本日9月9日(火)より日生劇場にて、京本大我主演 ミュージカル『Once』が上演される。初日に先立ち、囲み取材と公開ゲネプロが行われた。
本作は2007年に公開され、世界中で大ヒットしたアイルランド映画を原作に、2011年12月にミュージカル版が開幕。2012年2月にブロードウェイに進出し、トニー賞11部門にノミネートされ、8部門を受賞。代表曲「Falling Slowly」は第80回アカデミー賞最優秀歌曲賞を受賞している、楽曲も愛されたミュージカルで、日本でも2014年に来日公演、2023年には海外プロダクションによるコンサート版が上演された注目作品だ。
アイルランドの首都・ダブリンを舞台に、失恋したことでミュージシャンの道をあきらめようとするガイ(京本大我)と、チェコ移民のガール(sara)との出会いから始まる物語。今回は稲葉賀恵(文学座)が演出をつとめ、音楽で心を通わせたふたりの「めぐり逢い」の物語として、日本版新演出として立ち上げる。
【囲み取材】
稲葉賀恵 斉藤由貴 京本大我 sara 鶴見辰吾
稲葉:ブロードウェイで初演を迎えた作品ですけれど、今回は本当に日本版の新演出で、ゼロから皆さんと一緒に作り込んできました。ブロードウェイのバージョンと全く違うものではありますが、音楽の多面的な素晴らしさを伝えるために2ヶ月間頑張ってきたので、ようやくお客様にお観せできることがとても嬉しいです。
(京本とは)お会いしてから2カ月しか経っていないので、おこがましいですけれど、アーティストとしてかなり面白い人なんです。私の感覚だと、自分自身とずっと戦っている感じの方だと思うんですよ。世界に対してもちょっと挑発しているし、もがいている。そういう人じゃないと、ものって作れないと思うんです。だから、ものを作る上で、かなり独特で刺激的な方だと思った時に、そういう人がガイ役をやるのは、ものすごく適役だと最初に思いました。稽古をやっていくうちに、一緒にものを作る人間としては、そういう人と作るのは本当にワクワクするんですよね。だから「この方だったらどこまででも飛べるな。行けるところまで行けるんだな」という信頼感が、不思議と最初からあったような気がしています。
京本:僕個人はギター練習期間もあったので、この作品に半年近く、皆さんと合流してからもう2ヶ月近く、寝泊まりはしていないんですけど、合宿していたぐらいの、濃密な時間でした。あっという間にこの日を迎えてしまっているので、あとはもう開き直って、ここまでやってきた自分と皆さんのことを信じています。稲葉さんは本当に素敵な演出をしてくださっているので、この作品のメッセージが届けられたらと思っています。
僕もブロードウェイ版、5月で言うと韓国で上演されていたのをプライベートの時間を使って観に行ったりして、勉強させてもらったんですけど、映画やブロードウェイ版の印象が強かったところに、稲葉さんからのご提案で、今回は一新してというプランを聞いた時に、すごい斬新さと、どういう「Once」になるのだろうという、未知ではあるんですけど、すごくい高揚したのを覚えています。
稽古が始まって、どんどん具現化されて形になっていくのを見て、稲葉さんの作りたい「Once」ってこういうことなんだと、日々わかるようになってくると、この作品の魅力や新解釈にどんどん自信がついていきました。それこそ早く観ていただきたいなという気持ちもそうですし、見ていただいた方々それぞれに、気づく箇所や感じるポイントが違うんじゃないかなと思うほど、多面的で細部までこだわった演出になっています。見どころがたくさんあって、僕もどこをチョイスしていいのかわからないような状態です。
(1番苦労したのは)やっぱりギターですね。そのお話をいただいたのは数年前だったんですけど、その時には「シンガーソングライターの物語(のオファー)が来てるけど」というすごいアバウトなオファーをいただいて、「Once」だとわからなくて。僕はギターを独学ではやっていたので、「独学でやっていたぐらいのレベルで良ければもちろん挑戦したい」と伝えたのですが、お話が進んで、楽譜やいろんなものがきたら難易度が相当高くて。これはちゃんとギタリストの方とかアーティストさんに頼むべきなんじゃないかというぐらい、レベルの高い曲が多かったので、正直心が折れかけた時も何度もあるんですけど、音楽監督の皆さんや演奏してくださる皆さんと、早い段階から練習する時間を作っていただいて、皆さんのおかげでなんとか今日まで来れました。これからいろんなことが、公演がたくさんあればあると思いますけれども、ここまでやってきた自分の経験を糧にして、なんとか乗り越えていきたいなと思ってます。
(ギター演奏は)リプライズも含めたら9曲近くあって。でも練習はいっぱいできたかなと。
「Golden SixTONES」の1本目と2本目の収録の合間に、楽屋で5人が休んでいるところで僕は急に演奏するという、5人がどんな反応で聞いてくれているかとか、ストリート的なことを楽屋でやりました。多分うるさくて、めちゃくちゃ迷惑だったと思うんですけど、5人の前でちょっとルーティーン的にやっていたりしました。
「難しそうな演奏してるな」と思われたら負けだなと思っていて、作品とか物語が皆さんに届くのが1番だと思うので、シンガーソングライターという役でもあるので、ギターがまずベースにあって、あとはメッセージが届けられたらと思っています。
僕だけじゃなく、saraちゃんも演奏していますし、演奏以外の見どころもたくさんある作品なので、目が足りないというか、1つのシーンでも稲葉さんがそこまで意味を持たせるんだというぐらい、細かいところまで演出を足してくださっているので、そういうとこも含めて、ちゃんと見届けていただきたいなと思います。
Sara:稽古が始まってからもう無我夢中で、台本の言葉の数やいことがすごく鮮やかで、いろんな人生のいろんなことが凝縮された作品なので、演じることでひたすら走ってきた感覚があります。お客様を迎えてどういう感覚になるのかは未知数ですし、この作品がお客様と一緒にどうなっていくのか、楽しみです。
斉藤:歌稽古を含めて始まってから約2カ月弱。それだけこのお稽古に時間を割けるのは、今の時代、贅沢なことだと思うんです。それは、それだけ高みを目指そうという制作側の本気度だと思います。私自身はあまり出てないです。(笑)
ものすごく素晴らしい作品だと、口幅ったいですけど断言できます。稲葉さんの演出も素晴らしいし、京本さんのギターと声と、saraちゃんの声と、見終わった後に言葉にならない何かに圧倒されるような作品ではないかと、初日を前にして感じています。
(京本は)私にとっては、正直申し上げて、やっぱりSixTONESのイメージが強かったのですけれど、帝劇の最後の日の生番組で、1人でミュージカルとして歌っていらっしゃるところをテレビから見て、お上手なのはもちろんなんですけど、それだけじゃなくて、「この方は本当に伝わる歌を歌う方なんだな」と、伝わる、心に届く距離をちゃんと持って歌う方だなと感じました。それだけじゃなく、本当にギターが素晴らしいです。
鶴見:これをご覧になる方は、おそらく味わったことのないような余韻を持ち帰ってくださると思いますので、それをぜひ楽しみにしていただきたいと思います。
普段自分の稽古が終わったらさっと帰っちゃうんですけど、他人の稽古も本当に面白い稽古で、こういう雰囲気のお稽古はなかなかないなと思いました。稲葉さんの演出は、数学や科学を教えるわけじゃないので、そのやっぱ伝え方がとても面白くて、例えばゆっくりを「軽自動車でゆっくり走るんじゃなくて、フェラーリでゆっくり走って」みたいな、面白い演出をなさるんだなと思って、もうその日から稲葉さんについていこうと思いました。
【ゲネプロ】全編を覆うのは、音楽への賞賛。音楽賛歌だ。音楽は人を救い、人生を変える。京本はギターを弾きながら歌う姿も自然体なら、人生をあきらめかけた男が、どんどん変わっていく様も自然体。ガイを引っ張っていくガールを演じるsaraの、あふれんばかりの明るさは、観ているこちらも引っ張っていかれる。
ガイとガールの周りの人たちも個性的で魅力的で、彼らとの関係にも羨ましさを感じてしまうほど。だからこそ、結末まで知ったときには、一層深い音楽の力に気づかされ、ダブリンという町の歴史や経済、文化にも興味をかき立てられてしまうだろう。きっと、続編も観たくなってしまいますよ。(続編は無いのでしょうけれど…)
共演時間は途中25分間の休憩を含み、約2時間40分。
ミュージカル『Once』
脚本:エンダ・ウォルシュ
音楽・歌詞:グレン・ハンサード/ マルケタ・イルグロヴァ
原作:ジョン・カーニー (映画「ONCE ダブリンの街角で」脚本・監督)
翻訳・訳詞:一川 華
演出:稲葉賀恵
キャスト :
ガイ 京本大我
ガール sara
ビリー 小柳 友
エイモン 上口耕平
アンドレ 竪山隼太/榎木淳弥 (Wキャスト)
シュヴェッツ こがけん(*ケガのため休演。新井海斗が代役にて務める)
銀行の支店長 佐藤貴史
レザ 土井ケイト
元カノ 青山美郷
MC 新井海人
ダ 鶴見辰吾
バルシュカ 斉藤由貴
2025年9月9日(火)~9月28日(日) 東京 日生劇場
2025年10月4日(土)~10月5日(日) 愛知 御園座
2025年10月11日(土)~10月14日(火) 大阪 梅田芸術劇場メインホール
2025年10月20日(月)~10月26日(日) 福岡 博多座
公式ホームページ https://www.tohostage.com/once/