
はじまりは中学の初恋- 「これまでにない大人の恋愛小説」と話題の朝倉かすみの小説「平場の月」を原作に実写映画化。
本作は、中学時代の同級生が時を経て再会し、離れていた歳月を埋めながら心を通わせる物語。『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督がメガホンを取り、大人のリアルで切ないラブストーリーに仕上げた。妻と別れ、地元に戻って印刷会社で働く主人公の青砥健将を8年ぶりの映画主演となる堺雅人、青砥が中学時代に想いを寄せていた須藤葉子を井川遥が演じ、2人の中学時代を坂元愛登(青砥役)、一色香澄(須藤役)が扮する。
Astageでは、大人の青砥と須藤に繋ぐべく、中学時代の揺れ動く感情を繊細かつ大胆に演じた坂元愛登さんと一色香澄さんにインタビューを敢行。撮影を振り返りながら作品への思いを語ってもらった。

― 本作の出演が決まったときの素直なお気持ち、原作や台本を読んだときの感想、最も惹かれた点があればお聞かせください。
坂元愛登(以下、坂元):物語を読んで、とにかく素敵で文章から“こういうものを作りたい”という明確なものや、熱意を感じました。この役は絶対自分がやりたいと思ったので、出演が決まって本当に嬉しかったです。
一色香澄(以下、一色):私もこのお仕事を始めた時から、映画に出演することが1つの目標でもあったので、オーディションが受かったと聞いた時は嬉しかったです。

― 中学時代の青砥と須藤という人物をどのように捉えて演じようと考えましたか?
坂元:青砥は何かに長けているのでもなく、何かが劣っているわけでもない普通の中学生。ただ、人の気持ちを考え汲み取って寄り添うことのできる子だと思いました。特別に深く役作りをすることはしませんでした。堺さんのこれまでの作品を沢山観て、自然に、感覚的に自分の中で掴めたらいいなと思いながら臨みました。
一色:私は自分が演じた須藤が大人になった須藤に繋がるとても大事な中学時代なので、なるべくそのまま井川さんに繋げられたらいいなと思いながら、監督や坂元さんとお話しながら役を作っていきました。

― お二人が演じた役は大人の青砥と須藤と同じ人物として核が一緒。繋げていくうえで特に大事にして演じようと心がけたことがあったら教えてください。
坂元:僕は色々準備して現場に入ったのですが、現場で初めて一色さんが演じる須藤を見た時に、この須藤から感じることだけに集中することが一番いいのかも・・・と感覚的に思ったので、目の前の須藤を追いかけました。現場で感じた感覚をそのまま表現した感じです。
一色:私は、須藤は「太い」と表現されることが多いのですが、その“太さ”についてたくさん考えました。やはりそれが須藤を表現することであり、須藤の人生で大事な軸になっていると思ったので、そこを大事にしながら演じました。
― 監督から特に「こういうふうに演じてほしい」というような、ディレクションはありましたか?
坂元:僕は、『子供っぽく(するように)』とよく言われていました。中学時代の青々しい感じというか、その生っぽさみたいなところを出すということを言われていたのだと思います。“子供っぽく”は何度も言っていただきました。

― 落ち着いた感じがするので、ちょっと大人っぽかったのかな?
坂元:そうかもしれません(笑)。その部分は自分でも色々試しながら臨みました。
一色:私は、監督から具体的なお芝居の方法というより、須藤が持つ雰囲気、その場の佇まいや行動についてお話していただきました。須藤の太さを表現するために立ち方や目線などの細かいところをご指導いただきました。

― 今回、お二人は初共演だと思いますが、お互いの印象はいかがでしたか?
坂元:年齢は僕より下なんですが、とても衝撃でした。現場では空き時間でもずっと須藤として存在している気がして。役としての存在感や完成度がものすごくて。だからこそ、僕は何も考えずに、一色さんが演じた須藤から感じることに集中すればいいと思いました。一色さんだったから集中できたと思います。
一色:私は、坂元さんはすごくしっかりしていて、落ち着いている方だなという印象がありました。そして、現場ではスマホを触らないんです、全然。触らないようにしているとご本人も仰っていて。そういう現場での立ち振る舞いを尊敬しています。役への向き合い方でも、監督と積極的にコミュニケーションを取られていて。私も参考にして、見習いたいなと思っていました。
― ご自身が演じられた役の大人になった堺さん(青砥)と、井川さん(須藤)と実際に現場でお会いすることはありましたか? その時の印象をお聞かせください。
坂元:お会いすることができました。堺さんはとても柔らかくて温かい方という印象でした。とにかく、この作品にかける思いがものすごかったです。作品はもちろん、青砥のことを本当に愛していると感じました。
中学生のパートを先に撮影して、その撮影した動画を事前に観てくださっていたのですが、『ゆらぐ感じがよかった』と言ってもらえて、すごく嬉しかったです。
一色:私は、井川さんはとても綺麗な方なのはもちろんですが、私たちの体調なども気にかけてくださって。本当に素敵で温かい方という印象でした。堺さんは、同じ宮崎出身ということもあり、地元トークで少し盛り上がりました(笑)。
事前に私たちの撮ったところを観てくださっていて、『すごく瑞々しかった』とおっしゃってくださいました。

― お二人の演技が土台となって大人のパートが始まるので、とても重要な役どころだったと思います。特に印象に残っているシーンやセリフはありますか?
一色:私は自転車で2人乗りするシーンが印象に残っています。早朝の撮影で寒かったこともありますし、本当は2人乗りなんてしてはいけないけど、映画の中でしかできない体験だったので。あと、自転車が少し壊れていたんですよね?
坂元:そうそう。落ちていた自転車を青砥が軽く直して、2人乗りするという設定だったので、美術の方がほどよく壊してくれていました(笑)。僕もそのシーンが印象に残っています。一度撮影したんですが若干曇っていたので、別日に再度撮影しました。めっちゃ綺麗だったよね。
一色:はい、本当に綺麗でした。ぜひ、注目してほしいです。

― タイトルにある“平場”という言葉のように、日常の生活の中で起こる出来事が淡々と進む中で大切な愛が描かれている本作ですが、劇中で須藤が「これがちょうどいい幸せなのよ」というセリフがあります。お二人がふと感じる、“ちょうどいい幸せ”を教えていただけますか?
一色:学校帰りとかに、友達とワイワイしながら帰る時間は、すごく青春を過ごしているなと感じて好きです。たわいもない話をして、ふざけあって(笑)。
坂元:う~ん、何でしょうね・・・(しばし考えて)。青春っぽくないですけど、寝ている時間、寝る瞬間が最高に幸せですね(笑)。
最近寒くなってきたので、温かい布団で寝たいですよね。なので、寝る15分くらい前に電気カイロを温めて、布団の中に忍ばせておくんです。そして、よし寝るぞ!と布団に入ったらじんわり温かくて。布団で寝るときが本当に幸せです。

― では、この作品を通してどんな大人になっていきたいと考えますか?
坂元:お芝居の話になってしまいますが、この『平場の月』の現場でも、一色さんから感じるものがあったように、いろんな現場で共演の役者さんのエネルギーをもらっています。与えてもらうことが多いので、いつか自分から何かを与えられるような、引っ張っていけるような人になれたらいいなと思っています。芝居だけではなく、色んな面で影響を与えられるような大人になりたいです。
一色:私は、まだ将来のことはちゃんとは考えられていないのですが、俳優というお仕事の面では、朝ドラに出るということを1つの目標にしているので、それを達成できるようにこれからも頑張りたいです。
― どちらも叶えられるように応援しています。それでは、最後に、本作の上映を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
坂元:じんわり、長く愛してもらいたいです。堺さんもよく言われていますが、ジワジワくる作品です。僕もそう思っています。この映画を観た後、ゆっくりと余韻に浸っていただきたいです。
一色:お互いに思いやることの切なさも感じますが、それ以上に勇気をもらえる作品だなと思います。大切な人と、ぜひ観ていただけたら嬉しいです。

【坂元愛登(Manato Sakamoto)】
2009年2月9日生まれ、福岡県出身。主な出演作は、映画『ある男』(22年)、『雑魚どもよ、大志を抱け!』(23年)、『罪と悪』(24年)、ドラマ『不適切にもほどがある!』(24年)、『スカイキャッスル』(24年)、『ちはやふるーめぐりー』(25年)など。

【一色香澄(Kasumi Isshiki)】
2010年10月3日生まれ、宮崎県出身。24年放送NHK「柚木さんちの四兄弟。」でデビュー。25年4月期KTV「あなたを奪ったその日から」では、主人公の娘:美海役を繊細に演じ、注目を集める。

映画『平場の月』
<Story>
妻と別れ、地元に戻って印刷会社に再就職し、慎ましく、平穏に日々を生活する、主人公・青砥健将(あおと けんしょう)。
その青砥が中学生時代に想いを寄せていた須藤葉子(すどう ようこ)は、夫と死別し今はパートで生計を立てている。
お互いに独り身となり、様々な人生経験を積んだ二人は意気投合し、
中学生以来、離れていた時を埋めていく――。
ある日、アパートの部屋から月を眺めていた須藤。
「お前、あのとき何考えてたの?」
青砥にそう問われ、
「夢みたいなことだよ。夢みたいなことをね、ちょっと」
そう答えた須藤。
再び、自然に惹かれ合うようになった二人。
やがて未来のことも話すようになるのだが・・・。
出演: 堺雅人 井川遥
坂元愛登 一色香澄
中村ゆり でんでん 安藤玉恵 椿鬼奴 栁俊太郎 倉悠貴
吉瀬美智子 宇野祥平 吉岡睦雄 黒田大輔 松岡依都美 前野朋哉
成田凌 塩見三省 大森南朋
原作:朝倉かすみ「平場の月」(光文社文庫)
監督:土井裕泰 (『花束みたいな恋をした』『罪の声』『映画ビリギャル』)
脚本:向井康介 (『ある男』)
製作:映画『平場の月』製作委員会
コピーライト:©2025映画「平場の月」製作委員会
公式HP https://hirabanotsuki.jp/
公式X @hirabanotsuki
公式Instagram @hirabanotsuki
全国絶賛公開中!
<スタッフクレジット>
●坂元愛登
ヘアメイク:原田なおみ
スタイリスト:鹿野巧真
●一色香澄
ヘアメイク:窪田健吾
スタイリスト:川久保はるか
撮影:ナカムラヨシノーブ

















