
映画『君の顔では泣けない』の公開後御礼舞台挨拶が、11月26日、東京・TOHOシネマズ新宿にて行われ、W主演の芳根京子と髙橋海人、監督の坂下雄一郎が登壇した。
本作は、君嶋彼方のデビュー作『君の顔では泣けない』を原作に、映画『決戦は日曜日』を手がけた坂下雄一郎監督がメガホンをとり、実写映画化。高校1年生の夏、プールに一緒に落ちたことがきっかけで、心と体が入れ替わってしまった坂平陸と水村まなみが、元に戻ることを信じその方法を模索し奔走しながら、進学、初恋、就職、結婚、出産、親との別れ…人生の転機を15年も入れ替わったまま経験していく姿を描きだす。
入れ替わってしまうふたりの坂平陸と水村まなみを芳根京子と髙橋海人が演じ、高校生時代の陸とまなみを西川愛莉と武市尚士、さらに、中沢元紀、前原滉、林裕太、大塚寧々、赤堀雅秋、片岡礼子、山中崇ら個性豊かな実力派俳優が顔を揃えた。

公開後の舞台挨拶ということで、ネタバレギリギリのトークを展開することとなったこの日。髙橋は「けっこう口滑って言っちゃうタイプなんですけど、とにかく我慢して、もし言っちゃったら止めてもらって・・・」と気持ちを引き締めつつ、取材陣に「マスコミの皆さん、もしネタバレ言っちゃったら書かないでください。そして見に来ていただいた皆さん、もし僕がネタバレしちゃったら、記憶を消してあげてください」とお茶目にお願いする。
公開後の反響も大きく、監督は「これまで(評価が)怖くて見てなかったんですが、スタッフの皆さんから『好評です』と聞いて、(SNSを)見たら好評ばかりで、見るのが癖になっていますね(笑)」と満足気。また、「知り合いの方から、『入れ替わった経験がないのに、すっと入ってくる物語で驚いた。なんでこんなに自分はこの作品を受け取って腑に落ちる感覚になれるんだろう?と思って、もしかしたら自分は入れ替わっているかも』という感想が来た時に、ファンタジーだけどリアルな世界観と受け取ってもらえて嬉しかったです。皆さんも想像しながら見ていただけたら」と、リアルな反響を喜んでいた。

「編集や仕上げの段階で気を付けていったこと、大切にしたことがあったか」と問われると、監督は「“異邦人”という喫茶店のシーンでは、2人が向かい合っているカットがいいと思っていて長く使いたかったです。でもその窓の外は車が結構通っていて。細かい芝居になると思ったので、8割くらいは車を消しています」と、2人の芝居に集中するためのこだわりを明かした。
続けて、「髙橋さんは、後半のとあるシーンで、芳根さんが言われた後に沈黙してしまうシーンがあるんですけど、そこは映画では普通に観られるんですが、実は編集で秒数を数えると4、50秒ぐらい黙っているんです。髙橋は「そんなんでしたっけ?」と驚き、自覚がなかったようだが、「それが現場でも大胆に沈黙されていて、結構僕は内心狂喜していて。編集なしで、それぞれの“寄り”を撮っていますが、編集せずにそのまま使っています」と裏話も吐露。
髙橋は「確かにそういうシーンがあった。絶対途中でカットかかるようなシーンだったんですけど、「やってみよう」って思って。監督が信頼してくださっていて、自分でも入り込んで集中したシーンだったので、大好きなシーンです」と応え、監督に感謝する。

芳根には「風が吹いて髪の毛がふわ~っとする、その感じが良かった」と、自然に起きた、そのタイミングに魅了されていた。
一方で、芳根自身は「電話のシーンで、髙橋くんの『もしもし』の声を聞いただけで泣きそうになって、『もう1回お願いします』と言ったことがあるんです。あの「もしもし」はなんだろうと。安心できるし、でもちょっと怖い気持ちにもなるし。この作品は“嬉しい”感情と“苦しい”感情が一緒にくる・・・。あの『もしもし』が結構私は強かったんです」と振り返る。

髙橋は「芳根ちゃんが凄いのは、表現の素晴らしさは隣で芝居させていただいてたくさん感じてきましたが、特に凄かったのは、“説明ゼリフ”です。観ていただく皆さんに分かりやすく説明するみたいなシーンがあるんですが、そこをいかに(ただの)説明ではなく、いかに自分ごととして“説明ゼリフ”として聞こえないようにするか・・・これは上手いとか下手とかじゃなくて、もう“職人”だなと思いました」と、芳根の表現の上手さを絶賛する。
さらに、注目のラストシーンにも話が及ぶと、“ネタバレ”ギリギリに苦戦する3人。途中でマイクを外して3人で(ネタバレにならないか)確認する一幕も。それでも監督は「観た後に感じるニュアンスに目指すものがあって、戻りたいのか、そのままでいたいのか、積み重ねてきたもので、どちらにも委ねられるようにしたかった」と話す。
実は、撮影当初のラストは違うものだったそうで、現場で追加されたシーンだったとのこと。髙橋は「最後のシーンが追加される作品は自分は初めてだったので、そこも含めて皆さんに楽しんでいただけたらな」とアピールした。

最後に、髙橋が「この作品は、ラストも含めて感じ方は人それぞれだと思います。深く刺さる方が一人でもいたらいいなという思いで、リハーサルの段階からキャスト陣、監督、スタッフさん含めて、全力投球で臨んできた作品なので、心して楽しんでいただけたら嬉しいです。この作品が、観てくださる誰かの人生のお守りになることを祈っています」と思いの丈を口にし、芳根が「本当にたくさんの応援をありがとうございます。感謝の気持ちでいっぱいです。この作品が、思い出の一本、心に残る一本になっていただけたらすごく嬉しいです。また明日から頑張ろうかなとか、これまでの自分の人生を一回ぎゅっと抱きしめてみようかなとか、なんかそんな優しい気持ちになっていただけたら本当に嬉しいです本当にありがとうございました」と温かいメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
映画『君の顔では泣けない』
<STORY>
高校1年生の坂平陸と水村まなみは、プールに一緒に落ちたことがきっかけで心と体が入れ替わってしまう。いつか元に戻ると信じ、入れ替わったことは二人だけの秘密にすると決めた二人だったが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、陸はうまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。
もう元には戻れないのだろうか。“自分”として生きることを諦め、新たな人生を歩み出すべきか――。迷いを抱えながらも二人は、高校卒業と進学、初恋、就職、結婚、出産、そして親との別れと、人生の転機を経験していく。
しかし入れ替わったまま15年が過ぎた30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる…。
芳根京子 髙橋海人
西川愛莉 武市尚士
中沢元紀 林裕太/石川瑠華 前野朋哉 / 前原滉 ふせえり
大塚寧々 赤堀雅秋 片岡礼子 山中崇
原作:君嶋彼方『君の顔では泣けない』(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督・脚本:坂下雄一郎 音楽:Inyoung Park
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
(c)2025「君の顔では泣けない」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/kiminake/
公式X(旧Twitter)/公式Instagram:@kiminake_movie #きみなけ
原作:『君の顔では泣けない』 君嶋彼方
<プロフィール>
君嶋彼方(きみじま かなた)
1989年生まれ。東京都出身。
2021年、「水平線は回転する」で第12回 小説 野性時代 新人賞を受賞。
同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。
他の著書に『夜がうたた寝してる間に』『一番の恋人』(以上KADOKAWA)『春のほとりで』(講談社)などがある。
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