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映画『軍艦少年』佐藤寛太&加藤雅也インタビュー! 俳優として真摯に向き合う二人の思いとは? 佐藤「僕が感動した以上のものを感じ取ってもらえれば」加藤「人間関係が希薄になっている今こそ観るべき作品」

映画『軍艦少年』/Astage-(85)

「ギャングキング」「セブン☆スター」などで知られる、ヤンキー漫画のカリスマ・柳内大樹の同名青春漫画を原作に、Yuki Saito監督の手で実写化した映画『軍艦少年』。
本作は長崎の軍艦島の見える街を舞台に、大切な家族を亡くした親子の喪失と再生を描く珠玉の物語。主人公・坂本海星を佐藤寛太、海星の父・坂本玄海を加藤雅也が演じ、海星の母を大塚寧々のほか、山口まゆ、濱田龍臣、赤井英和、清水美沙など、若手&ベテランの実力派俳優が顔を揃えた。

今回は、劇中で親子を演じている主演の佐藤寛太さんと共演の加藤雅也さんにインタビュー! 真っ直ぐに海星を演じた佐藤さんと、そんな彼を真っ向から受け止めた加藤さん。お二人に、この作品を通して感じた親子のあり方、人間関係を作っていく大切さ、そして俳優としての思いを語ってもらった。

映画『軍艦少年』/Astage-(91)

― まず原作を読まれたときの感想をお聞かせいただけますか?

加藤雅也(以下、加藤):まず監督から「この漫画は作家の柳内さんがとても愛している作品で、ぜひ映画化したいと仰っています」とお聞きして原作を読ませていただきましたが、率直に感動しました。「なるほど。この作家の方はこれを世に出したくて漫画家になったんだろうな」と思うほど柳内さんの気持ちを感じました。

佐藤寛太(以下、佐藤):僕は出演の話をいただいた段階ですぐに原作を読ませていただきましたが、胸を貫かれるように感動して、海星という少年とこのストーリーに一目惚れしました。この作品を当時23歳の自分が演じられるということはとても光栄でしたし、俳優として、そして一人の人間として自分の財産になると思いました。

映画『軍艦少年』/Astage-(178)

― 佐藤さんと加藤さんの親子同士のやりとり中で、拳で語るところは昭和っぽさも感じつつ、素直に気持ちをぶつけられる関係はとても羨ましくも思えます。

加藤:あれは今ではほぼアウトでしょうね(笑)。
佐藤:近所の人が見ていたら通報されますね(笑)。

映画『軍艦少年』/Astage-(208)

― 殴り合いができる親子関係は羨ましいと思いますか? それともやはり殴り合いはないほうがいいですか?

佐藤:殴り合いがなくても親子関係は作っていけると思います。

加藤:殴り合いはしなくていいと思いますが、そのくらい近い親子関係であるということはいいことだと思います。でも、近かったら殴り合う必要もないですよね(笑)。

佐藤:今作では親の目線と子供からの目線が描かれていて、両者の気持ちが分かるので関係が成り立っていますが、普通はどちら側かの気持ちにしか立てないから、その行動の良し悪しはわからないですね。親がしつけのつもりで愛情をもってやっても、そのことによって子供が親から気持ちが離れているようだったら、それは成立しないし。

加藤:この作品では、いい息子だから成り立っている話であって、「ふざけんなよ」で終わってしまったら意味がない。殴り合いができるような親子関係の大前提は、幼い頃から親と子供が接してきて、お互いの信頼関係ができているからだと思います。

最近はお父さんが娘に嫌われなくなっているという話を耳にしますが、自分も娘から「キモイ」とか「あっち行ってよ」とか言われるのを覚悟していたんですが、11歳になる娘が全然そういうことを言わないので、「俺の娘はええ子やな」と思っていたら、今の世の中の子供たちはみんな言わないみたいですね(笑)。

佐藤:そうなんですか。

映画『軍艦少年』/Astage-(106)

加藤:はっきりした理由はわかりませんが、昔と違って子育てに父親も参加していて、幼いころから一緒に遊んであげている。無意識のうちに近くにちゃんと“父親”が存在しているんです。普段全然接することがなく、子供が寝てから帰ってきて子供が起きたときにはもう家にいない・・・となるとその人の匂いも何もない。そんな人がいきなり「何をやっているんだ」とか「勉強しなさい」って言ったって、「何言ってるの?」となりますよね。

「お小遣いをいっぱいくれるからお父さん好き」とか、そういうことじゃなくて、人間関係や絆はいきなりできるものではない。日々の小さな努力です。コミュニケーション1つを取っても、電話はうっとうしいと思われるかもしれないけど、「お前元気か?」と声をかけて「うん」と返ってきたときの声で本当かどうかわかる。メールで「元気ですか?」「元気です」という文字だけではわからないこともあるんです。

最近はだんだん人間関係が希薄になってきている気がしますが、先輩に食事に誘われて行って、そこで聞いた話が凄く良かったり、とても勉強になることも多いんです。そうやって時間を共有することで人間関係が構築されていく。劇中でも人間関係があるからこそ、赤井さん演じる野母崎巌が「どないしたんや」と訪ねて来てくれるんです。そういうことを考えさせられる、今の世の中だからこそ、こういう作品が必要だと思います。

佐藤:加藤さんの仰る通りだと思います。僕も二人の関係性だと思うし、それは一朝一夕でできるものではなく積み重ねてきたものだと思います。

映画『軍艦少年』/Astage-(120)

― 冒頭からワンシーンワンシーンがとても濃いお芝居で、物語の中に引き込まれていきますが、役を演じるうえで準備したことや、どのように役と向き合っていったのかを教えてください。

加藤:準備したことは(大塚)寧々さん演じる妻との歴史です。彼女は途中からいなくなるので、そこからは彼女との思い出との対話しかない。それをどれだけリアリティあるものにするかをじっくり考えました。自分の中で本当に怒って、泣ける状態までもっていくためには紙に書いた履歴書では意味がない。そこはとても大切なことだと考えました。

― その歴史を作るために大塚さんとお話しをされたのでしょうか?

加藤:特に話はしてないです。それは僕の中にあることだから。例えば、寛太に対するイメージって、いちいち話さないですよね。もし彼が死んだとしたら、死んだ事実に泣くよりも、こんなことあったなという思い出に泣くんです。自分との思い出がない人が死んだとしても「そうなんだ」という程度。だから、その思い出を自分の中でどれだけ作るかということ。映画の中で彼女(大塚さん)が言うセリフの意味を考えたり、この言葉を私生活で言われたらどうなるんだろう・・・と膨らませていくんです。

映画『軍艦少年』/Astage-(81)

― また、加藤さんは演じることに気を抜かないということをいつも心がけていると仰っていましたが、具体的にはどのようなことですか?

加藤:僕が大事にしていることは「小さい役者はいるけれど、小さな役はない」ということです。それはちっぽけな役などはないという意味で、ワンシーンしか出番がなくても、その人物のことをしっかり考えて役を作って臨まないといけないんです。主役のほうが色々な情報があるから考え方によっては楽かもしれないですね。脇役やワンシーンしか出番がない人は「君はこの役です」ということだけ告げられ、あとは自分で想像しないといけない。セリフを覚える作業の量は違うけれど、役を作るという作業は同じだけやらなければいけない。それは自分がずっと大事にしてきていることです。

佐藤:加藤さんが仰ったことは、ずっと頭ではわかっていましたが、僕も最近は自分で体験しながら学んできました。

加藤:役者をやっている人ってみんな分かっているんですが、言葉で説明されたときに初めてそれが具体化するんです。漠然とわかっているだけでなくそれを確固たるものにするためにも先輩の助言が本当は必要なんです。漠然としていたら再現性もないので。

佐藤:最近は自分でもそれを形にできている気がします。役の大小や作品の大小に関わらず、ちゃんと1つ1つ向き合っています。

加藤:それでいいと思います。最終的にあなたが60年後、70年後に死ぬときに、佐藤寛太という人間が考えたメソッドを作ればいい。佐藤寛太にしか通用しないかもしれないけど、そのメソッドを作り上げることが俳優としての一生をかけた仕事なんです。その俳優にしか成立しないメソッドってあるんです。

映画『軍艦少年』/Astage-(206)

― 佐藤さんは実際に軍艦島にも行かれて貴重な体験をされたと思いますが、この映画に出演されて何かご自身にとって大きな収穫はありましたか?

佐藤:自分が凄く惚れ込んだ作品で、自分が演じられるということはとても光栄でしたし、これまでも原作を実写化する作品に出演する機会は色々ありましたが、今回は「自分が原作で感動した以上のものを映画を観てくださった方に感じ取っていただけないと、映画作品としての成功とは言えないし実写化した意味がない・・・」と、監督と話していました。それは僕にとっても大きな意味があったのでこの作品に参加できて本当に良かったと思っています。

映画『軍艦少年』/Astage-(195)

― 今まで以上に佐藤さんの本気度を感じられる作品になったのではないでしょうか?

佐藤:自分自身が原作の大ファンでしたし、本当に共演の俳優の方々や、スタッフの皆さんに恵まれました。がむしゃらに向かっていくキャラクターだったので、何かに懸命な姿を見せることができたと思います。無理に作ることなく演じることができました。

加藤:それは寛太が持っているものに一番近いということだと思うよ。自分の中にあるものを出せばいい。そういう作品に出会えたことはとてもラッキーなこと。もちろん、どんな作品も全力で臨むし、自分と違うものであればそれに寄せていくことは大切なんだけど、やっぱり本当の自分は強い。赤井さんで言えば『どついたるねん』なんてそのものですから。誰も勝てるはずがない。世界中の名優が束になってかかっても赤井さんよりいい演技はできないんです。気合いの入れ方が違うというよりも、感じ方が違うだけのこと。同じように演じていてもこういうピッタリの役はなかなかないです。とは言っても、今この企画が立ちあがったとしても年齢的にも違うものになるから、その時の巡り合わせもあるんです。

よく俳優が「役に恵まれた」と言いますが、ハリウッドではアカデミー賞を取った人が凄いのではなくて、その世界で一生続けている人が凄いんだと言われます。「What’s next?」「次は何?」と聞かれて、次の作品があるということが大切。ただ、往年のスターにはちゃんとリスペクトをしている。売れなくなった人には冷たいけれど、功績は称える。日本はそれがあまり感じられないのは少し寂しい気がしますが、一度名を馳せたらそれが財産になります。

映画『軍艦少年』/Astage-(109)

― 共演されて、お互いの印象をお聞かせいただけますか?

加藤:彼は真っ直ぐにぶつかっていくという役ですが、役だけでなくそのものなんです。演技で何かをしようというより、真っ直ぐに向き合う。しっかりとした芯があり、真っ直ぐにできることはとても大切なことです。今は器用な子が多いけれど、彼の真っ直ぐなところがとてもいいなと思いました。

佐藤:僕は勢いだけで乗り切った感じはありましたけど(笑)。
加藤:そういうのもあっていいと思うよ。

映画『軍艦少年』/Astage-(108)

佐藤:冒頭で加藤さんが「ケンカ禁止!」と言っている可愛らしい姿だったり、母親との回想のところではにかむシーンが素敵でした。ラストで見せた加藤さんの笑顔を一番の特等席で見ることができて役者としてとても得したなと思いました。

映画『軍艦少年』/Astage-(69)

【佐藤寛太 Kanta Sato】
1996年6月16日生まれ、福岡県出身。15年に劇団EXILE に加入し、俳優活動を開始。主な映画出演作は、『HiGH&LOW THE MOVIE』シリーズ (16·17·17)、『イタズラな Kiss THE MOVIE』シリーズ(16·17·17)、『恋と嘘』(17)、『わたしに××しなさい!』(18)、『走れ!T校バスケット部』(18)、『家族のはなし』(18)、『jam』(18)、『今日も嫌がらせ弁当』(18)、『いのちスケッチ』(19)、『花束みたいな恋をした』(20)など。他にもドラマ、舞台など活動の幅を広げている。

【加藤雅也 Masaya Kato】
1963年4月27日生まれ、 奈良県出身。大学在学中にモデル活動を開始し、『マリリンに逢いたい』(88)で俳優デビュー。1995年から活動拠点をロサンゼルスに移し、英語での演技、メソッド演技の勉強をする。1998年には、ハリウッド映画『GODZILLA』(98)にも出演。主な映画出演作は、『BROTHER』(01)、『THE LAST MESSAGE 海猿』(10)、『真田十勇士』(16)、『二階堂家物語』(18)、『キングダム』(19)、『彼女は夢で踊る』(19)などがある。

◆予告編映像

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映画『軍艦少年』
【STORY】
長崎・軍艦島の見える街で暮らす、地元の高校に通う海星と小さなラーメン屋を営む玄海。最愛の母を亡くして喧嘩に明け暮れる息子と幼馴染の妻を亡くして酒に溺れる父は互いに反目し、いがみ合っていた。そんなある日、海星は父と母が生まれた軍艦島に二人の大切な物がある事を知る。一方、玄海は妻が祀られた仏壇に一通の知らない手紙がある事に気付くが・・・。

出演:佐藤寛太 加藤雅也
山口まゆ 濱田龍臣
柾木玲弥 一ノ瀬ワタル 花沢将人 髙橋里恩 武田一馬
赤井英和 清水美沙 / 大塚寧々
監督:Yuki Saito
脚本:眞武泰徳
劇中画:柳内大樹
原作:柳内大樹『軍艦少年』(講談社「ヤンマガKC」刊)
主題歌:卓真「軍艦少年」(UNIVERSAL MUSIC)
制作プロダクション:エノン
製作:『軍艦少年』製作委員会
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2021年/日本/104分/シネマスコープ/5.1ch/PG12
©2021『軍艦少年』製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/gunkanshonen
公式Twitter:https://twitter.com/gunkanshonen
公式Twitter:https://www.instagram.com/gunkanshonen

12月10日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国公開中!

佐藤寛太さん&加藤雅也さん直筆サイン付きチェキプレゼント!
応募はこちらから

映画『軍艦少年』/Astage-(159)-2

撮影:ナカムラヨシノーブ

佐藤寛太ヘアメイク:KOHEY
佐藤寛太スタイリスト:平松正啓(Y’s C)
加藤雅也ヘアメイク:結城春香