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21歳への節目となる舞台  『夢の劇~ドリーム・プレイ~』  早見あかり インタビュー

2016年4月12日よりKAAT神奈川芸術劇場で上演される『夢の劇~ドリーム・プレイ~』で初舞台、初主演をつとめる早見あかりにインタビューする機会を得た。

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描かれるのは、神インドラの娘アグネスが、眼下の世界=地上を旅して、さまざまな人々と出会う物語。
演出の白井晃から「アグネス役には早見しかいない!」と熱望されての出演となる。

我々の前に現れた早見あかりは、神の娘という役に相応しい透明感のある美しさと、21歳らしい爽やかなエネルギーにあふれていた。
この美しさを目の前にすることができる舞台なら、それだけで観に行くに十分過ぎる理由だ…とミーハーな考えが頭をよぎったことを、まず正直に白状しておこう。同性に厳しいはずの女性記者が言うのだから、まちがいない。

だが、それだけではなかった。
彼女の言葉は真っ直ぐで、ビンビン心に響いてくる。そしてその姿勢からは、21歳とは思えない凛とした潔さが感じられた。
「この人の舞台を観たい!」「この人が演じるのを…変わっていく姿を見たい」そう思わされて、女優・早見あかりにすっかり魅了されたインタビューとなった。

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― 初舞台とのことですが、今までに見た舞台作品の中で面白いと思ったものは有りますか?
「面白いな」とか「すごいな」とは思うんですけど、「そこに立ちたい」と思ったことが今までありませんでした…。

― それが今回どうして?
なんで今ここにいるのか、イマイチ自分でも分かってないんですけど、なんか…ね、こうなりました。(笑) 正直よく分からないのです。

― お稽古はまだですか?
昨日、一昨日と白井さんとマンツーマンで稽古をして、今日初めて皆さんと顔合わせをして、本読みをしました。明日から1ヶ月みっちり稽古になる感じですね。

― 2日間白井さんと一緒だった感じは如何ですか?
なんか、どうなっていくんだろうという気持ちが大きいのと、滑舌と発声の練習を細かくしていただいて「喉をつぶさなければいいな」という気持ちです。(笑)

― 今回の舞台は“ホール内特設ステージ”となっていますが・・・
私たちもまだよく分かっていないのですが、ダンスするかもしれないし、ダンサーさんたちもお芝居するので、なかなか変わったお芝居にはなると思います。普通は舞台があって座席から見ますが、座席が三方向から舞台を囲むので、一方向に対して見せれば良いわけではなくなってくるので、大変だなと思っています。

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― 白井さんの演出で舞台に立たれた俳優さんが「吐きながら稽古したけれど、終わったら幸せで白井さんが大好きになった」とおっしゃっていました。白井さんは厳しそうですか?
私に対しては、今のところ優しいですね。これからどうなっていくのかわからないですけど、今回のキャストの皆さんには「白井さんの舞台が最初ってことは、今後それより辛い事はないと思うから大丈夫だよ」って言われました。(笑)
最近は「初めて舞台出るんでしょ?演出誰?」って聞かれて「白井さん」と答えると「あ…白井さんなんだ。頑張ってね。大変そうだけど…」みたいな事をよく言われていたので、やっとその意味が理解できました。でも、今のところ私には優しいです。最初からグイグイきちゃうと「わ~!」ってなっちゃうのもわかってもらえてるんだと思います。(笑)
記者発表で私が泣いた時も、それまでは私のことを「すごく強い人間だ」って思っていらしたみたいで「あ、普通の人なんだと思った。心が色んな感情を持っているんだって気付けたからよかった」って言って下さいました。
「僕が指名してあなたを選んだんだから、ダメだった時は僕のせいにしてくれればいいから。『白井さんが選んだんじゃないですか。私は悪くないです』って気持ちでやってくれればいい」って言って下さったので、それくらいの気持ちを持ちつつ…ですね。

― 白井さんは早見さんのどこがいいと思って選んだかを分析されましたか?
白井さんは「アグネスは神の子で、見た目は大きい体をしているけど、人間界の事を何も知らない。お父さんのインドラは神で、人間界の色んな事を知っているけど『見て来れば?』って言う感じで、アグネスを人間界に送り出して繰り広げられる話です。普通の大人だったら「コレは言ってはいけない」とか考えて一回飲み込んで抑える言葉も、アグネスは言ってしまう。でも、それがイヤミでもない。アグネスってそういう子だと思うところがあって、早見さんにもそういうところがあると思った」とおっしゃっていました。私も「はい。(そういうところが)あります。」って感じです。「白井さんとは一度もお会いしたことはなかったのに、どうしてそこまで見えるんだろう?」って思いましたが、大人の人が「当たり前だ」って思うことが、私は子供の頃からそうは思い込めないことがあって…。例えば「信号がなぜ赤・青・黄色なのか」がすごい気になっちゃうんです。それをまた、平気で口に出しちゃうから、変な子扱いされるんですけど…。そんなところを見抜かれてしまったようで「白井さんすごい」と思いました。

― それでは、早見さんの新たな姿が見られるかもしれませんね。
そうですね。最初に頂いた台本より、新しくいただいた今の台本はだいぶ分かりやすくなって、私の頭でも読解できるようになってきています。ト書きが入ったことで分かりやすくなったのだと思うんですけど、最初読んだ時にはなんの脈絡もなく動いていくから「訳がわからない」って思ったのですが、結局ひとつひとつを見てみると、普通の人間の会話にアグネスが「何で?どうして?」って言っているだけ…みたいなのです。白井さんに「夢の世界って脈絡なく動くから不思議だって思うけど、考えてみたらただの会話なんだよ」って言われて「確かに!」って思ったのです。アグネスのとらえ方も、簡単に言えば【純粋に「何で?」と思ったことを「何で?」と聞いちゃう子】だと考えるようになってから感覚としてやりやすくなったと思います。

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― 舞台・映像に限らす、役を貰ったら、役になってしまうほうですか?それとも、「今から!」という切り替えできるタイプですか?
「今から!」です。映像も写真のお仕事もそうですけど、カメラの前に立つまでは、適当にへらへらふらふらしていても、カメラの前では、スッとするタイプです。お芝居の撮影でも、人殺しの役で返り血を浴びていても、お昼を平気で食べたり、そこらへん普通に歩いたりして周りの人がビックリするみたいな。(笑)

― 精神的にタフなんですね?
どうなんでしょうかね?そっちに寄っちゃうとダメになっちゃうのが分かっているから、そっちに寄らないようにしているのかもしれないですね。役が乗り移る人がいらっしゃるじゃないですか。それって凄く辛いと思うから、そんな思いしたくないので。

― 舞台は1ヶ月同じ事をやらなくてはならないのですよね。プラッシャーなのでは?
そうですね。プレッシャーもですが「私は飽き性なので大丈夫なのかな?」って心配しています。そして台本を覚えるのが凄く早いんですけど、抜けるのも早いんです。朝から一日中コントの練習をして、夜に本番って言う番組を5年間やっていて、朝から台本を見てすぐ台詞を覚えることができるんです。でも、台詞を覚えて台本手放しちゃうと、2回くらいやったら段々と抜けてくるんです。(笑)すぐ覚えてすぐ忘れちゃうんで「本当にこの仕事に向いている頭だな!」って、映像には向いてると思っていたんです。でも、舞台となると丸々2ヶ月間同じ事をずっと繰り返すってこと。一旦覚えた台本も抜けちゃうんじゃないかと心配なんですよ。

― それはそのコントの現場で鍛えられた才能かもしれませんよね?だから、これからまた新しく違うところが発達するかもしれないですね。
そうですね。そうなって欲しいですし、そうならないと困るなと。毎回忘れて毎回覚えなおしになっちゃうと辛いから。皆さんには「嫌でも覚えるよ」って言われるんですけど、やり続けて、嫌でも覚えてから段々抜けていったらヤバイなぁ…って思っています。(笑)私の頭はどんどん抜けていくような仕様になっているので、いつものスイッチは切り替えないと…。(笑)新しい引き出しが増えるといいですよね、きちっと保存できるような。(笑)

― いよいよお稽古が始まるという事で、改めて声を掛けられたことってありましたか?
発声などは二日間やった後の本読みだったので「最初に会ったときよりは良かったよ」と言って頂けたんですけど、「アグネスが何も知らない子だったのが、人間界を知って人間になっていく様をどういうような声のトーンだとか、お芝居の仕方で切り替えていくのか…みたいな細かい事は、今後付けていこうね」って言われました。

― この舞台は、早見さんにとって大きなステップになりそうですね。
よくよく考えてみると、もう21歳。20歳の最後から21歳に変わるときに稽古をして、21歳での初めての仕事がこの舞台なんだなって思っています。21歳への節目にあるんだと。

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― 今回は「夢の世界が舞台」ということですが、早見さん自身が忘れられない夢や繰り返し見てしまう夢ってありますか?
あります!すごく残酷な夢で、疲れたときに見る夢があります。小さい頃から引越しをしているのですが、夢に出て来る家はちゃんとその度に変わっていくんですけど、内容は毎回一緒なんです。何か黒い影みたいなのに襲われるんです。家の玄関の鍵を閉めてチェーンをかけるんだけど、それをチェーンソーで切られる。切られてドアをバーン!と破って、誰かが入ってきて、母親と妹が襲われて、その後に私のところに来たところで目が覚める…って言うのを小さい頃から何度も見ています。疲れている時とか、現実逃避したい時なのか、そういう時に見るので「夢って怖いな」って思っています。現実には起こらないことだと思うので、夢の世界って自由って言うか、ある意味、私への暗示なんだろうなって思っています。

― たくさんのお話をありがとうございました。最後に…今回の舞台で「私のココは見逃さないで!」と思うところはどこですか?
う~ん、どこなんだろう…。他のキャストの皆さんは一人何役も演じるんですけど、私はアグネスだけで、ずっと出ているので…「どこも見逃さないで!」って言う気持ちです。(笑)

― ダンスもあるかも?
まだ何も言われてないんですけど、あるかもしれないし、ないかもしれない。個人的には踊りたいですけどね!3歳から踊っているので「出来るんだったら躍らせてくださ~い!」って言う気持ちです!(笑)

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早見あかり(はやみ あかり)
2011年ももいろクローバーのサブリーダーを経て女優に転身。
主演映画『百瀬、こっち向いて』『忘れないと誓ったぼくがいた』、主演ドラマ「ラーメン大好き小泉さん」など話題作に出演。14 年、NHK連続テレビ小説『マッサン』での妹役を演じ、一躍注目を集める。
15年秋には人気ドラマ『MOZU』のスピンオフドラマ『大杉探偵事務所』、16年1月NHK木曜時代劇『ちかえもん』に出演。CM、MVへの出演でも話題を集め、今、最も期待されている若手女優のひとり。
本作が本格的な舞台に初挑戦、初主演となる。

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【story】
神インドラの娘アグネスが、雲のてっぺんに立って、眼下の世界=地球を見ている。そこは、月に照らされた陰気な世界。父はアグネスに、地上へ降りて人々の不満や嘆きを見聞きしてこい、と娘を送り出す。地上に降り立ったアグネスは、恋人を一途に待ち続ける士官、来る日も来る日も劇場の入口に座り続ける楽屋番の女、自分が扱った犯罪・悪行を反映し苦悶に満ちた弁護士など、苦難に満ちた人間たちと出会い、人間の存在の痛みを経験しながら成長していく。しかし、それらは現実なのか、夢なのか・・・
そして、ついにアグネスが天空へ戻る時が訪れる。それはまるで、人が“夢”から目覚める合図のようにも見えるのだ。

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<INFORMATION>
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『夢の劇-ドリーム・プレイ-』
原作 ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ
構成・演出 白井晃
台本 長塚圭史
振付 森山開次
作曲・編曲・演奏 阿部海太郎、生駒祐子、清水恒輔、トウヤマタケオ
音楽ディレクション mama!milk
出演 早見あかり 田中圭 江口のりこ 玉置玲央 那須佐代子 森山開次/
山崎一 長塚圭史 白井晃
久保貫太郎 今里真/宮河愛一郎 高瀬瑶子 坂井絢香 引間文佳
公式サイト http://www.yumenogeki.jp/

[神奈川公演]2016年4月12日(火)~30日(土)KAAT神奈川芸術劇<ホール内特設ステージ>
[松本公演]2016年5月4日(水・祝)・5日(木・祝)まつもと市民芸術館実験劇場
[兵庫公演]2016年5月14日(土)・15日(日)兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
[制作協力]ゴーチ・ブラザーズ、オフィス・REN[企画・製作]KAAT神奈川芸術劇場