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総合芸術としての新しいミュージカルが誕生!ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』とにかく目が足りない!舞台写真&観劇レポート

荒木飛呂彦原作のシリーズ累計発行部数1億2,000万部を誇る国民的大人気コミックシリーズ「ジョジョの奇妙な冒険」(集英社ジャンプ コミックス刊)。
その第1部「ファントムブラッド」を原作に生まれた新作ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』を帝国劇場公演にて、ジョナサン・ジョースター(以下”ジョジョ”)役を有澤樟太郎、ウィル・A・ツェペリ役を東山義久が演じた回を観劇した。

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(左)ジョースター卿役 別所哲也 (中央)”ジョジョ”役 有澤樟太郎(右)ディオ・ブランドー役 宮野真守
製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社

演出・振付を担う長谷川寧が製作発表会見で「ザ・ミュージカルだけの演出家ではないので、また違ったアプローチで新しいミュージカルを作っていこうと思っています」と宣言したとおり、豪華なキャスト陣と気鋭のクリエイター陣の総力を結集。ゴージャスなエンターテインメント作品が生まれていた。

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製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社

【レポート】
観客の期待の大きさ故か、開演前の客席は初日を待つような静けさが張りつめていた。そして意外にも公演も静かに始まった。
だが物語が過去(ジョースター卿とダリオの出会い)から現在(ジョナサンとディオの出会い)に戻った頃からだろうか。熱く加速し始める。芝居と歌、ダンスがシームレスにつながり、名場面・名セリフの数々が圧倒的な熱量で繰り出される。
双眼鏡で俳優に集中し物語を追うのか、物語の世界観を生み出す大きな舞台全体を見るのか。目移りし続けることになった。

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製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社

双眼鏡を使って見ると、成長していく“ジョジョ”、大きく変わっていくディオを筆頭に、プリンシパルキャストたちのキャラクターが生き生きと躍動し、目が離せなくなる。ノンパーバルを得意とする長谷川寧が振付・演出しただけに、セリフはもとより、さりげなく見える動作ひとつにも、深い意図があるはず。その目の動きひとつ、身体の傾きひとつに宿る心情に思いをはせてしまう。原作やアニメファンには、より深く伝わるものがあるに違いない。

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製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社

だが双眼鏡に見入ってしまうと、帝国劇場の大舞台を横に縦に見事に使いきって世界観を生み出す美術、場面を象徴するような色使い、次々に繰り出される仕掛けや演出の数々(とネタバレを避けるために言っておこう)を見逃してしまいそうになる。(実際、幾つも見逃してしまったに違いない)これはどんな座席位置でも、同じ悩みを抱えそうだ。

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下中央)ウィル・A・ツェペリ役 東山義久(Wキャスト)
製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社

アンサンブルキャストがプリンシパルキャストを囲んでの群舞シーンも見逃せない。舞台両袖の高みに位置したバンドが、音源だけでは生み出せない生を響かせ、アクションと融合して擬音語を体感させてもくれる。だが一人ひとりの動きの美しさ、キレ、振付に見とれていると、シンクロする群舞のワクワク、圧巻のエネルギーを体感しそびれる。とにかく目が足りない!

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(右)エリナ・ペンドルトン役 清水美依紗
製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社

音楽を手掛けるのは、『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』『ロックオペラ モーツァルト』等、大人気作品を生み出してきたミュージカル作曲家ドーヴ・アチア(共同作曲:ロッド・ジャノワ)。その楽曲は、とても耳馴染みがいい。芝居と歌、そしてダンスまでもシームレスに繋がって「突然歌い出した⁈」という不自然さを感じさせない。
だが、時に“ジョジョ”の、ディオの心の叫びを乗せたメロディは、耳馴染みよさをするりとかわすような“リズム”を挟み、これでもか、これでもかというほどの“高い音域”を攻めてくる。だからこそ、叫びが胸に突き刺さる。
エリナの透き通る歌声、スピードワゴンのラップも加わり、ミュージカルらしい贅沢さも、ミュージカルっぽくない楽しさもふんだんに味わえた。
まさに長谷川寧の言葉どおり、これまで観たことがない“新しいミュージカル”、“いろいろなジャンルを掛け合わせた総合芸術”だと思った。

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(左)切り裂きジャック役 河内大和  (右)ワンチェン役 島田惇平
製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社

一幕95分、休憩25分、二幕90分の公演時間で物語は怒涛の展開を見せ、メインストーリーを描ききる。
カーテンコールでは満面笑顔のキャストたちが、総立ちの観客の万雷の拍手に迎えられた。”ジョジョ”役の有澤樟太郎とディオ役の宮野真守が、笑顔を交わし互いの肩をたたき合う。観客の高揚感も非常に高く、あちこちからステージに声が飛び、歓声が上がる。最後は、ステージと客席との仕切りが取り払われたかのような不思議な一体感に包まれての終演となった。

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製作:東宝 ©荒木飛呂彦/集英社


ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』

【東京公演】 帝国劇場 2024年2月28日(水)にて終了
【全国ツアー公演】
札幌文化芸術劇場 hitaru2024年3月26日(火)~3月30日(土)
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール2024年4月9日(火)~4月14日(日)
ライブ配信:4月13日(土)17:00兵庫公演、14日(日)12:00兵庫大千穐楽公演
ライブ配信サイト:https://www.tohostage.com/jojo/stream.html

原作:荒木飛呂彦
「ジョジョの奇妙な冒険」(集英社ジャンプ コミックス刊)
演出・振付:長谷川寧
音楽:ドーヴ・アチア
共同作曲:ロッド・ジャノワ
脚本・歌詞:元吉庸泰
音楽監督:竹内 聡
出演者
松下優也/有澤樟太郎 (Wキャスト)宮野真守 清水美依紗 YOUNG DAIS 東山義久/廣瀬友祐(Wキャスト)
河内大和、島田惇平、コング桑田、別所哲也 ほか

製作:東宝
©荒木飛呂彦/集英社
ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』
公式サイト:https://www.tohostage.com/jojo/