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「この作品はまさにお客様とのジャズセッション」ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season C~ 原田優一 太田基裕 インタビュー

2021 年に異なる劇場で同じ作品を2チームで同時期に上演し大好評を得たミュージカル『ダブル・トラブル』が、今年は新たなキャストも迎えて都内 3 劇場にて上演されている。

今回Astageにご登場いただくのは、昨年も本作に挑み大好評を得た原田優一、太田基裕。
出演者2人で歌って踊って10役を演じるという大変な作品に再挑戦する意気込みと、本作を楽しむヒントを教えて頂きました。

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―再演が決まった時の心境は?
太田
:素直に嬉しかったです。前回の公演の楽屋で「もっくん、また再演になったらどう?」みたいに原田さんに聞かれて「それ、やりたいですね」とは話してしていたので、それが現実になって嬉しかったです。
原田:そうですね。初演の稽古中は顔面蒼白になるぐらい大変だったのです。やるべきことが多すぎたし、初演ということで以前にこの作品を日本でやったことのある人が誰もいないので、「体力的に最後まで持つのか?」という基本的なことから「お客さんがどう反応してくれるのか?」「これって、面白いのか?」ということも、すべてが手探り状態での稽古でした。もうひとつの<ハリウッドチーム>ふぉ~ゆ~の福田悠太さんと辰巳雄大さんとは、最初の本読みは一緒だったものの、その後は別々に稽古していたので、もうひとチームがどうなっているのかも知らなくて。<ハリウッドチーム>と顔を合わせたときには「大変だよね」「本当だよ」と言い合って励まし合いながら稽古していました。
そして、幕が開いてお客様が入って「すごく盛り上がってる」と感じて、面白くなりました。
太田:お客様が入って「やっとこの作品の醍醐味がわかった!」という感じです。「こういうことだったのか」と合点がいって確信に変わった。「こんなに楽しんでもらえるんだ」と達成感がありました。
原田:最後にダメ押しのように二人がタキシード姿で歌い踊るのですが、稽古場では「ここまでダメ押しが要る?」「まだやるの?」みたいな感じがあったけれど、公演ではそれをやってお客様が立ち上がって下さった。稽古場では「頂上が見えない山登り」のように感じていましたが、お客様が入った時には登った時の絶景が見えたので、その時にようやく「もう一度、やりたい」という気持ちになりました。

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―演出家のウォーリー木下さんの下、前回は2チーム、今回は3チームですが、演出は違うものですか?
原田
:ウォーリーさんは役者から出てくるものをとても大切にしてくださる方。この役をどう最終ゴールまで持っていくかの道取りも、細かなことも、相談できる。
太田:自由にやらせてもらえますね。
原田:そう、だから演じ手によって違ってくるのかなと思っています。
太田:だから俳優が「こうしたい」が無いと困ってしまう。自由って、そういう意味では怖い。それぞれが「動機」や「意図」が無いと成立しない。他のチームも全然違う色になっている気もします。
原田:思い出してきました。稽古終わりに、ウォーリーさんから「何か、ある?」と絶対に聞かれるんです。ウォーリーさんは「大丈夫です」というのを期待しておられたのかもしれませんが、自分はそこで「なぜ、これはこうなのですか?」みたいなことをよく聞いていたかも。(笑)
この作品はジミー(兄)とボビー(弟)のふたりが、自分たちで脚本も音楽も作って、本人役で出演しているという作品なんです。だから「ジミーです」「ボビーです」「僕たちが作りました」で始まるのですが、僕たちがやる場合は、そこにプラスして原田と太田がいる。役がもうひと枠必要で、元の脚本のままやってしまうとわかりにくい。そこをウォーリーさんに相談したのが本読みの時で「じゃあ、始まる前に『原田です』『太田です』と登場する前説みたいなものをつけようか」ということになったんです。それからジミーとボビーになって本編に入ります。
太田:思い出してきた。何が一番いいのかを試行錯誤して、台本もいろいろ変わったりしてましたね。

―再演にあたっては?
原田
:この二人ならではの色が、一層濃く出ればいいなと。
太田:今回の我々Season Cでは、原田さんが演出補なので。
原田:この二人がもう一段階上がる努力をするだけです

―原田さんの演出補としての目標は?
原田
:もっくんがやりたいことを実現する。自分に関してもやりたいことを実現する。
太田:つまりは“やりたいことを全部やるだけ”じゃないですか!
原田:そう!そして、その二人をうまい具合に化学反応させていくのが今回の私の使命です。

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―太田さんとしては?
太田:前回も原田さんからたくさんヒントを頂いて勉強させていただいたので、今回も頑張ってそこに乗っていきたいなと思っています。原田さんのエッセンスを、稽古場でも舞台上でも啜ります!(笑)
原田:それはお互い様ですから、お互いに啜り合いましょう!

―さらに初演を振り返っていただいて、この作品の面白さを教えて頂けますか?
原田:作品を頂くと、いつもなら自分で演じるキャラクターと向き合うことが多いのですが、この作品ではキャストが二人しかいないので、頼れるのはもっくんだけ。太田基裕という人を理解しようとして向き合ったのが、他の作品とは違うところであり、面白かったです。

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―他の作品だと役を通して向き合うのですよね?
原田:この作品ではキャラクターがたくさん出てくるから、もう“人間対人間”。「こういうもっくんもいるんだ」とか「おお、そうきたか!」というもあって。
太田:その作業をやっているうちに、それぞれの登場人物とのドラマが生まれて、愛着が増していき、大好きになっていく。自然と互いをリスペクトして、愛していけるから、温かい「ダブル・トラブル」が仕上がっていってると、稽古しながら感じていました。それが少しずつ積み重なっていって、最後には「すごいことができたね」と。
原田:そうだねぇ!そして、たまにお互いが「ここは暴走させてください!」って時もあるよね。僕が「ここはちょっと突っ走るので、1回見ててもらってもいいですか?」「もっくん、あとで拾ってきてね」という時もあれば、「あ、今、もっくんが走ってる!じゃ、自分は舞台上でキャラクターのまま見守ろう」というときもある。「どうぞ、どうぞ、やってください!」という時もあれば「はい、じゃあ、私、行きます!」と、最終的に駆け引きというか、綱引きしているようにできたのが面白いなぁと。
太田:突っ走ってる原田さんを見るのが、すごく楽しかったです。役を演じながらも、突き抜けてる原田さんを楽しんでいる自分もいて「それをどう受けよう、反応しようか?」と舞台上で考えている自分もいる。すごいライブ感がありました。
原田:二人が掛け合っているばかりじゃない。互いの見せ場もある。
太田:それを見ているお客様を見ている自分もいるし、役の自分もいる。舞台の上に居ながら、いろんなベクトルで見ているんですよ。それは稽古ではわからなかったけれど、劇場に入って新たな視点が増えて、やっとわかったこと。
原田:ホントにそれは大きかったね。
太田:この作品では、お客様にとっても舞台の上だけがすべてじゃない。一人が舞台にいれば、もう一人は裏で、急ぎ何かをしているんだろうと想像を重ねて観て下さる。「間に合うの?」「ちょっと遅くない?!」って。(笑)それが、またこの作品の面白さを引き上げている。
原田:お客様の個性も毎回違うんですよ。
太田:特徴ある笑い声の方がいたり、「えっ、そこで笑った?」と思ったり。
原田:「今日は静かだな」と思っていたら、すごく集中してご覧になっているのがわかったり、逆に箸が転がっても笑ってくださるお客様のときもあったり。
太田:「ぎゃ~」って笑ってくださる方もいますね。
原田:お客様の個性が毎回変わって、客席の温度が違うとやっぱりお芝居は生ものだから、我々も変わってくる。どれがいいというのではなく、変わってきて、そこが楽しめるようになると最高だね。
太田:そう!お客様も僕たちもリラックスして、そこも楽しめるとね。
原田:舞台ってお客様を通して変わるものだとは思いますが、この作品はまさにお客様とのジャズセッションです。お客様も観ていて息が上がってくると思います。ぜひ体力をつけて観に来てください!

ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season C~
2022 年 9 月 5 日(月)~9 月 13 日(火)
会場:自由劇場
出演: 林翔太 寺西拓人/原田優一 太田基裕

脚本・作詞・作曲:ボブ・ウォルトン&ジム・ウォルトン
翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:ウォーリー木下
音楽監督:落合崇史/大塚茜
振付:TETSUHARU
タップ振付:本間憲一
公式サイト: https://www.musical-wtrouble.jp/
公式 Twitter: @wtroublejp

ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season A~
日程:2022年7月28日(木)~8月14日(日)
会場:オルタナティブシアター
出演:浜中文一 相葉裕樹 日野真一郎(LE VELVETS) 横山賀三

ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season B~
日程:2022年8月16日(火)~8月30日(火)
会場:有楽町よみうりホール
出演:林翔太 寺西拓人