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『恋に落ちた男(原題)』 ハン・ドンウク監督 インタビュー SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014

7月19日(土)から7月27日(日)まで埼玉県川口市で開催された【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014】。その長編コンペティション部門に出品され、多くの観客の涙を絞った韓国映画『恋の落ちた男(原題)』のハン・ドンウク監督に話を聞くことができた。

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映画の主人公はファン・ジョンミン演じる高利貸しの取り立てをするチンピラ、テイル。昏睡状態にある父親の借金返済に追い詰められている銀行員ホジュンに一目惚れし、自分とデートすることと引き換えに借金を帳消しにすると持ちかける。最初は相手にもされないテイルだったが…。

女性の理想からはほど遠いけれど、優しさを秘めたテイルと、しっかり者で清楚な美しさを持つホジョン。生きる世界が違う二人の恋を描く、ありがちとも言えるメロドラマの王道なのに、なぜか心を揺さぶられ続け、映画半ばからラストまで、涙が止まらない。映画祭での上映中もあちこちからすすり泣きが聞こえてきた。

ハン・ドンウク監督にとって本作が初監督作品。副監督をつとめていた映画『新しき世界』の撮影半ばに、ファン・ジョンミンと制作会社社長から「メロドラマを作るから一緒にやろう」と誘われた。

「『新しき世界』クランク・アップ後、監督に決まったと聞いた時は嬉しくてウキウキでいっぱいでした。『やった~!ついに監督だ』とうれしい気持ちだけでしたが、実際に準備を始めてからプレシャーが押し寄せてきて大変でした」

監督を引き受けた時には「メロドラマを撮る。主演はファン・ジョンミン」ということだけが決まっていた。そこから何度も話し合い、大勢の意見を取り入れながら物語を練り上げた。初めはソウルだった舞台をクンサンに移すことに決め、一時期、ハン監督自身がクンサンに住んで脚本を書きながらロケハンもしたと言う。

「繊細な感情・表情を描く物語なので、現代の都会の喧騒から切り離されたような街、クンサンを選びました。実は…僕の両親が恋愛した街でもあります」

ハン監督が大切にしたことの1つが「自分が感動したこと、自分にとっての真実を描くこと」だったと言う。たとえば、テイルがホジョンに振られて他の女性に会いに行く場面がある。

「全員にこの場面は入れない方がいいと反対されました。特に女性のスタッフには。でも男にはそんなところがあるんです。ツライことがあった時、他の女性でもいい、なぐさめて欲しくなるんですよ。迷った時には、自分の心に聞きました。真実がどうかを」

撮影では1つの場面について、俳優にわずかに違う何通りもの演技をしてもらい、編集段階で最も相応しいと思えるものを選んだ。「映画全体の流れを見ながら最も相応しい感情表現を選ぶことができた。そうした細かな積み重ねがこの映画を作っています。俳優にとってもスタッフにとっても負担が大きい撮影方法でしたが、皆が理解し快く協力してくれました。とても感謝しています」

インタビュー後の写真撮影では「俳優さんみたいにかっこよく撮って下さいよ」と明るさいっぱいの姿を見せてくれたハン監督。

その内に秘めた男のロマンをたっぷりと詰め込んだ映画『恋に落ちた男(原題)』は、2015年春新宿シネマートにて公開が決定!映画祭での上映を見逃した方は、来春、必見です。