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舞台『日の浦姫物語』インタビュー 朝海ひかる&平埜生成 「井上ひさしの言葉を存分に浴びて頂きたい」(朝海) 「井上ひさしから女優への挑戦状かと思った」(平埜)

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井上ひさしの『日の浦姫物語』が、9月6日(金)から23日(月・祝)に紀伊國屋サザンシアターで上演される。
数奇な運命を辿る日の浦姫を演じるのは、蜷川幸雄演出『しみじみ日本・乃木大将』で初めて井上ひさし作品に出演し、『國語元年』『私はだれでしょう』でも好演した朝海ひかる。15歳から50歳過ぎまでを1人で演じる。
そして、宿命の愛に翻弄される稲若と魚名の二役に、同じく『私はだれでしょう』で2017 年上半期の読売演劇大賞優秀男優賞候補に名前を連ねた平埜生成。

『私はだれでしょう』で高い評価を得て、さらに進化を重ねたふたりが、2年を経て『日の浦姫物語』で会いまみえる。

今回、その朝海ひかると平埜生成が、揃ってインタビューに応えてくれた。『日の浦姫物語』への意気込みはもちろん、気心も知れた2人ならではの楽しいやり取りもお楽しみ下さい。

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―おふたりが初めての共演された『私はだれでしょう』の思い出を教えて頂けますか?
朝海:(ふっと笑って)ある日の終演後に生成くんが流し台で髪を洗っていたのを思い出しました。
平埜:あった、あった、そんなこと。(笑)
朝海:普通、流し台で髪を洗うならうつむきだと思うけれど、生成くんは仰向けで洗っていて。(笑)
平埜:しかも上半身は服を脱いでいましたね。
朝海:そう!(笑)「何やっているの?」と思っていたら、やって来た人に触られて…
平埜:動けない状態なのに、いろんなところを触られましたね。(笑)
朝海:今、ふっと浮かんだのが、そんな情景でした。(笑)

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―座組みの皆さんが仲良しだったのですね。
朝海:はい。思い出してみると…最初の本読みの時、生成くんが黄色の長髪で来て、作品の世界観とは全然違う人が入って来たので「え~っ?!」と驚いていたら、本読みではボソボソと台詞を言うので、また驚いて。演出の栗山さんの顔をチラリと見たら、栗山さんはすごく楽しそうにニコニコしながら聞いていらして…。
平埜:そうだったんですね。
朝海:そうなの。だから、今風の若者だなというのが第一印象でした。
平埜:そんな印象だったとは知らなかったです。
朝海:ちょっと恥ずかしがり屋で、他人と目線を合さないで、長い髪の中で隠れているというイメージでした。
平埜:ダメですね。せっかくみんなで舞台をやるのに、それでは…。
朝海:でも日が経つと普通にしゃべれるようになって、意外と話好きで、語るのも好きよね。それが分かってからは、最初の印象は無くなりましたけれど…。
平埜:いやぁ、ちゃんとしなきゃいけないなぁ…。(苦笑い)朝海さんは最初から完璧でしたね。歌稽古からきちんと練習してきて、稽古の最初から台詞も全部入っていて、稽古場にも早く入って。稽古が終わった後に女性陣がまた稽古しているのを、僕はずっと見ていました。
朝海:その時は女性3人一緒のシーンが多かったので、3人でああでもない、こうでもないとやってみて、次の日に栗山さんに見てもらっていましたから。私たちの稽古の後、生成くんはずっと夜遅くまでひとりで稽古をしていたでしょ?朝も早く来て稽古していましたね。
平埜:していましたね。

―栗山さんの稽古は短いと有名だとは聞いていましたが…
朝海:栗山さんの稽古は3~4時間ですね。
平埜:ちょうどその前に出演していた栗山さん演出の『DISGRACED/ディスグレイスト −恥辱』でも、稽古が終わるとサッと帰って、次の日に各々が家でいろんなことを考えてきたことを出す…という稽古でした。僕はそれができなくて、「これがプロの現場なのか!」とも思っていたところだったので、朝海さん達がずっと自主稽古をされていて、もうびっくりしました。僕が今までに舞台をご一緒した中で、一番たくさん稽古をされるのが朝海さんのような気がします。
朝海:私たち3人が稽古をしている時、生成くんはひとりで隅の方にいて、「この後、生成くんはまたきっと一人で稽古をするんだな」と思っていました。
平埜:稽古場では、まだお互いに名前を呼んでいなかったですよね。
朝海:うん、うん。
平埜:名前を呼ぶチャンスがなかった…。
朝海:なんか声を掛けちゃいけない…という感じがするくらい、生成くんの山田太郎という役が大変だったですね。

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―その『私はだれでしょう』はとても高い評価を得て、平埜さんは2017年上半期の読売演劇大賞優秀男優賞候補にもなられた。井上ひさし作品への出演は、平埜さんにとって?
平埜:大きなものですね。夏目漱石の『こころ』と井上ひさしの『日の浦姫物語』が同じような感覚がするほど、僕の中で井上ひさしは偉人的な存在なんです。『私はだれでしょう』に出演させて頂いて、戯曲を読んで僕自身が演じてみて、作品の中のアイデンティティーや考え方について世界が広がりました。栗山さんの力もあって、作品への向き合い方も教わりました。だから、今回また井上作品に出演できるのが、とても嬉しいです。
朝海:Yes! We can!
平埜:楽しみです!

―朝海さんは『しみじみ日本・乃木大将』『國語元年』『私はだれでしょう』と井上作品に出演されるのは3作目 ですね。
朝海:私も井上作品が大好きで、こまつ座の公演を観たのがきっかけで「やっぱり女優をやっていこう」と思いましたし、「こういう作品に出たい」と強く思いました。「こういう舞台に出られる女優を目指してやってみよう」と思ったので、こまつ座がなかったら、私は今、女優をやっていなかったくらいだと思います。
平埜:そう思った作品に、自分が出演するなんてスゴイですね。
朝海:『國語元年』に出演していた時は「わぁ~私、やっている!」と、あの世界に自分が存在できることが嬉し過ぎて、フワフワしていました。いろいろな作品にも出させて頂きながら、この井上ひさしワールドに出演させて頂くことが、これからも私の目標であり支えです。

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―そして、今回、朝海さんは日の浦姫を、平埜さんは2役を演じられますね。
平埜:壮大な時間軸で物語がすすんでいく作品で「映像とは違う、舞台だからできる。それが舞台の面白みだ」と思う作品です。僕が演じるのは、15才からと30代半ば頃までの2役。脚本を読んで「20代後半に差し掛かった今の僕が演じるのにぴったりだ」と思いました。だから「今を逃したらできない役になってしまうだろう」とも感じましたね。
朝海:私は日の浦姫の若い頃から、自分の今の年齢を超えた位まで演じることになりますね。どうなるんでしょう?(笑)
平埜:もともとは井上さんが杉村春子さんに書かれた戯曲ですよね。初めて読んだ時は「舞台に立つ女優なら、その演技力で変幻自在に年齢を超えてできるはずだ」という女優への挑戦状なのかと感じました。あ、今、プレッシャーを掛けましたか?(笑)
朝海:ただでさえプレッシャーを感じているのに、やめて欲しいわ!(笑)私もぴったりとは言わないけれど、どの作品でも年齢を経ていろいろな経験するのは大切だと思います。
平埜:この作品は“井上ひさし版女の一生”みたいなところがあって、女性ならではの経験を経てこそたどり着ける境地…という気がするので、朝海さんの宝塚歌劇団から始まったキャリアを含め、ぴったりだと思います。
朝海:ありがとうございます。がんばります!またプレッシャー掛けられてしまった。(笑)
これだけやりがいのある作品は、本当に嬉しいですね。今回、ご一緒させて頂くのは、生成氏、たかお鷹さん、岡本温子さん以外は初めての方ばかりなのですが、みなさんでしっかり稽古したいですね。
平埜:鵜山さんはどんな演出をされるのでしょうか?ディスカッションなどしますか?
朝海:作品によって違うかもしれませんが、初めはしっかり本読みをして、じっくり話をしてくださいますよ。
平埜:井上さんの生い立ちにもキリスト教の影響があったそうですが、『日の浦姫物語』もキリスト教のグレゴリオ伝説がきっかけとなったそうですね。僕は宗教についてあまりわからないのですが、「懺悔すれば許されるのか」という話は気になっているので、座学があったらいいなと思っています。そんな話がでなくても、質問しようと思っています。(笑)

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―本作は時代劇ですが、平埜さんは時代劇がお好きなんですよね?
平埜:読むのが好きです。この作品は時代劇とはいうものの、先ほどお話したように海外の伝説や、白雪姫の話が入っていたりして、すごく分かりやすくて面白い作品です。僕はU-30というチケットに、とても魅かれています。僕は今まで、すごくお世話になってきました。
朝海:ありがたいですよね。30才以下の方にはお安く観て頂けるので、いっぱい観て欲しいですね。

―U-25というのもありますが、U-30は貴重ですよね。
平埜:貴重です!なので、演劇を観たことがない方に観て頂けたら嬉しいなぁ。僕はももいろクローバーZのファンなので、モノノフさんたちにも広まるといいなと願っています。
朝海:なぜ「モノノフ」というの?
平埜:主君(ももクロ)の元に武士(モノノフ)が集うという意味だったと思います。勉強したんですけど…、細かくは忘れちゃいました!(笑)子供たちや中高生にも観てもらいたいです。僕は演劇を観ていろんな世界を知って人生が変わったので。是非、観に来てほしいです!
朝海:前回、蜷川さんの演出で『日の浦姫物語』をご覧になった方も、鵜山さんの演出でどういう見せ方をするのか、楽しみにして頂きたいと思います。そして、なにより井上ひさしの言葉を存分に浴びて頂きたいです。とはいえ、今回、難しいことはいっさい無く、感情に訴えてくることが多い作品です。ふらっと劇場に観に来て頂きたいです。

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A4 チラシ表

井上ひさしメモリアル10
こまつ座第129 回公演 『日の浦姫物語』

作:井上ひさし
演出:鵜山 仁
出演
朝海ひかる 平埜生成
石川 武 沢田冬樹 櫻井章喜 粟野史浩
木津誠之 川辺邦弘 宮澤和之 越塚 学
赤司まり子 名越志保 岡本温子
たかお鷹 毬谷友子 辻 萬長  ※「辻」は一点しんにょう

公演日程 2019 年 9 月6 日(金)~23 日(月・祝)
会場 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
入場料 8,500 円(全席指定・税込み) U-30 5,000 円(観劇時30 歳以下)
発売 こまつ座 03-3862-5941 http://www.komatsuza.co.jp/
※上演時間:3 時間予定(休憩あり)
※開場は開演の30 分前です。
※当日券:開演の1 時間前に劇場入口にて発売

スペシャルトークショー
★9 月09 日(月)1:00 公演後 鵜山仁(演出家)
★9 月13 日(金)1:00 公演後 朝海ひかる・平埜生成
★9 月19 日(木)1:00 公演後 辻萬長・毬谷友子・たかお鷹

 

ヘアメイク:安海督曜[平埜]
スタイリスト:村留利弘(Yolken)[平埜]