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『オーバーリング・ギフト』インタビュー 風間由次郎 猪塚健太 「若手の僕たちがミュージカルの産声を上げる」

ミュージカルブームだと言われている今、若い才能によるオリジナルミュージカルのプロジェクトが動き出す。
2017年6月15日(木)からDDD青山クロスシアターで上演される『オーバーリング・ギフト』がそれだ。

作・演出を手掛けるのは、劇団プレステージのメンバーとして、また「地球ゴージャス」の常連俳優として活躍する風間由次郎。これまでに2回、地球ゴージャス作品のスピンオフとしてオリジナル作品の脚本・演出を担ってきた。

音楽は、2013年にシアタークリエで上演されたミュージカル『SONG WRITERS』で中川晃教が歌った名バラード「ダイナソーインマイハート」など3曲を提供し、ミュージカル作家としても注目を集めた「WEAVER」の杉本雄治が担当する。

キャストは劇団プレステージのメンバーであり、昨夏、舞台『娼年』で鮮烈な印象を残した俳優・猪塚健太をはじめ、加藤潤一、富田健太郎、溝口琢矢という若手俳優たち。そして島ゆいか、中村百花という女優陣と風間由次郎を加えての7名だ。

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風間由次郎      猪塚健太

今回、風間由次郎と猪塚健太が揃ってAstageに登場。このオリジナルミュージカルプロジェクトに賭ける思いを語ってくれた。

―風間さんは「地球ゴージャス」作品のスピンオフというかたちで、オリジナル作品の脚本・演出をされての今回のプロジェクト。ステップを踏んでのオリジナル作品へのトライですね?
風間:オリジナル作品をやらせて頂けるまでになるとは思っていませんでした。結果的には、1つずつやってきたことが結びついたのです…ね。
猪塚:僕が一番感じるのは、由次郎も同じだと思いますが、スピンオフ作品の時に「地球ゴージャス」作品のスタッフさんが集結して協力してくださった。とても恵まれていたし、そのお陰で成り立ってきた部分が大きいと思います。
風間:そうです、一流のスタッフさんです!
猪塚:今回もすごい方々がお力を貸してくださいます。
風間:「よし、ぶつかって来い!」「やってやるよ」という感じの愛情が深い方ばかりです。
猪塚:まわりのみなさんに感謝しないといけないね。
風間:本当にそうですね。ただ今度は、プレイヤーとして対するのとは違って、同じ土俵に立ってわがままにならなきゃいけないところがあります。

―クリエーターとして我を通さなければいけない時もあるでしょうね。
風間:すごく謙虚に生きてきた僕が…ね。
猪塚:それは知らんけど。(笑)
風間:同じ目線にちゃんと立って作らないと。これまでのスピンオフはすでにあるものをふくらませ広げていくことだったので、ゼロから生み出す今回は大変です…。

―順調に進んでいますか?
風間:音楽の杉本さんと相談しながら作っていますが、お願いして作ってもらった曲が出来上がって聞いて「おお、なるほど、そうなるか!」とすぐに杉本さんに電話をかけて「こういうことですよね?」と聞いて「そうそう、そういうこと」って、答え合わせしちゃう瞬間がまた楽しいです。
今回は作詞もさせて頂くので、大変だろうとは思っていましたが、それでも甘かったです。でも、今出来上がっている曲を聞くと「ステキだな~」と思うものがたくさんあります。(ニッコリ)

―楽しみながら作っておられますね。
風間:身を削りながら…です。楽しんでいるだけじゃダメですからね。

―猪塚さんは、音楽や内容について聞いておられますか?
猪塚:僕はまだ何も知りません。楽しみに待っている状態です。できるだけ器を大きくして構えておこうと思っています。そこに一気に注ぎこまれたものを作っていこうと。
風間:そんなに大きな器を用意しなくてもいいかもしれないよ。
猪塚:えっ、ホント?(笑)

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―完全なオリジナルストーリーとのことですが、着想はどこから?
風間:役者を目指した20才頃、「台本メモ」と呼んでいた日記のようなものを書いていて、それが「才能」という今回のテーマのきっかけになっています。
猪塚:役者を目指したばかりで自分がどうなるかも分からない頃に書いていたものは、「自分に何ができるだろう」ということや不安がたくさん書いてあると思うので、そんなところが「才能」の話へとつながってきているのかもしれないね…。って、僕はまだ何も知らないんだけど。(笑)
風間:そうかもしれませんね。今思うと、褒めてもらうのは良いことなのですが、「いいセンスだね」でひとくくりにされてしまうことがつらい時期もありました。努力しても「センスがいい」で片づけられてしまったり、逆に「もっと努力すれば、もっとできるのに」と思われてしまったり。そんな思いから「才能」について考え始めたのかもしれません。
脚本を書こうと思ったきっかけは、仕事がなくて「自分で自分が立てる舞台を作らないと、僕はミュージカルのステージには立てない」と思ったからです 。それで「台本メモ」を書いていました。そこに「こんなことをやりたい」ということや、「もっとがんばれ!」と自分を励ます言葉も書いていましたが、「あんな大人になりたくない」「大人はどうしてこうなんだ!」という思いを書きつづっていていました。そんな答えが出ない問いがずっと続いて、それは「自分がなりたくない大人」になってきている部分があるからだと思うのです。
30才になる節目の今、この作品をやることで何か答えが出そうな気がしています。
子供から見た大人と、大人から見た子供。今の僕はどっちとも違って、どっちでもない。たぶん、今、唯一答えが言える時かもしれないと思っています。
猪塚:由次郎らしい答えを、ここで出すんだね?
風間:かもしれないです。でも僕は、まだ子供なんです。だから子供は大人を語れないと思ったりもするんですが、でも子供でも大人でもない今だから言えることがあると…。
猪塚:その前に、30才はだいぶ大人だと思うけど。(笑)
風間:ホント、そうだよね。(笑)

―とても内面的なお話を伺いましたが、今回のミュージカルのお話は難しいのですか?
風間: SFでファンタジーな部分もありますが、難しい話ではありません。才能がリングに入っていて、リングをつけることで才能が管理されている近未来のお話です。
猪塚:本人もまだ子供だって言っていますから、そんなに難しいものは作れないですよ! (笑)

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―脚本を書き上げたら演出家になる。それも大変ですね。
風間:すでに美術さんや舞台監督さんと打ち合わせをしていますが、マンツーマンで受験勉強して教えて頂いている感じです。スタッフさんと話し合いながら、演劇を作っていることが楽しくて仕方ないです。
猪塚:僕が気になっていたのは、演出しながら書いたりはしないのかな…と?
風間:僕はしているよ。イメージしながら書いていました。でも、それには限界がありました。そこを飛び越えるストーリーを作らないと楽しくない。でも飛び越えると、どう作ればいいのかが分からなくなってしまったりするんです。

―当て書きもよく聞く方法ですが…。
風間:猪塚さんがいれば、大丈夫です!
猪塚:えっ?! それは当て書きしてくれるってこと?
風間:いやいや、何を書いても当てはまるでしょ、健太なら。
猪塚:なるほど!!(笑)
風間:猪塚さんは器が大きいから、何をやってもできる。何の心配もしていません。
猪塚:大丈夫かなぁ。出来るかなぁ…。僕を知った上で書いてくれる由次郎だから、僕としては「どんな役になるんだろう?」と楽しみです。「僕をどう料理するんだろう?高級食材だよ」って。(笑)
風間:焼き過ぎないようにします。(笑) 今回の主人公はまっすぐで、一旦道を間違えると、そのまま突っ走ってしまうところがあるのですが、猪塚さんは真面目なので、この主人公に合っているかなと思っています。
猪塚:僕も由次郎をずっと見てきて、よく知っているつもりなので、心配はしていないのです。かといって、自分を消すつもりもないので。
風間:もちろん、もちろん。
猪塚:良いバランスを見つけてやっていきたいと思っています。
風間:そこはできる。できると思います。そして歌とダンスもあり、僕が振付をやりますから…
猪塚:僕ができる最大限を由次郎は知っているので、そのギリギリをちゃんと突いた踊りや歌をつけてくれるはずなので、そこも安心しています。
風間:今回はどうか、分からないよ。(一同爆笑)
猪塚:焼き過ぎるつもりですかぁ?!(笑)

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―猪塚さんはスピンオフの作品で脚本家・演出家の風間由次郎さんをご覧になってこられたわけですが、どんな印象をお持ちですか?
猪塚:その時には「風間由次郎という役者が脚本・演出をやっている」だったので、由次郎が作って来た脚本をまずしっかりとやって見て、稽古場で作っていく中で「ここはこうしたらいいんじゃないか」と話し合って変えていくところはありましたね。由次郎を信頼していましたが、全部預けるのではなく、僕も責任を持って作っていこうという立ち位置で上手い具合にいったと思います。
風間:本当に助かりました。
猪塚:次も初のオリジナルストーリーだけに由次郎も不安だと思うので、そこは同じ立場に立ってついていきたいと思っています。

―今回の作品の音楽は、そして全体はどんな感じですか?ちょっと教えていただけませんか?
猪塚:ガンガン歌う?隠さないで話して。(笑)
風間:ミュージカルで歌うのは心情や情景ですよね。まず、物語がすすんでいくのと、そこが上手く交わればいいと思います。それから、地球ゴージャスさんでも僕は群舞が好きなんです。個性をつぶして、みんなでしっかり踊りを合わせることが、その世界を作ってくれる。それを僕は身にしみて感じてきたので、今回はこの7人で、少人数で難しいとは思いますが、しっかり合わせて踊りたいと思っています。
猪塚:でもひっきりなしに歌って踊っていくわけじゃないでしょ?
風間:さぁ、それはどうか、分からないよ~!(笑)
猪塚:え~、そこは教えてよ~~!!(笑)
風間:ハハハ。一番大事なのは、若手の僕たちがミュージカルの産声を上げるということ。劇団プレステージでもテクニックじゃなく、エネルギーで演劇というナマモノをやってきた部分が強い。ミュージカルの華やかさやパワーを活かしながら、そこが台本にも現れているといいなと思っています。

―盛りだくさんで楽しみになってきました。では最後に意気込みをお願いします。
猪塚:由次郎が必死で考えて苦しんで作って、今、ゼロからやっと1になった段階です。僕等キャストは、ここからが勝負。1を大切に育てて、スタッフさんとも協力して稽古に必死に取り組んで、出来上がるところがゴールではなく、観に来てくれた全員に近い方に楽しんで満足してもらえるものを作る覚悟です。そこだけは期待と安心をして観に来てほしいです。
風間:日本ではミュージカルを小劇場で観ることは、まだ少ないと思います。ニューヨークではオフブロードウェイがあって、そこから始まるアメリカンドリームがありますが、僕等はここでオリジナルのミュージカルを作るということが大事だと思っています。ミュージカルは華やかで非現実的なものというイメージですが、DDD青山クロスシアターという劇場の、この距離で感じられるエネルギーを楽しみにして来て頂きたいです。そして、初めてのことにトライして苦しんでいる方がいるなら、この公演をやった後に僕の気持ちもお伝えしたいな、と思っています。

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風間由次郎(かざま ゆうじろう) 写真左
1987年7月25日生まれ 神奈川県出身
劇団プレステージのメンバー。劇団外の近年の主な出演作は、地球ゴージャスプロデュース公演Vol.12『海盗セブン』(2012)、Vol.13『クザリアーナの翼』(2014)、Vol.14『The Love Bugs』(2016)、『幻の城~戦国の美しき狂気~』(2015)など。『キンキーブーツ』(2016)、『ビッグ・フィッシュ』、本年12月には『メンフィス』など、海外ミュージカルでも活動の場を広げている。

猪塚健太(いづか けんた) 写真右
1986年10月8日生まれ 愛知県出身
劇団プレステージのメンバー。劇団外の近年の主な出演作に、地球ゴージャスプロデュース公演Vol.13『クザリアーナの翼』(2014)、Vol.14『The Love Bugs』(2016)、『娼年』(2016)、プロペラ犬第7回公演『珍渦虫』(2017)など。舞台以外にも渋谷のラジオ「渋谷のラジオの学校」毎週木23:00~レギュラーMC、宇宙まお「Bed Sitting Room」PV、CM「日野自動車」など各本面で活動中。

『オーバーリング・ギフト』
作・演出:風間由次郎
音楽:杉本雄治(WEAVER)
【CAST】
猪塚健太 風間由次郎 加藤潤一 島ゆいか 富田健太郎 中村百花 溝口琢矢 (五十音順)
【公演日程】2017年6月15日(木)~6月25日(日)
【チケット料金】6,200円(全席指定・税込)
【会場】DDD青山クロスシアター  http://www.ddd-hall.com/
東京都渋谷区渋谷1-3-3 ヒューリック青山第2ビル B1F
【チケットに関するお問い合わせ】 チケットスペースTEL: 03 -3234 -9999
【公演に関するお問い合わせ】 アミューズチリングハウス TEL:03 -5457 -3476 (祝日を除く月曜 ~金15:00 ~18 :30 )
【公式サイト】 http://www.amuse.co.jp/stages/org/
企画・製作:アミューズ ・ シーエイティプロデュース

【STORY】
リングには才能が入っている。
より優れた才能を求め、有能な子供を持つことがステータスとなった大人たちは、いかに特別なリングを子供につけられるかを競い合った。
・・・それは、愛が薄れゆく世界だった。
これは、そんな世界の片隅で、「愛」を知った子供たちが起こした小さな奇跡の物語。