
約100年前、女性の活躍が困難だった時代に学校を創立(後に現在の学校法人文京学院に発展)、教育のために走した島田依史子氏の著作「信用はデパートで売っていない 教え子とともに歩んだ女性の物語」を原案に映画化した『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』。本作は、“夢に迷う孫”と“夢を見つけた祖母”が紡ぐ、人生のふとした喜びを描く家族の物語。
夢に迷いながらも、コーヒーにだけはこだわりがある、ちょっと頼りなくて優しい孫、等身大の大学生・拓磨を豆原一成(JO1)、そして夫が遺したサプライズによって、若い頃の夢だった「学び」の日々を楽しんでいくアクティブな祖母・文子を市毛良枝が演じる。
今回、拓磨役の豆原一成さんと、拓磨に優しく寄り添う恋人・大石紗季を演じた八木莉可子さんのお二人に、撮影を振り返りながら本作の魅力を語ってもらった。

― 演じられた役柄をどのように捉えて演じようと考えられましたか?
豆原一成(以下、豆原):僕が演じた拓磨は、自分に自信がないというキャラクターですが、彼の人間味あふれるところを表現したいと思いました。自分も夢を追っていたころ、壁にぶつかった時期があったので、昔の自分を思い出しながら演じようと考えました。
― 現場で監督とのやりとりはいかがでしたか?
豆原:現場に入る前に色々指導をいただきましたが、いざ現場に入るとほとんど僕に委ねてくださっている感じでした。現場に入る前には「大げさにならないように、自然にやってほしい」と言われました。
八木莉可子(以下、八木):紗季は拓磨よりちょっと勝ち気なように見えますが、拓磨に頼っている部分もたくさんあるのではないかと思いました。拓磨には「コーヒーが好き」という強い思いがありますが、紗季にも自分の夢がある。紗季も拓磨を心の拠り所にしながら、(拓磨に)憧れ、尊敬しているんです。お互いが支えあっているように感じてもらえたらいいなと思いながらお芝居させていただきました。

― 監督ともそういうお話をされたのですか?
八木:本番前の本読みのときに方向性をお話しさせていただきました。豆原さんが仰ったように、本番中は「もう少し自然にしてほしい」や「もっと感情が見えてほしい」と言われることはありました。ナチュラルに見えることが大事だったのだと思います。
― 今作では実年齢に近い役を演じられましたが、将来に悩む役柄をどのように分析して表現しましたか?
豆原:僕もこの業界に入る前は凄く悩みました。田舎育ちなので、自分がアーティストになりたいと言うと「そんなの無理だろ」と言われて。今はこのように活動させてもらっていますが、当時自分が将来について迷っていたところを拓磨とリンクさせていたかもしれません。でも、将来どうなるかは分かりませんよね、僕も同じです。
八木: 拓磨は将来について悩んでいますが、前を向いて行動していくように見える紗季も、悩みながらも“好き”という気持ちは大事にして生きています。私は24歳ですが、まだまだ未熟ですし不安もあるので、紗季や拓磨のように悩む気持ちもわかります。ただ、そんな中でも自分の“好き”という純粋な気持ちが原動力になることは凄いなと思います。私は「好きこそ物の上手なれ」という言葉がとても好きです。純粋に「自分はこれが好き」と言えるものがある人は本当に素敵だなと感じます。

― お二人は初共演で恋人役ですが、共演するにあたり仲を深めるために、何かコミュニケーションを取るようなことはありましたか?
八木:撮影が順撮りではなく、最後のシーンから最初に撮影したのですが、まだ本読みをした時しか皆さんにお会いしたことがありませんでした。それなのに恋人役で一番ラストのシーンから撮るというので、豆原さんと豆原さんのマネージャーさんと、私と私のマネージャーさんとお茶をしました。
豆原:ああ、ありましたね。謎のお茶会みたいな(笑)。
八木:両家顔合わせみたいな・・・(笑)。
豆原:そうそう。とてもいいレストランで。逆に気まずい感じでしたね(笑)。
八木:そうですね(笑)。
豆原:マネージャーさんが「じゃあどうぞ(お話ください)」と。「いやいや、何を喋ればいいの?」って、ちょっと面白い空間でした (笑)。
八木:面白かったです。すごい印象に残っています。でも、「気まずいね」と話をして、そこで仲良くなれたと思います。
豆原:確かにそれはあったかもしれません (笑)。
― そんな初対面の中、共演された印象はいかがでしたか?
豆原:八木さんはとても大人っぽく見えますが、けっこう天然ではないのかな。自分の世界観を持っていて素敵な方だと思います。
八木:豆原さんと拓磨は似てるところがあると感じました。凄く素直で、自分を過度に飾ったりしないところが似ていて素敵だなと思いました。私はけっこう人見知りをしてしまうのですが、豆原さんとは自然に接することができました。それはきっと豆原さんの持つ柔らかい雰囲気のせいかも。その空気で現場も温かくなったような気がします。
豆原:本当ですか? 嬉しいです。

― また、市毛さんという大ベテランの俳優さんと共演され、現場に入るだけで学ぶこともたくさんあったのかなと思いますが、ご自身が受け止めたものや感じたものがあったら教えてください。
豆原:僕が初めて市毛さんとお会いしたのは、現場の初日でしたが、大先輩ですし「怖い方だったらどうしようかな」と、正直とても緊張していたんです。でも、お会いしたら本当に優しい方で、市毛さんの自然なお芝居に、自分も合わせて演じることができました。カメラが回っている時も回ってない時も、本当に孫とおばあちゃんみたいに仲良くなれました。待機の時は筋トレやダンスの話とか、他愛もない会話をずっとしていました。市毛さんの人柄がいいので現場もいい雰囲気だったと思います。
八木:家事をされたり、普段の生活のシーンがたくさんありますが、市毛さんが立たれてお芝居されているだけで、本当にその人が今まで何十年とそういう暮らしをしてきたような背景が見えました。現場でも優しくて、気さくに話しかけてくださいました。それでいて空気を正してくれる凛とした雰囲気もあって、ピーンと張り詰めるというわけでもなく、緩く柔くなってしまうわけでもなく。市毛さんが入られると、背筋がシャンとするような感覚がありました。

― 豆原さんはコーヒーを淹れるシーンがたくさん出てきますが、実際に撮影の前に練習されたとお聞きしましたがいかがでしたか?
豆原:難しかったですね。自分で淹れるのは初めてだったので、最初はなかなか上手くできなかったのですが、指導してくれる方から教えてもらいながら、家でもたくさん練習しました。コーヒーを淹れ慣れているという表現ができないといけないので。
― もともとコーヒーお好きだったそうですが、改めてどこにコーヒーの魅力を感じられましたか?
豆原:ブレンドの方法や淹れ方、豆の種類によってこんなにも味が違うんだということを凄く感じました。今まではコーヒーは苦いのが当たり前だと思っていたのですが、酸味が効いてるとか、ちょっと甘いとか、フルーティー・・・というのを本当に感じられるようになりました。のめり込むと面白いんです。
― 劇中では富士山にも行きますが、実際に五合目まで行かれていかがでしたか?
豆原:6月で日中は暑かったんですが、上がってみると肌寒かったです。市毛さん曰く、酸素が薄かったらしいんですけど、僕は緊張していて何も覚えていませんが(笑)。
八木:私も(空気が薄いことが)分かってなかったです。でも、五合目まで行って本当に大きいなと思いました。
豆原:確かに。あんなに近くで見たのは初めてで、やっぱりテンションが上がりました。
八木:天気もコロコロ変わるんです。撮影中も一気に霧が立ち込めてきて、窓の外が真っ白になり、画が繋がらないので一旦撮影が止まったりしたこともありました。人間がどうこうできない自然はカッコいいなという気持ちも抱きました。

― タイトルのなかに「しあわせの数式」という言葉がありますが、ご自身にとっての“しあわせの数式”を教えていただけますか?
豆原:僕は「寝るしあわせ=寝る1時間前に携帯を触らない」です。
最近、寝る1時間前には携帯をいじらないようにしています。そうすると眠りが深くてよく寝られるんです。お風呂に入ってあがったらもう携帯は触らないということを心がけています。寝る瞬間と寝ているその感覚が凄く幸せです。
八木:私は「私+友達=しあわせ」です。友だちと他愛もない話してる時間がすごい好きです。実のない話をしているので、話の内容を全然思い出せないぐらいなんですけど(笑)。大学の頃にできた友達で、よく会っていつも本当にくだらない話をして、笑って終わるのですが、それがやっぱ何事にも代えがたく幸せなんです。
― また、この作品では何歳になっても学ぶことの楽しさということも描いています。今、新しく学んでみたいことや挑戦してみたいことがあったら教えていただけますか?
八木: 私は、生け花に挑戦したいです。お仕事でお花をいただくことがあるんですが、センスよく綺麗に生けることができたらいいなとずっと思っていて。
豆原:僕はフルマラソンに挑戦してみたいです。フルマラソンでもいいし、富士山登頂でもいいし、なんかキツイこと、燃えることをやりたいです。「うわ、きつい!でも頑張れ俺!」というのがいいですね。筋トレもそうですが、自分が窮地に立っているほうが燃えるので。

― そして、今作の主題歌が秦基博さん書き下ろしで、JO1さんが歌ってらっしゃいますが、この曲の感想は?
豆原:秦さんというスーパーアーティストの方に、今回楽曲提供をしていただきましたが、僕たちが日本では初めてで、本当に素晴らしい楽曲をいただいて嬉しく思います。秦さんがこの映画を観て曲を書いてくださり、映画の思いも歌詞に入っていて、1つ1つの言葉が刺さります。僕はレコーディングの時に、自分のパートが頭だったんですけど、「隣の人にささやくみたいな感じで歌ってみて」と言ってくださって、それが凄くハマった感じがしました。色々細かく指導していただいて嬉しかったです。
八木: 秦さんの温かい雰囲気がありますよね。JO1さんの楽曲にはカッコいい印象も多い中で、その秦さんとJO1さんの相乗効果で凄く温かい歌になっていると感じました。この映画にも本当にぴったりですし、自分がちょっと辛くなった時にも聞きたくなるような、隣にそっと寄り添って支えてくれるような歌で、本当に素敵だなと思って聞かせていただいています。
― それでは最後に、あらためて本作で注目してほしいところや魅力などをお聞かせください。
豆原: この作品では日常を過ごす中で、いろんな壁にぶつかったり、しがらみ感じる部分を捉えています。悩みや夢がありながら、みんなが頑張ってその目標を達成しようとしている、とても素敵な作品です。その中で家族や恋人など、人との繋がりがあって1つ1つ乗り越えていく姿が魅力的。そんな作品に自分が関われて凄く幸せです。何かを追いかけていたり、夢があったり、頑張ろうと思っている人に刺されば嬉しく思います。
八木:人との繋がりやそれぞれの個性をお互いに認めながら、時にはぶつかることもあるけれど繋がっていくことはとても素敵なこと。人の温かさ、人間らしさと共に描かれているのが、この作品の良さだと思っています。そして、この作品では、学びについても描かれています。学びはいわゆる10代や20代の学生のためだけではなく、誰にでも開かれています。学ぶことは人生を豊かにするツールとして存在していると思うので、幅広い年代の方に観ていただいて「自分も何か新しいことを勉強してみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。

映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』
【STORY】
祖母・文子と暮らし始めた大学生の拓磨は、亡き祖父・偉志の書斎で大学の入学案内を見つける。それは偉志が遺した文子へのサプライズだった。一歩踏み出し、若い頃の夢だった「学び」の日々を謳歌する文子。一方、拓磨は夢に自信が持てず将来に悩む。そんな二人は、富士山が好きだった偉志の手帳に不思議な数式を見つけて・・。
主演:豆原一成(JO1) (『劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア』(22)、『BADBOYS -THE MOVIE-』(25)等)
市毛良枝 (『ラーゲリより愛を込めて』(22)、『明日を綴る写真館』(24)等)
出演:酒井美紀、八木莉可子、市川笑三郎、福田歩汰(DXTEEN)、藤田玲、星田英利/長塚京三
監督:中西健二 主題歌:「ひらく」 JO1 (LAPONE ENTERTAINMENT)
脚本:まなべゆきこ 音楽:安川午朗 制作プロダクション:PADMA
原案:島田依史子 「信用はデパートで売っていない 教え子とともに歩んだ女性の物語」(講談社エディトリアル刊)
原案総責任:島田昌和
配給:ギャガ ©2025「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」
公式HP:https://gaga.ne.jp/fujisan_and_coffee
公式X: @MtFujiMovie1024
公式Instagram: @MtFujiMovie1024
全国絶賛公開中!
●豆原一成
Hair&Make=西尾さゆり Styling=齋藤良介
衣装協力=ニット¥27,500(LITTLEBIG)、ネックレス¥74,800(LION HEART/Sian PR)、リング¥4,950(LHME/Sian PR)、その他/スタイリスト私物
<お問い合わせ>
Sian PR(03-6662-5525)
LITTLEBIG(info@littlebig-tokyo.com)
●八木莉可子
Hair=江守 美保(ende)Make=NAO YOSHIDA
Styling=Shohei Kashima
衣装協力=Patchwork embroidered dress¥143,000(MURRAL)
★撮影:松林満美





















