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『スカーレット・ピンパーネル』安蘭けい インタビュー 「シリアスなフランス革命の物語」だけど「観ても観ても、また観たくなっちゃう楽しさ」

2016年秋に上演されたミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』が、この11月~12月に再演となる。
宝塚歌劇団では何度も上演され、ファンに愛されている名作だが、日本で宝塚歌劇団以外で上演されたのは昨年のこの日本版(梅田芸術劇場版)が初めて。

主役のパーシー役には石丸幹二、その妻・マルグリット役には宝塚歌劇団での初演でパーシー役を演じた安蘭けい。そして敵対するショーヴラン役に石井一孝と、実力派3人がメインキャストをつとめ、昨年はチケットが完売。観ることができなかった方も多かったはず。
だが、嬉しいことにこのメインキャストが続投して、わずか1年での再演が実現した。

Astageは、ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』を誰よりもよく知る安蘭けいにインタビュー。本作の見どころ、観劇ポイントを教えてもらった。

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―ずばり、初めて観る方には本作のどんなところがお薦めでしょうか?
本当によく出来た面白い戯曲で、ロマンスからドキドキハラハラのスリルもあって、水戸黄門のドラマのようなオチがある。すっきりする活劇の良さが、本作の見どころのひとつだと思います。エンターテイメントとしてすごく面白いので、ミュージカルが苦手な方も楽しめるミュージカルだと思いますし、観ても観ても、また観たくなっちゃう楽しさが、この作品にはあるように思います。
それに中身はシリアスなフランス革命の物語なんです。

―人気の時代のお話ですね。
多くのフランス革命の物語は市民の側から描いていますが、『スパーレット・ピンパーネル』は貴族の側から描いたお話で、ロベスピエールが敵なんですよ。
フランス革命を他とは別視点から描いていて「そちらにも正義があるのか…」と思わされて、とても面白いと思います。期待して観に来て頂きたいと思います。

―貴族側から描くから衣装も豪華でお洒落だったんですね。
マルグリットの衣装も、近年、稀にみる数でしたよ。しかも生地もとても良くて、だからその分すごく重かったんですけれど、パーシーがお金持ちだから贅沢をさせて頂きました。(笑)

―逆に昨年も観た方への2017年版のお薦めポイントは?
今回、石丸さん、石井さん、私の3人は続投しますが、個性豊かなピンパーネル団やメインのキャストはかなり変わります。それだけでも色が変わると思いますが、さらに演出家が前回はガブリエル・バリーさんでしたが、今回はその時に演出補をされていた石丸さち子さんも加わるので、また少し違った役へのアプローチや作り方ができるのかなと思います。
なので、全体として作品の色合いがかなり変わるんじゃないかと思っています。昨年の初演と見比べて、いろいろな違いが楽しめるだろうと思いますよ。

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―昨年、マルグリット役で出演されて、どのように感じられたのでしょうか?
すでに何度も出演していたので作品についてはあまりにもよく知っていて、最初から他の出演者とは違う場所から作品を見ていたと思います。役についても「これはこういう役でね」と説明できるほど知っていたので、稽古の最初には少しストレスも感じていたと思います。でもそれもどんどん解消されていきましたね。
以前演じていたパーシーからの目線と、女性としての両方からマルグリット役を見たので「どんな役よりも深く考えることができたかな」と思っています。

―1年で再演というミュージカル作品は多くないと思いますが、やりやすいものですか?
作品によっては「熟成させて時期をおいてやりたい」という作品もあるかもしれませんが、本作は分量が多いですし体力的にもきつい作品なので、正直に言いますと、体力に自信があるうちの方がいい・・・「少しでも早い方がありがたいかな」と思います。

―さて、日本版ならでは・・・というのは、どんな場面でしょうか?
マルグリットが闘うのは、おそらく私が演じるマルグリットだけだと思います。

―あの美しいマルグリットが闘うんですか?!
そうなんです。二刀流で。(にっこり)
それは私が宝塚で演じていたからこそですね。演出家から「実はやりたいことがあるんだけど、それでもいいかな?」と相談されたんです。「マルグリットも闘ってほしい。しかも二刀流なんだけど」と。
私としては「アクションはまったく大丈夫ですけれど、マルグリットがそんなに強くていいんですか?」って…ね。(笑)

―安蘭さんのマルグリットだからこその演出なんですね?
そうですね、これは私のために作ってくださった場面ですね。
そして、(作曲のワイルド・ホーンが宝塚版でパーシー役の安蘭のために書き下ろしたといわれる)♪「ひとかけらの勇気」という曲を(歌詞を変えて)マルグリットが橋の上で歌う場面が増えたのも新しい演出だと思います。「ファンの方も期待しているだろうから」とマルグリットの曲ではなかったのに加えて下さったんです。私のためにすごく配慮して下さって、温かい気持ちで迎え入れて頂いたと思います。

―アクション、歌と見どころが増えて、さらにマルグリットの恋は・・・
宝塚版では描かれていないところまで、こちらでは描かれていて、より大人な世界観なんです。マルグリットがふたりの男性の間で揺れ動く場面もたくさんあり、最後には戦う強さもある女性なんです。

―この公演の後、宝塚版にも変化があったのでしょうか?
マルグリットではないですが、本作でロベスピエールの歌♪「新たな時代は今」が書き下ろされたんですが、その後上演された宝塚版にもこの曲が加えられましたね。

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―どんどん変化し、進化しているんですね。石丸さんとは初共演だったそうですが、如何でしたか?
いろんな役・作品をやってこられて、主演もすごくたくさん演じてこられたので、すごく安心感がありました。加えて、自分も大変なのに、周りを受けとめる大きさを感じました。稽古に入る前には「どんな方だろう?」と思っていましたが、稽古場でも普段そのまま。いつも自然体・・・ニュートラルで、その幹二さんの姿を見ると、こちらも落ち着きました。

―パーシー目線も持ってらっしゃる安蘭さんから見た石丸パーシーの印象はいかがでしたか?
すごく優しくて温かいパーシーでした。私の演じたパーシーはもっととんがっていたように思います。幹二さんはなめらかで大人の余裕のあるパーシーで、楽しく共演させて頂きました。この再演もとても楽しみにしています!

ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』
■日程
2017年11月13(月)~15日(水) 梅田芸術劇場メインホール
2017年11月20日(月)~12月5日(火)  TBS赤坂ACTシアター

■出演者
石丸幹二/安蘭けい/石井一孝/上原理生 泉見洋平 松下洸平
久保貫太郎 久保田秀敏 多和田秀弥 東啓介 藤田玲 則松亜海 ほか

原作:バロネス・オルツィ
脚本・作詞:ナン・ナイトン
作曲:フランク・ワイルドホーン
訳詞・翻訳・潤色:木内宏昌
潤色・演出:ガブリエル・バリー
演出:石丸さち子

公式HP http://www.umegei.com/the-scarlet-pimpernel/
公式ツイッター  @pimpernel_2017

東京公演主催:TBS・梅田芸術劇場
大阪公演主催:朝日放送・梅田芸術劇場
企画・制作:梅田芸術劇場