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映画『カツベン!』成田凌インタビュー!「この映画は、僕の人生年表で一番の太字になる!」

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今からおよそ100年前、映画がまだ活動写真と呼ばれ、音がなかった時代に、独自の“しゃべり”で観客を映画に引き込む「活動弁士」、通称“カツベン”が映画界のスーパースターとして活躍していた。本作は、この“しゃべりのスペシャリスト”を個性的なキャラクターたちと共に、“映画のはじまり”を描く。

『Shall we ダンス?』『それでもボクはやってない』などで知られる周防正行監督が5年ぶりにメガホンを取り、一流活動弁士になることを夢見る青年・染谷俊太郎役を成田凌が見事に演じきった。竹中直人、渡辺えり、小日向文世ら周防組常連俳優が顔をそろえる中、本作で映画初主演を飾った彼に話を聞くことができた。

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― 世の中に活動弁士という職業があったことを知っている人はあまり多くないと思いますが、成田さんはこの作品に携わる前からご存じでしたか?

僕も今回のお話をいただくまで知らなかったです。オーディションを受けたとき、初めて知ったのですが、(活動弁士というものが)あって当然だと思いましたし、凄く素直に受け入れられました。

― 最初に脚本を読んだ時に「これはおもしろい!」と思ったのですか?

思いました! オーディション前だったのですが、「これがやれるのか! これはやらなきゃダメだろう。他の人がやったらめちゃくちゃ嫉妬するだろうな」と思いました。だから、他の人に「やりたかった」と、よく嫉妬されますよ(笑)。

― 演じていて特にこだわったことは?

カツベンが上手くなることだけを考えていました。あとは、周りに素晴らしい方がいらっしゃったので、素直にその場に存在することでした。

― 活動弁士の練習がとても大変だったそうですが、具体的に何が一番大変だったのでしょうか?

「声を大きく!大きく!」とずっと言われたので大変でした。喉も傷めますし。

― 男性だけではなく、女性や子供の声も出さなければいけないですしね。

そうですね。だから、その期間、7ヵ月くらいタバコをやめていました。少しですがタバコをやめて変わったので、やっぱりやめてよかったなと。でも、撮影が終わった最初の日は(タバコを)おもいっきり吸いました。もうクラクラしましたね(笑)。

― タバコをやめてコンディションが良かったのに、またもとに戻ってしまったんですね(笑)

先日、劇中で披露している「火車お千」のCDの収録をしたのですが、映画は1年前に撮影していたので、久しぶりにやってみるとちょっと大変でした。女性の人の声が出ない・・・と焦りました。やっぱり練習していないとダメですね。撮影中は日々練習していましたから。

カツベン

― 具体的にどんな練習方法だったのですか?

1日3時間、実際に活動弁士として活躍されている坂本頼光さんという方に指導していただきました。ひたすら反復です。僕の先生と高良健吾さんの先生は別の方で、教え方が全然違うんです。高良さんの先生は言葉でわかりやすく教えてくださるんですが、僕の先生は感性の方。これを説明していただきたい・・・と言うと、考え込んでしまって「う~ん、やってみます」となり、毎回全力でやってみせてくれるんです。それを見て盗む。あとは落語や講談など、日本の話言葉を体になじませる日々でした。他の仕事もあるので1日中やることはできないので、1日3時間集中して。あとは移動時間と家で落語や活弁を聞いたり観るという生活を送っていました。

― とても声が通ってました。

芝居小屋は木造なんですが、練習は声が響く会議室でやっていました。声が全部吸われてしまって、感覚が全然違うんです。
最初に言葉を発したときは大丈夫かなと心配しましたが、練習していくうちに声がだんだん大きくなっていって、外にいる人が「凄く聞こえてるよ」と言ってくれるほどになりました。でも、やっぱり練習と本番は全然違います。
逆に本番では、現場の空気感でエネルギーをもらうことができました。劇場の観客はエキストラの方々ですが、非常に素晴らしくて当時のような空気が流れていました。

衣装やメイク、美術のスタッフさんたちも凄くて、みんなが同志でした。そういう意気込みが伝わって、エキストラの方たちも真の役者になっていたんだと思います。あと、エキストラの中には常連さんもいて、みんなを仕切ってくれたり(笑)。撮影にご協力いただいて本当に嬉しかったです。

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― 活動弁士として生きることはもちろんですが、いち青年・染谷俊太郎として演じることで気をつけたことは?

本当に素直にいこうと思いました。深く考えずに臨むことは初めてでした。いつもは役に向かって何か考えてしまうんですが、今回は周りの人を信じて身を任せようと思って。竹中直人さんや渡辺えりさんなど周防組の常連さんの方々がいらっしゃるので、その温度感に合わせようと思いました。特に役作りをするということもなく・・・髭を剃ったくらいですね(笑)。本当に芝居をしていて楽しかったです。何も考えずに現場に行って好きなように動いていました。

― 周防組の初参加はいかがでしたか?

(映画現場が)こんなに楽しいんだと思いました。中でも監督が一番楽しまれていて、それって凄いことだなと。先日の舞台挨拶でも、「今までで一番楽しかったな」と仰っていて、わぁ~、そんなところに自分が居られて本当に嬉しいなと思いました。
現場では竹中さんの口笛が響き渡っていたり、和やかな雰囲気で。本番のお芝居でも竹中さんのお芝居につい誰かが笑ってNG出す。すると「おもしろ過ぎてNGです!」って言うんです。

― 主演としてのプレッシャーはなかったですか?

いざ現場に行ったら「俺が主演だから!」みたいなものはなかったです。クランクイン前は、漠然と主演て何だろうな・・・と考える時間はあったので、無駄に緊張していました。でも、撮影がスタートしたら大丈夫でした。そりゃそうです、素晴らしい俳優さんたちがいて、周防監督がいるんですから。みんなを信じて臨みました。

― 劇中では永瀬正敏さん演じる山岡秋聲が、染谷俊太郎の才能を受入れて信頼し、「やってみろよ。あいつならできる」と言います。成田さんご自身もこの仕事を始めて、どなたか先輩にアドバイスをもらったり、大事にしている言葉などはありますか?

何か言われたというのではないですが、自分の出演した作品を心から愛して、本当に1人でも多くの人に届けたいという気持ちを実現しようとしている井浦新さんを見ていると、やっぱり素晴らしいなあと思います。井浦さんの姿勢に影響を受けます。

― なんとなく成田さんと井浦さんは雰囲気が似てらっしゃいますね。

一緒に住んでいた期間があるからかな。以前映画作品でご一緒したのですが、そのあたりから井浦さんは、家族でもないし、友達でもなく、お父さんでもお兄ちゃんでもない、特殊な関係だなと思っています。何を話していても愛情を感じる方で、多少口癖が移っているのかもしれません。

― では、今作で成田さんにとって得たもの、宝物になったことはありますか?

ちょっとずれるかもしれませんが、「クランクイン」という意味を周防監督に教えてもらいました。クランクというハンドルをカメラに噛み合わせる(インする)ことだったのですが、全く知らなかったので意識するようになりました。あとは、“楽しむ”ということです。

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― 映画が完成してからも、周防監督も成田さんも作品の宣伝活動をとても頑張られていて、『カツベン!』いう作品に対する愛情をとても感じられます。

おそらく、この映画は僕が死んでからもずっと残る作品なので、それは凄いことだなと思っています。この作品をきっかけに、僕も知らなかった「カツベン(活動弁士)」というものが、もしかしたら国民の皆さんに根付いていくかもしれない。この映画を観て、何かが変わる人もいるんじゃなかと。何十年後かわかりませんが、僕の一生を年表にしたときに一番太文字になっていると思うし、それを想像できます。

― 活動弁士の話と聞くと、ちょっと若い人には敷居が高いのかなと思われるかもしれませんが、そこで成田さんが主演をやられるということにとても大きな意味があると思います。

活動弁士とは、こういう人で、こういう話で・・・というとちょっと勉強ぽくなっちゃうけど、まず映画の予告編を見てもらったら、おもしろさが伝わると思います。リズムよく気持ちのよい映画なので、僕が主演だからというより、とにかく楽しい作品なんです。若い方ももちろんですが、僕は子供たちに観てもらいたいですね。大人になって「あの映画を観て活動弁士になったんです!」なんていう子がいたらめちゃくちゃ感動するだろうな。活動弁士がいて当たり前だと思うので。

― この作品は主人公の染谷俊太郎だけではく、色々な人の人生も描かれていて見どころ満載ですね。

そうなんです。敵も味方も、キャラクターの全員が同じくらい魅力的な作品って、なかなかないですね。

― そして、1回観るともう一度観たくなる?

見逃しちゃうところがあるかもしれませんしね。
僕は2回目に観たとき、こんな凄いことをやっていたんだなと、改めて周防監督を尊敬しました。

― 物語は、夢を叶えるために一人の青年が奮闘していきます。成田さんご自身は子供のころから俳優になりたいと思われていたのですか?

特に強い思いはなかったです。でも、子供のころからテレビっ子でドラマもバラエティーもよく観ていたので、どこかで自分もテレビに出るものだと思っていたかもしれません。その後、スカウトされ、役者になりましたが、最初の頃と今では気持ちが全然違いますね。

― それでは最後に、今年1年を振り返ってみていかがでしたか? そしてそれを踏まえて2020年はどんな年にしていきたいですか?

今年は、『カツベン!』をはじめ、『愛がなんだ』『さよならくちびる』など、自分が好きでやりたかった作品が公開されましたし、先日行われたTAMA映画祭では、最優秀新進男優賞をいただき、岸井ゆきのさんや今泉力哉監督とステージに立てて嬉しかったです。今年は色々安心できる年でした。来年はもっとチャレンジしたいと思います。昨年と今年で楽しいことをたくさんしたので、来年はより多くの方に楽しんで見てもらうように頑張りたいですね。先日も他の取材で「今年はトリッキーな役が多かったですね」って言われて(笑)。いろんな方に見てもらえると、見える世界もまた変わってくると思うので。そうしたらもっと好きな楽しいことができるかもしれない。来年も楽しみにしていてください。

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【成田凌(なりた りょう)プロフィール】
1993年生まれ、埼玉県出身。雑誌「MEN’S NON-NO」専属モデル
主な出演作品に『劇場版コード・ブルー – ドクターヘリ緊急救命 – 』『スマホを落としただけなのに』(2018年)、『チワワちゃん』『愛がなんだ』『さよらなくちびる』『人間失格 太宰治と3人の女たち』などがある。
本作『カツベン!』では映画初主演を飾った。
待機作に『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(2月21日公開)、『弥生、三月-君を愛した30年-』(3月20日公開)、『糸』(4月24日公開)、『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年公開)など。

インタビュー撮影:ナカムラ ヨシノーブ

【FIX】本ポスターs

映画『カツベン!』
【STORY】
一流の活動弁士を夢見る青年・俊太郎は、小さな町の映画館「靑木館」に流れつく。隣町のライバル映画館に客も、人材も取られて閑古鳥の鳴く靑木館に残ったのは、「人使いの荒い館主夫婦」、「傲慢で自信過剰な弁士」、「酔っぱらってばかりの弁士」、「気難しい職人気質な映写技師」と曲者揃い。雑用ばかり任される俊太郎の前に突如現る大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活動弁士を追う警察、そして幼なじみの初恋相手まで現れ!俊太郎の夢、恋、青春の行方は・・・!俊太郎の活弁が響き渡るとき、世紀のエンターテイナーの物語がはじまる。

出演:成田凌 黒島結菜 永瀬正敏 高良健吾 音尾琢真 竹中直人 渡辺えり 井上真央 小日向文世 竹野内豊
監督:周防正行
脚本・監督補:片島章三
音楽:周防義和
エンディング曲:奥田民生
活動弁士監修:澤登 翠
活動弁士指導:片岡一郎 坂本頼光
©2019 「カツベン!」製作委員会
公式サイト:http://www.katsuben.jp/

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