8月9日(土)に「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎~梅と松と桜~篇」が三越劇場にて開幕。出演者が日替わりで、11日(月)まで上演されている。声優の野島健児、浪川大輔、仲村宗悟が出演した、9日の初日を観劇した。
本作は、歌舞伎の名作を人気声優が現代語で朗読するシリーズの第四弾。
演目は歌舞伎三大名作のひとつ『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』。学問の神様として知られる菅原道真が、無実の罪で失脚した史実を基にした物語で、名場面が多く、歌舞伎ではひと場面だけが上演されることも多い名作中の名作。
今回は、その全編をほぼ網羅して上演。出演者の3人は道真をモデルとした菅丞相(かんしょうじょう)に恩義を感じる、三つ子の兄弟の梅王丸・松王丸・桜丸をメインとして、子どもから妙齢の女性、老人など24役を声のみで演じ、ナレーション的役割も担う。時代を超えて心に響く物語に多くの観客が涙を拭った。終演後にはアフタートーク・サイン色紙抽選会も行われた。
公演は10日 岡本信彦、山下大輝、堀江瞬の出演で2公演、8月11日(月祝)は 保志総一朗、山口勝平、畠中祐の出演で2公演が上演される。
【物語は‥‥】三つ子の珍しさに目を止めた菅丞相。3人に舎人の仕事を与えた。
梅王丸(野島健児)は菅丞相に仕え
松王丸(浪川大輔)は菅丞相のライバル・藤原時平に仕え
桜丸(仲村宗悟)時の帝の異母弟・斎世親王に仕えていた。
桜丸が斎世親王の希望で菅丞相の養女・苅屋姫との逢引を手配したことから、菅丞相は「苅屋姫に斎世親王を誘惑させ皇位を狙った」として流罪を言い渡されてしまう。藤原時平の謀略だった。そして、敵・味方に引き裂かれた3兄弟…。
ここから、物語はサスペンスにミステリー、大乱闘に人情場面と、名場面の数珠繋ぎ。それを、3人は考え抜かれた照明や音楽・音響、歌舞伎ならではの「附け打ち」といった演出を背景に、声だけで描き上げる。歌舞伎や作品の知識がなくとも、物語に引き込まれ、物語の最後まで一気に…。
親子・兄弟の絆や情愛、人としての責任や理不尽な現実に立ち向かう人たちの勇気、そして別れ…が、時代を超えて心に響き、多くの観客が涙を拭った。もちろん、ユーモアも随所にちりばめられ、時に大爆笑も起こっていた。
さらに終演後には、3人が再登場して、3人の素顔ものぞく楽しいアフタートークも行われた。
最後に・・・
「この朗読劇 は大きな挑戦だった」と振り返った仲村。「歌舞伎に馴染みが無い方々に向けて、歌舞伎の世界に触れてほしいと始まったこの『こえかぶ』。僕もその気持ちを背負いながら、複数の役を演じ分けて、様々な感情を行き来して役者としても 勉強になる時間を過ごさせていただきました。僕も歌舞伎に興味をもったし、いろんな歌舞伎を観に行きたいと思いました。みなさまもそうであったら嬉しい」と語りかけた。
茶目っ気いっぱいのトークで客席を沸せた浪川。「リハーサルの時は歌舞伎という題材は、ハードルが高く、不安も感じていましたが、本番ではとても良い空気の中できました。お盆の初日にこの公演を選んで頂いたことへの感謝の気持ちでいっぱいです。今日夜は、みなさん、何を食べられるのでしょうか」と、最後までお客様へ笑顔を届けていた。
「声優はアスリートだな、技術もさることながらフィジカルがモノを言うのが生の朗読だと感じます」と野島。そして「生の歌舞伎をご覧になる時には、すごく見やすいと思います。もう物語は入っているので、存分に歌舞伎の美しさと生の音とを楽しみながら物語を楽しめるのではと思います。ぜひ歌舞伎を楽しんでほしい」と来場者へメッセージを送った。
その野島の言葉どおり、9月には歌舞伎座にて秀山祭九月大歌舞伎 通し狂言『菅原伝授手習鑑』が上演される。
「こえかぶ」で聴いた物語が、歌舞伎ではどのような絵になり、音となり、芝居となるのか、確かめたくなった。そして、歌舞伎をご存じの方には、3人の声優が声だけで、どのように歌舞伎を描くのか、是非とも「こえかぶ」体験をしてみてほしい。
「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎~梅と松と桜~篇」
演目:『菅原伝授手習鑑』
2025年8月9日(土)~11日(月祝)
8月9日(土)昼の部:開演14:30、夜の部:開演18:30 野島健児、浪川大輔、仲村宗悟
8月10日(日)昼の部:開演14:30、夜の部:開演18:30 岡本信彦、山下大輝、堀江瞬
8月11日(月祝)昼の部:開演13:00、夜の部:開演17:00 保志総一朗、山口勝平、畠中祐
当日券もあり!
公演公式サイト:https://plan.shochiku.co.jp/koekabu/performance/koekabu3/
公式SNS:https://x.com/koekabu
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