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片岡愛之助が挑む! ブロードウェイ・ミュージカル『コメディ・トゥナイト!~ローマで起こったおかしな出来事《江戸版》』 

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3月4日(土)から新橋演舞場にて、片岡愛之助が初出演となるミュージカルに挑んでいる。
演目はブロードウェイ・ミュージカル『コメディ・トゥナイト!~ローマで起こったおかしな出来事《江戸版》』。トニー賞6部門受賞したブロードウェイ・ミュージカルの傑作を、宮本亜門がローマから江戸に舞台を置き換えるという前代未聞の演出で見せる。

新橋演舞場には幅広い年齢層の観客がつめかけ、客席からは笑いがあふれていた。

歌舞伎役者でありながら、映像作品に、そして今回はミュージカルにと活躍する片岡愛之助を公演後に囲んで、今の思いを聞いた。

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―ミュージカルへ出演のお誘いが来た時のお気持ちは?
紆余曲折はありますが、僕から「(ミュージカルを)やりたい」とお願いしました。それで「宮本亜門さんとはいかがですか?」とお話を頂いて「喜んで!」と二つ返事でお願いしました。その時に1つだけ「明るい作品、コメディみたいなものを」とリクエストしました。
ブロードウェイ作品を日本で上演する際には、音符1つ変えることもできないのが普通です。衣装もブロードウェイのままで、江戸版に置き換えるなんて、ありえない。でも亜門さんが作詞・作曲のソンドハイムさんと親しく、以前にソンドハイムさんから「日本に置き換えたら面白いから、亜門がやってみなさい」と言われていたそうなのです。でも亜門さんもその時には「この作品をちょんまげでやる役者はいない」と頭の片隅に置く程度だった。ところが今回、僕が「コメディがやりたい」とリクエストしたので「あっ、そんな役者がいた!」と、この作品を持って来て下さいました。
それから脚本を直してくださり、台本がファイルで届きました。本ではなくファイルです。稽古が始まると、脚本を変更して変更して、最後まで芝居がつながった時には、最初にもらった台本は1枚もなかった。(笑)
歌も「英語の歌詞で聞いた時と似た日本語の歌詞にしたい。それで意味が通ってなきゃならない」とこだわって「良いものを作ろう」「絶対面白くしてやろう」と直前まで変更が続きました。
亜門さんも「これほど悩んだ作品はない」とおっしゃるほど。こんなに思い入れの強い作品に、初ミュージカルで出演させて頂いて「亜門さんで良かった」と思いました。

―本作での新しい発見は?
お客様がニコニコ笑顔で観て下さって、ほっとします。
それからミュージカルなので、歌ですね。歌舞伎座に朝から晩まで出演した後で、歌の稽古をやっていました。音符にきちんとあてはめて、歌として歌稽古をしました。それは、妻(藤原紀香)から「亜門さんの稽古が始まった時に歌が歌えるのは当たり前」と言われたからです。
ところが、稽古が始まると、亜門さんに「歌わないで下さい」「今までやってきたことを全部忘れて、セリフで語って下さい」と言われて驚きました。でも「歌えない人がやると、ただのセリフになるけれど、歌が完成した上で一度全部壊す。壊してセリフに音符をつけて、語りかけるように歌う」と言われて、「稽古が始まった時に歌が歌えるのは当たり前というのは、こういう意味だったんだ」と分かりました。習字でもいきなり草書は書けないですよね。楷書がきちんと書けて草書が書けるようになる。非常に勉強になりました。
でも、今でもつい歌ってしまいそうになることがあるので「♪落ち着け、落ち着け、大丈夫さ」(劇中の歌詞)と言い聞かせています。亜門さんからも「頑張り過ぎず、楽しみながらやって下さい」と言われています。

―もともと歌はお得意でしたよね?
得意ということはないですが好きで「ミュージカルをやりたいな」と思っていたので、歌の稽古もやっていました。でも、まさか主役でやらせて頂けるなんて思っていませんでした。「何かミュージカル作品に出られれば嬉しいな」と思ってレッスンをしていました。

―お気に入りのシーンはどこですか?
おじさん4人(愛之助、ダイアモンド☆ユカイ、ルー大柴、高橋ジョージ)が踊る場面です。もう楽しいですよ!(笑)

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ダイアモンド☆ユカイ ルー大柴 片岡愛之助 高橋ジョージ

―話はさかのぼりますが、ミュージカルへの思いが芽生えたのは、いつですか?
もともと歌舞伎しか興味がなかったのですが、一番の転機は若衆歌舞伎をやらせて頂いたことです。それまで座頭や大きなお役の経験がなかったので「お客様が僕を観に来てくださっている」という意識がなかったのです。座頭を任された時に初めて、ふっと「どなたが見に来て下さるのだろう」と気が付いた。ご祝儀として父がちょっと出てくれる他は、僕以外に出演するのは全員がお弟子さんです。ちょっと出る父のために満員のお客さんが毎日来てくれるとも思えない。その時に「(自分を)世の中に知って頂かないといけない」「いろいろ出た方がいい」と思い始めました。
そしていろいろ見始め、勉強を始めて「歌舞伎と同じ舞台演劇のミュージカルも、そのうち、いつかはやってみたいな」とちょっと思い、その思いが積み重なって今につながっています。

―新橋演舞場公演に続いて、4月からは大阪でも上演ですね。意気込みをお聞かせ下さい。
初ミュージカルの初日が、誕生日の3月4日で、皆さまにお祝いして頂いて、非常に有難く思っています。亜門さんの、そしてカンパニーの力を頂いて、良い作品が出来上がり幕を開けました。そして私のホームグランドの大阪でも初ミュージカルができることを、とても嬉しく思っています。「大阪のみなさんにも、きっと楽しんで頂ける」と自信をもってお勧めできます。是非、劇場に足をお運び下さいね。お待ち致しております!

公演直後のこの取材後、愛之助は「これから撮影です!」と元気に出て行った。奥さまは本作を観劇後「ハッピーなパワーをもらって元気になれる」と喜んでいたとのこと。
笑いのあふれる公演と、そしてその舞台に立つ片岡愛之助からも、湧き出るような元気をもらえそうだ。

公演は3月28日(火)まで新橋演舞場にて。4月2日(日)から25日(火)まで、大阪・松竹座にて上演される。

公式HP http://comedy-tonight.com/