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シルヴィア・チャンQ&Aに登場  ジョニー・トー監督『華麗上班族』東京フィルメックス

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今年のフィルメックスで最も早くにチケットが売り切れた作品がこの『華麗上班族』。監督がジョニー・トー、出演がチョウ・ヨンファ、シルヴィア・チャン、イーソン・チャン、タン・ウェイと聞いて、迷わずチケットを購入した人が多いことだろう。
しかも 元々はシルヴィアが脚本・演出を手掛け、ジョセフ・チャンらが出演、港台・中国でチケット完売の人気ストレートプレイをミュージカル映画にしたというのだから、一層興味をそそられる。中国ではドラマ化もされて、こちらも人気を呼んでいる。
フィルメックスでは2回上映されたのだが、前売りはいずれも即刻完売。当日券引き換えにも長蛇の列ができ、満員御礼となった。

映画はヨンファが会長をつとめ、株式上場を準備中の企業が舞台の群像劇。2人の新入社員を演じるのはトー監督の「盲探」に出演した王紫逸と郎月婷という若手中国俳優。やり手の部長(イーソン)、生真面目な経理課の女性社員(ウェイ)、そして美しき副社長(シルヴィア)という6人の男女の仕事と複雑な人間関係が、リスクを負いながらも大きな成長をとげる昨今の中国経済状況を背景に描かれる。
舞台を意識しつつも近未来的な感覚もあふれるウィリアム・チャンの美術、羅大佑&林夕コンビの音楽も香港映画ファンには嬉しいところだ。

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今回のフィルメックスでは審査員もつとめるシルヴィアは、11月26日の上映後、リラックスしたスタイルでQ&Aに登場した。
「元々は本作を自分で映画にするつもりだった」というシルヴィア。ミュージカル化も「私がミュージカルが好きで、私から提案した」とのこと。

この映画は登場人物が話す言葉が、イーソンやヨンファは広東語、タンウェイは北京語とバラバラ。この点については「当初、研究したのは舞台がどこか…ということ。香港ではない大都市…という設定で、大都市なら色々な人がいて、言葉も色々。その人が喋る自然な言葉をそのままにした。ただ撮影現場では環境が良くなかったので、同時録音が上手くいかないところもあって、アフレコもしました。中国本土での公開時には配給からのリクエストで全部北京語で上映しました」と、いろいろな意味で今の中国の状況が反映された映画となったようだ。

栄光の80年代の香港映画スターのヨンファとシルヴィア。その久々の共演については「ヨンファの撮影は10日。規定の撮影時間を過ぎるとギャラが高いので、早く終えようとしたのに、ヨンファは映画好きで、やっぱり帰らずに残っていました。とても楽しい撮影でしたが、唯一残念だったのは2人の共演シーンが少なかったこと。この点は今後に期待したいです」と素敵な笑顔で答えた。

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注目のミュージカル化とキャスティングについては「ジョニー・トーが『歌はいいが、ダンスはだめ。中国人にはなじまない』と言うのでダンスはなかった」「ヨンファは「殺されても歌わない」と言ったので、私も歌わないことに」と話したので大爆笑となった。
「これだけ歌って演じられるのはイーソンだけ。タン・ウェイには自分で歌って、自分の感情を表すようにリクエストした」「3時間半の舞台を2時間の映画に濃縮するためには、台詞を歌うミュージカルが最適だった」とも語り、それに対してトー監督は「アクション映画を撮るのと同じように撮るといいでしょう」と言ったそうだ。

1953年生まれだが、変わらぬ気品ある美しさをたたえていたシルヴィア。本作で今年の金馬奨主演女優賞にノミネートされながら、惜しくも『百日告別』のカリーナ・ラムにさらわれてしまった。今回のフィルメックスでは監督として『念念』を、俳優として『山河故人』と特別招待の3作品で参加。製作サイドとしても出演者としても、ますますの活躍が期待されている。

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