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百鬼オペラ『羅生門』 アブシャロム・ポラック インタビュー 「素晴らしい旅路を体験して頂けると思います」

2013年に上演されたミュージカル『100万回生きたねこ』(以下、『100万回~』)で、その年の演劇賞を総なめにしたイスラエルの演劇ユニット、インバル・ピント&アブシャロム・ポラックが今年9月に 百鬼オペラ『羅生門』を上演する。
『羅生門』『藪の中』『蜘蛛の糸』『鼻』という芥川龍之介を代表する4つの小説を1つにした物語に、歌やダンスを交え、さらに百鬼・・・妖怪たちもたくさん出て来る舞台になるという。

その着想について、そしていったい、どんな舞台になるのか? アブシャロム・ポラックに話を聞いた。

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―芥川作品との出会いは?
芥川龍之の作品は黒澤明の映画で観ていましたが、演劇にもなっているとは知りませんでした。『蜘蛛の糸』『藪の中』のあらすじを読んで直観的に「もっと知りたい。中をのぞいてみたい」と感じました。その後、『100万回~』で、そして今回も作曲・音楽監督をつとめてくれる阿部海太郎さんから英訳本をもらって読みました。

―芥川作品のどこに魅かれたのですか?
他にも理由はありますが、まず羅生門という象徴的な門に魅かれてしまったのです。この門が、時間や善悪、新しいものと古いものなど、ものごとを2つに分けることができる門でもあると感じたからです。そして調べてみると、その場所には鬼や魂や霊魂にまつわる伝説があることがわかり、そこからもっと大きな世界、妖怪の世界へと広がりえる場所だと思いました。
芥川の物語にはリアリティと神話的なもの、実際に起こるドラマと想像の世界でのドラマ、その両方がある。感情をゆさぶられると同時に、ファンタジーの世界、想像の世界に行ける。両方の魅力を秘めた作品だと感じました。

-羅生門に妖怪・・・そう聞けば、いかにもありそうに思えますが、実は聞くまではまったく思いつきもしなかった組合せでした。
イスラエルには妖怪という概念はなく、似たような存在もいません。妖怪は日本独特の伝統的な世界観の中で育まれてきた存在ですね。とても興味深いです。

―では、なぜ本作で妖怪を登場させようと思われたのでしょうか?
公演を考えるとき、「一見とてもかけはなれた要素を一緒にしてみる。どう1つにするか」ということをやります。すると、すでにあるものを組み合わせて、何か新しいものを作り出せることがあります。
また、ものづくりをするとき、一般的にも、そして私個人としても、まったく異なったように思えるものが、なぜか1つのものにつながっていくことがあります。それは一見すると違っていても、その中の感情的な部分や、哲学的な理由などにつながりをみつけることができるからです。ものづくりは、それをいかにコンビネーションさせていくか…ということに尽きると思います。
『100万回~』の時は、日本のみなさんにとっては、とても馴染みのある『100万回~』という絵本に、なにかちょっと違うものを融合させて、新しいけれどなにかもう知っているような、馴染みのあるようなものになりました。『100万回~』の時とは素材も世界観も違いますが、本作も考え方や方法はまったく同じです。

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―本作では4つの小説を1つにして、音楽もつくるとのことですが、ポラックさんの意図は、どのようにクリエイティブスタッフに伝えていくのでしょうか?
こうした複雑なプロジェクトでは、源が違う人たちが一堂に会して一つの目標に向かって作品をつくっていきます。私はパフォーミングアートや芸術というのは、人が出会う場所、集う場所だと思っています。アーティストたちが1つの公演を目の前にして集まり、理解を深めていく中でやるべきことが見えてくる。そして花を咲かせることができると思っています。
いろいろなスタッフとやり取りしていく中で、時には不可解に思ったり、振り返ったりするときもあるのですが、最終的にはきちんとおさまるべきところに納まって出来上がるのです。
例えば『100万回~』では、脚本家が複数いて、それを1人がまとめ、歌詞はまた別の人が書き、作曲家は2人いたのです。でも、最終的にはみんなが一緒につくることになったのです。そして出来上がったのがあの『100万回~』の公演なんです。

―では最後に百鬼オペラ『羅生門』はどんな舞台なのか、教えて下さい。
最近は観客のみなさんにサプライズをあたえたり、挑戦を課したり、子供の頃から馴染んでよく知っているつもりのものを違う視点から見てもらい、再発見をしてもらう・・・というような作品がとても減っていると思います。
本作はどなたがご覧になっても、自分となにかしらつながることができる作品、一人一人がファンタジーを描くことができる作品だと思います。それぞれが違ったところから感じて、素晴らしい旅路を体験して頂けると思います。

アブシャロム・ポラック
■イスラエルの演出家。俳優としても活動している。
インバル・ピント(女性)と共同演出をするスタイルで、1992年よりINBAL PINTO & AVSHALOM POLLAK DANCE COMPANYを立ち上げ、イスラエル国内だけでなく、世界各国で公演を行う。日本での直近の活動は、2013年に、オリジナルミュージカル『100万回生きたねこ』(森山未來×満島ひかり主演)を共同制作し、その年の演劇賞を総なめに。2014年に東京都現代美術館内で新作『ウォールフラワー』、2016年に彩の国さいたま芸術劇場にて『DUST』が上演され好評を博した。

満島ひかり ☆百鬼オペラ『羅生門』☆インタビューはこちらから!!

百鬼オペラ「羅生門」

羅之

@奥山由之

Staff
原作:芥川龍之介
脚本:長田育恵
演出・振付・美術:インバル・ピント&アブシャロム・ポラック
作曲/音楽監督:阿部海太郎
作曲・編曲:青葉市子、中村大史
Cast:
柄本 佑、満島ひかり、吉沢 亮、田口浩正、小松和重、銀粉蝶
江戸川萬時、川合ロン、木原浩太、大宮大奨
皆川まゆむ、鈴木美奈子、西山友貴、引間文佳
Musician:
青葉市子、中村大史、権頭真由、木村仁哉、BUN Imai、角銅真実
公式HP : http://operashomon.com/

日程・会場:
東京公演
会場:Bunkamuraシアターコクーン
公演日程:2017/9/8(金)~9/25(月)
チケット:S・¥10,800  A・¥8,500 コクーンシート・¥6,500(税込)

兵庫公演
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公演日程:2017/10/6(金)~10/9(月・祝)

富山公演
会場:富士市文化会館ロゼシアター 大ホール (静岡県)
公演日程:2017/10/14(土) ~ 10/15(日)

愛知公演
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
公演日程:2017/10/22(日)

【あらすじ】
いつか遠い昔、あるいは遥かな未来。
朽ちた門楼で雨宿りをしている下人。森羅万象であり永遠を生きる百鬼たち、そんな下人を見つめていた。下人は楼上で、女の死体から髪を抜く老婆に出会う。
「生きるためなら罪を犯してもいいのか?」
太刀を抜くが、心に一瞬の躊躇がよぎる。そして、気づく。死体の女に見覚えがあると。
その瞬間、百鬼の歌が響き、死体の女が目を開く。
「あたしが欲しい?」
無限に引き延ばされる一瞬、百鬼の導きで、下人と女の過去と未来のヴィジョンが展開する。
「分からないんだ、自分でも、なんでこんなに惹かれるのか」
巡り合いを重ね、もつれあう無数の糸。その交点に火花が散る。
百鬼は下人に問い続ける。――「おまえは生きてるか? 死んでいるのか?」
芥川龍之介「羅生門」の世界に、「藪の中」「鼻」「蜘蛛の糸」のエッセンスを加えて編み上げる、生きるための魂の旅。かつて人を愛した記憶があった。まだ果たされない約束がある。旅の終わり、下人と女が見つけ出す答えとは。