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『神の子どもたちはみな踊る after the quake』 インタビュー 古川雄輝 松井玲奈 古川「深読みすると意味がありそう」松井「書かれていない余白の部分を作っていくのが楽しみ」

阪神・淡路大震災のニュースを見た人たちの心に何が起こったかをテーマに書かれた村上春樹の短編集『神のこどもたちはみな踊る』からの2編「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」を原作とした舞台『神のこどもたちはみな踊る after the quake』が、7月31日(水)~8月16日(金)に、よみうり大手町ホールにて上演される。

2005年にアメリカで初演された本作。日本初演となる今回、主人公の作家・淳平役を演じるのは古川雄輝。そして松井玲奈が淳平の大学時代からの友人・小夜子を演じる。
すでに原作と台本を読んだふたりに「どんな舞台になりそうか?」を語ってもらうと共に、舞台ならではの面白さや苦労を聞いた。

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古川雄輝      松井玲奈

―村上春樹作品は?
古川:勿論村上さんのお名前は知っていましたが、作品は今回初めて読みました。
松井:私も村上春樹さんの小説をちゃんと読んだのは今回が初めてです。村上さんのエッセイは好きでずっと読んでいて「小説も読みたいな」「どのタイミングで読もうかな」と思っているときにこのお話を頂いて「あ、今だ」という感じの出会いでした。

―まだお稽古前ですが、原作と台本を読まれて、どんな感想を持ちましたか?
古川:台本は原作とはだいぶ印象が違いました。小説とは違って、台本だと相手の気持ちを自分が話したり、台詞を分割して3人で語ったり、突然語り手になったりと遊びがあって「舞台化するととらえ方が変わってくる」「舞台ならではの面白さがある」という印象を受けました。
松井: 2つの短編がミックスされているので、最初は台本ではどうなっているのかなと思っていました。でも実際読み進めて状況が理解できてくると、その2つの物語が1つの物語として形作られていく過程がとても面白くて。ロジカルだなと思いました。

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―原作でも脚本でも変わらないと感じたものがありますか?
古川:読む方、観る方に委ねるという感じは変わらないと思います。すんなり読むとシンプルなお話しだけど、深読みすると意味がありそうで、人によってとらえ方がいろいろあると思います。
松井:作品については、全体に余白があって、読み手や受け取り手によって印象が変わるだろうと思っています。原作の短編すべての背景には阪神・淡路大震災があって、自分たちの足元が揺らいだからこそ「これからどう生きていきたいのか」と登場人物ひとり一人の認識が変わっていきます。それはたぶん…東日本大震災の時に多くの人が感じたような「本当にこれでいいのか」「もっと何かできることがあったのではないか」という思いと共通しているのではと思いました。まだ稽古に入っていないのでわからないところが多いのですが、ひとり一人に変化が起きていく、それを舞台で見せていくことが面白いのではないかと思っています。

―古川さんが深読みしたのは、例えばどんなことですか?
古川:まず熊の話ですね。「淳平や高槻を熊に例えて話しているのかな?」「なぜ熊の話をしているのだろう?」とか、「ブラジャーはずしゲームで出てくるブラジャーが印象的だけれど、どういう意味なのか?」「(淳平、小夜子と、ふたりの大学の友達で小夜子と離婚した高槻の)三人の関係とはいったい何なのだろうか?」などです。三人は依存し合っているような変わった関係だと思っています。全部意味があると思うのですが、深読みしてどういう意味があるととらえるのか…。
松井:稽古しながら、作っていくことが多いので、読書の時には「伏線かな?」と考えたりするときもあるのですが、書いてあることをそのまま受け取る方で、あまり考えずに読んでいました。すごくしっかり読み込んでおられて、もっとちゃんと読まなきゃと焦ります!(笑)
古川:演出の倉持さんにお会いした時に「どういう共通認識を持って読めばいいのですか?」と尋ねたのですが「全部、稽古で」という答えで、ご挨拶くらいで終わってしまいました。(笑) 淳平役をやるなら淳平としていればいいので「そこまで考えなくてもいいのではないか」と思いながらも、「やはりちゃんと知っておいた方がいいのでは」とも思っています。
松井:私も倉持さんにお会いしたのですが、同じような感じでした。何作か拝見した倉持さんの作品はコメディ寄りの作品が多かったのですが、今回はガラッと印象が変わると思うので「稽古を楽しみにしています」とお話ししました。
古川:今作は2つの短編小説を合わせてパラレルワールドの感じがありますが、倉持さん(作・演出)の『ブロッケンの妖怪』もそんな感じの作品でした。コミカルで面白いステージの使い方が観客を飽きさせない舞台だと思いました。今回も舞台化に際して、村上春樹さんのファンの方々も違った印象を受けるような作品になるのではないかとワクワクしています。
松井:おそらく…登場人物が舞台上にいることが多くて、誰かが台詞をしゃべる横で、誰かの生活が描かれていたり、別のシーンが動いていたりするのではないかと予想しています。書かれていない余白の部分を、どうやって埋めていくのか、それを作っていく作業がすごく楽しみです。倉持さんの舵とりにかかっていますね。(笑)

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―さて、映像でも舞台でも活躍されているお二人ですが、松井さんが『24番地の桜の園』(2017年11~12月演出:串田和美)の公演前にインタビューさせて頂いた時に「舞台はなんとなく自分の精神を切り売りするような感覚がある」とお話しされていたのが印象深いです。あれから朗読劇『ラブ・レターズ』をはさんで1年半ぶりの舞台出演となりますが、その思いに変化はありますか?
松井:それは変わらず思っています。『24番地の桜の園』は古典なので生きている時代も私とは違いましたが、今回は台本を読んで「小夜子はどういう役どころなのか?」と考えた時に、現代を生きる小夜子は自分に通じる共通点も多くて「これを演じている時の自分の精神状態はどうなのだろう?」と考えると、ちょっと怖いと思いました。毎日波がありそうですが、でも演じることができるのは楽しそうだと思っています。

―役柄との共通点という点で、古川さんは?
古川:演じる淳平は、思いを伝えられない、内気で不器用なところがあります。僕もどちらかと言えば自分から動くタイプではないので、小夜子に自分の気持ちを伝えられないところなど、淳平と根本的な性質は似ているかもしれません。

―松井さんのように「舞台は精神を切り売りするような感覚」は感じられていますか?
古川:う~ん、精神的にも肉体的にも舞台は苦しく感じる事も多いような気はします。映像作品よりも舞台の方が大変な印象があります。ですがその分、学ぶことも多い。僕にとって、舞台は発見が多いので、映像とは違った苦しさや楽しさがあります。

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―例えば前回の主演舞台『イニシュマン島のビリー』(2016年3~4月 演出:森新太郎)ではどんな発見がありましたか?
古川:セリフをいろんなスピードで言ったり、いろんな場所で言ったりということを何度も何度も公演前日位までやりました。その中で台詞をゆっくりと言うことをとても新鮮に感じました。
台詞はゆっくり言う方が苦しい、特に長台詞は吐き出したいのでゆっくり言うのが難しいです。自分の感覚よりももっともっとゆっくりと台詞を言うことでこんな表現ができるんだ…と、とても新鮮に感じましたし、それは映像でも役立つ発見だったと思います。
テクニカルではないことでは、日英合作舞台『家康と按針』(2012年12月~2013年2月)での演出家はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの方(グレゴリー・ドーラン)だったので、本読みの時に「みんな、どこに座ってもいいよ」と言われ、日本とは違った環境で舞台に臨むことに驚きました。

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―松井さんが舞台で発見されたことは?
松井:『24番地の桜の園』では「無いものを有るように見せる」という演出がたくさんあり、家族が集まってテーブルの上のロシア料理をガツガツ食べながら会話をするというシーンがありました。目の前にない料理を有るようにみせると同時に、汚いくらいの食べ方で、その下品さが貴族でもあるという表現が難しかったです。でもチラリと横を見ると、先輩俳優たちが豪快に食べているのが目に入って、「ああ、自分はまだまだだ」「自分が100だと思っていたことは先輩方には50位なんだな」と思うことがありました。
また、演出の串田さんには「違う!違う!」と何度も言われて、でも何が違うのか分からない状態に陥ることもありましたが、その壁を乗り越えることが楽しかったです。そして、本番では稽古場では感じなかったこと、見えなかったことが毎公演出てくる。しかもそれが同じ物語なのに、毎公演違うのも舞台ならではの楽しさだと感じて、良い経験だと思いました。

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『神の子どもたちはみな踊る after the quake』
2019年7月31日(水)~8月16日(金)
東京都 よみうり大手町ホール

原作:村上春樹
脚本:フランク・ギャラティ
演出:倉持裕
出演:
古川雄輝
松井玲奈
川口覚
横溝菜帆・竹内咲帆(子役・Wキャスト)
木場勝己

 

公式HP :https://horipro-stage.jp/stage/kaminokodomo2019/

 

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松井玲奈
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