一緒にいたときの信治の顔のほうが大事」だと思ったので。
― 冒頭の出来事のあとに、ずっと遺影が出ているので物語が進んでもそのインパクトが記憶に残ります。
静止画ってそうですよね。写真は言葉を発していないから想像力がどんどん膨らんでいって、観る方によってそれぞれの印象が違うかもしれませんが、それで正解だと思います。

― 成田さんとの共演はいかがでしたか?
成田さんとは3回目の共演になります。以前は『コード・ブルー』と『まともじゃないのは君も一緒』という作品でご一緒しました。『コード・ブルー』からもうすぐ10年と考えると感慨深いですね。『コード・ブルー』では成田さんに助けてもらう側として共演しましたが、今回は助けてくれませんでしたね(笑)。
― 久しぶりにご一緒された印象はいかがでしたか。
『コード・ブルー』の頃の成田さんは、先輩方に色々質問して学ぼうという姿勢や、少しでも現場を吸収しようとしている印象が強かったです。それから時を経て、今回は成田さんが座長という立場で作品作りをする場所に私もご一緒することができました。スタッフさんたちとコミュニケーションをとりながら、作品がより良いものになるようにディスカッションする姿を拝見して、責任感はもちろん、作品に対する愛、ものづくりに対する情熱が、初めてお会いしたときとはまた違う燃えたぎった感じ、赤の色が違うという印象を受けました。ご一緒できて本当に良かったです。
― また、本作は「ワクチンを打ってどうなったか」ということがストーリーの軸になっていますが、ワクチンの是非というより拡散された言葉に翻弄される人間の姿が描かれていると思います。SNSなどの情報の拡散やフェイクニュースの恐ろしさをどのように感じられましたか?
“SNSだけが真実を発信している”という価値観を無意識に持っている人が増えているかもしれません。テレビ離れも含めてですが「疑うこと」をサボるようになっているのかな。入ってきた情報をそのまま自分の情報としてキャッチして、見たいものだけ見て、興味のないものに関しては何も行動を移さなくなる。もっと世界に対して疑問を持ったり、人とコミュニケーションを取る事は大切なことだと思うのですが、そういうことが面倒くさいと感じてしまって、大切なことが失われてしまっているのは寂しいですね。

― 自分の心で受け止め、自分で考えることをしなくなっているかもしれないですね。
電波が圏外だったときに見た世界が美しかったり、人に優しくなれたりすることもあると思うんです。たった一個のこの箱(スマートフォン)の中には、人の大切な部分を忘れさせる力があるのかも・・・。そう思ったこともこの作品に関わったきっかけでもあります。
― 物語の最後の展開も驚きですが、それぞれ観る角度によっても捉え方が変わるかもしれません。
この作品は「SNSを鵜呑みにしちゃいけない」とか「人に迷惑をかけちゃいけない」ということだけでなく、色んな方面から問題提起を投げかけていると思います。置かれている状況によって観る方の捉え方、疑問に思ったり振り返ったり、反省したりする部分は違うと思います。
もちろん、SNSが悪いことばかりではないと思っています。政治が身近になったのはSNSのおかげでもありますし、情報をより早く知る事ができるなど、良いこともたくさんあります。でも1つお願いしたいことは「人の悪口を書かないでください」ということ。不幸せで気分も良くないですから。「自分がされて嫌なことはしないでください」と本当に思っています。
― 共感と同じ温度の疑問定義を投げかける作品ということでしょうか?
共感や感動だけで終わる作品ではないので、観終わった後の気持ちが大事だと思います。「ちょっとよくわからなかった」と感じる方もいれば「もしかしたら自分もそうかもしれない」というふうに自分の心と対話をしたり、疑いを持ってくれる方が一人でもいたら嬉しいです。

― 山谷さんが本作をご覧になって特に印象に残っているシーンはありますか?
SNSを通じて信治のフォロワーが増えていって承認欲求が満たされたときに、沢尻さん演じる美波が「あっという間に仕上がりましたね」と言う場面があるのですが、「仕上がった」とスパッと直接ボールを投げて言い放ったのは、見ていて気持ちも良かったです。グサッと刺さる人も多いんのでないでしょうか。そのシーンは好きですね。
― それでは最後に、これから映画をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
日本の映画では珍しく新しいジャンルを築いた作品だと思います。楽しくハッピーなお話ではないかもしれませんが、実際に起きたコロナ禍を経たこの状況を、作品を通して現実と向き合うきっかけとして皆さんに届けることができて、作品に関わった私たちもすごく嬉しく思います。一人でも多くの方の頭の片隅に少しだけお邪魔させていただける作品になれたら嬉しいです。ぜひ、ご覧ください。
【山谷花純(Kasumi Yamaya)】
1996年12月26日生まれ、宮城県出身。
ドラマ『CHANGE』(2008/フジテレビ)で俳優デビュー。ドラマ『あまちゃん』(2013/NHK)『トットちゃん!』(2017/テレビ朝日)、主演映画『シンデレラゲーム』(2016/監督:加納隼)等の話題作に出演。
映画『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2018/監督:西浦正記)では末期がん患者役に丸刈りで臨み注目される。その後、『鎌倉殿の13人』(2021/NHK)『親友は悪女』(主演/2021/テレビ東京)などに出演。主演映画『フェイクプラスティックプラネット』(2020/監督:宗野賢一)にてマドリード国際映画祭2019最優秀外国語映画主演女優賞を受賞。

<Story>
富山県の小さな町で介護士として働く浅岡信治(成田凌)。ソロキャンプが趣味で寡黙な性格の彼は、派手好きでSNSでの動画配信やアイドルの推し活に夢中な妻・明希(山谷花純)との間に温度差を感じながらも、それなりに幸せな日々を送っていた。だが、2人のささやかな生活は、ある日を境に一変する。地域のクリニックでワクチンを摂取した翌日、明希が自宅で帰らぬ人となってしまったのだ。失意に暮れるなか、愛する妻が亡くなった原因はワクチンにあると考えた浅岡は、妻の遺影を抱えて担当医師・高野(淵上泰史)を激しく糾弾する。対する高野は「僕にできることがあったら遠慮なく仰ってください」と言うものの、自らの非を認めようとはしない。やりきれない思いは怒りへと変わり、浅岡は雨の日も風の日もクリニックの前に立ち、無言の抗議を続ける。
そんな彼に目を付けたのは、とある事情で地方紙に異動となった記者・福島美波(沢尻エリカ)。上昇志向の強い彼女が「反ワクチンとかどうでもいい。泣ける記事になります」と上司の反対を押し切って世に出したその記事はネットを中心に大バズし、拡散に次ぐ拡散で彼は一躍時の人に。同僚の勧めでSNSのアカウントを開設した浅岡はあっという間に万超えのフォロワー数を誇るインフルエンサーとなり、“反ワクチンの象徴”として祭り上げられていく。“民意”を得たことでSNSに取りつかれ、高野クリニックの前でライブ配信を行うなど、バッシングを繰り返すなど、日ごとにエスカレートしていく浅岡。彼のシンパが過激な陰謀論者となって暗殺事件を起こしたことで狂騒はさらに過熱し、界隈で人気の“世直し系ユーチューバー”とのコラボによって浅岡は手の付けられない存在になっていく。福島による再三の忠告も無視し、「あっという間に仕上がりましたね」と嫌味を言われても、浅岡は止まらずに突き進んでいく。そんな彼の前に意外な人物が姿を現し、衝撃的な事実を告げるのだった……。
狂気が蔓延する時代と社会に踊らされ続けた男が、混沌の果てに見た景色とは――?
映画『#拡散』
原案・編集・監督:白金(KING BAI)
脚本:港岳彦
キャスト:成田凌、沢尻エリカ、淵上泰史、山谷花純、赤間麻里子 船ヶ山哲、鈴木志音、DAIKI、MIOKO、高山孟久ほか
制作プロダクション:株式会社白菜娯楽
小説版『#拡散』(プレジデント社) 港岳彦著
主題歌:“sunrise” 野田愛実(avex trax)
配給: 株式会社ブシロードムーブ
コピーライト: ©2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE
映画公式サイト:https://kakusan-movie.com/
全国公開中!
◆スタッフクレジット
ヘアメイク :永田紫織(aosora)
スタイリスト:髙橋美咲 (Sadalsuud)
撮影:ナカムラヨシノーブ























