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【METライブビューイング2025‐26】NYメトロポリタン歌劇場総裁に聞く!METの状況と今期の見どころ、将来への展望12/12からはミュージカル『RENT(レント)』の原案・プッチーニ《ラ・ボエーム》がMETライブビューイングに登場!

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《ラ・ボエーム》©Karen Almond /Metropolitan Opera

METライブビューイング2025-26の新シーズンが11月よりスタート、最初の演目である《夢遊病の娘》は、ライジング・スター、ネイディーン・シエラとシャビエール・アンドゥアーガのゴールデン・コンビによるエキサイティングな歌唱で話題を呼んだ。そして12月12日(金)からは、ミュージカル 『RENT(レント)』の原案にもなった、世界中で最も愛される超名作オペラ、プッチーニ《ラ・ボエーム》が、METライブビューイング2025-26新シーズン第2作として全国公開となる。

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《ラ・ボエーム》©Karen Almond /Metropolitan Opera

その伝統的で壮大な舞台装置と衣装を用いた豪華絢爛な豪華な演出は、映画『ロミオとジュリエット』でも知られる映画監督であり、オペラに偉大な業績を残した、20世紀を代表するイタリアの名匠、フランコ・ゼフィレッリによるもの。長年にわたり愛され続ける超人気の舞台を見逃さないでほしい。上映は12月12日(金)~12月18日(木)。※東劇のみ1/1(木)までの3週上映。

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Peter Gelb ©Paola Kudacki/Met Opera

2006年にスタートしたMETライブビューイングも2026年には20年という節目を迎える。現在のニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)の状況と今期のみどころ、そして将来への展望について、総裁のピーター・ゲルブ氏に話を聞いた。

――近年のMETは、斬新な演出家を次々と起用し、ヨーロッパで活躍し始めた話題の若手歌手をいち早く起用して、歌劇場全体が活気に満ちています。聴衆もここ10年ほどで大きく変化したのではないでしょうか?
ゲルブ氏(以下G): 確かに劇的に変わりました。若い聴衆が増え、多様性のある聴衆が増えた。そういう人たちに向けた企画が大成功しているのだと思います。でも芸術を企画するのは、リスクだらけ。成功に導くよう努力はするけれどギャランティーはないのです。
若い歌手については、いま若く素晴らしいアーティストたちが、波のように登場している。これはとても幸運なことです。私も同僚たちも、常に新しい才能を見つけようと努力しています。先日スタートしたMETライブビューイングの《夢遊病の娘》でも、シエラとアンドゥアーガ歌う舞台は、最高のベルカント公演だと思います。二人の歌を聴いていると、まさにオペラの新たな黄金時代の到来だと思いました。じつは企画したのは4,5年前のこと。二人が最高の歌が歌えるかどうか、未知のことでしたから、まさに幸運でした。

――今期のMETライブビューイングのラインナップは素晴らしい。なかでもゲルブさんお薦めの演目は?
G: どの演目でも、最強のアーティストを、というのを意識しています。ベルカント好きには《夢遊病の娘》と《清教徒》で、後者はリゼット・オロペーサが歌います。ヴェリズモ好きにはベチャワとヨンチェヴァが歌う《アンドレア・シェニエ》でしょう。ワーグナー好きには、過去3,40年で現れた最高のワーグナー・ソプラノ、リーゼ・ダーヴィドセンを是非聴いていただきたい。ロシアのレパートリーなら、アスミック・グリゴリアンがタチアナを歌う《エフゲニ・オネーギン》はマストでしょう。《ラ・ボエーム》は皆さまお馴染みの演目でしょうが、今回のキャストは本当に素晴らしい。ミミは、アスミックとは親戚ではないジュリアナ・グリゴリアン、弱冠20代の素晴らしい新星ソプラノです。テノールは、いま話題のフレディ・デ・トマーゾですから、プッチーニ好きには見逃せません。

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《ラ・ボエーム》©Karen Almond/ Metropolitan Opera

――指揮は、奥様のケリー=リン・ウィルソン。METライブビューイングは、初登場です。
G:ますます、素晴らしいでしょう?(笑い)
私の家内だからピットに入るというのではなく、オーケストラの人たちも、彼女との仕事を楽しんでいます。METでは《スペードの女王》や《ムツェンスク郡のマクベス夫人》も指揮しています。他の演目では、オットー・シェンクの伝統的な演出による《アラベッラ》、そして《フリーダとディエゴ 最後の夢》は、大成功を迎えるのでは、と期待しています。ガブリエラ・リーナ・フランクという新鋭の作曲家の新作です。想像もつかないシュールな作品で、メキシコの死人の日という、亡くなった方が1日だけ地上に戻ってくるという日。フリーダももう亡くなっているのですが、元パートナーのディエゴ・リベラに会いに来る。ある意味では《オルフェオとエウリチーチェ》の逆バージョンで、彼女は彼を未知の世界へと連れ帰る。死人ばかり出てくるオペラですが、最後はハッピーエンドなのですよ。

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《フリーダとディエゴ 最後の夢》©Zenith Richards/Metropolitan Opera

―ゲルブさんは来年就任20年を迎えられる。2030年までの任期延長も発表されましたが、今後5年間の展望をお聞かせ下さい。
G:これまで取り組んできた最も重要な2点を続けていくつもりです。1つは音楽監督のヤニック・ネゼ=セガンと共に芸術的に最高レベルを目標に前進する。そして新しいレパートリーを増やすこと。もちろん過去のものを大事にしながらですが。もう一つは、世界で最も大きな予算をかかえているMETの財政問題を改善していくこと。METは政府からの予算補助が殆どないので、どうやって改善するか、その糸口を探っていきたいです。

――ゲルブさんはこれまで多くの財政危機を乗りこえられてきた。アメリカの金融危機やパンデミック、いまはトランプ危機?も。
G:確かにいろいろな危機を経験してきました。いま我々が生きている世界は、決して安易な状況ではありません。アメリカ社会もどんどん変化しています。チャレンジングで困難な時期です。こんな時だからこそ、METをもっと成功させなければいけない。古代ギリシャの時代から芸術は社会の中で大きな役割を担っています。オペラは全ての芸術様式が詰まっているもの。こういう時代だからこそ、芸術が必要なのだと考えています。

―― 財政問題は世界中の歌劇場で最重要課題です。METは、2028年からサウジアラビアでの公演を8年間にわたり実施するという発表がありました。
G:数年間サウジアラビアの文化庁と話し合ってきたことですが、2028年2月、首都リアドに新しいオペラハウス(リアド郊外の古代ディルイーヤ地区に2000席のオペラハウスを建設中)が出来るので、我々にヴィジティング・レジデンス(アーティスト・イン・レジデンス)になって欲しいということです。
8年間のうち、最初の3年間ほどはインフラのアシスタントをする。裏方さんの教育プログラムや歌手のトレーニングなどのサポートが中心。いまサウジでは文化やスポーツの振興に力を入れています。これまでは国民を制圧するなど問題のある国でしたが、そういう進化をしている。国へのコラボレーション、文化交流はとても重要なことだと思います。

――今後の大きなプロジェクトとして、ワーグナー四部作《指環》の新制作もあります。
G:2028年の春からスタートします。これからプロジェクト・チームが基本的な案をプレゼンテーションする予定なので、どうなるかまだ分かりません。でもコンセプトとしては、普遍的な時を超えたプロダクションになるでしょう。キャスティングでは、リーゼ・ダーヴィドセンが初めてブリュンヒルデを歌い、若く素晴らしいバス・バリトンのライアン・スピード・グリーンがヴォータンを歌います。彼はちょうどいま、《ドン・ジョヴァンニ》をMETで歌っているのですが。私にとって最も重要なことは、《指環》であろうが《ラ・ボエーム》であろうが、ストーリーテリングに説得力があり、明確で聴衆が共感できることが重要です。そういう演出家が私は好きなのです。プロダクションが完成するのを楽しみにしています。

「取材・文=石戸谷結子(音楽ジャーナリスト)」

METライブビューイング2025-26
第2作:プッチーニ《ラ・ボエーム》
12月12日(金)~12月18日(木)
※東劇のみ1/1(木)までの3週上映
指揮:ケリー=リン・ウィルソン
演出:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ジュリアナ・グリゴリアン、フレディ・デ・トマーゾ 、ハイディ・ストーバー、ルーカス・ミーチェム、ショーン・マイケル・プラム など
■公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/met/program/6904/
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応募期間中に、『METライブビューイング』公式X (@MET_LIVE_JP)またはInstagram (@met_live.jp)をフ
ォロー&指定のハッシュタグ「#ボエーム感想」をつけて感想を投稿。または、ハガキに必要事項をご記入の上、ご応募いただいた方の中から、抽選で豪華賞品をプレゼントいたします!
A賞:マリアージュ フレール「NOEL IN LOVE/ノエル イン ラヴ」 5名様
B賞:アンリ・ミュルジェール『ラ・ボエーム』辻村永樹訳(光文社古典新訳文庫) 3名様
C賞:MET2025‐26シーズン本国カレンダー 4名様
詳細:https://www.shochiku.co.jp/met/news/7131/

【《ラ・ボエーム》解説付き上映】
開催日時:12月12日(金) 14:00~ トークイベント終了後、14:20~《ラ・ボエーム》本編上映。
開催場所:東劇(東京都中央区築地4-1-1 東劇ビル3F/東銀座駅 6番出口徒歩1分)
講 師:奥田佳道 (音楽評論家)
詳細:https://www.shochiku.co.jp/met/news/7118/