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【第26回東京フィルメックス】金馬奨3冠!『ラッキー・ルー』Q&Aリポート

11月22日に発表された今年の第61回金馬奨で、最優秀主演男優賞を、さらに最優秀新人監督賞、最優秀音楽賞の3部門を受賞した『ラッキー・ルー』(原題:《幸福之路》)。
なんと金馬奨授賞式翌日の23日にフィルメックスで上映され、ロイド・リー・チョイ(Lloyd Lee CHOI)監督がQ&Aに登壇した。
最優秀音楽賞を受賞したCharles HUMENRYも客席にいることが紹介され、会場はお祝いムードに沸いた。
Q&Aではロイド・リー・チョイは終始笑顔で、たくさんの質問にたっぷり答えてくれた。

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ロイド・リー・チョイ監督は、韓国系カナダ籍でニューヨーク在住。2022年のカンヌ映画祭短編映画部門で「Same Old」が上演され、本作は「Same Old」を発展させた初の長編映画作。短編映画の最新作「CLOSING DYNASTY」(2023年)もニューヨークを舞台に、少女を主人公にした作品で、多くの映画祭で受賞しており、現在はNetflixで配信されている。

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【あらすじ】
ニューヨークで配達員をして稼いでいる中国人のルー(路)が、長年離れて暮らしていた妻と娘を迎える数日前、アパートを借りるところから始まる。気に入った部屋を借り、意気揚々としていた矢先、商売道具の自転車を盗まれ、アパートの契約金が家主に渡っておらず騙されてしまったことが発覚する。家族と再び一緒に暮らすという希望を胸に、失った自転車と契約金を懸命に取り戻そうとするルーの物語。

主人公のルー(路)を演じたチャン・チェン(張震)が金馬奨で最優秀主演男優賞を獲得したのは、2014年の『ブレイド・マスター』(原題:繡春刀)以来、2度目。

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【Q&A】
「寝ずに台北から来たので、ぼ~っとしていたらごめんなさい。でも東京が大好きです」との挨拶からQ&Aが始まった。

―張震さんという有名な俳優が、長編作品の監督第一作に出演されるのは大きなことだと思いますが、キャスティングの経緯など、お願いいたします。
張震さんはずっと自分の作品に出て欲しい俳優の第一希望でした。でも私のそれが叶ったのは夢のようでした。ただ私にとって初めての映画なので、実際に彼を起用できるとは思っていませんでした。脚本をマネジャーに送ったところ、マネジャーが読んで張震さんが興味を持つだろうと感じて張震さんに送り興味をもってもらえました。そこで、まずzoomでキャラクターについて話をしました。もしこの脚本が5年前に来たらこの役を演じる準備ができていなかったでしょうけれど、彼は今や7~8歳の娘の父親であり、自身とのつながりを突然感じたようです。ですから、全てがうまくいったのは、この絶妙なタイミングのおかげでした。Zoomの通話では出演について、張震さんはやんわりと『YES』と言ったような感じだったので、確認したく思っていたら、彼がニューヨークに来てくれた。それで、私は昨年8月に直接彼に会いに台北に行き、映画に出演することを確約してもらいました。

―タイトルの「ラッキー」について教えてください。物語とは反するようでもありますが…
そうですね。良いタイトルだと思います。最初からのタイトルですけれど、皮肉なタイトルでもありますね。でも彼の人生の運を考えると、視点の問題だと思います。映画全体を通して、彼の運が良くないのは明らかだけど、物語が進むにつれて、それは変わっていくと思っています。家族がやってきて、彼の人生に別の視点も加わります。映画の最後の妻のセリフも関連があると思います。

(注:「ラッキー・ルー」の中国語の題名は「幸福之路」。原題を直訳すると「幸福の道」。ルー=路には主人公の名前と道、この2つの意味が重ねられていると思われます。そこも「良いタイトル」の理由のひとつかと思いました。)

―娘のヤーヤー(クイニー)役のカラベル・マンナ・ウェイさん子役が素晴らしかったがキャスティングについてと、ポラロイドの意味を教えてください。
キャスティングで一番神経を使ったのは、張震さんの相手役(娘役)を見つけること。張震さんは素晴らしい俳優ですから、同じくらい優れた小さな女の子が必要でした。私たち数か月にわたり全国で探して、ニューヨークでカラベルを見つけました。彼女は演技をしたことがなく、セットにも立ったことすらありませんでした。彼女をキャスティングするのは、すこし緊張しましたが、彼女が世界を観察する様子はとても魅力的で、最初のテイクから心にぐっとくるものがありました。彼女の眼差しは深く心に響く感じがしますよね。
ポラロイドは、記憶をとどめるものであり、ノスタルジックなものでもあります。「彼女がもし15年後にポラロイドを見直したら、この日をどう思い出すだろうか」と考えていました。

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―どれほど移民問題を深く描こうとしているのか、教えてください。例えば言葉について。監督が話せない言語での演出には障害はありませんでしたか?中国語だけでもいろいろな方言が出てきます。張震は台湾系の中国人だととすると、(方言から)彼の妻は明らかに中国本土の出身です。このような中国語の違いについてなど、リアリティある脚本を作る際にどのような点に重点が置かれたのか気になっていました。
私は中国語をまったく話しませんが、私が中国語の物語を選んだ理由の一つは、特にニューヨークで配達員の仕事をしている人たちには中華系が多いという統計があったからです。脚本を私は英語で書きましたが、その後、自分自身の解釈を加え、会話にニュアンスとリアリティを与えてくれる非常に才能ある翻訳者と一緒に翻訳しました。言葉に命を吹き込み、中華の要素を入れるために、私は彼にずいぶん頼りましたし、撮影現場では俳優たちがその脚本を自分のものにして演じてくれました。
大切にしたのは、ルーも彼の家族の出身について話題にせず、混ぜ合わされた家族にしたことです。登場人物は皆、移民です。ニューヨーク訛りを話す人物はなく、ほとんどの登場人物が英語を第二言語として話しています。中国人のコミュニティに限らず、ニューヨークが多文化都市であることを見せたいので、意図的にそうしました。多くの福建人、広東語圏の人たち、北京や台湾の出身者が混ざり合っていますが、他にも中東や東ヨーロッパなど、様々な人々がいます。それを表現することが、私には重要でした。

―描かれたニューヨークの景色について、映画ではニューヨークをよく見ますが、あんな風に撮影されたニューヨークを見るのは初めてで、興味深かったです。
Norm Liが撮影監督です。彼は「Same Old」も撮影しており、それが本作のベースになっています。「Same Old」は5人のクルーで資金ゼロ、三脚とカメラは1台ずつで撮影しました。撮影していく中で、映画の表現方法を少しずつ開発していきました。
本作で、私はニューヨーク映画によくあるものの逆をやりたかったのです。じっと静かにその瞬間をただ観察したいと思っていました。例えば通りの向こうから望遠レンズで監視カメラのように撮影するというアイデアです。映画全体を通して、正面からのショットは絶対に使いたくありませんでした。そして最後のショットは、遮るもののない、真実の、抑制されないルーのショットにしたいと思ったのです。 だから、自分たちにたくさんのルールを課しました。それがこの映画を面白くしていると思います。 ニューヨークのランドマークは避け、自由の女神像など名所を一切出さなかったのも自分たちに課したルールです。