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『神水の中ナイフ』チャオ・イーハン プロデューサー Q&A 東京フィルメックス

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釜山映画祭でニューウェイブ部門の「ニュー・カレント賞」を『ドナー』(原題:捐贈者)共に受賞。ハワイ映画祭でもNETPAC賞を受賞した『神水の中ナイフ』(原題:清水里的刀子)。
中国西部宁夏回族自治区に住み、妻を亡くしたばかりの老人を主人公に、彼の牛への心情を中心に、その暮らしを静かに丁寧に描いた作品。

1月21日にワン・シュエポー(王学博)監督に代わり、チャオ・イーハン プロデューサーが上映後に登壇。映画祭ならではのQ&Aが行われ、司会や観客からの質問に答えてくれた。

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―原作は小説のようですが、どのような経緯で映画にされたのですか?
チャオ:原作は石舒清さんが書かれた同名小説で魯迅文学賞を受賞した有名な作品です。企画を王監督に紹介したのは、王監督の大学の同級生で回族(ムスリム民族集団)の石彦偉さん。王監督は漢民族で、回族の習慣についてあまり知りませんでしたが、紹介されて中国西部宁夏回族自治区の西海固という場所にとても興味を持ちました。

―画額が変わっているのは、何故ですか?
チャオ:4対3なのは、監督がミレーの絵が好きで、映画の絵 のような雰囲気にしたかったのです。2つ目の理由は、クラシカルな雰囲気にしたかったから。3つ目の理由は、現場にきてみると風景が広く大きく広がっていたので、人物を際立たせるためにこのサイズを使ったのです。

―とても静かな映画ですね。
チャオ:ワン監督は音楽を入れるつもりはなかったのです、音楽は雰囲気を盛り上げるものですが、この作品の大部分は老人の独白ですから、静かな環境です。交響曲をを入れることも考えたのですが、心のうちを描くために音楽はなしにしたのです。

―雨と雪のシーンが印象的でしたが、この撮影は?
チャオ:撮影日数は28日でした。雨と雪を逃さないように撮影をこの時期に決めました。小説は7千字で、その7割は老人の心の中の描写で、情景描写はあまりありません。でも監督は葬式も老人の人生の一部として描くことにしました。回族には沐浴も顔や手を洗う小沐浴、体を洗う大沐浴の2種類あります。この水不足の地では、それも生活の一部として描き、雨や風景も心情のテーマとして描きました。

国際連合食糧農業機関(FAO)が、人間が暮らすのに最も困難な土地の一つとして認定しているという西海固。そこでの暮らしを見、老人の心を感じると、今の私たちの生活を振り返らざるえない気持ちになった。
出演者は役者でなく、地元の人たちとのこと。映画の力を感じられる1本だ。