80年経っても、決して忘れられない日々がある
菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、松本准平監督 登壇
「悲惨な空間の奥に根付く美しさを拾っていただけたら」
戦後80年―節目の夏に、平和への想いを語る
福山雅治、美輪明宏からメッセージも到着!
1945年夏、「青春」と呼ぶにはあまりにも苛烈な、少女たちの物語。
1945年、夏。原爆投下直後の長崎を舞台に、被爆者救護にあたった若き看護学生の少女たちの“青春”を描く映画『長崎―閃光の影で―』が、全国公開中だ。
太平洋戦争末期の1945年、日本赤十字社の看護学校に通う17歳のスミ、アツ子、ミサヲは、空襲による休校のため長崎へ帰郷し、家族や友人との平穏な時間を過ごしていた。しかし、8月9日11時2分、長崎市に原爆が落とされたことで、彼女たちの日常は一変。街は廃墟と化し、彼女たちは未熟ながらも看護学生として負傷者の救護に奔走する。救える命よりも多くの命を葬り去らなければならないという非常な現実の中で、彼女たちは命の尊さ、そして生きる意味を問い続ける—。
原爆被爆者を救護した日本赤十字社の看護師たちが被爆から35年後にまとめた手記「閃光の影で-原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記-」を基に脚本が執筆された本作。菊池日菜子、小野花梨、川床明日香といったフレッシュな新鋭が3人の看護学生の少女を演じ、自身も長崎出身の被爆三世である松本准平が監督を務めた。
この度、本作の全国公開を記念して8月2日にTOHOシネマズ 日本橋にて舞台挨拶を実施した。
イベントには、菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、松本准平監督の4名が登壇。戦後80年の節目を迎える今年の夏に本作が公開されることへの想いを存分に語った。また、長崎出身の福山雅治がプロデュース・ディレクションを務め、菊池・小野・川床が歌唱を担当した「クスノキ ―閃光の影で―」のレコーディング秘話を披露。そんな福山雅治からサプライズでビデオメッセージが到着!さらに、本作では語りにて出演し、自身も長崎で被爆経験者である美輪明宏からも貴重なテキストメッセージが寄せられた。戦後80年を迎える2025年8月に公開されるにふさわしい本作らしく、平和への思いがあふれ出る心温まる舞台挨拶となった。
満員御礼で迎えたこの日、長崎出身で被爆三世でもある松本准平監督は「改めてこの作品が僕の手から完全に離れて、皆さんの元へ、そしてまだ見ぬ方々の元へ届けという願いを込めて、僕は今日この場に立たせてもらっています」と覚悟の表情で挨拶。主演の菊池日菜子も「100%華々しいというわけではなく、どこか緊張感や不安もありますが、それは後ろ向きではなく、本作公開を機に少しだけ未来が変わるのではないか?という前向きな予感を感じています」と期待を込めていた。
被爆者であり、本作に語りとして出演する美輪明宏からは、自身の生々しい被爆体験エピソードと共に「若い世代の方には、もう二度と戦争を起こさないように、美しい文化にふれて心を豊かにしていただきたい」など全国公開を祝するコメントが寄せられた。
美輪の自宅でナレーション収録を行った松本監督は「映画の最初と最後を被爆者である美輪明宏さんの声で飾ってもらえて改めて感謝です。ナレーション収録は1回目からパーフェクトでしたが、演出家としてさすがに1回でOKをしたら情けないと思い、2シーンを3回ずつ、合計6回も声を録らせていただきました」とユーモア交じりに明かして「収録に真摯に向き合っていただき、長崎の民謡も口ずさまれていました」と美輪の献身的な協力に感謝していた。
松本監督の平和への想いに共鳴した長崎市出身の福山雅治が、主題歌「クスノキ ―閃光の影で―」をプロデュース&ディレクションしている。長崎復興のシンボルともいえる長崎市にある山王神社の被爆クスノキをモチーフに福山が2014年にリリースした楽曲「クスノキ」を菊池、小野、川床の3人が歌唱。鎮魂歌のようにエンドロールを静かに彩る。
福山からの直接指導を受けてのレコーディングを振り返った菊池は「緊張で固まる私をほぐすために福山さんは親身になって近い距離感でお話をしてくれました。レコーディング自体が初めてで不慣れ過ぎて、私がトンチンカンな事をやったり言ったりしていたのか、スタッフさんにも笑われて…。柔和な雰囲気でレコーディングする事が出来ました」と思い出し笑い。
小野は「小さなブースの中に入れられて、ガラス越しに沢山の方たちがいてその中に福山さんがいました。福山さんは私のいる小さなブースに来てくれて、目の前でギターを弾いてくれました。もうボーっと見入ってしまって『カッコいい!』としか思えず、あまり覚えていません(笑)。狭い箱の中で一対一。(非現実的すぎて)笑っちゃう!」と夢のような時間に興奮冷めやらず。
川床も「音程が難しい場所になると『ここがこうだよ』と優しく教えてくださって…。私のためにギターを弾いてくれているなんてと、貴重な時間だと思いました」と感激しきりだった。
そんな中、福山からのビデオメッセージが、完全サプライズで上映された。本作の感想として福山は「とても美しいものを観たなという感想です。目の前で何が起こったかわからないけれども、困っている人を、苦しんでいる人を、助けたい人を、その対象に対して無償の手伝いをする。その人間としての当たり前の行動を、実は命がけでやっているということに、美しさを感じました。一人一人それぞれの連鎖が広がって、世界がもう少し、さらに平和というものに向かって前進するのかなと。この映画はそういうことを改めて伝えてくれている作品になっていると思います」などと述べた。
菊池は「とても嬉しいですし、福山さんの言葉の強さに感銘を受けています」と福山の粋な計らいに感激しながら「人間の美しい部分が描かれているというのは私も感じています。この映画には悲惨な空間が広がっていますが、その奥にしっかり根付く美しさを拾っていただけたら嬉しいです」と呼び掛けていた。
最後に、川床は「私は本作を通じて平和のために出来る事は何だろうか?と考えるようになりました。本作を選んで劇場に足を運んでくださるということは、皆さんが平和を望んでいる証のようなものだと思っています。だからこそもっと多くの方に観ていただきたいです」とさらなる広がりに期待。
小野は「今もなお世界のどこかで戦争は行われていて、未来に絶対に起こらない確証もない。私はどんな風に生きればいいのか、それはとても難しいテーマです。ただこうして人と人を繋ぐような作品があれば、そしてこうして顔を見合わせて一期一会の出会いを慈しむ時間があれば、もしかしたら明日は今日よりも少しだけ温かい日になるのではないかと思います。壮大なテーマで気が滅入ってしまうこともあるかと思いますが、同じ時代を生きているわけですから、小さな事でもお互いに手を取り合って豊かに生きていければいいなと思います。またどこかで皆さんとお会いしたいです」と祈念した。
主演の菊池は「平和を願うという一言にも様々なグラデーションがあります。どこまでも平和であれば良いと思いますが、全く同じ認識で全人類に強制する事は不可能です。そんな中でも、無差別に奪われる命があっていいわけがないという事は強く断言できます。これからの未来で奪われる命がない事を、恐怖しなくていい日々がどこまでも続くことをただただ願っていたいと思います。皆さんのお顔を見ていると、これからの世界がちょっとだけ良くなるのではないかという予感があって、少しだけこれからの日々が楽しみになりました。一緒に何かを変えることが出来ればと思います」と平和への思いを口にした。
最後に、松本監督は「本作を作るきっかけは被爆者である祖父の存在でしたが、製作していくプロセスにおいては、自分の息子の存在がとても大きかったです。戦争は子供とは関係のない事です。今も世界のどこかで小さな命が奪われている。この作品が一つのきっかけとして、世界中に届けば嬉しいです。長崎が最後の被爆地となるよう、長く日本でも世界中でも本作が愛されて、被爆地の事を、長崎の人たちの事を忘れずに伝え続けてくれたら嬉しく思います」と呼び掛けた。
(オフィシャルレポートより)
◆美輪明宏さんからのメッセージ
あの悪魔の閃光から80年
被爆したのは10歳の時、爆心地から3.6キロでした。
静かな夏休みの朝、宿題の絵を描いていました。
出来上がりを確かめるため後ろへ二、三歩下がった途端
ぴかっ! 百万個のマグネシュウムを焚いたような白い光が、
世の中がシーンとして(あれ?こんな好い天気に稲光・・・)
思う間もなく、幾千万の雷が同時におちたようなすさまじい爆音。
外・・・そこは地獄でした。
数日後、浦上の親類が心配になり、爆心地に入りました。
その惨状を目の当たりにして、
僕は初めて冷たい水に漬かったような寒さで身体が震えだし、
底の知れない恐怖に、哭(ルビ:な)き出しました。
夢の中で怪物に追われるように走り続けました。
やがて戦争は、終わりを告げ。原爆の中裸足で逃げまどい地獄絵さながらの、あの光景は、一生私の胸から消えることはな
いでしょう。
しかしあの長崎のコバルト色の空や港、乳白色(ルビ:にゅうはくしょく)の夕もやに包まれた丘の上にある学校の講堂で、遅く
までピアノを弾いてうたっていたあの頃が、いちばん美しい思い出ともなっています。
若い世代の方には、もう二度と戦争を起こさないように、美しい文化にふれて心を豊かにしていただきたいと思います。
美輪明宏
◆福山雅治さんからのビデオメッセージ書き起こし
福山雅治です。
菊池日菜子さん、小野花梨さん、川床明日香さん、そして監督の松本准平さん。さらには、本日お越しくださった皆様、ありがとうございます。
今回この映画『長崎―閃光の影で―』、僕は音楽の方で参加させていただきました。このお話を伺ったときに、まず大変嬉しく、何としても参加したいと思ったのですが、僕の歌唱というよりも、やはりお三方の、菊池さんと小野さんと川床さんの演じられたそれぞれの役の歌声、役として楽曲に歌声で命を吹き込むというのが、この映画のエンディングにふさわしいのではないかと思って、アレンジと歌唱のディレクションを担当させていただきました。
この「クスノキ」という楽曲はもともと2014年に発売された楽曲です。僕自身長崎出身で、デビューしたのは1990年ですけれども、1990年から「クスノキ」という楽曲が発表されたのが2014年、24年かかりました。24年経って、やっとこの「クスノキ」という楽曲ができて発表しました。2025年にこういったかたちで、この『長崎―閃光の影で―』という作品とに「クスノキ」という楽曲で参加できるということは自分にとって本当にありがたいことで、そしてこの三人の俳優さんに歌っていただけることで、また新たな命を宿して長く聴いてもらえる、伝わっていく歌になったんじゃないかなと、この映画とともにそういう作品になったんじゃないかなと思っています。
映画は、とても美しいものを観たなという感想です。目の前で何が起こったかわからないけれども、困っている人を、苦しんでいる人を、助けたい人を、その対象に対して無償の手伝いをする。その人間としての当たり前の行動を、実は命がけでやっているということに、美しさを感じました。そういったごくごく当たり前のことだけど、とても尊いもの、尊い行動・行為というものを自分の手の届く範囲で、目の前で起こっていることで、対応していく。親切にしたい、助けたい、優しくしたい。その連鎖が、一人一人それぞれの連鎖が、今日映画をご覧になってくださっている皆さんの生活の中で、そういう思いで暮らしていくと、それが広がっていって、世界がもう少し、さらに平和というものに向かって前進するのかなと。この映画はそういうことを改めて伝えてくれている作品になっていると思います。
『長崎―閃光の影で―』、そして「クスノキ」。映画と音楽がより多くの人に届くことを願っています。
福山雅治でした。
【あらすじ】
1945年、長崎。看護学生の田中スミ、大野アツ子、岩永ミサヲの3人は、空襲による休校を機に帰郷し、家族や友人との平穏な時間を過ごしていた。しかし、8月9日午前11時2分、長崎市上空で原子爆弾がさく裂し、その日常は一瞬にして崩れ去る。街は廃墟と化し、彼女たちは未熟ながらも看護学生として負傷者の救護に奔走する。救える命よりも多くの命を葬らなければならないという非情な現実の中で、彼女たちは命の尊さ、そして生きる意味を問い続ける――
菊池日菜子
小野花梨 川床明日香
水崎綾女 渡辺大 田中偉登 加藤雅也 有森也実 萩原聖人 利重剛 / 池田秀一 山下フジヱ
南果歩 美輪明宏(語り)
原案:「閃光の影で―原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記―」(日本赤十字社長崎県支部)
監督:松本准平
脚本:松本准平 保木本佳子
主題歌:「クスノキ ―閃光の影で―」(アミューズ/Polydor Records)
作詞・作曲:福山雅治 編曲:福山雅治/井上鑑
歌唱:スミ(菊池日菜子)/アツ子(小野花梨)/ミサヲ(川床明日香)
制作プロダクション:SKY CASTLE FILM ふればり
配給:アークエンタテインメント
推薦:日本カトリック司教協議会
後援:長崎県 長崎市 公益財団法人 長崎平和推進協会
©2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会
公式サイト:nagasaki-senkou-movie.jp 公式X:@nagasaki_senkou
全国公開中