
坂下雄一郎監督が、『決戦は日曜日』(22)に続き、自ら執筆したオリジナル脚本で届ける映画『金髪』が、11月21日(金)より全国公開される。
本作は、大人になりきれない30歳の公立中学校教師が、生徒たちの金髪デモに振り回されながらも成長(=自分がおじさんであることを自覚)していく様を、日本独特のおかしな校則、教師のブラックな職場環境、暴走するSNSやネット報道という社会問題を背景に、皮肉と愚痴と笑いを交えて描く、新感覚ムービー。自分がおじさんだと気付いていない“ダサい教師”市川を岩田剛典、クラスの生徒で“金髪デモ”を発案した・板緑を白鳥玉季が演じる。
初の教師役挑んだ岩田だったが、今作では爽やかで生徒に好かれる素敵な教師…ではなく、若⼿でも中年でもない年頃で⾃分を客観視できていない“イタい”中学校教師を熱演。一方で、現役の高校生であり“校則”を身近に感じている白鳥は「なぜ染めてはいけないのか?」「なぜ昔からある問題を放置するのか」と、疑問を市川にぶつけていく役どころだ。
世代間ギャップがありながらも共に撮影に奮闘したお二人に、本作の魅力を語ってもらった。

― 最初に脚本を読まれた時の感想と、ご自身の役をどのように捉えて演じようと考えましたか?
岩田剛典(以下、岩田):まず、すごく見応えがあって面白い脚本だなと感じました。コメディだけど、今の社会風刺を題材にしているところが興味深く、ぜひやってみたいなと思いました。市川はどこにでもいるような人間。彼の心の声が作品のベースとしてあるのですが、面倒くさがりで、愚痴もこぼす。誰しも少なからず心の中にあることだけど、他人にはなかなか言えない。そんなストレスってあるのではないでしょうか。それを代弁してくれるので、とても共感していただける視聴者目線のキャラクターだと思います。
― 岩田さんのアーティスト活動や、これまでの映像作品など、パーソナルなイメージとは全然違うキャラクターかと思いますが、その“ダサさ”“イタさ”をどのように表現しようと思いましたか?
岩田:皆さんが思うイメージと自分の中にある自分のイメージが違う点はあるかもしれませんが、自分では特に何かを意識しているということはないですね。役に関しては、脚本にある感情をそのまま出しているので、笑わせようとしたり、わざとオーバーに演じていることもないし、無理をして言ったセリフもないです。

― 特に役作りをしたという感覚はなかった?
岩田:全然ないです。ただ、ほぼ早口なのでそこは家で猛練習しました。特に板緑との掛け合いは、間を空けずに相手のセリフが終わった瞬間に喋り出さないといけないので、それは訓練でした(笑)。
― 白鳥さんからご覧になった岩田さんの市川先生はどうでしたか?
白鳥玉季(以下、白鳥):普段こんなにキラキラされているので・・・。
岩田:どこが? そんなことないよ(笑)。
白鳥:(キラキラ)しています!それをお芝居では消されるので本当にすごいです。私は早口言葉とか、しっかり姿勢を正すというだけですが、岩田さんはオーラを消されて、本当に普通の先生という感じになっているので。「こういう先生いる!いる!」と思いました。あと、始まる前に1人でずっとセリフを呟いていて、それで「よし!」って気合を入れてらしてすごいなと。その方法はいいなと思って密かに真似していました。
岩田:そう? 気合入れてた?(笑)
白鳥:気合入れてました。

― 岩田さんの座長ぶりはいかがでしたか?
白鳥:かっこよかったです。
私がセリフでいっぱいになってしまって、周りが見えなくなってしまっても、いつも上手にリードしてくださいました。やはり存在感も大きかったです。金髪の中に黒髪だから逆に目立ちますし。
― 白鳥さんは、板緑を演じられていかがでしたか? 劇中ではほぼ笑っていませんが。
白鳥:私は無表情でしっかりしていて、大人を動揺させるような言葉ばかり並べる、ちょっとひねくれた役をいただくことが多くて。でも板緑は今まで演じた役の中でもずば抜けて頭が良く、私も分からないような難しい言葉遣いをするんです。
― 一見ひねくれているように見えるけど、実は自分の意志が強く、自分ではない不登校になった生徒のために動いたという女の子ですね。
白鳥:自分の中に正義があって、それをしっかり貫こうとしています。勉強ができることとは違う、生きる術を知っているような頭の良い子だなと思ってすごく尊敬します。
― そんな板緑に対して共感できるところや、ご自身と似ていると思うことはありますか?
白鳥:私は板緑のように頭が切れる方ではないので、共通点があまり見つけられなくて・・・なので、ただただ尊敬です。こういう生き方ができたら、かっこいいなと思います。今の中学生たちが憧れるような存在ではないでしょうか。

― 市川先生からしてみたら、ちょっとラスボス的な存在だったとは思いますが・・・。
岩田:そうですね。うざい生徒でした(笑)。
白鳥:主犯格ですものね(笑)。
― 実際に対峙されていかがでしたか?
岩田:いやいや、もう本当に…(苦笑い)
彼女が言うことはド正論なので。すごく身につまされるような気持ちになりました。惰性で生きている人間と、正論しか言わない人間。みんな分かってはいるんだけど、それを言ったらもう逃げ場がないというか。人間はそれ(正論)だけで生きている人は少ないし、弱い部分もありますよ。ただ、2人のコントラストがはっきりしていたので、芝居で感情が分からなくなるようなことはなかったです。
― では、お互いやりやすかった?
岩田:リハはやったよね。
白鳥:そうですね、その場で歩きながらちょっと合わせてみたり。セリフ合わせもよく付き合っていただきました。2人のセリフがすごく長いので、お互いのセリフを確認し合いながら。

― あと、全員金髪で出てくるシーンは迫力あります。
白鳥:新しいホラーですよね(笑)。
岩田:本当にすごい・・・(笑)。
― 実際にこの金髪だらけの現場はどうでしたか?
岩田:奇妙で、宇宙人みたいでした(笑)。本当に不思議な感じでした。Teenager(ティーンエイジャー)がみんな金髪で、しかも制服着ている子たちが大量にいるわけですよ、学校の入り口に。あれはなかなか迫力ありました。
白鳥:ポスターでも迫力がありますが、実際に対峙するとものすごい迫力ですし、目がチカチカしてきます。

― 校則がこの作品のキーになっていますが、ご自身の学生生活で「この校則は、少しおかしいな」「やめてほしい」と思ったことはありましたか?
岩田:校則が厳しかったのは中学生までだったので、当時は考えたこともなかったですね。「どうして、これをやってはいけないんだろう」と思わないタイプでした。高校は身だしなみは自由だったので。何のストレスもありませんでした。
白鳥:私も同じです。それが普通だと思っていたから。校則は当たり前にあって、守るべきものという感覚でした。でも、1つだけ納得いかないことがありました。カーディガンの色や形の決まりが曖昧だったのですが、初めて買ったカーディガンを着ていったら、「それはダメだよ」とクラスのみんなの前で立たされて注意されて。その時は理不尽だな、と思いました。
― 何色だったのですか?
白鳥:ほぼベージュに近いピンクベージュのような色かな。形も違反ではなかったので、先生のさじ加減1つだった気がします。でも、何も言い返せなくて・・・。
― 早口の練習をされたとのことですが、そのスピード感がとても心地いいです。セリフ量も多かったと思いますが、どの点が大変でしたか?
岩田:リレーのバトンのようでした。お互いに最後まで早口を言い切れるかどうかの勝負みたいな。「なんの勝負やねん」ってね(笑)。
白鳥:持久走の前のようなドキドキ感がスタート前にありました。
岩田:しかもほとんど笑わないんです。一応一連を撮って、最後にカット割で終わりという撮影だったのですが、ベースは一連を使うので一発勝負なんです。後半でミスったら頭からやり直し。なので、もう本当にお互いに綱渡りでした。
― それは坂下監督ならではの演出ですか?
岩田:そうですね。今作はコメディであり、会話劇を楽しんでもらいたい作品でもあるのでテンポは大切。でも大変でした。

― 市川が同級生で相談相手の駒井(田村健太郎)さんと飲んでいる時に愚痴る、その返しも笑えます。
白鳥:あれは可哀想でした。
岩田:ホントに(笑)。
― 特に印象的なシーンはありますか?
岩田:やはり板緑とのツーショットの廊下のシーンですね。そのシーンがこの作品の醍醐味かと。あそこで大人が中学生に正論で論破される。あれが痛快なんです。
― コミカルにストーリーが進んでいきますが、大人と社会、対立、向き合い方ということも伝えようとしています。この作品を通して改めて考えさせられたことをお聞かせいただき、本作を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
岩田:この映画はコメディではありますが、世代間を表している作品。どの年代の方にも共感をしていただける点があると思います。大人の方はこの映画を観て「自分も気を付けよう」と思う人もいれば、「あ、俺も知らず知らずのうちにそう思われているのかな?」とちょっとショックを受ける人もいるかもしれません。それをリアリティある描写で説明しているので、反面教師にしてもらってもいいし、楽しみ方は人それぞれ。自由な受け取り方でいいと思います。世代間コメディを楽しんでほしいです。
白鳥:私の世代から見ると、共感できない部分もあるかもしれません。大人の話になってくると「おじさんの定義」は私たち年代ではよくわからないし。だけど、この先にきっと成長して大人になった時に、今この作品を観ておくと「ああ、こんなこともあったな」「こういう時の先生の気持ちはこういう感じだったんだな」と、考えられるようになると思います。そんな見方もいいかなと思います。
岩田:大人は共感ばっかりだよ(笑)。
【岩田剛典(Takanori Iwata)】
1989年3月6日生まれ、愛知県出身。2014年『クローズ EXPLODE』で映画デビュー。『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(16)で映画初主演を飾り第41回報知映画賞新人賞、第40回日本アカデミー賞新人賞俳優·話題賞、第26回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞。2018年には、映画初単独主演作『去年の冬、きみと別れ』などで第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞石原裕次郎新人賞を受賞し、同年、「崖っぷちホテル!」(18/NTV) でドラマ初主演を務めた。その後も「あなたがしてくれなくても」(23/CX)、やNHK連続テレビ小説「虎に翼」(24)「アンチヒーロー」(24/TBS)、「フォレスト」(25/ABC)のドラマや、映画『名も無き世界のエンドロール』(21)、『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(22)、『死刑にいたる病』(22)、『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』(24)など、数々の作品に出演。
アーティスト業においては三代目 JSOUL BROTHERS として活動しながら、2021 年からソロアーティストとしても歌手デビューを果たし、活動の幅を広げる。11月から自身初となるアジアツアーを開催中。
【白鳥玉季(Tamaki Shiratori)】
2010年1月20日生まれ、東京都出身。2016年、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でドラマ初出演。同年、西川美和監督の『永い言い訳』で映画デビュー。主な出演作に、「凪のお暇」(19/TBS)、「テセウスの船」(20/TBS)、「極主夫道」(20/YTV)、大河ドラマ「どうする家康」(23/NHK)「水平線のうた」(25/NHK)などのドラマ作品や、映画
『流浪の月』(22)、『極主夫道 ザ・シネマ』(22)、『正欲』(23)、『からかい上手の高木さん』(24)、『アイミタガイ』(24)などがある。現在放送中のドラマ「ぼくたちん家」(25/NTV)に出演中。

映画『金髪』
<Story>
その⽇、中学校教師・市川の⼈⽣を⼤きく変える出来事が起きた。⼀つは担任クラスの⽣徒数⼗⼈が髪を⾦⾊に染めて登校してきたこと。そしてもう⼀つは、彼⼥から結婚の話を切り出されたこと。マスコミやネット、さらには⽂科省まで巻き込み⼤騒動になる“⾦髪デモ”と、⽇々の愚痴を聞いた彼⼥からの⾟辣な説教で板挟みになる市川は、窮地を脱するために“⾦髪デモ”を計画した張本⼈・板緑と⼿を組み、とある作戦に打って出る⋯。仕事の問題と⼈⽣の決断が⼀挙に押し寄せた市川は、いつまでも若者で何事も順⾵満帆だと思っている“イタいおとな”から“マトモな⼤⼈”へと成⻑し、全ての試練を乗り越えられるのか︕︖
<キャスト&スタッフ>
岩田剛典
⽩⿃⽟季、⾨脇⻨、⼭⽥真歩、⽥村健太郎、内⽥慈
監督・脚本:坂下雄一郎
音楽:世武裕⼦
配給:クロックワークス
©2025「金髪」製作委員会
2025年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/103分/G
公式HP:kinpatsumovie.com
公式X:@kinpatsumovie #映画金髪
11月21日(金)全国公開
◆スタッフクレジット
岩田剛典
スタイリスト:渡辺康裕
ヘアメイク:下川真矢(所属:BERYL)
白鳥玉季
スタイリスト:伊里瑞稀
ヘアメイク:豊田千恵
撮影:松林満美
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