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舞台『それから』ゲネプロ&フォトセッション

「気軽に文学と演劇に触れるものを」と企画された‘文芸喫茶’シリーズ第一弾夏目漱石原作の『それから』が、5月3日(水・祝)に東京・俳優座劇場にて初日を迎えた。開幕前にゲネプロを公開し、フォトセッションが行われた。

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夏目漱石の小説「それから」は1909年(明治42年)発表の新聞連載小説。当時の日本は、1905年に日露戦争に勝利をおさめ、世界の一等国の仲間入りをしたと言われていた頃。だがこの連載終了直後に伊藤博文が暗殺されるなど、世界の大きなうねりの中で、富国強兵を急ぐ日本にとって苦しい時代であったようだ。
本作は、今から100年以上も昔の、複雑な時代背景をもつ小説を、今の時代にすくいあげるように舞台化。現代の私たちともかわらぬ心を描いて、すっと入っていける物語にして見せた。

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舞台には代助の和室を中心に、下手にはレトロな雰囲気を持つ机と椅子が配され、上手の格子戸の向こうは、舞台袖に続いていく。舞台セットの和と洋、衣装の着物と背広や洋服の対比が、明治末期のモダンを感じさせる。

帝大を卒業した後も定職につかず、毎月父からもらうお金で気ままに暮らしている主人公の長井代助を演じるのは平野良。2時間の上演時間中、ほぼ舞台に出ずっぱり。今とは違う言葉づかいの長台詞もさらりとこなし、その姿と表情に、この時代の「高等遊民」に漂う憂うつと矛盾とを映してみせる。

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出演は、他に代助の古い友人平岡に今立進、その妻三千代に帆風成海の合計3人。他にゲストが登場するが(ゲネプロでは寿里)、本筋には絡まないスペシャルな登場であり、キャスト3名が濃密な物語を作りあげる。
着物姿の帆風は楚々とした姿に深い覚悟を感じさせ、明治女性はさもありなんと思わせてくれる。
今立は平岡役の他に、いくつもの全く色合いの異なった役を見事に演じ、芝居の緩急を握るキーマンとなった。濃密で重苦しくなりがちな主題の本作を、現代に引き寄せ、身近に感じさせてくれていた。

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囲み取材では、稽古開始直後は、膨大な台詞の量のために、台本と向き合うばかりで、言葉を交わすこともなかったと打ち明けたキャストの3人。帆風が「私の方から壁を作っていた」と告白すれば、今立は「見事、5キロ減量に成功することができました」と、稽古の大変さを吐露。平野は「普段は見逃してしまいがちな細かなところも、1つ1つ芝居を積み上げて」「濃密というか濃厚な時間が流れる演劇だと思う」と、本物の演劇への自信をのぞかせた。

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左から ゲストの寿里、平野良、帆風成海、今立進

公演は日替わりにゲストをむかえて14日(日)まで、六本木の俳優座劇場にて。

【文劇喫茶】シリーズ第一弾 舞台『それから』
【日時】2017年5月3日(水・祝)~14日(日)
【会場】東京都 俳優座劇場
【チケット料金】プレミアムシート 9,500円(特典付き)、一般席 6,500円

【原作】夏目漱石
【脚本】田中洋子
【演出】山田佳奈(□字ック)
【出演者】長井代助:平野 良、平岡三千代:帆風成海、平岡常次郎:今立 進(エレキコミック)
【日替わりゲスト】3日(水・祝) 19:00 寿里、4日(木・祝) 14:00/19:00 水石亜飛夢、
5日(金・祝) 19:00 /6日(土) 14:00/18:00 藤原祐規、7日(日) 14:00/18:00 碕理人、
9日(火) 19:00 松本寛也、10日(水) 14:00/19:00 加藤良輔、
11日(木) 19:00/12日(金) 19:00 佐藤貴史、
13日(土) 14:00/18:00 宮下雄也、14日(日)15:00 米原幸佑

◆公式サイト
http://www.clie.asia/sorekara/