Open Close

「作品の世界観を体感できる!」音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」松下優也インタビュー 「今は『成りきる』だけは足りない」

“至高の魔術ミステリー”と称される三田誠原作の「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」が、音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」として2019年12月15日(日)市川市文化会館 大ホールでのプレビュー公演を皮切りに、東京、大阪、福岡、そして東京凱旋公演と、来年1月19日(日)まで上演される。

小説からマンガ、アニメと展開し、さらに広く高い注目を集めてきた作品が、どんな舞台となるのか?

稽古も佳境に入った11月最終週。ロード・エルメロイⅡ世役を演じる主演の松下優也を稽古場に訪ねた。

matsusitay2c

―今、お稽古はどんな段階ですか?
とりあえず通しで最後まではやった…という感じです。

―では、全体像もなんとなく見えてきた?
いえ、全体としてはどんなものになるのか、まだまだわからないです。ただ、作品としては、歌もダンスもアクションもあって、それにプロジェクションマッピングやマジックもあって、音楽も効果的に使われます。体感型として楽しんでもらえる作品になると思います。

―マジックもあるのですか?!
舞台を見て「これって、どうなっているの?」と不思議に思うことは多くないと思うのですが、この作品ではそれも散りばめられています。プロジェクションマッピングは、もう当たり前だと思いますが、この作品ではマジック監修がついてくださって、かなりすごいものをお見せできると思います。僕は自分が出演した作品した以外では2.5次元作品にあまり詳しくないのですが、この作品に参加してから「最近の2.5次元舞台は、こんなにすごいのか!」と驚いています。
そして詳しくは言えないですが「これは、舞台では初めて使うのでは?!」と思うような演出を、僕がやります。そこも「どうなっているの?」と思ってもらえるのではないかなと。楽しみにしていて下さい。

―壮大な世界観を感じさせてもらえそうで、楽しみです!音楽劇ということですが、音楽はどんな感じなのでしょうか?松下さんも歌われますよね?
曲は以前から出来ていましたが、今、アレンジを終え完成したものが次々に上がってきています。僕が演じるロード・エルメロイⅡ世の魅力の一つは言葉ですが、台詞には難しい単語が多い。文字で見た場合には理解できても、聞いただけで理解してもらうのは、とてもハードルが高い。でも、それを伝えるのが僕たちキャストの仕事なので、どう伝えればいいのか、ずっと考えています。
ただ音楽にのることで、作品の世界観はより立体的に、体感できる感じになっています。
僕自身も曲数はミュージカルのようにすごくたくさんではありませんが歌いますよ。

―この作品ならでは…と言えば、先ほど挙がったアクション、マジック、ダンスは?
昨日は、グレイ役の青野紗穂さんがアクションをつけてもらっていました。殺陣は初挑戦らしいのですが、大きな鎌を武器に戦っていて、僕の想像以上の動きですごかったです。
他のキャラクターがアクション、ダンスに励むのを横目で見ながら、僕…ロード・エルメロイⅡ世は「この間に膨大な台詞を入れなきゃ」という感じです。

matsusitay1c

―さまざまな作品に出演されてきた松下さんですが、2.5次元作品と、たとえば今年主演を務めた『黒白珠』のような初演のトレートプレイとでは役づくりに違いはありますか?
作り方が違うだけですね。数学でも、式を作ってから答えを導く場合と、先に答えがあって式をつくりなさいという場合がありますよね。この2つは違うように見えるけれど、似ています。2.5次元の場合は答えが決まっていて、式を作るのが僕等の作業。もう一方は、自分で式から作って答えを導き出していく。あるいは、自分で答えを先に作ってしまって、式を作っていくのでもいい。そんな違いでしょうか。

―では2.5次元ならではのご苦労は?
芝居を何もないところから作りあげる時には、「この台詞が言いづらい」と感じたり、「なぜ、ここでこういう感情になるのだろ?」と疑問に思ったりすることがあります。でも2.5次元の場合は「なぜ?」がない。それは答えが原作につまっているから、そこへいかなきゃいけない…というのはあると思います。

―ロード・エルメロイⅡ世役では?
今回は、まだ「なぜ?」と思うことはないです。この作品の他のキャラクターに比べて、ロード・エルメロイⅡ世は意外と普通の人です。人間味のあるキャラクターですし、「特別なものを作ろう」「2.5次元だ」と意識し過ぎなくてもいい役だと思っています。

―SNSで拝見したソファに座っているお写真が、衣装などなくてもロード・エルメロイⅡ世の雰囲気が漂ってきていると感じました。
ありがとうございます。まだ探りながらですが、徐々に見えてきているな…とも感じています。

matsurd2

―膨大な台詞とのことですが、台詞が入って稽古を重ねれば役になりきれてしまうものでしょうか?
難しいところですが、外から見るとなりきっているように見えても、演じている側から言えばなりきってはいない…という感じです。10代の頃は「なりきる」でよかったのですが、今はそれでは足りない。「これはこうした方がいい」「こちらをチョイスしたほうがいい」と稽古しながら見つけながらやっていかないと…と思っています。
もちろん2.5次元ですから、原作だけを追ってキャラクターだけを見て、そこを答えとしてやるのですが、僕たち人間が舞台でやると、淡々と物語が流れていくだけになってしまいがちです。観客にどこに注目してもらうのか、どの言葉をしっかり聞いてもらうのか、僕らが理解してしっかりと伝えていかなきゃいけない。だから「なりきる」という言葉は、あまり好きではありませんね。

―エンターテイメントとして、舞台として見せるという難しさがあるのですね。
2.5次元作品では究極の問いになりますが、今作では舞台を見てから読むか、読んでから見るか?どちらかお薦めでしょうか?
分かりやすいお話ではない…複雑な物語だと思いますし、「なぜ、これはこうなるの?」という「なぜ?」の答えが原作に詰まっています。僕らも制作陣も原作ありきで、原作に近付くことを考えてやっているので、原作を小説でもマンガ版でもよいので、読んでから来てもらった方が、よりお話に入り込める、深く楽しんでもらえるのではないかと思います。
舞台は3時間弱の中でお見せするので、全部を描けるわけではない。その余白も、原作を知っていると楽しめるかもしれないです。

matsusitay3c

―さて、松下さんは11月26日でデビュー11周年を迎えられました。おめでとうございます!アーティストとして俳優として、今見えている景色を教えていただけますか?
少し遠い先のこと…5年、10年先のことを、日々、漠然とですが考えています。デビュー 11年になりますが、これまでを振り返ったときに、常に先を意識しつつも「今、芸を磨く」ということを考えてやってきたのかなと思います。そして、改めて今、「今、芸を磨く」ということを、また考えています。
芝居でも仕事でも、パッとやってみて、偶然うまくいくこともあります。でも、そういう偶然のものは長続きしません。確実なものにするためには、常に磨き続けるべきだと思います。
今、自分はデビューから11年経って、またそこへと戻ってきた感じがしています。自分という素材を俯瞰して見つめた時、求められていること、自分のやりたいこと…お芝居や音楽、歌、踊りをちゃんともっと磨いていく。そうすれば先につながっていくのだろうと。これまでもそれでやってこられたと思うので、そこが大切なのだろうと思います。
そして、これまではコンスタントにライブなどをやって、もっと表に出る機会が多かったのですが、今はどちらかというと落ち着いた時間を持てています。デビュー11周年となった今、いろんなことを考えられる時間を持つことができてよかったなと思っています。
これまで当り前だと思ってきたことを当り前じゃないと考えてみる…そんな時間がこれまであまりなかったので、そういう時間を持つことができてよかったと思っています。
稽古に入ってからは、この作品のことばかり考えていますが、それでも合間にもふと考えています。

―では、この作品がまた松下優也を磨いてくれますね?
この「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」という作品を良くしていきたいと考えてやっていけば、結果として松下優也も良くなる。松下優也をよくするために…ではなく、作品を、舞台をいいものにしたいと頑張れば、いつの間にか自分も成長している…。そんな結果に結びつけばいいなと思います。「過程を大切にしていきたい」と思っています。

rderm2a

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 –case.剥離城アドラ-」
【原作】三田誠/TYPE-MOON
【キャラクター原案】坂本みねぢ
【STAFF】総合演出:ウォーリー木下
脚本:斎藤栄作
演出:元吉庸泰
音楽:和田俊輔
作詞:許 瑛子

【CAST】
ロード・エルメロイⅡ世:松下優也
グレイ:青野紗穂

フラット・エスカルドス:納谷 健(劇団Patch)
スヴィン・グラシュエート:伊崎龍次郎
ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ:浜崎香帆(東京パフォーマンスドール)

ハイネ・イスタリ:百名ヒロキ
時任次郎坊清玄:木戸邑弥

フリューガー:松田慎也
少年従者:木村風太
ロザリンド・イスタリ:種村梨白花・ソニア(Wキャスト)

ウェイバー・ベルベット:植田慎一郎

ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト:玉置成実
オルロック・シザームンド:花王おさむ

化野菱理:壮 一帆
【公演日程】
<プレビュー公演>
2019年12月15日(日) 市川市文化会館 大ホール
チケット : S席:8,000円 A席:7,000円(全席指定・消費税込)
※未就学児童入場不可

<東京公演>
2019年12月19日(木)~23日(月) なかのZERO 大ホール
チケット : S席:9,000円 A席:8,000円(全席指定・消費税込)
※未就学児童入場不可

<大阪公演>
2019年12月26日(木)~28日(土) サンケイホールブリーゼ
チケット : S席:9,000円 A席:8,000円 [ブリーゼシート:7,500円]
(全席指定・消費税込)※未就学児童入場不可

<福岡公演>
2020年1月11日(土)・12日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
チケット : S席:9,000円 A席:8,000円 [バルコニー席:7,500円]
(全席指定・消費税込)※未就学児童入場不可

<東京凱旋公演>
2020年1月17日(金)~19日(日) 新宿文化センター 大ホール
チケット : S席:9,000円 A席:8,000円(全席指定・消費税込)
※ 未就学児童入場不可
オフィシャルサイト https://stage-elmelloi.com

Ⓒ三田誠・TYPE-MOON / LEM STAGE PROJECT