人を笑わせることに命をかけた喜劇俳優・榎本健一の波乱の人生を 又吉直樹 が新作戯曲として書下ろし、市村正親 が主演、榎本健一を演じる新作舞台 音楽劇 『エノケン』。
10月より上演されるが、すでに東京公演が完売状態で、東京での追加公演が発表された注目作品の製作発表会見が7月29日に都内で行われた。
出演する 市村正親、松雪泰子、本田響矢、豊原功補が扮装にて、そして作の又吉直樹、演出のシライケイタも登壇した。
豊原功補 本田響矢、松雪泰子、市村正親 又吉直樹、シライケイタ
榎本健一は、、“エノケン”の愛称で親しまれ「日本の喜劇王」と謳われた喜劇俳優。浅草の小さなレビュー劇団から、数々の喜劇映画を通じて全国区の人気者となり、戦前・戦中・戦後……と、昭和の日本をとびきりの笑いで照らしつづけた。その波乱の人生を新作戯曲として又吉直樹が書き下ろしたのが本作。
『私の青空』をはじめとした名曲はもちろん、更に、和田俊輔が作曲するオリジナル楽曲もバンドによる生演奏でお届けする。
会見は
市村正親による歌唱披露 ♪「私の青空」から始まった。
♪「私の青空」は。昭和のはじめ、モダン文化が花開いた日本に、アメリカ生まれの名曲『My Blue Heaven』として渡ってきた楽曲。エノケンの歌う『私の青空』は、翻訳にとどまらず、日本の庶民のささやかな幸せを歌った名曲として知られている。市村の歌う♪「私の青空」も、軽妙でありながらしっとりとした響きをもつ。劇中でどのように歌われるのか、楽しみな名曲となった。
演奏:和田俊輔(作曲・音楽監督)
又吉は「僕は1980年生まれなので、榎本健一という人のことは伝説として知っているくらいだったんですけど、この脚本をするにあたって、資料とか映像を色々見てるうちに年表だけではわからない、芸人としての姿を含めての生き様にどんどん魅了されてきました」「榎本健一さんがそこにいるだけで、みんながついつい注目してしまう、誰かと同じことやったとしても、違うように見えて、好きになってしまう。言語とか理屈みたいなものを超えた何か魅力があるんじゃないかなというところに1番惹かれた」と明かした。
シライは本作に「自分は賢い人が叱られるような作品は作りたくない。誰もが笑える人間の血の通った作品を作りたいんだ。客を緊張させてもしょうがない、自分が馬鹿をやらなければ始まらない。全部ひっくるめた人間の営みを表現したい」というようなエノケンのセリフがあるとして「これがこの作品のテーマだと思っていますし、みんなで力を合わせてそういう作品を作りたい。現代によみがえらせたい」と語って、強い意気込みを感じさせた。
市村はエノケンについて「役者として非常にこう魅力があるし、尊敬するとこがあります」「笑かそうと思って笑かすんじゃなくて、真剣に生きてることが笑いに繋がるのは、僕らの芝居と一緒だなと思う。そういう意味では、エノケンの話なのか自分の舞台人生の話なのかわかんない。市村という役者がエノケンの中に入り込んで、いい人生を生きられたらいいな」と思いを語った。
エノケンの前妻と後妻の2役を演じる松雪泰子。「2役を交互にしていくと思う」「1分とかで早替え」と明かすと、市村からは「大変だよね」「イリュージョンの世界だよ」との声がかかった。また松雪の歌唱もあるとのこと。これも楽しみだ。
エノケンの息子とエノケンの劇団員の2役を演じる本田響矢は、本作が2018年以来7年ぶりの舞台。「大先輩のエノケンさんと、父としてのエノケンさんと2つの視点から見ることができるが楽しみと、大先輩方と一緒にお芝居ができる、こんな幸せはない」「脚本を読んで笑いました。エノケンさんの生き様みたいなものが、すごく色濃く深く書かれていたので、現場に入って一緒に演じさせていただくのがすごく楽しみ」と語った。
また昨年は連続テレビ小説『虎に翼』に出演し注目された本田。「学生の頃から会っていた友達のお母さんからサインを求められる日が来るなんて」と、影響の大きさを明かした。
エノケンの座付き作家・菊谷榮を演じる豊原功補は「菊谷という脚本家は、酒場で飲んでる席でエノケンと知り合って信頼を得て座付き作家となり、その後戦地へ向かう。今年で戦後80年になり、喜劇を書くことと戦争の狭間の中の人間をどう演じようかなと。責任重大だと思っております」と語り、本作の深いテーマを感じさせた。
囲み取材では「賑やかな、ほんとに今の時代では味わえない、コンプライアンスって言ってられないような内容になるんじゃないでしょうか」と言った豊原。「豊原さんは昭和どっぷりという感じですか」と問われて、「いや、自分ではそんなつもりないんですけどねえ」と答えるも、「豊原さんの昭和ぽいところは?」と問われた市村からは「胡散臭いところ」と言われて、会場は大爆笑。苦笑いしていた豊原だった。
東京の追加公演は10月16日(木)18時から。芝居に歌に笑いと盛りだくさんの本公演をお見逃しなく。
音楽劇 『エノケン』
作:又吉直樹
演出:シライケイタ
作曲・音楽監督:和田俊輔
演奏:和田俊輔 三國茉莉 藤吉 悠 矢尾拓也
出演:市村正親、松雪泰子、本田響矢、豊原功補
小松利昌 斉藤 淳 三上市朗
【東京公演】2025年10月7日(火)~26日(日) 日比谷 シアタークリエ
【大阪公演】 11月1日(土)~9日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
【佐賀公演】 11月15日(土)~16日(日) 鳥栖市民文化会館 大ホール
【愛知公演】 11月22日(土)~24日(月祝) 名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール
【川越公演】 11月28日(金)~30日(日) ウェスタ川越 大ホール