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スティーヴン・オカザキ監督 & AKIRAインタビュー!三船敏郎の魅力とは? 映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』

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日本を代表する世界的俳優・三船敏郎の半生とその魂を描いたドキュメンタリー映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』。第 72 回ベネチア国際映画祭ほか全世界 28 の海外映画祭に出品され、米大手映画批評サイト Rotten Tomatoes にて 82%フレッシュの高評価を得た、世界に誇るドキュメンタリー映画が満を持して凱旋し、現在全国公開中だ。

『用心棒』(1961)と『赤ひげ』(1965)にてベネチア国際映画祭で二度の主演男優賞を受賞し、S・スピルバーグやテレンス・ヤングなど海外の名だたる巨匠監督にも愛され、「世界のミフネ」と称賛された俳優・三船敏郎。その偉業とその人生に迫る本作の監督を務めたスティーヴン・オカザキ監督と、日本語版ナレーションを担当したAKIRAに話を聞くことができた。三船敏郎の魅力、本作が制作された意味とは――?

メイン

― なぜ、いま三船敏郎さんのドキュメント映画を撮ろうと思われたんでしょうか?
スティーヴン・オカザキ監督(以下、監督):今回の映画では、撮影が始まってからすでに4名の方がお亡くなりになってしまいました。このような素晴らしい日本映画が昔作られていたということを、一刻も早く若い世代に伝える必要性を感じていたからです。

― AKIRAさんは本作のナレーションをされていかがでしたか?
AKIRA:三船敏郎さんは、僕が大変尊敬している俳優さんです。僕らの世代の代表としてこのお仕事に携われるということはとても光栄なことですし、その反面凄く気が引き締まる大役でしたので、気持ちを込めてやらせていただきました。

― 監督は、AKIRAさんがナレーションをされるとお聞きになってどう思われましたか?
監督:日本版では、HIGH BROW CINEMAの配給、そしてナレーションがAKIRAさんになると聞いて凄く嬉しかったです。AKIRAさんがナレーションとして参加してもらえるということは、まだ三船の映画を観ていない新たなお客様に、三船が出演した作品を観ていただける素晴らしいきっかけになると思いました。

― AKIRAさんがナレーションをするということに、この作品にも大きな意味があるのですね。
 監督:AKIRAさんがナレーションをされることで、若い世代に(三船作品を)繋ぐための架け橋になってくれる。今回、AKIRAさんほど適している方はいないと思いました。そういう縁があるんだと思います。

― 黒澤監督や三船敏郎さんを崇拝されているマーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙-サイレンス』にも出演されました。
AKIRA:そうなんです。
監督:そこでも縁が繋がりましたね!

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― 今活躍されている海外の監督や俳優さんは、皆さん口を揃えて三船敏郎さんや、黒澤明監督の魅力を語られます。本作でも多くの方のインタビューが収められていますが、監督とAKIRAさんが思う三船さんの魅力とは?
監督:映画の歴史上で三船が持っている存在感と、スクリーン上での圧倒的存在感は、現在活躍している俳優さんでもなかなか表せない。彼はそんな個性の持ち主だと思っています。

AKIRA:一言では言い表すことができないですね・・・。アクターとしてはエネルギッシュで、振り幅も広く、人間としてはとてもユーモアがあって優しい人。色々な方のお話を聞いてそう感じました。でも、戦後の大変な時期、リアルな権力争いのなかで生きていた。だからこそ、時代や権力に流されることなく、黒澤明監督と共に「何かを見出していこう」と新しいものを作り出していったんだと思うんです。そういう“強さ“や、他にはない“色”というのが凄い魅力ですね。今の若い人たちが、その“昭和の力強さ”とか“反発精神”を真似をすると、ただ不良っぽくなったり、ただのワガママになりがちなのは、そこの違いなのかなと思います。リアルに波乱万丈の人生を経験している、まず食べていくために俳優を始めたというところが根底にある。今の世代と三船敏郎さんが生きた時代の俳優さんとの違いはそこにあるのではないでしょうか。改めて今回のドキュメンタリーから学ばせていただくことがたくさんありました。

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― 俳優さんがよく「役を生きる」という言葉を使われますが、三船さんは役を生きるというか、ご自分の生きざまを役に反映されていたのでしょうか?
AKIRA:そうだと思います。

― これまで、監督は戦争をテーマにした作品も撮られていらっしゃいますが、今作でも三船さんの人生のなかで“戦争”というものに目を背けることはできないと思います。やはり戦争は三船さんの人生に大きな影響を与えたと思いますか?
監督:戦前と戦後の三船は個人的にも変化がありましたし、映画業界でも戦前と戦後では大きな違いがあったと思います。日本の社会そのものが非常に不安定で色々な変化があった時代でした。黒澤監督も、戦争の前は普通の監督の一人でしたが、戦後で全てが変わったんだと思います。みんな、食べるものも少なくお腹を空かしているような苦しく大変な時期。その一方、アーティストや次の時代を作っていく人たちにとっては新たなドアが開いたと考えます。当時20代、30代だった人たちにとって、色々挑戦することができて、成長できるような時代だったのではないでしょうか。戦争はそういう時代を作りあげたと思います。
三船の象徴は、個人でも活躍できること。戦前は自由がなく、挑戦をしても政府などの圧力に押しつぶされるようなことがあったのですが、戦後に三船&黒澤のコンビは尖ったことができる時代がきたんだと思います。

― しかし、また今の時代は、コンプライアンスに対する社会の目がますます厳しくなって、制約が多くなっている気がします。三船さんが活躍されていたときのような映画作りを同じようにはできないかもしれませんが、AKIRAさんがもし、三船さんの時代に俳優として演じるとしたら、どの作品に出演したいですか?
AKIRA:まずは、黒澤映画の中で一番最初に観た『七人の侍』がやっぱり忘れられない作品ですし、僕自身も影響を受けた作品の一つです。ああいうエネルギッシュな現場で一度やってみたかったと思います。あと、石原裕次郎さんと三船さんの合作になる『黒部の太陽』。プロダクションの枠を越えて製作するなんて、当時は考えられないことなんです。今でも芸能事務所の兼ね合いとか、いろんなパワーバランスなどがあったりして、あの人とこの人が共演したらどれだけヤバいことになるんだろう!って思うことってあるじゃないですか。でも、三船敏郎さんがそういうことを切り開いて今の映画業界を作ってきてくれた気がするんです。枠を超えた中での映画作りはとてもエネルギッシュだと思うので、現代でもそういうことを受け継いで壁をぶち破っていい作品を作る、面白いものを作るという一心で集まって映画作りをしてみたいなと思いますね!
やっぱり、三船敏郎さんのように“情熱”が一番大事なんじゃないでしょうか。自分たちの情熱がどれだけ強いかということで、群衆を巻き込んで映画に全ての力を注入できるかということだと思います。

― 姿はなくても、その精神を受け継ぐことはできる・・・。
AKIRA:この(石原裕次郎と三船敏郎の)前代未聞のコラボレーションは、今の僕たちにも勇気をもらっています。

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― 本作の中でも語られていますが、昔は男の人というのは「強くて立派な人」という定義がありましたが、今はそのイメージも変わってきました。監督とAKIRAさんが考える「強くて立派な男」とはどんな人ですか?
監督:僕は奥さんもいますし、14歳になる娘もいるので、「強くて立派な男」を常に追求しています。広い意味で“強い”ということは必要だと思います。もう一つは、“気遣い”も大事かと。三船のエピソードを色々な女優さんからお聞きしましたが、例えば女優さんが立っていると三船は、サッと椅子を差し出す気遣いがあった。そういう気遣いはポイントだと思います。
職業的にはなかなか難しいことだと思います。あまり気遣いが過ぎると自分のやりたい芸術の追求ができなくなってしまうこともあるので、そのさじ加減は難しいところですね。

AKIRA:僕はまだ家族を持っていないので、家族ができたらより強くなりたいと思うでしょうね。自分以外のために自分を犠牲にしてでも、人のために生きることができればそれが「強い男」の証なのかなと思います。それは侍(サムライ)精神にも入っていること。監督がおっしゃったように、三船さんのような優しい気遣いができる、思いやりは大切だと思います。筋肉つけて、知識もつけることも大事かもしれませんが、何よりも心が優しい人が一番強い男だと思います。

監督:でも、現実は僕はけっこう自己中なんですけどね(笑)。

― それでは、最後にこれから映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
監督:三船さんは偉大な俳優で、色々な作品を作ってこられた方。年配の方にはぜひもう一度、黒澤映画をはじめ、素敵な映画を観るきっかけになってもらえればいいですし、若い方たちにもぜひご覧いただきたいと思います。ぜひ劇場でご覧下さい。日本公開前に何箇所か上映していますが、特に年配の方がその当時を思い出しながら観て目を輝かせていらっしゃったことがとても印象的でした。

AKIRA:本作では、色々な方がコメントをしていますが、ニューヨーク・タイムズが「これから三船敏郎という人物を知る人、これまで見てきた人にとっても、これはとてもエネルギッシュな入門書です」というコメントでした。まさに、今まで三船敏郎さんを愛してきた方も、彼の新たな一面を見ることができるドキュメントでもあるし、我々世代のように、これから偉大な世界の三船敏郎さんを知る人もこの作品から学ぶことができると思います。ぜひ、そういう視点で劇場に足を運んで、三船敏郎さんや黒澤明監督、そして彼らに携わった多くの周りの人たちからパワーをもらって、三船敏郎さんのファンになってもらいたいと思います。

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【スティーヴン・オカザキ プロフィール】
1952 年 3 月 12 日生まれ。1976 年よりドキュメンタリー製作に携わり、数々の作品を製作。1985 年『Unfinished Business』にて米国アカデミー賞ノミネート、1991 年には映画『収容所の長い日々/日系人と結婚した白人女性』で最優秀短編ドキュメンタリー賞を受賞。2006 年に原爆投下から 60 年後のヒロシマを描いた『マッシュルーム・クラブ』で再びアカデミー短編ドキュメンタリー映画賞にノミネート。HBO 作品『ヒロシマ・ナガサキ』にて 2008 年エミー賞を受賞。

【AKIRA プロフィール】
1981 年 8 月 23 年生まれ
EXILEの中心核としての活動に加え、数々の映画、ドラマ、舞台、声優など様々な分野で活躍。2009年の映画『ちゃんと伝える』では日本映画批評家大賞新人賞を受賞。10年中国公開のアンドリュー・ラウ監督作品『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』にてアジア映画デビュー。17年にはマーティン・スコセッシ監督のハリウッド作品『沈黙‐サイレンス‐』に出演。
またアジア人初となる「ラルフローレン」のアンバサダーに就任し、2018年は広告イメージモデル契約を結ぶなど、世界に活躍の場を広げている。

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『MIFUNE: THE LAST SAMURAI』
スティーブン・スピルバーグやマーティン・スコセッシなど世界の巨匠に愛された唯一無二のサムライ俳優・三船敏郎。2016 年にはハリウッド殿堂入りを果たすなど、今も世界中のファンの心を惹きつけ離さない“世界のミフネ”の波乱に満ちた生涯と映画人生に迫るドキュメンタリー映画。三船が出演した黒澤明監督『七人の侍』(1954 年)、『蜘蛛巣城』(1957 年)、『用心棒』 (1961 年)、『赤ひげ』(1965年)、そして稲垣浩監督『宮本武蔵』(1954-56 年)などに焦点を当て、家族、日本の映画関係者や俳優、海外の著名人たちのインタビューと貴重な映像資料とともに、その生涯と世界に影響を与えた「サムライ映画」の進化を明らかにする。

監督・編集:スティーヴン・オカザキ
ナレーター: AKIRA
出演:香川京子、司 葉子、土屋嘉男、加藤 武、八千草薫、夏木陽介、二木てるみ、
野上照代、宇仁貫三、中島春雄、中島貞夫、佐藤忠男、明石 渉、三船史郎、黒澤久雄、スティーブン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシ、役所広司
企画:中沢敏明 白石統一郎
製作:田中 渉 河内 功 星野岳志
プロデューサー:厨子健介 木藤幸江 スティーヴン・オカザキ 後藤太郎
コンサルティング・プロデュ―サー:三船力也
撮影:日名 透 石川泰之
音楽:ジェフリー・ウッド
脚本:スティーヴン・オカザキ スチュアート・ガルブレイズ 4 世
原案:松田美智子「サムライ 評伝 三船敏郎」(文藝春秋刊)
協力:三船プロダクション 黒澤プロダクション 東京国立近代美術館フィルムセンター 江戸東京たてもの園
製作:セディックインターナショナル、電通、TOKYO MX、中央映画貿易
制作:C・A・L FARALLON FILMS
配給:HIGH BROW CINEMA
Ⓒ”MIFUNE:THE LAST SAMURAI”Film Partners
公式サイト:http://mifune-samurai.com/

全国公開中

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