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緻密さと華やかさを備えて古代と現代を行き来する 成田 凌と葵わかながW主演 舞台『パンドラの鐘』

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『パンドラの鐘』が、初演以来 23 年ぶりに Bunkamura シアターコクーンで上演される。(大阪公演もあり)
演出は、気鋭の若手演出家杉原邦生。そしてこの作品が初舞台となる成田 凌と葵わかながW主演を務める。

初演ではBunkamuraシアターコクーンと世田谷パブリックシアターの二館で同時期に上演され、一大センセーションを巻き起こした本作が、今回はどのような作品となるのか。
杉原邦生と成田凌、葵わかなが登壇しての取材会が行われた。

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杉原邦生 葵わかな 成田凌

―稽古の状況はいかがでしょうか?
成田:1週間経ちましたね。すさまじいスピードで進み、みなさんがいろいろなチャレンジをしていて、ワクワクが止まらない毎日で楽しくやっています。

:ざっと形を作っている状況なので、「ここはこうなるんだ」と新たにしることで頭がパンクしそうです。

成田:読んで想像していくと、邦生さんが先に行っているので「違った!想像なんてして行っちゃだめだ」と思いながら日々を過ごしています。

 成田:濃厚な日々です。

杉原:ハイスピードでざっくり立ち上げています。脚本だけだとどうなるのか、想像できなかったと思うので、僕のビジュアルイメージを共有することによって、まずは知って、それから細かいことを詰めていって、役のことを立ち上げていく段階になります。とにかく今は前に進めて「完成はこうなるらしいぞ」ということを共有しています。

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―初演では野田秀樹演出版では天海祐希と堤真一、蜷川幸雄演出版では大竹しのぶと勝村政信という名優が演じたヒメ女とミズヲという役についていかがですか?

成田:23年前に上演された野田版蜷川版を3日前くらいまで毎日見ていましたが、稽古が進んでいくにつれ「これを壊していかなければ意味がない」と思って、ここ数日は見ずにいってみようという頭に切り替わりました。そっちを信じていると、今一緒にやっている方に失礼だなと。お二人はすごいエネルギーをもっていて、打ちひしがれる思いもしていましたが、自分はまた違うエネルギーを発信できたらと思っています。役の演じ方ではなく、心の奥を見ていこうと。何層にもなっているので、最初に脚本を読んだときの楽しさは忘れずに、言葉遊びに入れ込んだ作品の要素みたいなものを、昔の映像から学んでいるところです。

:私は真逆で、見ないでやってみようと。ポスター撮影時期に映像資料を頂いて、見るか迷ったのですが、杉原さんのお話を伺ってやるのもいいかと見なかったですが、今、どんどん見たくなっています。(笑)  初演エネルギーや作品の名がすごすぎて重く感じるかもしれないけれど、本読み時に杉原さんが「好き勝手にやってほしい」というようなことをおっしゃっていて、今、この作品を作るは私たちなので、ちょっと無鉄砲でもできれば見ないでやりたいと思っていますが、台本が進めば進むほど「この台詞はどうやっていえばいいのか」と、どう解釈されたのか、気になって見てしまうのではないかという毎日を過ごしています。

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―成田さんは初舞台とのことですが、今の思いを教えてください。
成田:ずっとやりたかったことです。映画やドラマでやってきたことは、今やっているのとは真逆のこと、何もしないでそこにいる…ということをやってきたわけですが、今回はやらなくては伝わらない。楽しいです。気持ちがいい。「これがやりたかったんだ」と今、思っています。みなさんがすごい。暴れん坊がいたり…。(笑)「こんなこともやっていいんだ」と先輩方が道を作ってくださるので、動きやすいし、みなさんが優しい。邦生さんに聞くのもいいけど、玉置玲央さんに聞くと、すごく丁寧に教えてくださる。映像の現場ではあまりしてこなかったなと。勝村さんと共演したときには、たくさん教えて頂いて「あっ、つながったな」と。今は聞ける方がたくさんいて、同じことを積み重ねて「これはどういうことなのか」と突き詰めていく時間が本当に楽しいです。頭も体も前のめりで、頭の中がずっとコレです。

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―葵さんは2本目のストレートプレイですが、いかがですか?
:今回の作品は前回の『冬のライオン』とは毛色が全然違うと思いますし、森新太郎さんと邦生さんのタイプも違うなと思っています。前回学んで続けようと思っているのは、あまり準備をしない。自分で固めて作っていくのがいいこともあるけれど、長い時間向き合えるとき、周りに助けて頂けるときには凝り固めずになんにでも対応できますという柔軟性が大事かなと前回学んだので、今回もそうしていきたいと思っています。

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―お二人は2017年のNHK「わろてんか」で葵さんがお母さん役で共演されていますが、今回再会されていかがですか?

成田:ずっとおかあちゃんと呼んでましたからね。(笑)でも立ち姿から何から違うので、前のことは全然気にしてないね。
:初めまして、という感じも。
成田:だって、あの時は葵さんが19歳で。
:今、24です。でも一緒に作品を作ることの信頼みたいなものはすごくありますね。
成田:そうだね。当たり前に信頼関係がある状況でこの昨品をずっとやらせてもらえるのは大きいな。10代の頃から成熟した方だなと。すごくバランスのいいひと。最上級の誉め言葉です、僕には。(笑)
:成田さんは飄々としてクールそうに見えて、実は熱いという印象で、それは変わらない。今、机が隣で波長が猫みたいだなと。話していて、ふと見たら聞いてなかったり、思いがけないところでのってきたり。(笑)ミズヲという役にリンクして見えるので、すごく面白くなると思います。

―杉原流の演出は?
杉原:僕も野田さん蜷川さんの映像を何度も見て、同じことはしたくない、僕なりの、そして今回のキャストさんと作る新しい『パンドラの鐘』にしたい。
学生時代に最初に野田版・蜷川版を拝見したときに歌舞伎の『娘道成寺』の鐘入のイメージがあって、そのファーストインプレッションを大事にしたい。能の道成寺と歌舞伎の娘道成寺の二つと、現代劇の世界観をないまぜにしたような空間を作って、そこにm-flo の☆Taku Takashashiさんの現代劇な音楽が重なる。衣装のAntos Rafalさんは京都に魅入られてこちらで活動しているデザイナーで、融合した世界観を作ってくれています。野田さんの言葉世界のイメージが乱反射して、それがひとつの物語に集約されていく世界観なので、それを空間やビジュアルで体現しながら、キャストもいろいろなところからきている方たちなので、いろんなイメージがないまぜになった中に、古代と現代を行き来する物語なので、日本の演劇の古典と現代を行き来する世界観の中で物語を構築していきたいと考えます。

―今回の作品の魅力は?
成田:すごく壮大な物語。言葉遊びがあったりしながら壮大さを描いていく。どれだけ僕たちが深く掘って、エンターテイメントにしていけるか。今、見ていて面白いと思うのは、ビジュアルに映っている以外のダンサーの皆さんたちが動きで人間や植物になっていく。絵としての『パンドラの鐘』がどうなっていくのか、すごく魅力的になっていくなと思っています。セット自体はシンプルなので、キャストとダンサーがどう視覚的に楽しんでいただけるようになるのか。自分として楽しみで、見どころかなと思っています。

:脚本を読ませていただいて時に、ポップなテイストで進んでいくけれど、その実、深いテーマで書かれているという印象がありました。その中で個人的に素敵だと思ったのは、言葉遊びがたくさんあって、台詞もたくさんあるのに、本当に大事なことだけは言わないというのが、すごく逆にやさしいと思いました。ヒメ女とミズヲの関係や、ヒメ女の行く末が抱えている問題もあえて言葉で説明しないで、作品の流れや全体で見せるのが緻密だし巧妙だと感じました。いい過ぎないことで、観た人に委ねられるところが素敵だなと思いました。稽古に入って邦生さんの演出を受けながら、見た目の華やかさとか、見る情報も多い演出になっていて、台本の緻密さと見た目の情報で作品がより深まる。なお、伝わりやすい感じになっているのでないかと。そこを目指しているのが、今作だと思っています。脚本にリスペクトしつつ、現代の『パンドラの鐘』をつくれたらいいなと思っています。

杉原:古代の謎を解くサスペンスと、現在のミズオとヒメ女のラブストーリーの二つの軸が同時に進行していき、最終的には長崎に落とされた原爆の話に集約されていくという物語になっていきますが、そこに野田さんが込めた希望…パンドラの箱はギリシャ神話では希望だけが残ったとなっていますが、野田さんが伝えたいメッセージを僕らが今、どうやって伝えていけるかなと考えながら作品を立ち上げていきたいと思っていますので、そこが伝わる作品になったらいいなと思っています。
そして、演劇はエンターテイメントなので、華やかで楽しいものであってほしいと思っています。それは第一に考えながら、豪華なキャストのみなさんといろいろなところから素敵なスタッフが集まっているので、必ず楽しんでいただけるものになるのではと思っております。

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COCOON PRODUCTION 2022 / NINAGAWA MEMORIAL『パンドラの鐘』
【作】野田秀樹
【演出】杉原邦生
【出演】成田 凌 葵 わかな
前田敦子 玉置玲央 大鶴佐助 /
柄本時生 片岡亀蔵 南 果歩 白石加代子 ほか
【東京公演】2022年6月6日(月)~28日(火) Bunkamuraシアターコクーン
【大阪公演】2022年7月2日(土)~5日(火) 森ノ宮ピロティホール
【チケット発売日】
東京公演:発売中
大阪公演:2022年5月22日(日)AM10:00~