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「真珠の玉みたいな1個1個を積み重ねて出来上がる」世界初演のミュージカル『ある男』15年ぶりの共演!濱田めぐみ&上川一哉インタビュー

2018年に読売文学賞を受賞し、世界中で翻訳された長編小説『ある男』。その物語が、ミュージカルとなって、明日、2025年8月4日(月)から東京建物 Brillia HALLにて世界初演の幕を上げる。(その後広島、愛知、福岡、大阪にて上演。)

圧倒的な歌唱力と演技力を誇るキャスト陣から、濱田めぐみと上川一哉が、オリジナルミュージカル・世界初演の生みの苦労と意気込み、15年ぶりの共演で元恋人役を演じる想いを語ってくれた。(インタビューは7月中旬)

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【物語は…】
弁護士の城戸章良(浦井健治)は、愛する夫の谷口大祐を不慮の事故で突然失い、悲しみに打ちひしがれる谷口里枝(ソニン)から奇妙な依頼を受ける。

里枝は、長年疎遠だった大祐の兄、谷口恭一(上原理生)から衝撃の事実を突きつけられる。愛した夫は谷口大祐ではないと。
では、谷口大祐と名乗っていた男、“X”(小池徹平)とは、いったい誰なのか?

城戸は、本当の谷口大祐(上川一哉)の元恋人である後藤美涼(濱田めぐみ)と共に調査にのめり込んでいく。
ある過去の事件を知る収監中の戸籍ブローカー小見浦憲男(鹿賀丈史)に翻弄されながら…。

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―今のお稽古の進捗状況はどのようですか?
濱田:立ち稽古が二幕に入ったところです。我々も準備してくるのですが、日々修正して、またやってみて…と、その繰り返しですね。

―作品や役について、お稽古前の考えと変わったところなど、ありますか?
上川
:台本で文字だけだったものが、演出や振付で動きが入ると、情景がはっきりして、少しずつですが作品の立体が見えてきています。
濱田:原作や映画とは違ったミュージカル版の『ある男』になっているので、役についても「こうあるはずだ」とか「こういうつもりでやっていた」というものを、一度ちょっとフラットにして、もう一度0から立ち上げて、改めて自分の役と対峙せざるを得ない瞬間が度々あります。だから今は、どの役も、どの場面も「結果的にどういうポジションに落ち着くのだろうか?」という段階ですね。みなさまが考えておられる役のイメージと、今、我々が作りつつある役はちょっと違うかもしれませんね。

―オリジナルのミュージカル版を生み出すために、試行錯誤されているのですね。製作発表に原作小説の著者の平野啓一郎さんも登壇されていました。原作者が製作発表に登壇されるのもなかなか無いことですし、「僕の考え方が、最も凝縮されている作品のひとつかと思っており、自分の中で非常に重要な思い入れの強い作品です」とおっしゃっていたのが、強く印象に残っています。平野さんからのチェックはあるのでしょうか?
濱田
:平野さんからフィードバックを受けて少し調整した箇所もあるので、言葉や流れはご覧になっていると思います。

―丁寧に作っておられるんですね。平野さんがお稽古場にいらっしゃることは?
濱田
:今のところはないですけれど、もしいらっしゃったらドキドキしますね。

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―オリジナルミュージカルはいつもに増して大変と聞きますが。
上川
:オリジナル作品を1から創る大変さ、生みの苦しみですよね。もちろん面白さもありますけれど、いかに自分たちがやりたいことをお客様に提示するかというところで、ずっと模索しているような気がするんです。少しずつ組み立てていきながら、ミュージカル版の『ある男』を創っていけたらと思います。
濱田:我々が役者としてやりたい分量と、演出家が求める部分と、作品がこうでなければいけないというところと、お客さんが期待している部分との塩梅が難しい。そこにジェイソンの音楽があります。テイストを合わせるのか、違うテイストのまま飛び込むのか。そこに歌詞も入ってくる。いろんな絡まり合いと良い意味での妥協と、話し合いをしながら1本に束ねていって、結果出来上がるのがミュージカル版なので、たまに束ねたと思ったらバラっとほどけたり、どこかが太くなりすぎてどこかが細くなっているから、もう一遍練り直ししましょうよとなったり。それを繰り返しながら初日に行くので、我々はいろんなパターンのセリフを何度も覚え、何度も試す。歌詞もそうです。これがオリジナルを作るってことなんです。

―歌詞も何度も試すのですか?
濱田
:歌い手として歌いづらい歌詞があると…ですね。分かりやすく言うと、ロングトーンで伸ばすのは「え~」と伸ばすよりも「あ~」で伸ばした方がわかりやすいから、伸ばす「あ」母音で終わる言葉をオーダーする。そういう真珠の玉みたいな1個1個を積み重ねて、それらが積み重なって作品が出来上がります。だから時間かかるんですよ。

―台詞に歌に動きに演技と、細かい一つひとつを試行錯誤して組み立てていく…すごい量ですね。
濱田
:今は、いろんなものを持って来られて、闇鍋を食べてる感じです。
上川:闇鍋!(笑)。A_00093s6

―ジェイソンさんの楽曲は、いかがですか?
濱田
:歌は…(上川さんへ)増えたよね?どんな曲なの?
上川:「自分はこうせざるを得なかった、こう生きるしかなかったんだ」という「♪後悔」という名のナンバーです。ジェイソンが「谷口大祐はずっとクズのままでいいんだ。光はいらない」と。
濱田:(笑)そう言われてもねぇ。ジェイソンが、またそういうメロディを上手く持ってくるよね。
上川:そうなんですよ。それがトリッキーな引っ掛けが多くて、同じフレーズがなくて、本当に難しいんです。でもジェイソンが思う、その時の心情がメロディになっているのがわかるので、もっともっと体に入れて自分のものにする事ができたらと思います。まだ演出もメッセージもいろんなものが模索段階なので、トライ&エラーを繰り返せたらと思います。
濱田:ジェイソンはすごいテクニックを持ってますよね。曲がしっかりその心情を喋るから、1曲1曲が長い。シングルカットできるような曲を作っているんですよ。とてもキャッチ―でそれがまた、いい曲なんです。
上川気持ちよくお腹いっぱいになって帰っていただきたいです。

―濱田さんが歌われる曲は、どんな曲ですか?
濱田
:私の楽曲は3曲ありますけれど、楽曲のテイストが全然違います。ジェイソンからは彼本人が鼻歌で歌っているデモテープが送られてくるんですけれど、それが素晴らしくて、やっぱりそれに準じたいと思うと、ものすごく難しいんです。同じフレーズが1つもなくて、「ここを半音で歌う」とか、全部変えてあったりして、とっても細かいんです。だから歌いこなして素敵に歌えるか、「下手だな」と思われるかは歌い手次第という、そういう意味では全部が恐ろしい曲です。

―ソニンさんが「めぐさんの1曲だけでチケット代払う価値がある!」とおしゃっているのを拝見しました。
濱田
:いやいや!ソニンさんと知念さんが歌うデュエットがあるんですけど
上川:いいですよね。
濱田:素晴らしいんです。メロディが心情の中心をえぐってくる。あそこは楽しみにしていただきたいです。オーケストレーションも全部ジェイソンが考えるんですが、この世界に入ったら素晴らしいよね。
上川:はい!楽しみですね。
濱田:「いいなぁ~」と、ぼーっと聴いちゃうくらい素敵。本当にお薦めです。

―まだまだ“闇鍋”とのことですが「ここは楽しみにしていただきたい!」というところはありますか?
濱田
:鹿賀(丈史)さんが面白いよね。
上川:すごく面白いです。
濱田:鹿賀さんが戸籍交換のブローカーの小見浦と小菅という2役をされるのですが、一人目の小見浦役が面白いんです。
上川:関西弁が、またはまっていらっしゃるんですよ。

―鹿賀さんは『ジキル&ハイド』や、1公演期間中にジャン・バルジャンと ジャベール2役は演じておられますけれど、1作品中に本当の別人の2役を演じられるのは、珍しいことですよね。楽しみです。

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ーさて、おふたりは今回は元恋人役です。共演されるのは久しぶりですか?
上川
:前は僕が20代前半だったから…
濱田: 15年ぶりぐらいですね。

―ということは、上川さんが劇団四季を退団されてから、ご一緒されるのは初めて?
上川
:初めてです。
濱田:いつ退団したの?
上川:4年前です。
濱田:まだ辞めたばかりのような気がするけれど、退団後、何本ぐらい出演したの?
上川:ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』、ミュージカル『ジキル&ハイド』も、いろいろやりましたよ。
濱田:全然会わなかったよね。

―15年ぶりにご一緒されてみて、いかがですか。
上川
:僕はめぐさんとご一緒、プラス、元恋人役というのでド緊張です。
濱田:嘘!(笑)
上川:劇団四季でご一緒した頃は、僕はまだアンサンブルでしたし。
濱田:ミュージカル『ウィキッド』でチステリー役だったよね。それから1~2年で私が退団して。チステリーは、『ウィキッド』に登場するコウモリみたいな羽の生えたおさるちゃんみたいな生き物で、エルファバが一番可愛がっていて、彼が(エルファバ役の)私に箒を渡してくれたりする、ペットではないのですが、一番そばにいてくれた役です。「チステリー‼チステリー‼」と呼んでいたのに、なんと、今は恋人役!いつ人間になったの?(笑)

―15年ぶりにご一緒された上川さんの印象は?
濱田
:「この時が来たか!」「そんな時代になったか!」と思いましたけれど、会ったら、落ち着いた素敵な男性になっておられて。若い方はどんどん成長していくじゃないですか。「私はずっと同じことやってるな」と思いました(笑)。

―濱田さんは第一線でずっと活躍され続けていていらっしゃるから。
上川
:めぐさんたちの背中を見て育っている世代なので。
濱田:たぶん怖かったよね?
上川:めぐさんが?いや、そんなことなかったです。
濱田:私は「(昔は)、怖かったですか?」と、よく聞かれるの。私、怖くないよね。
上川:怖いと思ったことない!
濱田:でしょ!もっと怖い人いっぱいいるよね。(笑)よかった~!

―おふたりの15年ぶりの共演を楽しみにされている方もいっぱいいらっしゃると思いますが、元恋人役のおふたりがご一緒のシーンはあるのでしょうか?
上川
濱田:そこは、まだ稽古途中なので、どうなるのか、楽しみにしていただきたいです。

―想像たくましく、お待ちしています。では最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願い致します。
濱田
:今の時点では、どういう仕上がりになるのか、誰もわからないので、楽しみにして頂きたいです。そして「こういう作品になりました!」という感動を、我々もお客様と共有したいので、ぜひ確かめに来ていただきたいと思っています。
上川:ほんとうにめぐさんのおっしゃるとおりで、まだまだ模索段階なのですが、キャストもクリエイティブチームも、いい意味でぶつかり合いながら、どんな共鳴が生まれるのか、それがどんな形となって、お客様にお届けできるのか、僕も楽しみです。演出の瀬戸山(美咲)さんが製作発表で「呼吸を大事にしたい。その場の生きてる呼吸でありたい」とおっしゃっていたのが、すごく心に残っています。その場でしかお伝えできない空気感をみんなで共有しながら「こういうものできました」と、自信を持ってお届けできるように頑張りたいと思いますので、それを劇場で一緒に味わっていただけたら嬉しいです。

ミュージカル『ある男』
★東京公演:2025年8月4日(月)~8月17日(日)東京建物 Brillia HALL
★ツアー公演
広島公演:2025年8月23日(土)~24日(日)広島文化学園HBGホール
愛知公演:2025年8月30日(土)~31日(日)東海市芸術劇場 大ホール
福岡公演:2025年9月6日(土)~7日(日) 福岡市民ホール 大ホール
大阪公演:2025年9月12日(金)~15日(月祝) SkyシアターMBS

<キャスト>
浦井健治 小池徹平 / 濱田めぐみ ソニン
上原理生 上川一哉 ・ 知念里奈 / 鹿賀丈史

碓井菜央 宮河愛一郎 ・ 青山瑠里 上條駿 工藤広夢 小島亜莉沙 咲良 俵和也 増山航平 安福毅 ・ 植山愛結* 大村真佑*
*スウィング

<スタッフ>
原作:平野啓一郎「ある男」(文春文庫/コルク)
音楽:ジェイソン・ハウランド
脚本・演出:瀬戸山美咲
歌詞:高橋知伽江

主催・企画制作:ホリプロ
公式HP=https://horipro-stage.jp/stage/aman2025
公式Instagram=https://www.instagram.com/amanmusical_official/
#ある男ミュージカル