
映画『時には懺悔を』の特別試写会&トークイベントが、8月17日、神奈川県・横浜市のムービルにて開催され、中島哲也監督と、本作のスペシャルニーズスーパーバイザーを務めた安田一貴氏が登壇した。
『下妻物語』 『嫌われ松子の一生』 『パコと魔法の絵本』 『告白』などで知られる中島哲也監督の8年ぶりとなる最新作『時には懺悔を』は、その難しいテーマからも映像化不可能と言われた、打海文三による傑作ミステリー小説を原作に映画化。重度の障がいを抱える子どもを通して、過去に大きな傷を負った大人たちが、今を必死に生きる“たったひとつの小さな命”と出会い、人生の活路を見出す“奇跡”の物語。
家族との不和を抱えながら生きる孤独な探偵・佐竹を、中島監督と初タッグとなる西島秀俊が演じ、同じく中島組に初参加で西島と初共演を飾る満島ひかり、そして、黒木華、宮藤官九郎、柴咲コウ、佐藤二朗、役所広司など、日本を代表する豪華俳優陣が終結。中島哲也監督が構想18年、全ての人に問いかける感動傑作がついに完成した。
本作では、物語の中で大人たちの心を動かしていく少年・新を演じるしんすけをはじめ、障がいのある子どもたち20名以上が、一人の“俳優”として映画づくりに参加しており、障がいのある子どもを実際にキャスティングし、長期間にわたる商業映画の撮影に参加するは、日本映画ではほとんど前例のない試みとなる。理学療法士の安田一貴氏は重度障がいや医療的ケアのある子どもの支援に関わる仕事を日本や海外で行ってきたほか、現在は重度障がいのある子どもの家族写真を撮るカメラマン活動と、デイサービスの現場と運営に従事している。

最初にしんすけくんに新役をオファーしたとき、「しっかり断られました」と苦笑いする安田氏は「今振り返ってみると、その子とご家族にちゃんと向き合えていなかったなということと、なぜ彼がいいのかというのを丁寧にお伝えできていなかったと反省しております」と述べながら「無理に出演してもらおうという気持ちは決してないのですが、断られた後も、監督やスタッフの皆さんが、“新役は彼以外なかなか考えられない”と話されていて。それだけ彼に魅力を感じているということを伝えるために、もう一度みんなで一緒に会うという機会を作りました。中島監督も同席してくださり、ご家族から彼が生まれてからこれまでのいろんな経緯や、向き合ってきた思いを丁寧に聞かせていただきました。その上で監督から改めて“なぜ彼がいいのか”を話していただき、出演を承諾いただきました。ご家族のお話を聞いて、この映画に重度障がいのあるお子さんを通して向き合っていくということの覚悟や思いが一段上がったタイミングだったかなと思ってます」と出演に至った経緯を説明した。
実際にご家族と会ったという中島監督も「しんすけくんがなぜ新という役に向いていると僕が思ったかということを正直にお伝えしました。彼の表情や動き、それから時々発してくれる声も、彼が新を演じてくれれば、いろんな大人たちに影響を与える重要な役として成立するだろうと思っていましたし。何よりしんすけ君が明るいんです。だから彼を見ていると、“生きているっていうことがすごく嬉しい”と本人が感じているように思える。僕らスタッフも彼を見てるとちょっと元気になれるんです。そのことを正直に、新という役にはしんすけくんキャラクターが必要なんだということを断られても仕方がないと思いつつ、正直にお話ししました。そしたら最終的には出演をOKいただきました」と振り返った。

また、この作品を映画として描く上で、最も大切にされたことを問われると、監督は「これまで重度の障がい児たちを演出する、カメラに収めるっていう経験は全くなかったので、安田さんはじめいろんなその介護に関するプロフェッショナルの方たちに随分助けられました」と感謝の気持を口にし、「僕が撮影中に彼らをどういう風に撮るか、どう扱うかって考えていたことは1つだけ。彼らの素の魅力です。彼らの素の表情、それをそのままカメラの前で彼らがやってくれることだけを心がけました。カメラ前では、スタッフが緊張する顔を見せず、カメラ前が楽しい、いつもと同じように伸び伸びと動いたり笑ったり声を出したりできる環境を作ることに徹しました」と答えた。
撮影で大変だったことについては、「僕ではなくて、安田さんはじめ周りでフォローをしてくれる介護や医療のプロたちだったと思います」とキッパリ。「それでも、皆さんは大変だということを絶対に僕には見せないんです。普通の俳優さんと仕事をするみたいに、時間になったらカメラ前に入ってもらってお芝居をして、終わったらアウトしてもらうっていうことが何の苦もなくできました。ほとんどの子たちがNGが少なかったですね。あ、楽しすぎたみたいで寝てくれなくて・・・“眠るシーン”が撮れないことがありました(笑)。むしろ大人のプロの俳優さんたちの方が少し時間がかかるみたいなこともしょっちゅうありました。だから役者として彼らはすごい一流だったと思います」と敬意を表した。
大人の俳優たちの気遣いにも感謝する中島監督。「それぞれの役者さんが自主的に、子どもたちとコミュニケーションをとってくれていて。それで子供たちもすごくリラックスして彼らとお芝居をすることができたんだと思います」と言い、「新と一番長くいる宮藤官九郎さんは、彼を抱いたりとか、寝返り打たせたりしなければいけないのですが、彼の役柄からそんなに丁寧にはやらない。でも、宮藤さんは本当に優しい人なので、『シンをちょっと乱暴に扱ってください』と言われても、なかなか抵抗あったんじゃないかな。本番ではちゃんとやってくれましたけど」と語った。

この日は、安田氏の母校である岩崎学園の横浜リハビリテーション専門学校で理学療法・作業療法を学ぶ学生をはじめ、卒業生や医療・福祉関係者など約200名が参加し、質疑応答も行われた。
映画を観た感想と、実際に福祉に関わるリアルな質問や将来の疑問など、多岐にわたって活発なトークセッションを展開。映像制作の分野からの質問もあり、「大人の俳優さんたちがいろんな場面でご飯を食べているシーンが印象的」と話すと、中島監督は「出演者の一人であった片岡鶴太郎さんが『生きるっていうことは食べるっていうこと』っておっしゃってました。その“食べる”ということを制限されている・・・この中では新ですが、口からものをだんだん食べられなくなっていく場面もあります。柴咲コウさんがなんとか食べさせようとするのに、息子が食べてくれないという場面もある。大人の俳優たちは生きるために食べますが、生きるエネルギーに溢れてる人はガツガツ食べるし、エネルギーを失いつつある人はあまり食べないということを考えながら演出していきました。すごく鋭いところを見てくださって、とてもありがたいです」と、参加者たちの反応に充実感を滲ませていた。
最後に、中島監督は「障がい児を扱った特殊な映画っていうことではなくて、普通の人間ドラマとして興味深い作品で、観終わった後にいろんな感情が人それぞれ全く違う感情が生まれてくる映画だと思います。自分はどう思ったかを話し合ってくださったりするとこが映画を作った価値がある気がします」とアピール。
安田氏は「まずは、子どもたちの新しいチャレンジの場面に出会った時に、僕ら専門職はどうしても“リスクがあるから”とストップしたり心配を先にしがちなんですが、そうではなく本人たちがやろうとしているのであれば、そこをアシストできるサポーター役になるのが僕たち専門職の大きな役割なんじゃないかなと思ってます。
そして今回、理学療法分野と、エンターテインメント、映画を掛け算してこのような新しい仕事に関わらせてもらいました。専門職って医療、福祉の中で留まって、その分野の中で自分の仕事完結しがちですが、もっと外に出て違う分野の人、新しい人たちと一緒に仕事をしていくことで、その先に見える可能性は凄く広いんです。それによって届けられる、子供たちや大人も含めて社会に還元できるような新しいチャレンジ、その子たちの挑戦の応援できるんじゃないかなと思います。ぜひ理学療法や自分の専門分野、得意分野に何を掛け合わせていくことも考えて仕事をするとまた一段面白くなってくるのかなと思います」と自身の仕事の在り方を示し、学生たちにエールを送った。

映画『時には懺悔を』
監督:中島哲也 『下妻物語』 『嫌われ松子の一生』 『パコと魔法の絵本』 『告白』 『渇き。』 『来る』
出演:西島秀俊 満島ひかり
黒木 華 宮藤官九郎
毎熊克哉 鈴木 仁 烏森まど 山﨑七海
唯野未歩子 野呂佳代 長井 短 しんすけ 山下舜太 諸角優空
柴咲コウ
塚本晋也 片岡鶴太郎 / 佐藤二朗
役所広司
原作:打海文三『時には懺悔を』(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:中島哲也 門間宣裕
制作:REMOW 制作プロダクション:さざなみ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2026 映画「時には懺悔を」製作委員会
公式HP:https://www.tokizan.jp
公式X/Instagram:@tokizan_movie
※注:塚本晋也さんの「塚」の字は、点ありの旧字 「塚」です。
8月28日(金) 全国公開
◆予告



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