
映画『平行と垂直』の公開記念舞台挨拶が、8月29日、東京・新宿バルト9にて行われ、W主演の安田章大、のん、監督の小林聖太郎が登壇した。
安田章大が、劇団ふくふくやを主宰し女優としても活躍する山野海のオリジナル脚本に感銘を受けて、”作品のメッセージを届けたい”と初めて企画から参加した本作は、大阪を舞台に自閉スペクトラム症の兄の大貴(安田章大)と、兄を幼い頃から支えてきた妹の希(のん)の兄妹が、希の結婚話をきっかけに、お互いのこれからとこれまでに向き合うことになる、兄と妹の感動の絆の物語。
本企画に共鳴した小林聖太郎監督も加わり、自閉スペクトラム症(ASD)の専門家の方々に監修を仰ぎながら約2年をかけて脚本を練り、企画の実現にこぎつけた。

冒頭、安田は「幸せ安田章大」と挨拶し、のんが「穏やかのんです」とにっこり。監督が「悲観論者の小林です」と続け、会場は和やかな空気が流れ、舞台挨拶がスタートした。
昨日公開を迎え、安田は「やっと届けられるという、本当に幸せな気持ちです。まずゼロからイチを一緒に作ってくれた山野海さんに本当に感謝です。それと一緒に作り上げてくれた監督、各部署のスタッフの皆様、そして俳優であるのんちゃん、周りを固めてくださったたくさんの役者の皆さまに感謝しております」と感謝の気持ちを口にし、「これからこの映画をいつまでも大切にしてくれるのは(観客の)皆さまだなと思っておりますので、この日を迎えられて本当に幸せ章大だなと思っております。嬉しいです」と声をかけた。

のんは「本当に嬉しいですね。本当に安田さん、山野海さんが立ち上げた作品が、こうして素敵な物語を紡いでいるので、ぜひじっくりご覧になっていただきたいです」と公開を喜ぶ。

監督は「もう3年前ぐらいから何となく始めて、今年の3月に完成したんです。(途中に)それでも足止めを食らっていたみたいですが、(公開できて)ちょっとホッとしています。ようやく観てもらえるなという感じです」と安堵の顔を浮かべた。
安田は大輝と向き合った2年間だったが、「より強固なものになったと言ったらよろしいのでしょうか。人はそれぞれ違いますし、それぞれの苦痛というものがある。その苦痛を否定せずに、しっかりと認めること。肯定して時間を使い待つこと。ちゃんとそれぞれのペースがあるということを再度確認し直しました」と話し、「分かりやすく言うと、発達障害ということがあり、定型発達というものがあるとするならば、そこは診断が下されているかいないかというところが分かり方ですよね。そういうものは確かにあるけれども、人として自分の個性を持っている、それぞれの光り方があるというのは誰も変わらないものなんだなというのを、改めて強く思いました」と続けた。

そして、我々が普段から使う“普通”という言葉にも言及し、「幼少期から“普通、普通”とよく聞いてきたけど、普通って何なんやろうなっていつも思っていました。僕も10代の時にスカートも履いていましたし、このようにネイルも付けたりもしています。でもやっぱり人から『何でネイルしてんの?』と言われました。それぞれの普通がちゃんとあるので、そのそれぞれの普通を『そうなんですね』と空返事の相槌ちではなくて、ちゃんと相手に興味を持った相槌ちができるように、深くなれたらいいなと。そうすると日本が変わり、日本が変わればアジア諸国が変わっていく・・・。これ夢物語のように聞こえるけれど、誰かが変わっていかなければきっと世界は変わらないということも思うので、この映画をきっかけに、誰か一人でも変わっていけたらなと思ったりしました」と持論を展開した。
一方で、のんは「改めて実感して、家族のことを考えました。自分は家族に支えられているのが当たり前になっていたかなと。自分の活動を応援してもらったり、実家に帰ればご飯を作ってくれて・・・。今までの自分が亭主関白だったなと(笑)。「ご飯まだ?」みたいな態度を見直しました。以前よりもすごく素直に“ありがとう”と感謝できたり、“美味しい”って口に出して言うようになりました。実家だとどうしても、素直にそういう態度が出がちですよね。「美味しい」とかあんまり言わなかったので。最近はすごく感謝したり、家族の好きなものをリサーチしたりして、知っているようで知らない部分をもっともっと知ろうという気持ちがすごく芽生えました」と、自身の変化を実感していた。
兄妹を演じた二人。互いに刺激も受けていたようで、安田は「もちろんお芝居をしているんですが、信頼関係はお芝居ではないと思うんです。相手を信頼して心から動かされたものを受けて、こちらの心が動いていくということが、今回の本作だったと思います。自分的には、ちゃんと心が動き合っている状態で作られていった感覚が強いかもしれないです」と述べる。

のんも「本当に安田さんと演技した時間は尊いものとして自分の中に残っていて。安田さん演じる大貴の表情を見ると、希としての感情が溢れてくるような感覚だったので、もう1回同じことを繰り返したいぐらい幸せでした。そのくらい感情豊かに気持ちが動いている瞬間が収まっていると私も思います」と充実感を滲ませ、互いに自然に兄妹になっていったと話す。
劇中の大貴は几帳面な性格で毎日丁寧に暮らしているが、そのことにちみ、「他人にはなかなか理解してもらえないかもしれない、自分のこだわり」を聞かれると、安田は少し口ごもりながら・・・「最近いろいろ『変わってるよね』って言われるんです。こだわりというか、僕は普通のことを喋ります」と前置きをし、「家では全裸生活です。お料理する時とかは、前掛けだけつける。上半分は大丈夫かと聞かれたら、あとは鍛えてるって言うんですけど。揚げ物とかも全裸で。熱っ!と思いながら。そういう生活をしてます」と告白し、皆を驚かせる。
のんは、「カーテンにこだわっています。遮光のカーテンを買って家で使っているんですけど、5ヶ月くらい前までは一日中カーテンを開けずに過ごしてました。最近植物を家に導入したので、開けざるを得なくなったんですが」と言い、安田も「光合成せなあかんもんな」とツッコミを入れる。
そして、「しょうがない、あいつらのために。カーテンはあんまり開けないんです。だから地方とかでホテルに泊まる時とかは開けないです。落ち着くんですよね。一人きりの空間みたいなのが。閉じこもってる感があります。以前は「モグラ」って呼ばれてました(笑)」とあっけらかんと話し、会場を沸かせていた。
監督は「あまりないんですけど、横断歩道は右足から行くとか。そういうつまらないことぐらいですかね。渡り1歩目は白いところに右足っていうのはありますけど」と苦笑いした。
お互いに「ここ敵わないな」と思ったことについて、安田は「今みたいにいきなり『モグラ発言』をするところとか。そういう突発的にキラーワードみたいなのが出てくる、のんさんの面白さ。そして監督は自己紹介に『悲観論者』というところ。そんな言葉がいきなりポンと出てくるっていうのは、敵わないです。僕は幸せしか言うてませんでしたから」とコメント。
のんは「安田さんは現場にいる全員とコミュニケーションを取って、現場の士気を上げてくださったり。そういうところは本当に自分に足りないところだなと思って、日々尊敬の眼差しで見ていましたし。宣伝活動とかで安田さんの言葉を聞いていく中で、本当に素晴らしい人だなと思っていました」と称え、安田を照れさせた。
最後に、監督が「役に立つか役に立たないかみたいなことが、世の中の人間の存在価値みたいに計られることが多い気がしていて。この物語を読んだ時に、自分の問題意識と合致しました。ただ居るだけというのが許される世の中になればもっと豊かになるのになと思ってます。この映画を観て、もしそれをなるほどと思っていただけたら、周りの方に「面白かったよ」と言ってもらえると嬉しいです」と述べ、のんは「私はこの安田さんと山野海さんで立ち上げて、皆さんで大切に作られたこの作品に参加させていただいて、本当に嬉しい気持ちです。大貴と希の物語が自分の中にあることで、きっとこれからの皆さんの明日が豊かになっていったらいいなと思っています」と声をかけた。
そして、安田が「寛容な対話だったり態度、辛辣な対話だったり態度、そして時に無視をしてしまうというような、言葉にしないこと。本当に世の中にはこういうことが蔓延していると思ってます。でもそれって、僕たちが一生懸命生きてるから、そうしたくなくてもたまにそういうことが起きてしまうんだと思うんです。その度に自分で自分のことを反省したり、『もうちょっとこうしてあげられたらよかったのにな』と落ち込んでしまったり、もしくは自分を励ましたりするんだと思うんです。ということは、皆さまお一人お一人が常々内側でそういうことが渦巻いてるってことを理解し合えていれば、自ずと一人一人の距離が近くなるでしょうし、近寄りたいタイミングがあったら近寄れる時が来ると思うんです。
そうすることで、日本が変わるだろうし、少しずつ変わっていく世界があるだろうし。そしてそれぞれの持ってる普通は、他人にとっては違うかもしれないので、否定せず、ちゃんとそれぞれの普通を受け止めてあげてほしいと思います。何より”一人ぼっちじゃない”ってことだけは理解してほしいです。昔は横の繋がりで近所の子たちも全員家族、みんなで地域の子供を育てていました。それはいいことだったと思います。でも今、時代が変わっていき、ちょっと変わった人がいれば、良くないことになることだってあります。だからこそ、一つ一つ相手を理解していければ、よく変わっていけるんじゃないかなと思ってます。そのためには、一人じゃないってことは本当に覚えておいてください。少なくとも味方はいます、ということをイメージしてください。そしてそれぞれ違っていてもいいってことも忘れないでほしいです」と熱いメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
映画『平行と垂直』
<物語>
⾃閉スペクトラム症の⼤貴と、兄を幼い頃から⽀えてきた妹の希。兄妹は幼い頃に⺟親を亡くし、ネグレクト気味の父親から距離を置き、二人で懸命に⽣きてきた。
⼤貴はほとんど会話をせず表情もあまり変わらないように見える。グループホームから自立を目指して、一人暮らしを始めた大貴は独⾃の規則を持っている。全てを平⾏と垂直に並べるほど几帳面でこだわりが強く、机に並ぶ⾷器も丁寧に揃える。週に一度の希との⾷事の時間は決まって19:00。1分でも過ぎると落ち着かなくなる。
カウンセラーの仕事をしている希は恋⼈からプロポーズを受け、⼀抹の不安を抱えながら兄と共に、婚約者の両親に会いに東京へ⾏くことに・・・。
自閉スペクトラム症 (ASD)は、社会的コミュニケーションの難しさと、興味・行動の偏りや感覚の特性が、発達早期から持続する発達障害の1つである。知的水準や言語、生活上の困りごとは多様で、支援により適応は改善する。自閉症を中核概念に障害の表れを一つの連続体(スペクトラム)として診断される。
出演:安田章大 のん
伊島空 高山トモヒロ 谷村美月 福田転球 芦川誠 早織 久保田磨希
河野咲良 髙田幸季 武藤凪 林英世/神野三鈴 菅原大吉
監督:小林聖太郎 原案・脚本:山野海 音楽:富貴晴美
企画:安田章大 企画プロデュース:佐藤現
製作:「平行と垂直」製作委員会
(東映ビデオ、アスミック・エース、メディアプルポ、中京テレビ、テレビ大阪、ストームレーベルズ、ローソン、東映シーエム)
特別協力:大阪府堺市 取材協力:さくらんぼ教室、NPO法人アスペ・エルデの会、NPO法人PDDサポートセンターグリーンフォーレスト
後援:日本発達障害ネットワーク、日本自閉症協会
制作プロダクション:セントラル・アーツ
製作幹事・配給:東映ビデオ
©2026「平行と垂直」製作委員会
公式HP:https://www.toei-video.co.jp/heikoutosuichoku/
X/Instagram:@heikou_suichoku
全国公開中!















