本日、2025年6月28日(土)より世田谷パブリックシアターで舞台『みんな鳥になって』が開幕。27日に出演する中島裕翔、岡本健一、岡本玲が登壇しての取材会と、プレスコールが行われた。東京公演は7月21日(月・祝)まで。その後、兵庫・愛知・岡山・福岡にて上演される。
本作は、ワジディ・ムワワドが2016年にパリ・国立コリーヌ劇場の芸術監督に就任する際に発表し、その後も再演を繰り返してきたムワワドの代表作のひとつ。
作家ワジディ・ムワワドは、1975年のレバノン内戦を逃れ、家族と共に8歳でフランスへ亡命するも、その後、滞在許可証の更新が拒否され、フカナダのケベック州へ移住。国立演劇学校卒業後はカナダ国内で創作活動を続け、彼力強い作品群は徐々に世界的に注目を集め、とうとう2016年にパリの国立コリーヌ劇場の芸術監督への就任を果たす。
その記念すべき就任第一作目が本作。ムワワドの人生の集大成ともいうべき密度の濃い作品として高い評価を受けている。
これまで、ワジディ・ムワワドの戯曲『炎 アンサンディ』(2014/17)、『岸 リトラル』(2017リーディング/2018)、『森 フォレ』(2021)を、上演を重ねてきた世田谷パブリックシアターで、前3作と同様に、上村聡史が演出を手掛ける。
【プレスコール】公開されたのは2つの場面。まずはオープニング。
ニューヨークの図書館。イスラム史を学ぶアラブ系アメリカ人のワヒダ(岡本玲)に、突然声をかけてきたのがユダヤ系ドイル人で遺伝学を学ぶエイタン(中島裕翔)。
機関銃のごとく、中島の長セリフが続く。エイタンの「見つけた!」という喜びにあふれた表情に、恋の予感があふれる。
2シーン目は、エイタンの家族が集まっている過ぎ越しの祭を祝う食事会。
母・ノラ(那須佐代子)、アウシュビッツを生き延びた祖父・エトガール(相島一之)、父・ダヴィット(岡本健一)、ラビ(伊達暁)が揃う。
「愛しているから」と訴えるエイタンだが、母も、敬虔なユダヤ教徒の父ダヴィッドも、ワヒダとの結婚を認めない。
【取材会】
「本当に最初に台本もらった時は難しいな、こんな役が僕に果たして務まるだろうかと不安がたくさんあった」と中島。だが「まさに、今、現在進行形で起きている問題を取り上げている作品でもあります。自分の役に対しても、それぞれの役に対しても、それぞれにドラマがあって、苦しさだったり、もどかしさみたいなものを抱えてるキャラクターばかりなので、もらった時とはだいぶ印象が変わったな、1人1人すごく立ってきたなっていう感じです」と初日を迎える気持ちを述べた。
岡本健一は「プレスコールで見ていただいたオープニングのシーン、この若者2人から始まります。そこのやり取りが本当に新鮮で、ちょっと初々しくて、すごく心がときめく、若い恋愛というか、初恋というか、初めての恋みたいな、出会った2人の愛に溢れた場面からはじまり、そこは素敵なんです。そこから稽古が始まって、それを見た瞬間から、これはもう確実にいけるな、自分もこの2人に乗っかっていこうと思って今に至ってるんです」と明かし「台本で書かれてる言葉がとても強くて、とても愛に溢れてて。自分のルーツっていうものを探ってみたりもありますし、刺激がいっぱい溢れている作品でもあるし、稽古場もエネルギーに満ちた時間だった」と、作品への愛を語った。
それに対して中島は「(オープニングは)唯一すごく幸せなシーンなんです。稽古場で皆さんからの『このシーン、いいよな』みたいな、期待をすごく感じるんですよ。健一さんも、すごい熱で僕にアドバイスしてくださったりして。皆さんも好きなシーンだってことが光栄ですよ」と笑顔で応じた。
演じたエイタン役について、中島は「エイタンが自分の実年齢より結構下なんですよ。だから自分が若い頃に大人に対してちょっと思っていた、若さのちょっと尖ってた時期が、ご覧になったシーンや家族のシーンでも出てます。台本を読んでいて、こんなことを自分も思っていたなと共感できました。後半になっていくと、それぞれが変わって、エイタンの成長物語でもあるので、そういうところも見ていただけたらなと思います」と語った。
中島と岡本の関係については「親子の役なので、息子に言ってくれてるような感じなのか、『ちょっと、あそここうしろよ』みたいな感じで、パパに言われてるなと」と中島が言えば、岡本が「うがいの仕方が間違ってるぞ」「グジュグジュをしてからうがいをしないと、菌が全部中に入っちゃうぞ」と指摘したエピソードを披露。中島は岡本と顔を見合わせながら「お父さんぽいところ、愛にあふれているところが健一さんだなと思います」と語り、深い信頼関係を感じさせた。
稽古場エピソードとして、岡本玲は「皆さん、ほんとに稽古場がお好きな先輩たちで、演劇愛に溢れた現場だったので、先輩方が稽古場に来るのもめちゃめちゃ早いし、帰らないんですよ。なので、若手の私もまだやろうって、どんどん、どんどん稽古場に居残る時間が伸びていった感じです」と話すと、中島も大きく頷いていた。
最後に中島が「まだ(チケットは)買えると。追加の席も出たらしいので、もう売り切れてるとあきらめないで、興味のある方はぜひ劇場にお越しくださいませ」と呼びかけて、取材会を終えた。
舞台『みんな鳥になって』
東京:2025年6月28日(土)~7月21日(月・祝)世田谷パブリックシアター
兵庫:2025年7月25日(金)~27日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
愛知:2025年8月1日(金)~3日(日)東海市芸術劇場大ホール
岡山:2025年8月8日(金)~10(日)岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
福岡:2025年8月15日(金)~17日(日)J:COM北九州芸術劇場 大ホール
【作】ワジディ・ムワワド 【翻訳】藤井慎太郎
【演出】上村聡史
【出演】中島裕翔、岡本健一、岡本玲、那須佐代子
松岡依都美、伊達暁、相島一之、麻実れい
※岡山、福岡公演については松岡依都美さんの出演に代わり渡邊真砂珠が出演
【スウィング】近藤隼 伊藤麗
【美術】長田佳代子 【照明】佐藤啓 【音楽】国広和毅 【音響】加藤温 【衣裳】半田悦子 【ヘアメイク】川端富生
【演出助手】渡邊千穂 【舞台監督】大垣敏朗
【ヒストリカル・アドバイザー】ナタリー・ゼモン・デイヴィス
【公式HP】https://setagaya-pt.jp/stage/25004/