宮本亞門が新たな葛飾北斎の物語を描く舞台「『新 画狂人北斎』-2025-」が、2025年10月17日(金)に東京・紀伊國屋ホールにて初日を迎えた。開演に先立ち、ゲネプロが公開され取材会が行われた。出演は、西岡德馬、雛形あきこ、寺西拓人、廣瀬智紀 ほか。東京公演は10月22日(水)まで。その後、全国12か所にて上演される。
本作は、『画狂人北斎』として、2017年に宮本亞門が演出し、リーディング公演という形で墨田北斎美術館、イギリスの大英博物館にて上演され、さらに曳舟文化センターにて朗読劇「画狂人 北斎」を上演。2019年には、ストレートプレイの舞台作品として初演を迎え、2021年、2023年とブラッシュアップをしながら全国にて上演されてきた作品。
今回は前作と同じく宮本亞門演出、池谷雅生の脚本ながら全面的に改訂。新しく鳥居耀蔵(寺西拓人)が登場し、葛飾北斎(西岡德馬)との対峙を軸に展開。観客をぐいぐい引き込む、まったく新たなストーリーとなった。
葛飾北斎(西岡德馬)
時は水野忠邦の天保の改革。絵師・北斎にずっと憧れていたと、11代将軍徳川家斉の側近・鳥居耀蔵(寺西拓人)が北斎を訪れる。身分にとらわれない北斎に可愛がられ、その人間や生き方に魅力を感じる。
やがて目付や南町奉行という要職に就いた耀蔵は、立場上、厳しく市中の取締りを行う。そして、それは度を越していき…
シーボルト役(左 アイル・シオザキ) 西村屋与八(右 瀬尾タクヤ)
絵を描くことにしか興味のない北斎の、時には人を傷つけ常軌を逸しているようにも思われる生き様。だが彼の人間力に惹き付けられていく人たちも…。
北斎を支える北斎の娘お栄(雛形あきこ)
北斎の孫の時太郎(廣瀬智紀)
北斎の親友とも言える柳亭種彦(水谷あつし)
【取材会】
宮本亞門 寺西拓人 西岡德馬 雛形あきこ 廣瀬智紀
宮本亞門:(ゲネプロは)ちょっと良かったじゃないですか。正直言いました。ゲネプロはいつも不安なんですけども、皆さんの演技がますます深くなってきて、演出家冥利につきるなと、ちょっと幸せな気分ですよ。
(バージョンアップした理由について)北斎は何年間もやり続ける作品なので、その時代で見てほしいという思いがあります。ご覧になって分かったでしょうか。今にぴったりな感じになっていて、天保の改革は今と同じようなことが繰り返されているんですね。「今、生々しく皆さんに伝わる作品にしたい」というのがまずあったので、全面改訂しちゃいました。德馬さんも最初から全部それだったし、(鳥居も)ある意味で悪役とも言えるんだけど、ただの悪役ではない。映画のジョーカーじゃないけれど、内面は何が起きたのか、あらゆる人の裏側もあぶり出していくっていうのが今回(にテーマ)だったので、きっとみなさまにもいろいろ考えていただけたんじゃないかなというふうに作ります。
西岡德馬:これから初日を迎えますが、本当によくできたゲネプロだったと思っています。転換が大変ですが、稽古場からよくやってくれて、スムーズにいって、こんなにうまくいっちゃっていいのかなと思うぐらいです。お芝居は、今日はもう寺(寺西)とばっちりセッションできているなという感じでやったんで、ますます頑張ってくれるといいなと思っています。
(新バージョンとなったテーマ、見どころは?)北斎は北斎なので、バージョンアップして深いところで、北斎は何を考えていたのか、どれだけ絵が好きだったのか、どれだけわがままな男だったのかと、課題がいっぱいありましたけれども、それは宮本亞門さんと相談しながらここまで来ました。いい相手役(寺西)ができたので、好敵手という感じでセッションをやっていきます。
(寺西について)去年映画で最初に会って知っていたので。すごく感性の豊かな男で、頭もいいし、鳥居耀蔵のセリフじゃないけど褒めちぎってもなぁ~(笑)。でも、ほんとに褒められる人格だしね。そういう相手役と巡り合えたことが、とても幸せだと思っていますよ。
芝居をいろいろ練って練ってやるんで、台本が想像以上に変わってきて、どんどん良くなっているのがわかるんです。それを亞門さんとやっていけたのは、すごく面白かったな。
こういうことできるのはこの舞台だけだろうなと思って。だから寝ても覚めても、ずっとこの数ヶ月北斎の気分でやっていました。
寺西拓人:(ゲネプロは)しっかり出しきって、今はすっかりおなかが空いておりますけども、ここから12か所、31公演、誰ひとり欠けることなく走り抜けられたらなと思います。
(西岡にべた褒めされて)光栄でございます。映画の時も相対する役で、でも今回はほんとにがっつり2人だけでお芝居するシーンもありまして。その稽古中も、いかに鳥居耀蔵の気持ちが動くかを、常日頃ご自身でセリフまで考えてくださってやっていただいたので、すごくやりやすく、本当に日々楽しい稽古でした。もちろん役として相手にする時は緊張しましたけれども、実際は本当にお優しい方なので、その辺はあんまり緊張せず、フランクに接していただいております。
ゲネとはいえ、本番さながらの熱量でしっかりぶつかり合えたので、個人的には課題がもうすでにあります。ここからまた、さらにブラッシュアップして、いいお芝居お届けできたらと思います。
(時代劇という点について)初めてカツラをつけた時に、正直、僕は「これで合っているのか?」と。で、スタッフさんを見渡すと、みんなが僕と同じ顔してたんですよ。 だから、その時は多分合ってなかった。でも今はしっかり合っていると思います。所作もそうですし、着物の着方も含めて全部が初めてだったので、所作の先生に教わったりしました。あとは德馬さんにたくさん教わりました。歩き方から何から、本当に学びの日々でした。
雛形あきこ:(ゲネプロは)まだすごく緊張感ありながらですが、初めてこのセットで本番どおりやったのですが、「すごい!みんなほんとにスムーズでプロだな」と思いながら、みんなで力を合わせてという感じの時間で、ひとつになったという実感でした。
このまま、最後まで誰も怪我することなくいけたらいいなと思える時間でした。
廣瀬智紀:無事にとりあえずゲネプロを終えてられてよかったなという気持ちと、いよいよ始まるんだという、胸の高まりみたいなのを今感じております。(自分の演じる)時太郎はちょっと素行が悪かったり、やんちゃな部分があったりしますけれども、どうしてそうなったのかという理由も説得力を持たせられるように、太郎のストーリーもしっかりとお客様にお届けらできたらという気持ちです。
宮本:(キャストについて)僕はまず寺西さんの芝居を舞台で見て大感動して「ただ存在することができる役者がいた」と興奮して、寺西さんには今までやったことないことを全部やらせるのが僕の目的です。最初ちょっと戸惑ってましたけど、とにかく徹底的に、だいぶ細かくしつこく言った。人がいいから「ありがとうございます」と最初に言うんですよ。ほんとによくチャレンジをしてくれて、全身全霊で飛び込んでくれたと思います。
廣瀬さんは失礼ないい方ですが、最初はちょっと楽しい意味の2.5次元系の方かなと思っていたら、「俺はそこからだけじゃない」みたいなことがぐいぐいぶつかってきてくれて。僕としては、存在感という意味で、時太郎が生々しく描けたと思ってすごく喜んでいます。「いい役者だな」と、トイレで言ったよね。(廣瀬:トイレで並んでね 笑)
『新 画狂人北斎』-2025-
演出:宮本亞門
脚本:池谷雅生
出演:
葛飾北斎/ 西岡德馬
お栄/ 雛形あきこ
鳥居耀蔵/ 寺西拓人
時太郎/ 廣瀬智紀
シーボルト/ アイル・シオザキ
西村屋与八・高井鴻山/ 瀬尾タクヤ
りん/ 花音
柳亭種彦/ 水谷あつし
声の出演:水野忠邦/ 里見浩太朗
【東京公演】2025年10月17日(金)~10月22日(水)紀伊國屋ホール
【石川公演】2025年10月28日(火)、10月29日(水)北國新聞赤羽ホール
【大阪公演】2025年10月31日(金)~11月3日(月祝) サンケイホールブリーゼ
【大分公演】2025年11月24日(月祝) 中津文化会館 大ホール
【熊本公演】2025年11月25日(火) 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館) 大ホール
【京都公演】2025年11月27日(木)~11月28日(金)京都劇場
【山口公演】2025年11月29日(土)、11月30日(日)下関市民会館 大ホール
公式HP:https://no-4.biz/hokusai2025/