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松井玲奈インタビュー 『24番地の桜の園』 自分から飛び込んでいって学べることがたくさんあるのではないかと楽しみにしています。

2017年11月Bunkamuraシアターコクーンでチェーホフの名作『桜の園』を原作に、演出・美術を担当する串田和美が、翻訳の木内宏昌と共に脚色する『24番地の桜の園』が上演される。

原作は20世紀初頭ロシア革命前、社会が大きく変わっていこうとする時期に発表された戯曲で、没落していく“桜の園”の地主一家とその周りの人々を描いた、チェーホフの最高傑作にして最期の作品。
串田が新しい視点を盛り込んで、現代にも通じる滑稽なまでの人間模様を描くという。

出演者は、“桜の園”に出入りする商人<ロパーヒン>に高橋克典。“桜の園”の領主ラネーフスカヤの兄<ガーエフ>に風間杜夫。新しい思想を持つ大学生<トロフィーモフ>に八嶋智人。ラネーフスカヤの娘<アーニャ>に松井玲奈。養女<ワーリャ>に美波。そして“桜の園”の領主<ラネーフスカヤ>を小林聡美が演じる。

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今回Astageは、松井玲奈にインタビューを行った。映画やドラマにも数多く出演し活躍する女優・松井玲奈に本作への意気込みと演技への思いを聞いた。

―今回出演される『24番地の桜の園』について、今、感じておられることは?
チェーホフの原作をベースにしながら串田さんが考える「桜の園」・・・ある意味、新しい「桜の園」がどういうものになるのか、どこまで原作に忠実なのか、どんな新しい要素が入ってくるのか?とても楽しみにしています。
古いものを守っていくことも大切だと思いますが、新しく変わることも挑戦であり大切なことだと思うので、変わるものの中にいることができるのはとても良い経験をさせていただけるのではないかと、刺激的な稽古の日々になるのではないかと感じています。
私が演じるアーニャという役は、若くて前に向って進む力のある女性です。過去を振り返るよりは新しい世界を自分で見つけて、自分らしく次の場所に進みたいという気持ちが強い役かなと思うので、自分に似ているというよりも「わかるところがあるな」という気持ちでいます。

―座組みについてはいかがですか?
Bunkamuraのステージに立つこと、大先輩たちの中で、しかも大所帯。経験したことがないことがたくさんあるので、すごく緊張します。コミュニケーションをとって自分らしくいられるかな…という点は不安ではあるのですが、飛び込んでみないと分からないことも多いと思うので、怖がらずに飛び込んでいけたらいいなと思っています。

―ビジュアル撮影の時には、皆さんとお話をされましたか?
風間さんが落語をやってらっしゃるので、落語のお話を串田さんと3人でしました。

―では、もう輪に入っていけそうな雰囲気は伝わってきたでしょうか?
う~ん、まだわからないのですが、ちゃんとがんばらなきゃいけないと思います。

―共演される出演者の中に、イメージを持っておられる方はいらっしゃいますか?
八嶋さんは以前からバラエティ番組やドラマでよく拝見していたので、コミカルなお芝居のイメージを持っています。今回は私と一緒のシーンがたくさんあり、2人の関係が大切になるお話だと思うのですが「八嶋さんとこのシーンを演じたら、コメディになっちゃう?えっ、それは違う?」なんて想像しています。「いつか八嶋さんとお芝居をしてみたい」という気持ちもあったので、共演させて頂けることもすごく嬉しいです。
母親を演じてくださる小林聡美さんも素敵な女優さんだと思っていました。先輩の女優さん舞台をご一緒させて頂くのが今回初めてなので、勉強させて頂けることや、自分からと飛び込んでいって学べることがたくさんあるのではないかと楽しみにしています。本当のお母さんのように頼りにできたら嬉しいなぁと思っています。

―串田さんの作品では音楽とダンスや身体表現も楽しみな部分ですね。
稽古前なので分からないのですけれど、生演奏が入る・・・、舞台の上で楽器とお芝居を合わさっていくのは、私にとっても初めての経験でとても新鮮なことです。
串田さんからは「ジプシー調の音楽が入る」と伺っています。これまで私が触れてこなかった音楽なので、これがこの作品と合わさるとどんな効果が生まれるのか、本当に楽しみで「早く稽古がはじまらないかな」と思っています。

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―舞台では一つの役に向き合って一ヶ月も稽古を重ねます。それは大変だと思いますが、これまでに役作りで辛かったり大変だったりしたことはありませんでしたか?
見た目から役に入ったり、「このセリフの気持ちはわかるな」と気持ちの面から「自分だったらこうなのかな」と考えたりして、稽古中や役を演じている期間は役を引きずるところがあります。『幕末純情伝』の稽古中は殻にこもってみんなとコミュニケーションがとれずにいました。『ベター・ハーフ』では和気あいあいとやっていましたが、日常的なものを描く芝居が多いので、なんとなくですが自分自身の精神を切り売りするような感覚がありました。『24番地の桜の園』で自分はどう変わるんだろうと楽しみでもあります。

―役から抜けるのも大変ですか?
気持ちの面では「あ、終わったな」という感覚になるタイプだと思うので、抜け出るのは大変ではないように思います。ただ、やっている時の癖・・・台詞のスピード感などが残ってしまって「困ったな」と思うことがありました。

―ご自身すべてを役に投入されているんですね。
いぇ…、そんなにでもないのですが「役自体が、もう一つの自分の人生の可能性かもしれないと思って演じるといいんだよ」と教えて頂いてからは「自分なら、こういう状況ならどうするかな」と考えるようになりました。だからこそ自分自身を切り売りする仕事なんだと感じてもいますし、恥ずかしい部分もたくさんお客様に見て頂くから成立しているんだと強く思うようになりました。

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 ― 映画『笑う招き猫』での金髪の漫才師役は意外な役柄でした。いろいろな役をされているようにお見受けしています。
「意図的に役を選んでいるか」といえば、それはまったくないです。頂いたものをやらせて頂いています。ただ似たような役が続いてしまうよりも、いろんな役でいろんな面が見えたり出せたりする方がステキだろうと思うので、「難しい役だな」と思っても「今、自分ができることをやろう」と思って取り組んでいます。漠然と「この方とお仕事してみたい」とか「この場所に立ってみたい」という気持ちはありますけれど…。
今はアーニャという役が作品全体を通して見た時にどういうふうにお客様に伝わるのが一番良いのだろうかと考えていて、それがしっかり伝わるように演じたい、大事にしないといけないことだと思います。

―映像と舞台の両方で活躍されている松井さんが感じておられる舞台の面白さは何でしょうか?
映像の作品はライブではないからこそ完成されたものを観る形だと思いますが、舞台は生だからこそお客様が入って初めて完成します。ストーリー自体は同じでも、その日のお客様によって公演の空気もガラリと変わってしまうような気がしていて、それが舞台の面白さの一つだと思います。
もう一つ、舞台は観に来た方が好きなところにズームインしたりズームアウトできたりするのがとても良いところだと思います。
自分が舞台を観に行くときにはマジックミラーの向こう側で起こっていることを見ているような「誰かの生活や人生を覗き見にしているような感覚があるな」と思ってしまいます。「もしかすると、リアルにここで起きていることかもしれない」と思って見ると、ワクワクしてしまう。その時にしかない、自分の目でしか作品を切り取ることができないというのが舞台の面白いところだし、実は人によってみているものが違っていたり、感想も違うのかな…と。

―劇場に来て、それを感じてもらいたいですね。
はい。舞台は劇場の中に行かなければ観られないので、狭いところのカルチャーだと言う人もいるかもしれませんが、受け取る人の見方によっては世界が広がるもので、それが舞台の可能性じゃないかと思います。何もない空間も「ここはパリです」と言えばパリになる!映像はパリに行かないとパリにならない(笑)。それも舞台の楽しさですね。

―松井さんが舞台で一番楽しいと感じる瞬間はいつですか?
(考え込んで)う~ん…。

―お稽古ですか?本番ですか?
やはり本番ですね。お客様の反応が直に伝わってくるのが嬉しいですし、楽しいです。芝居を終えてのカーテンコールで、素になってお客様の顔を見たときに、お客様の表情が晴れやかだと嬉しいですね。「伝わったんだな」と思えると「やってよかったな」と嬉しくなります。『24番地の桜の園』でもそう思えるように頑張りたいと思います。

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松井玲奈(まつい れな)
1991年7月27日 愛知県出身。2008年SKE48一期生としてデビュー。2015年に卒業後は女優業として数多くのドラマや映画で活躍。今年は 映画『笑う招き猫』『めがみさま』『はらはらなのか。』が公開に。出演舞台に『新・幕末純情伝』(沖田総司役2016年)、『ベター・ハーフ』(平澤遥香役 2017年)。

公演名:    『24番地の桜の園』
作: アントン・チェーホフ
翻訳・脚色: 木内宏昌
演出・脚色・美術: 串田和美

出演: 高橋克典、風間杜夫、八嶋智人、松井玲奈、美波、大堀こういち、池谷のぶえ、
尾上寛之、北浦愛、菅裕輔、新田祐里子、大森博史、久世星佳、串田和美、小林聡美
<ミュージシャン>太田惠資、関島種彦、アラン・パットン、飯塚直、ギデオン・ジュークス

【東京公演】
Bunkamuraシアターコクーン 2017年11月9日(木)~11月28日(火)全20回
チケット料金(全席指定・税込):S席10,000円、A席8,000円、コクーンシート5,000円
公演に関するお問合せ:Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00)
http://www.bunkamura.co.jp/

【松本公演】
まつもと市民芸術館 主ホール  2017年12月2日(土)~12月3日(日)
チケット料金(全席指定・税込):一般:7,800円、U25:5,800円、U18:3,800円
松本公演に関するお問合せ:まつもと市民芸術館 0263‐33‐3800
http://www.mpac.jp/

【大阪公演】
森ノ宮ピロティホール  2017年12月8日(金)~12月10日(日)
チケット料金(全席指定・税込): 10,500円
大阪公演に関するお問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00〜18:00)
http://www.kyodo-osaka.co.jp/

ヘアメイク/白石久美子
スタイリング/船橋翔大(Dragon Fruit)