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谷賢一が新翻訳 心をわしづかみにされる舞台 『オーファンズ』公開ゲネルポ D-BOYS柳下大主演 平埜生成 高橋和也

2月10日、東京芸術劇場シアターウエストにて舞台「オーファンズ」が幕を開けた。
初日に先駆け、ゲネプロが公開された。

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1983年にロスアンゼルスで初演、日本でも市村正親、椎名桔平、根津甚八など名優たちによって演じられ、今なお世界中で上演され続ける名作戯曲「オ―ファンズ」。

主演は近年「真田十勇士」(宮田慶子演出)、「いつも心に太陽を」(岡村俊一演出)等、舞台俳優として評価を上げている、俳優集団D-BOYSの柳下大。今作は柳下が演出の宮田慶子に自らオファーし、企画化された意欲作である。
翻訳劇に定評がある作・演出家の谷賢一が新翻訳を手掛けたことで、現代風に今の日本に合った新しい作品へと生まれ変わっている。

アメリカ・フィラデルフィア。
孤児の兄弟・トリートとフィリップと、ふとしたことから一緒に暮らすことになった中年男性・ハロルドの3人の絆の物語。

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柳下演じる兄・トリートは利発ながら暴力的な性格で、強盗をしながら弟と二人きりの生活を送っている。
弟のフリィップ役は、劇団プレステージの平埜生成。
若手ながら蜷川幸雄作品「ロミオとジュリエット」、昨秋放送のドラマ「オトナ女子」に出演するなど、今後が期待される注目株だ。
兄弟を導いていく中年男性・ハロルドを演じるのが、映画「そこのみにて光輝く」で好演、舞台でのキャリアも着実に積み重ねている高橋和也。孤独に満ちた二人をおおらかに包み込む。

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物語は、薄暗く散らかった部屋から始まる。
TVの前に座りこみ、お気に入りの番組を一人楽しむフィリップ(平埜)。
そこへ盗品をせしめたトリート(柳下)が帰宅する。
いつもの変わらない日常を過ごしていた。

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そんなある日、トリートはバーで出会ったハロルド(高橋和也)を連れ帰る。
ハロルドは自身の孤児院での思い出を語りながら、酔いつぶれてしまう。
手荷物からハロルドを実業家と思いこみトリートは誘拐を計画、ハロルドを縛り付けるとフィリップに見張りを命じ、また一人出掛けて行った。
しかし思惑は外れ苛立ちながら帰宅すると、そこには声高らかに歌い自由にふるまうハロルドの姿が。
激昂するトリートにハロルドは、やさしく問いかける。
「私のところで働かないか?私たちはきっとうまくいく」

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ハロルドとの生活は、兄弟ふたりに変化をもたらしていく。
教養とお金を与えられ、トリートは人とのつながりを学び、フィリップは外の世界を知るようになる。
孤独を分かち合う3人は、いつしか温もりに似た感情を抱くようになるが……。

柳下は、暴力で抑圧するという歪んだ愛情でしか弟を守ることのできないトリートをナイーブに表現。粗暴さの陰に不器用なまでに弟を想う温かさを併せ持つ、複雑な心情を丁寧に演じ分けている。
平埜は、純真無垢なフィリップを繊細に体現。兄の暴力におびえながら、それでも日々を楽しもうとするひたむきでまっすぐな少年を等身大で好演している。ハロルドによって解き放たれていく様をのびのびと演じ、心を打たれる。
そんな兄弟をおおらかに包み込む役どころの高橋は、まさにハロルドそのもの。豪放で愛きょうあるキャラクターながら、父性をもって二人に接する姿は高橋自身にも通じるものがあり、人物に説得力をもたらしている。
クスッと笑えるシーンもありながら、気づけば3人の濃密な会話劇に惹きこまれてしまう、“奇跡の出会い”を描いた人間ドラマ。
思いもよらないラストシーンは心をわしづかみにされ、観劇後もなお余韻を残してやまない。
“人はふとしたきっかけでこんなにも変わることが出来る”。
谷の翻訳により新たに生まれ変わった「オーファンズ」は、宮田の細部にいきわたった演出により観る者の心に強く訴えかけてくる。

<公演情報>
『オーファンズ』オフィシャルHP: http://orphans.westage.jp/

 





翻  訳:谷賢一
演  出:宮田慶子
出  演:柳下大 平埜生成 高橋和也
東京公演:2016年2月10日(水)~2月21日(日)
東京芸術劇場 シアターウエスト
神戸公演:2016年2月27日(土)〜2月28日(日)
新神戸オリエンタル劇場
お問い合わせ:ワタナベエンターテインメント
03-5410-1885 (平日11:00~18:00)