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原作者加藤シゲアキ&行定監督登壇!大学生にエール!映画『ピンクとグレー』×大学生 世界を変える討論会開催!(その2)

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ここで、監督である行定勲監督も登場し、後半へと入った。
「こんにちは。良く青学の前は通ります。この近くに事務所があって」と登壇してすぐに挨拶が。

― 行定監督が始めて小説『ピンクとグレー』をお読みになった時の感想をお聞かせ下さい
行定:本自体はタイトルも知っていました。映画にしたいというプロデューサーたちがいて、お話を頂いてから読んだんですけど、あっという間に読めましたね。上手いな!と。デビュー作なのに。上手いというのは、構成力がすごいというか、映像的だなとも思ったんです。新しい感じというか、今の20代のこの世代の作家たちというのはある種映画的なリズムとか構成力を持っていて、普通映画にしか出来なかったものだったと思うんですよ、普通は起承転結があって、それを映画としてわざと時勢を狂わせて読ませていくという、加藤くんの本は最初からそれを感じられるという。逆に言うと、小説に沿ってなぞってしまうと、それだと上手く行かないんじゃないかと思うような。こっちは何もやる事がない、そのままやってしまうとイメージのラッシュになってしまって、コレは困ったなぁと思わせるようなところもあって、小説なのに立体的に読めたっていうのが独自性なんではないかと思います。
と、原作に対する熱い思いを語った。

それを受け、加藤より。
加藤:行定監督と最初に会ったのが、行定監督と『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(2014)で共演された先輩の関ジャニ∞の丸山くんの紹介で、「行定さんがシゲちゃんに会いたがっている」というお話で、三人でお会いさせてもらった時に、実はそこで初めて映画化のお話があって、それで尚且つ行定さんでって言う話を聞いたんですけど、そのときから僕の作品を愛してくれていたというのがあって、今のようなこともおっしゃって下さっていて、やっぱり自分の作品が映画になるというのが、イマイチイメージも付かないし、もしその映画が僕が好きじゃなかったらどうしようとかって思ったんですけど、今おっしゃったように、こんなに作品を愛して下さっているのだったら、自分の作品預けようという気になれたので、本当に行定さんで良かったと思っています。
と、優しい表情で監督との出会いを語った。

― 三人でお会いした時が初めてだったんですね。と、行定監督に尋ねると。
行定:そうなんです。僕がフライングして言っちゃったんです(笑い)作家が知らないという・・・シークレットで進んでいたのかもしれないですけど。
謎が多い本ですよね。そこは凄く読者を信頼しているなと思ったし、説明されてもね、って言う部分が結構あるんですよ。核心を説明しないでしょ。主人公たちが岐路に立たされたり、目の前で起きていることを受け止めながら戸惑っていたり、そんなところも有る意味赤裸々に描いていくという方法なんだけど、非常にスタイルとしては構造的で、スタイリッシュな感じもするし、そこはそこで面白いなって感じがしましたね。
と、原作の魅力について踏み込んで語った。

― (監督に質問)プロデューサーさんからお話があってということでしたが、実際どういう流れで映画化に進んでいったのですか?
行定:KADOKAWAさんが、映画にしようって言ったんじゃないですかね?KADOKAWAって映画の製作もやっているから、映画にして、小説が広くまた読まれるということも一つのあり方ですよね。なかなか小説が売れない時代だって言う中で、非常に注目を浴びている小説だったりもするわけだから、そう意味では、読んでいて色んなものが生れていくっていうかね、行間からね。それを映画化すればいいんだっていう風に思って取り組ませてもらったというのがあります。
と、気取らず話す中にも、この作品に対する想いが語られた。

― 加藤さんは映画を観るのがちょっと怖いという風におっしゃられていましたが、ご覧になっていかがでしたか?
加藤:試写会に行く日は複雑な気持ちというか、見ないほうがいいのかなと思ったりもしたんですけど、実際色んな話があって映像化したいってなってからも、本を出した時から、記者さんに映画化する予定は?と質問されて、今小説が映画化されるのはスタンダードな流れになってしまったので、読者が勝手に期待してるという状況が多くて、僕にしてみれば映画になれば幸せだけど・・・と言うところからスタートしていたので、いざしてみるとどう思うのかが分からなかったんですけど、そういった経緯もあって、まず最初に映画を見て思ったのは、ホッとしましたね。最終的に行定さんで映画を撮ってもらってそれがちゃんと映画になった事が。まず凄くホッとしましたし、それがまたとっても面白かったので、本当に良かったなと思ったことと、凄く不思議な体験だったのは、やっぱりその本は、読んだ人それぞれが自由に想像できるのが小説の醍醐味だと思うんですけど、映画を見たときに、「そうそう!この感じ!」っていうのが何シーンかあって、ごっちとりばちゃんが住んでいた部屋が全く同じだったなって思ったんです。小説のときは、今は違うと思うんだけど、(ごっちとりばちゃんが暮らしていた街は)淵野辺のイメージだったので、不動産屋のサイトとか見て実際間取りだったらコレくらいの値段でルームシェアできるとか調べたんですけど(会場から感心の声)、それに結構似ていたんですよ。飾りつけとかは僕が思っていたのよりは、より具体的だなと思う部分がありましたけど、そういうのがまず面白かったなと思うのと、一人称で書いている小説なので、小説の中で自分が演じているようなイメージもあったりするのですけどね、面白かったのが、後輩の中島くんが主演やってるんですけど、何シーンか自分に見えるっていう。僕が書いた4作品の中で一番感情移入しているというか、自己投影している作品ではあるので、裕翔がオレっぽいなーって言うのがあるのが、すごい不思議で面白い経験でしたね。
と、不安を感じながらも実際出来上がった作品の面白さや素晴らしさを語った。

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― 監督と加藤さんとのすり合わせはあったのですか?
行定:ないですね。
加藤:脚本も見せていただきましたし、具体的なピンポイントの質問はありましたけど、それくらいでしたよね。
行定 一番気になったのが、どうして遺書が6通なの?っていう事をきいたら、「いやー、何ででしょうね?なんとなく6通がミステリアスだ」とか、意味深な事答えを言っちゃってね(加藤・会場笑い)
加藤:忘れてるんですよ、結構次々書いているから。振り返ってみると、なんか理由が合った気がしますね。みたいな。そうすると独自の解釈があって、それを聞くのが面白かったですね。

― 映画も小説も結末が読者にゆだねられる形になっていて、さらに想像が膨らむ形になっていますが、その後、河田大貴は、どういう人生を歩むと思いますか?
加藤:うーーーん・・・(と悩む)どうですか?
と、行定監督に伺いを。

行定:まぁ、普通の人になるんじゃないですか?普通の人になる憧れって凄くあってですね、普通の人っていろんな事情があって、意外にいなくてですね、芸能界を描くという段階で、不安だらけなのね、俺たちの仕事って言うのは。休みないしね。ただ空いてるだけなの。そんな生活でままならないんですよ。家庭とか恋愛とか。芸能界って言うと僕らにとって近い話しだし。あの中で一番込めているのは、ごっちがりばちゃんにサリーの事を言うんだよね。大事にしてやってよ。っていうことなんだよね。このことが一番込められているというか、物語の核になっているというか。そんなことが一番できないんですよ。そんなものがラブストーリーの一面もあるので、そこの部分では一番重要で、僕にとってはりばちゃんは、今の段階ではそこすら出来ない人間だから、そこに向っていくような人生なんではないかと。あの時点で気付くのは友情だよなって思っています。

加藤:僕はきっと変わらないと思います。小説だとそのシーンを演じて最後自殺して終わるんですけど・・・変われないんですよね、人ってそんなに。アレを引きずってりばちゃんは生きていくしかないし、引きずらない為にはより衝撃的な出来事がないといけないくらいって事を、咀嚼するには相当な時間がかかって大人になっていくんじゃないかなって思いますね。

― 映画では、芸能界入りや友人の死がターニングポイントになったと思いますが、お二人の人生におけるターニングポイントは何でしたか?
加藤:ターニングポイントか・・何かあります?と行定にふる
行定:俺沢山あるよ。子供の時に映画の撮影見にいったことですね。そこから一直線なので。子供の時に熊本城で黒澤明の映画の撮影見たんですよ。忍び込んだんです。黒澤監督は見なかったんですよ。スタッフ見たんです。それが憧れたんですよ。黒澤監督に憧れてたらココには居ませんね。黒澤監督に憧れるからみんなダメになるんですよ(会場笑い)ムリだよ、黒澤監督になんてなれないんだから。僕が憧れたのはスタッフ。ジーンズにひげ生やしたスタッフが武士の甲冑を汚してたのね。それがすごいかっこよかったの。それがターニングポイント。それ以外ない。感謝していますね。熊本城で『影武者』(1980年)を撮影してくれたことを。
と、小学生時代の話を交えて映画への一途な思いを語った。

加藤:そういう風な事で言うと、大学高校時代の友人で映画と本好きが居たんですよ。僕は高校からデビューしていたので、放課後遊べなくて、仕事の帰りに本とかドラマとか映画観てその話をするしかないんですよ。ただ、あんまりスキじゃなくて義務的で。その中の一人がちょっと変わっていて、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)を超絶に薦めてきて、そんな高校生居なかったんですけど、それがきっかけで映画を好きになって観るようになって、その友人は、映画評論とか構造とかに入っていったりして、小説も難しいものにはまっていくわけですよ。それを聞いて面白くてそういうものに触れたことが、すごく影響があって、色んな知識が増えて、小説を書くようになったということを考えると、ターニングポイントが友人と出会ったことだとすると、青学に入ったことですねー!(会場笑い)
と、茶目っ気たっぷりに青学をアピール。

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― 自分を見失いそうになったときはありますか?
加藤:自分で決め付けるから見失うんですよ。何とでもなるというか、自分はこうだからと決めないというか、人になんと思われようと、自分で好きな事とか自分が納得できることを突き詰めればいいかなと思ってやってきました。

行定:自分がどうしたらいいか分からないって事だよね?(質問者「はいそうです」)人が決めるから大丈夫です(会場笑い)才能があるとかも人が言ってるんでしょ?自分で言ってたらそりゃやばいけど(会場笑い)他人が決めるんで、他人を信じてれば大丈夫なんだけど、ココが重要なんだけど、他人から裏切られるんだよね。あんなに言ってたのに!って。落とし穴かもしれないよね。それはそれで面白いと思えるぐらいで。
と、会場が笑いに包まれながらも、アドバイスを送った。

― 監督と加藤さんは、りばちゃんとごっちどちらのタイプになりますか?
加藤:よくモデルはいるんですか?とたずねられるんですけど、どちらも自分のつもりで書いていたんですが、一人称で書いている以上はやっぱりりばちゃんに共感すると思うし、この質問をごっちにしたとしたら、ごっちもりばちゃんと言うと思う。だれも自分の事をごっちだと思わないんじゃないかなって思います。
小説を書いてから時間が経つにつれ感情が変わったことを吐露した。

行定:僕はどっちでもない。どっちにも共感はしないですよね。だからあの関係は面白かったですよね。二人でひとつなのかなって思いますよね。タイトルのピンクとグレーを対立している色という風に発想するか、寄り添っていると発想するかですよね。これは対立って言う方が普通ですよね。赤と黒とか白と黒とか。とって付くと。ただ、これを寄り添っていると思って一つの対だと思ってみると、すごく配色としてはキレイですよね。そういう関係だと思うんです。これがバラバラにすると、意外と色としては曖昧で、濃淡が凄く大きくて、色んなパターンがあるって事ですね。だから、二人でひとつだとおもったから、どっちにも共感しなかったんだろうなー。羨ましい二人でしたね。終始客観的でした。
と、今の監督ならではの感想が。

加藤:それは年齢ですか?

行定:年齢もあるね。『GO!』(2001年)は30歳で撮ってたから、15年くらい前に撮ってたんですよね。もっと主人公たちに寄り添ってましたね。年を取ったんで、あの小説の行間から青春時代の実態が何かっていうのがなんとなく分かるんですよ。この年まで生きちゃってるから。だから、りばちゃんをいじめ抜きたかったんだよね。「甘い!そんなもんじゃない!」って。

― 青学OBとして、就職活動など夢に突き進んでいく後輩に向けてメッセージを。
加藤:生きていくことは途轍もなくしんどいことだと思っているし、途轍もなく面倒臭い事だと思っています。一生安定したって事は無い。そのときはつまらなくなってるんで、思う存分面倒くさいことに挑戦して欲しいなと思います。それがいつか自分に返って来て面白い事を実現できるようなスキルになっていったりするので、放り捨てずに頑張って欲しいなと思います。
一見厳しいようなことを語ったが、本当の優しさが滲み出ているコメントを残した。

(行定監督にもアドバイスをお願いします)
行定:青学じゃないんで、青学の前は通ってます。立派な大学でね。大学で撮影が必要なときは貸してください(会場笑い)大学行ったわけですから、大学出た意味って20年後ぐらいに分かったりするんでしょうけど、自分というのは他者が確立してくれると思っているんですね。だから、好きな事を思いっきりやっていれば、誰かが見てくれていて、こういうことだよって言ってくれたりして、社会の荒波を越えていってくれたらと思います。こういう機会で話を聞いたことで映画に興味を持ちましたとか言う人が居たときは、一緒に仕事をする際にはなるべく偉くなっていただいて、そういうことがあったらいいですね。
と、最後もまた温かい笑いで包まれた。

フォトセッション後に最後の挨拶。
加藤:こういう風にお話しする機会って本当にないのでとても楽しかったです。何か僕たちの話が今後人生の参考になればいいかなーって思います。ありがとうございました!
と、後輩たちに優しい表情で語りかけた。

行定:映画を宣伝して下さい。コレ重要で、観客が映画を作っていると思っていてもらいたいんですよね。観客がこの映画面白かったよ!って言うと作り手は変わるんですよ。“世界が変わる”って言うのがあったけど、映画は大小あるけど世界を描いているわけですよね。それを変えるのは観客だと思うんですよね。観客がヒットさせてしまうと、そういう映画ばかりが追随します。この映画、ちょっとほかとは違うよね。こういう映画が面白いというと、他の監督がそれぞれ勝負していける。そうするともっと面白いものが生れる。観客は受け止めるだけじゃなくて、観ることがもの凄く世の中を変えると思います。そこから得た物で、何か広げていってもらえたらと思います。

今回のトークショーは、作品を鑑賞した後に、実際に作品を生み出した原作者とそれを映画として更に広げた監督と言う、貴重な組み合わせで行われ、大学生たちも二人の話にグイグイ引きこまれていく様子が良く分かった。
今回のトークショーで何かを感じ、次世代の映画人が生れるかもしれないと思うと、胸が弾む思いだ。

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行定監督登場前には、加藤シゲアキがトークを展開。
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【STORY】
大人気スター俳優・白木蓮吾が、突然、死んだ。
第一発見者は幼い頃からの親友・河田大貴。蓮吾に何が起きたのか?
動揺する大貴は、6通の遺書を手にする。遺書に導かれ、蓮吾の短い人生を綴った伝記を発表した大貴は、一躍時の人となり、憧れていたスターの地位を手に入れる。
初めてのキャッチボール、バンドを組んで歌ったこと、幼馴染のサリーをとりあった初恋・・・。
いつも一緒で、いつも蓮吾が一歩先を進んでいた―。輝かしい青春の思い出と、
蓮吾を失った喪失感にもがきながらも、その死によって与えられた偽りの名声に苦しむ大貴は、次第に自分を見失っていく。
なぜ、蓮吾は死を選んだのか?なにが、誰が、彼を追い詰めたのか?
蓮吾の影を追い続ける大貴がたどり着いた“蓮吾の死の真実”とは―。
芸能界の嘘とリアルを現役アイドル加藤シゲアキが描いた問題作を、『GO』『世界の中心で愛をさけぶ』の行定勲が、映画初出演・中島裕翔を抜擢し、映画化。幕開けから62分後の衝撃。ピンクからグレーに世界が変わる“ある仕掛け”に、あなたは心奪われる―。

出演:中島裕翔 菅田将暉 夏帆 岸井ゆきの 宮崎美子/柳楽優弥
監督:行定勲 脚本:蓬莱竜太・行定勲
原作:加藤シゲアキ「ピンクとグレー」(角川文庫)
音楽:半野喜弘  製作:「ピンクとグレー」製作委員会
配給:アスミック・エース
(C)2016「ピンクとグレー」製作委員会
公式サイト:http://pinktogray.com
公式Facebook:pinktogray
公式Twitter:@@pinktograymovie

2016年1月9日(土)全国ロードショー

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