現在開催中の第32回東京国際映画祭で特別招待部門正式出品作品、映画『この世界の（さらにいくつもの）片隅に』の特別先行版が11月4日、東京・TOHOシネマズ六本木にて上映され、本作で声優を務めたのん、岩井七世と、音楽を担当したコトリンゴ、監督の片淵須直が舞台挨拶に登壇した。
第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に前向きに日々を暮らす女性・すずを描いた映画『この世界の片隅に』。2016年11月に公開され、ロングランを続けてきた本作が、3年の月日を経て、すずの深い感情を新たなエピソードを織り込み描き出す新作劇場アニメーション映画『この世界の（さらにいくつもの）片隅に』として12月20日に公開する。
上映後の観客に向かい、片淵監督は「長い時間ご覧になってくださってありがとうございます」と挨拶。「本作はまだ数分長くなります。このあと編集の作業にかかります」と明かしつつ、「今作で（前作より）もっと長いすずさんの人生のページが開かれていると思います。映画を通じてすずさんの人生を感じていただけたら」と思いの丈を吐露。
すずの声を担当したのんは、「期間を空けてから同じ役を演じるのは初めて。新しい解釈をどうしようと考えているうちに、すずさんの皮膚感が蘇ってきました。監督への信頼感があったので、しっかりと強い気持ちをもって臨むことができました」としみじみ。
リンの声を務めた岩井は「3年経ちましたが、とても楽しみにしていました。（前作では）呉にも行ったし、10回くらい観ました。私自身も作品のファンなので。今回は気張らず、リラックスして監督の声に耳を傾けました」と笑顔で語る。
本作の音楽を担当し、映画の世界観を広げるコトリンゴ。今作では4曲を新曲に加え、エンディング曲「たんぽぽ」をバージョンアップしてアレンジ。「これで物語は完結？ 名残り惜しい重厚感があるアレンジにしました」と話した。
前作と本作との違いについて、監督は「前回はすずさんと義姉さんとの関係を主に描きましたが、人生ってそんなに単純じゃない。本作ではすずさんはもっとたくさんの人を見る。今回新しい場面を加えたことで、すずさんという人の人格が多面的になりました」と説明。
そんなすずを演じたのんは、「リンさんと周作さんとの秘密に触れ、すずさんも複雑な気持ちだったと思う。すずさんのどこに自分の気持ちを置いたらいいのか、戸惑っている心情を演じるのが難しかったけれど、再び挑めることができてよかったと思いました」と、充実感を滲ませていた。
【Introduction】
国内外で高い評価を受け、2016年の公開から1日も途切れることなく900日以上にわたり上映が続けられている映画『この世界の片隅に』。本作はそんな『この世界の片隅に』に、原作の魅力的なエピソードの数々を散りばめた新作です。すずを取り巻く人々の「さらにいくつもの人生」がより深く描かれることによって、私たちは知ることになります。すずの中にあったほんとうの感情を。そして誰もが誰かを想い、哀しくも優しい秘密を抱えていたことに。たおやかな温もりに満ちた新たな物語が、この冬、深く沁みわたります—
【Story】
広島県・呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるものの呉ではじめて出会った同世代の女性に心を通わせていくすず。しかし、ふとしたことをきっかけに、すずは周作とリンの過去に触れてしまう。
すず、リン、そして周作。それぞれが内に秘めた想いを抱えながら、日々を懸命に生きていた。
そして昭和20年の夏がやってくるーー。
■声の出演：のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 牛山茂 新谷真弓／花澤香菜／ 澁谷天外（特別出演）
■原作：こうの史代「この世界の片隅に」（双葉社刊）
企画：丸山正雄 監督補・画面構成：浦谷千恵 キャラクターデザイン・作画監督：松原秀典
美術監督：林孝輔 音楽：コトリンゴ プロデューサー：真木太郎
監督・脚本：片渕須直
製作統括：GENCO アニメーション制作：MAPPA
配給：東京テアトル
製作：2019「この世界の片隅に」製作委員会
公式サイト：http://ikutsumono-katasumini.jp
(C)2019こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会
2019年12月20日（金）テアトル新宿・ユーロスペース他全国公開
第32回東京国際映画祭
2019年10月28日（月）～11月5日（火）
会場：六本木ヒルズ、EXシアター六本木、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場 他
公式サイト：https://2019.tiff-jp.net/
