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映画『箱男』永瀬正敏ら豪華俳優陣がベルリン国際映画祭に上陸!27年の時を経て宿命の地での初披露に万感の思い語る

原作 安部公房 生誕100周年
監督・脚本:石井岳龍
出演 : 永瀬正敏 浅野忠信 佐藤浩市 白本彩奈

『箱男』

第74回ベルリン国際映画祭 ワールドプレミアに
永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市、石井岳龍監督が上陸!
「いままさに『箱男』の時代がきた」
27年の時を経て宿命の地での初披露に万感の思い語る

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安部公房の同名小説を石井岳龍監督の手によって映像化した映画『箱男』が、安部公房生誕100周年にあたる2024年に全国公開される。

その著作が世界二十数か国に翻訳され、熱狂的な読者を世界中に持つ日本を代表する文学者であり「壁」「砂の女」などでも知られる安部公房。三島由紀夫とも並び称される、世界的に人気のある日本の小説家の一人である。本作の原作となった「箱男」は、安部公房が1973年に発表した小説であり、代表作の一つ。人間が自己の存在証明を放棄した先にあるものとは何か?をテーマとし、その幻惑的な手法と難解な内容の為、映像化が困難と言われていた。幾度かヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督が原作権の取得を試みたが、許諾が下りず、企画が立ち上がっては消えるなどを繰り返していた。

そんな中、最終的に安部公房本人から直接映画化を託されたのは、『狂い咲きサンダーロード』(80)で衝撃的なデビューを飾って以来、常にジャパン・インディ・シネマの最前線をいき、近年では二階堂ふみ主演の『蜜のあわれ』(16)や綾野剛主演の『パンク侍、切られて候』(18)等の話題作を手掛けてきた鬼才・石井岳龍だった。本作の映像化をどうしてもやりたいと構想していたという石井、安部からの「娯楽にしてくれ」というリクエストのもと、1997年に製作が決定。石井は万全の準備を期し、ドイツ・ハンブルグで撮影を行うべく現地へ。ところが不運にもクランクイン前日に、撮影が突如頓挫、撮影クルーやキャストは失意のまま帰国することとなり、幻の企画となった。

それから27年。奇しくも安部公房生誕100年にあたる2024年、映画化を諦めなかった石井監督は遂に『箱男』を実現させた。主演には27年前と同じ永瀬正敏、同じく永瀬と共に出演予定だった佐藤浩市の出演が決定。更に、世界的に活躍する浅野忠信、数百人のオーディションで抜擢された白本彩奈ら実力派俳優が揃った。

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この度、開催中の第74回ベルリン国際映画祭にて映画『箱男』のワールドプレミアが行われ
永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市、そして石井岳龍監督がレッドカーペットや上映後Q&Aに登場した!

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カンヌ、ベネチアと並ぶ世界3大映画祭のひとつで、今年で74回を迎えるベルリン国際映画祭が2月15日にドイツ・ベルリンで開幕。本映画祭のBerlinale Special(ベルリナーレ・スペシャル)部門に正式招待された映画『箱男』は、原作者・安部公房の生誕100周年にあたる今年、奇しくも27年前に撮影が行われるはずであった“宿命の地”で17日ついにワールドプレミアを迎えた。

この記念すべき待望の世界初披露の場に、主演の永瀬正敏をはじめ浅野忠信、佐藤浩市の豪華俳優陣と石井岳龍監督が集結。公式上映前後のレッドカーペット、Q&Aに登場し会場を大いに盛り上げた。

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まずは、メイン会場となるBerlinale Palast(ベルリナーレ・パレスト)のレッドカーペットにそれぞれシックなスーツでキめた4人が颯爽と登場。ときおり立ち止まってファンにサインを書いたり写真撮影したりと交流しながら、世界各国から集まった報道陣の呼びかけにも笑顔で応えた。

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その後Zoo Palast(ツォー・パラスト)に移ると、800人ほどの満席の劇場で公式上映が行われた。上映後に会場は映画を観終えたばかりの観客たちの興奮冷めやらぬ熱気に包まれ、同席していた監督キャストらは大きな拍手で讃えられた。

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4人はそのままQ&Aに登壇し、まず27年の時を経てこうして改めて新作が製作・上映されるに至った経緯について聞かれると石井監督は「すべてのストーリーを語ると一晩ではとても足りないので手短に(笑)実際には32年前に企画が動き出し、27年前のドイツ・ハンブルグで日本とドイツの合作映画として撮影される予定で、そのときのメインキャストがここにいる永瀬正敏さん、佐藤浩市さんでした。しかし、撮影前日に日本側の製作資金の問題で中止となってしまいました。当時撮影予定だった作品は本作とはかなり違って、もっとスラップスティックギャグという感じでした。そのあと何度か立ち上げようとしてきましたが原作者の安部公房さんが亡くなってしまい、原作権が安部さんの娘さんに移られました。その後、もっと原作に近づけてほしいという彼女の意向があったことと、7年間ハリウッドに映画化権が渡っていたこと、またご覧いただいてお分かりになったと思いますが非常にチャレンジングな企画であったため日本映画界ではなかなか実現が難しく時間がかかってしまったという経緯がありました」と説明。その上で、「27年前の出来事は非常に残念ではありましたが、機が熟したというか時代が『箱男』に追いついたという気がしています。いままさに『箱男』の時代がきたと思っていて、私自身は今回の映画化をとても気に入っています」と加え、新作への並々ならぬ自信をのぞかせた。

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また、原作も読んでいるという熱心な観客から、メタフィジカルな部分もあり同時に哲学的でもある、とても特異な要素を持つ原作を映画化するにあたって、どういう風に作り上げようと思ったのかという質問に対しては、「大きくふたつあります。ひとつは、この原作は読者の数だけ違う解釈があると思っています。プラス、読んだ読者自身が箱男になるという仕掛けがある小説だと思っています。なのでそれを映画化するには、これを観た観客が全員箱男になるということをまず念頭に置きました。次に、この原作には謎がいくつかあって、例えば箱男は誰かということ、また原作内で唯一記号ではなく名前が付いている戸山葉子さんという人がどういう人なのかということ、それをこの映画で解明しようと考えていました」と意識していた点を明かした。

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続けて主演の永瀬正敏が「皆さん、遅くまでありがとうございます」と挨拶。深夜の上映のため観客の帰りを気遣う言葉で会場を和ませると「僕は27年前からこの作品に携わらせていただいていますが、当時撮影が中止になる瞬間にも立ち会っています。クランクイン前日に、ハンブルグの街にいる箱男の写真を撮りましょうと皆がホテルのロビーに集まっていたときに、監督がプロデューサーに呼ばれていなくなったと思ったら少し経って歩いて行かれるのが見えて、あれどうしたのかな…と思っていたら「この映画を中止にします」と言われたんです」と当時の衝撃的な出来事を振り返り、「そして27年経って一度頓挫した映画がまた完成するというのは世界でも稀にみる企画だなと思っていて、監督の原作に対する思いの強さを感じました。さらにその作品のワールドプレミアを同じドイツでできるというのは何とも言えないストーリーだなと思っています」と偶然か必然か、本作がもたらした奇跡を噛み締めるように想いを語った。すると、今回新たに出演することになった浅野が「そういう意味では、僕は27年前には参加していなかった俳優ですので、“ニセ医者”の役にはぴったりだったかなと思っています」と差し込み笑わせた。

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石井監督から直々に27年前の映画との違いを話してほしいと振られた佐藤浩市は、「明確にお答えをしたいと思うんですが、私も60半ばでして27年前の映画のことはあまり覚えていません」と前置きで笑いを誘いつつ、「ただひとつ言えるのは、先ほど監督もおっしゃっていましたが、この映画の中で名前が出るのは看護師の彼女だけなんですよね。あとは“わたし”だったり“軍医”や“ニセ医者”だったり固有名詞がなく記号であるということ、そして箱男たちが自分たちの手帳、メモ帳に捉われて、それが自分たちのアイデンティティのすべてになってしまう、その描写がより強調されているのが前回のものと本作が大きく違う部分かなと思っています」と自身の見解を述べた。

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最後に、石井監督が外山葉子役の白本彩奈が舞台の本番があり残念ながらこの場に登壇できなかったことに触れ、彼女が新人女優であることを説明すると観客から賞賛の拍手が巻き起こった。

こうして、“宿命の地”であるドイツでのワールドプレミアを大盛況で終えた『箱男』は、いよいよ今年日本でも公開となる。本作のさらなる続報に期待してほしい。

©️ Olivier VIGERIE

映画『箱男』
【物語】
『箱男』 ――、それは人間が望む最終形態、すべてから完全に解き放たれた存在。ダンボールを頭からすっぽりと被り、都市を徘徊し、覗き窓から一方的に世界を覗き、ひたすら妄想をノートに記述する。カメラマンである“わたし”(永瀬正敏)は、街で偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、のぞき窓を開け、遂にその一歩を踏み出すことに。しかし、本物の『箱男』になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。“わたし”をつけ狙い『箱男』の存在を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野忠信)、すべてを操り『箱男』を完全犯罪に利用しようと企む軍医(佐藤浩市) “わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本彩奈)……。
果たして“わたし”は本物の『箱男』になれるのか。

出演:永瀬正敏 浅野忠信 白本彩奈/佐藤浩市
渋川清彦 中村優子 川瀬陽太
監督:石井岳龍
脚本:いながききよたか、石井岳龍
原作:安部公房「箱男」(新潮社)
プロデューサー:小西啓介、関友彦
製作:映画『箱男』製作委員会
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:コギトワークス
ⓒ2024 The Box Man Film Partners
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hakootoko/
公式X(旧twitter):https://twitter.com/hakootoko_movie

2024年全国公開