Open Close

『ROMALE~ロマを生き抜いた女 カルメン~』松下優也インタビュー 「ホセとして精一杯リアルなものを持って演じたい」

来春、東京・東京芸術劇場プレイハウスと大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、メリメ原作「カルメン」をベースにした『ROMALE~ロマを生き抜いた女 カルメン~』が上演される。

『カルメン』といえばジョルジュ・ビゼーによるオペラが有名だが、本作では原作となったプロスペル・メリメの小説をベースに、演出・振付の謝珠栄の視点からオペラなどでは表現されていない部分をより強く描き出すという。
キャストは、カルメン役に花總まり。ミュージカル『エリザベート』のエリザベート役で2016年菊田一夫演劇大賞を受賞するなど、卓越した演技力と大舞台に映える美しさを備える花總は、宝塚歌劇団で『激情-ホセとカルメン』でカルメンを演じた経験を持つ。
一方のカルメンを愛するあまり転落していく男・ホセ役は、NHK朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」栄輔役で注目を集めた松下優也が演じる。歌手としては来年でデビュー10周年。ソロシンガーとして、ダンス&ヴォーカルグループX4としても着実にキャリアを重ねてきた。俳優としてもドラマや映画に多数出演し、ミュージカル『黒執事』主演 セバスチャン・ミカエリス 役、『花より男子 THE MUSCAL』道明寺司役など舞台への出演も多い。

IMG_1099

今回、Astageはその松下優也に取材の機会を得た。カルメンにひたむきな愛を捧げるホセ役について、そして演技への思いと意外な素顔についても話してもらった。

―本作への出演が決まった時の感想はいかがでしたか?
舞台にはいろいろ出演させて頂いてきましたが、これまでにやったことがない、今までとは違った作品なので驚きました。僕にこういうお話が頂けるとは思っていなかったです。

―今回演じられるホセという役をどうとらえておいでですか?
今僕が捉えているホセはやっていることは悪い・・・ダメですが、本来はわりと真面目な人ではないかと。悪い人ではないのに、カルメンに翻弄されてしまっているんじゃないのかと思っています。共感できる部分もありますね。ひとりの女性を自分のものにしたいという独占欲という点で、ホセは極端過ぎますけれど、男性ってそういうところがあるものだろうと思います。

―本公演チラシの憂いの表情がとても印象的ですが、この撮影時のエピソードなどを教えて頂けますか?
この時に初めてお会いする方も多く、謝珠栄先生にも初めてお会いして、とても強い印象を受けました。撮影では(謝先生から「カルメンとホセの間には乗り越えることができない民族の壁がある。絶対に報われない恋の思いを表現して欲しい」とリクエストされて)この謝先生が想い描くところに僕も近付いていきたいと思って頑張って表情を作りました。

IMG_1359

―ヒロインの花總さんの印象は?
このビジュアル撮影の時に初めてお会いして、まだご挨拶させて頂いただけです。僕がこれまでに見た花總さんのお写真などは、何かの役を演じているときのものが多く、ステージ上の花總さんのイメージが強いのです。でも、ご挨拶させて頂いた時にはまだメイクもされていなかったと思うのですが、すごく透明感のある女性だと思いました。

―花總さんの相手役と発表になって、周りの反応は?
いろいろたくさん言われました。「大丈夫なの?」みたいにも言われました。

―「すごいことなんだ」とヒシヒシと感じておられますか?
感じていますね。でもシャットダウンしています。「すごいことだ」と思いながらやるとできなくなると思うので。

―今回の物語の舞台はスペイン。音楽はラテン系、フラメンコだったりしますが、如何ですか?
僕がこれまでやって来た音楽はアメリカの文化のものが多いのですが、ラテンなどノリがいいものは好きですね。まだ経験していないですが、興味はありますし、世界観としては好きです。IMG_1234

―「カルメン」という作品は、ご覧になったことがありますか?
この出演が決まってから、勉強として映像では見ましたが、僕が思い描いているこの作品の世界観とは違っていました。自分がやるからには、今までにもなく、これまでにもないものにしたい。そこは自分の今回の頑張りどころだと思っています。

―稽古前ですが準備されていることはありますか?
現段階の台本は読ませて頂いています。僕等は日本人なので、人種問題をやるのは難しいと思います。僕はブラックミュージックや黒人文化が元々好きなんです。本作と少し違いはありますけれども人種の壁ということでは同じだと思うのですが、本作でもそれをわざわざ見せるのではなくて、観客に感じて頂けるようにしなければいけないと思っています。

―ホセとカルメンの関係も単なる恋愛ではない…?
はい。そのベースがとても大事だと思います。僕は稽古が準備する場所だと思っているので稽古場に入るまでに準備することはあまりないんです。初日に間に合うようにすればいいと思って、稽古では楽しんで考えながらいろいろやる。そうでないと、いろいろと面白いことをやってみることができなくなってしまうんです。今回の稽古はどんな雰囲気になるのか、楽しみです。

―共演者のみなさんとは?
伊礼彼方さんとは『Paco~パコと魔法の絵本from「ガマ王子vsザリガニ魔人」』で、もっくん…太田基裕さんとは『黒執事』でご一緒させて頂きました。団時朗さんとは『べっぴんさん』でご一緒させて頂いて、初めと終わり頃にも一緒のシーンがありました。まさかミュージカルでご一緒できるとは思いませんでした。嬉しいです。
福井晶一さんはX4のメンバーが出演していて、僕もゲスト出演させて頂いた『ホストちゃんTHE FINAL 〜 激突!名古屋栄編〜』に出演されていて、かなり面白かったんです。本来はそういうことをされる方じゃないと思うのですが、今回とても楽しみです。

―花總さんは紅一点。他のキャストは全員男性ですね。
男同士のノリは好きなので、楽しみです。

――ホセという役から執着する、こだわる・・・というイメージを受けました。松下さんがその言葉からイメージするものは?
ホセについては人を殺めてしまうという部分以外については、よくあることなんじゃないかと・・・経験がある方もいらっしゃるんじゃないかと思います。それまで執着などなかった人が執着するようになってしまうところが大事だと思いますね。

―松下さん自身がこだわるものは?
なんでしょう…。ホセに比べてしまうとすぐ浮かんでこないですが、やはり歌うことや音楽に関しては譲れない部分で、執着してやってきたかなと思います。

IMG_1113

―もっと軽い意味・・・趣味などでは?
う~ん…、そうですね。普段は黒い服が好き・・・黒が好きなんです。黒人文化が好きでブラックミュージックが好きですが、服も黒ばかりです。今日も色のあるズボンをはいてきたら珍しがられたんですよ。かなり黒に執着しているかもしれませんね。

―芝居や演技ということでは…
僕自身はそのつもりはないのですが、役を演じている期間は、その役にひっぱられがちになることは多いですね。自分は不器用だと思います。1つの事に集中すると他に手がつけられなくなったり、暗い役柄をやると気持ちも少し暗くなっていると言われたりすることがあります。言葉が荒々しい役だと普段も口が悪くなっているみたいで、『花より男子~THE MUSICAL』で道明寺司を演じた時には、普段も荒々しくなってしまいました。暗い役をやるときには「暗くなる理由があって…」などと考えて下を向いて帰っていたり。(笑)
うわべだけでなんとなく・・・というのは、自分でも気持ち悪いですし、テクニックでどうにかしようというよりも、その気持ちになって素直にやらないと演じられなかったりします。集中すると自然と役にひっぱられてしまいます。それも執着といえば執着かもしれません。
今回ホセをやって、どういう自分が引っ張り出されるのかな…、楽しみです。

―稽古場を出ればすぐ素の自分に戻るんじゃないんですね。
素には戻ります。だから、一番どうしていいのかわらないのが、カーテンコールなんです。役の衣装のままなのに、自分に戻ってしまって、どうしたらいいのか…と。(笑)  舞台の上ではその役で生きているのに、来て下さったお客様に感謝の気持ちがでる。舞台では松下優也はいないように演じているのに、カーテンコールになるとどうしていいか、わからなくなるんです。
よくカーテンコールの様子をご覧になったファンの方に「疲れているんじゃないか」と言われるんですが、疲れているのではなくて、僕なりにどうしていいのかわからないでいるんですよ。(笑)

―では、最後に本作への意気込みをお願いします。
カルメンのお話を知っている方、好きな方がたくさんいらっしゃって、観に来て下さると思いますが、そんな方にとって印象が変わったり、新たな発見があったりする作品になるといいなと思っています。ホセとして精一杯リアルなものを持って演じたいと思っています。

ヘアメイク/Coomie(ビーサイド)
スタイリスト/鹿野巧真
衣裳協力/LAD MUSICIAN PADRONE

『ROMALE~ロマを生き抜いた女 カルメン~』
2018年3月23日(金)~4月8日(日)東京・東京芸術劇場プレイハウス
S席 12,500円 A席 9,000円  一般発売日2017/12/9(土)
2018年4月11日(水)~21日(土)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
料金全席 12,500円 一般発売日2017/12/9(土)

演出・振付 謝 珠栄
台本・作詞 高橋知伽江
原作 小手伸也
音楽監督・作曲 玉麻尚一
作曲 斉藤恒芳

出演
花總まり
松下優也
伊礼彼方 KENTARO 太田基裕
福井晶一
団時朗

一洸 神谷直樹 千田真司 中塚皓平 宮垣祐也

企画・制作・主催 梅田芸術劇場