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こまつ座 第108回公演『小林一茶』 和田正人 インタビュー

NHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」でヒロインの幼なじみ、源太役を演じた和田正人。
その後もドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」など、映像で活躍する一方、昨年末には舞台Dステ15th「駆けぬける風のように」の演技が評価され『平成26年度(第69回)文化庁芸術祭賞 演劇部門新人賞』を受賞。
今、大きな注目を集める旬の俳優が、4月6日から井上ひさしの名作『小林一茶』の舞台に立つ。

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―ドラマでも大活躍されて、とてもお忙しい和田さんですね。
色々と経験させて頂けることが、とても嬉しいです。今は、この稽古にとにかく必死です!

―(インタビュー時)初日まで残り10日あまり。手ごたえは如何ですか?
残り二週間きってしまいました。井上ひさし先生の作品をやってこられた俳優さんは、みなさんがそうなのではないかと思いますが、幕が開くぎりぎりまで必死だと思います。普段の作品なら、10日前には手ごたえを感じていると思いますが、今はそんなことを考える余裕もないくらいに、今自分がやるべきことをやり、徹底的に体に沁み込ませることに精いっぱいです。

―ブログに台詞のあるページを折った台本の写真を載せておられましたね。凄い台詞の量なのだろうと驚きました。
覚えるものは覚えましたが、覚えることはできても、体に沁み込ませることは、また更に大変で時間もかかることです。とにかくここから、ラスト一週間が勝負です(笑)。

―オファーが来た時に「これは大変な仕事だな」と感じておられたのでしょうか?
井上ひさし先生の戯曲ということで、とても光栄に思いました。俳優として今後、長きにわたって活動していくためには、こういった日本を代表する劇作家の作品に取り組んでいかなければと思っていました。とても名誉で光栄なことだと思う反面、これまで数多くの名優の皆さんが築き上げていらっしゃるものがある中、この公演の座長になることは大きなプレッシャーでもあります。そしてやらなければいけない作業や乗り越えなければならない苦労もたくさんあるだろうと覚悟もしてはいましたが、今、まさにその大きなものに向き合っていることを実感しています。

―小林一茶のライバルの竹里(ちくり)役を演じる石井一孝さんは、和田さんについて「アグレッシブで、女性がほっとかない小林一茶は、和田さんにぴったり」とおっしゃっているようですね。
いえ、もう今回は、全く自分を客観視できていません…(笑)。
ただ、役がらも俳優のみなさんも個性豊かなユニークな方が多くて、じわじわと後から面白さが追いついてくるような…一回味わうとクセになるような、そんな座組みになっているような気がします。

―和田さんの演じる小林一茶は「容疑者」であり「食い詰め俳諧師」とのこと。教科書に載っている一茶のイメージとは随分違いますね。
教科書に描かれている人間像が、いかに選ばれた情報かということですよね。歴史って面白いなぁと思いました。歴史上の人物と言われる人たちや、偉い先生や偉人もやはり人間。人間は生きるためにいろんなことをやってきているものでしょう?幼い頃に悪い事をしたかもしれない。男女関係でもめて異性を奪い取ったことだってあったかもしれない。人生、いろんなことがあるのが人間ですけれど、その人が残してきた偉大なものばかりがフォーカスされるのが世の常。それが当然といえば当然のことなのかもしれないのですが、いろんなことがある人間の人間らしさをしっかり描いているのが、井上先生の戯曲の魅力だと思っています。

―ひとりの女性を竹里と奪い合う小林一茶というのも、また新鮮です。
この作品は井上先生が史実をもとにして書かれた作品ですが、この事件があったからこそ小林一茶という、世に名を残す人物ができあがったという井上先生の独自の解釈で描かれています。また、一人の女性をめぐっての出来事も大きなキーワードになっています。「人がどのように時を経て、どのように選択して生きてきたのか」というところがしっかり描かれていますし、面白いと思いますよ。

―演じながら、ご自分の人生を重ねてみたり、感じたりするところがありますか?
演じながらもそうですし、観に来てくださる皆さまもあると思います。たとえば、真逆の生き方をする一茶と竹里のふたりですが、友情も芽生えるんですよ。この二人の、どちらに共感を覚え、どちらに憧れを抱くのか。僕は今の自分の生き方と照らし合わせて、今後自分はどう生きたいのかと考えることが多いですね。片や俳諧という自分が突き詰めたいものを選ぶ、片や女性を選ぶという生き方があったとしたら、僕だったら、どんな生き方を選ぶのか…と、いろいろ考えるところはありますね。江戸時代を舞台にした戯曲ですが、現代の世の中にも通じるものが、そっくりそのままに描かれていて、まるで世の中の縮図という感じすらしています。

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―劇中劇で二役を演じるとのこと。一人二役も大変ですよね?
ひとりで二役を演じるのは、役づくりという点ではやるべき分量は増えますけれども、それぞれの役で表現も変わってきますし、1人何役もというのは演劇の中ではよく行われることなので、それ自体は大きな苦労ではないと思っています。
ただ江戸という時代背景で馴染みのないものが多いですし、井上作品ならではの表現方法や難しい言葉もあります。それらを普段から馴染んでいるものとして徹底的に体に沁み込ませなければいけないという苦労はありますね。さらに、俳諧という専門的なものが加わってくるので、二重にも三重にも難易度の高い作品だと感じています。

―それを和田さんが演じることで親しみやすくしてもらえますか?
そうなるといいですね。頭を悩ませる難しいものだととらえられがちではありますが、実際に芝居を観て頂くと、けっしてそうではないんです。すごくシンプルなお話です。それを僕も、そして出演者みんなで親しみやすい、陽気なものとして伝えられるといいなぁと思っています。そもそも井上先生の戯曲はとてもユーモアのある作品ばかりですし、本作もそのひとつです。

―本作にも、井上作品らしいユーモアや笑いがあるんですね?
はい、その面白さや滑稽さみたいなものを存分に表現したいと思っています。

―そういえば、和田さんのツイッタ―で踊っているような稽古場の写真が公開されていましたね?
踊っています(笑)。

―踊っていたのですか?! 見どころとしては、もっとありますか?
小林一茶という一人の男にスポットライトを当てて描いている作品なので、俳諧という芸術的要素ももちろんありますが、基本的には「大金を盗んだ犯人が本当に小林一茶なのか?」というお話です。ミステリー的要素があり、推理劇としても楽しんで頂ける作品です。最後にどのような結末が待っているのかは、ひとつ大きな見どころとして楽しんで頂ければと思っています。「犯人は誰だ?」と自分なりに推理しながら見て頂けたら…とも思います。

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ー「ごちそうさん」での明るい役柄の印象がある和田さんですが、3月に放送になったドラマ「結婚に一番近くて遠い女」では、イケメンの和田さんが思いがけない姿を見せる役をされましたね。びっくりしました。そして舞台ではこのように膨大な台詞の難しいお芝居。挑まれていますよね。
「結婚に一番近くて遠い女」では役者冥利に尽きるというか、おいしい役を頂きました。俳優は演じることがお仕事ですから、かっこよく見せたい、とか意識していることはないです。かっこ悪い役も、かっこいい役も、普通の役も演じられなくてはいけない。いろんなものを演じられて初めて俳優と呼べると、俳優なら全員がそう思っていると思います。俳優と名乗っているひとは、たぶん、きっとそんな誇りを持っておられるでしょう。自分は実はまだまだですが、そんな俳優の方たちと作品でちゃんと向き合えるような生き方をしていかなくては…と思っています。

―では最後に、突然ですが、高知県観光特使の和田さんの「高知のおススメ」を教えて下さい。
素晴らしいのは「土佐ジロー」という地鶏です。とてもおいしくて、鶏冠も刺身で食べられるほどです。育てるのが大変で流通量が少なく、高知県内でも食べられる店は少なくて「幻の地鶏」とも言われています。うまみ成分が名古屋コーチンの3倍と言われ、親子丼もすごく美味しいですよ。一度高知で食べてみてください!

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プロフィール
和田正人(わだ まさと)
1979年8月25日生まれ。高知県出身。
俳優集団D-BOYSのメンバー。映画やドラマ、舞台など幅広く活動している。平成26年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞を受賞。大学時代には箱根駅伝に2度出場したアスリートとしても知られている。
《主な出演作品》
舞台 : 『新・幕末純情伝』、Dステ15th『駆けぬける風のように』
ドラマ: NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』TBS『ルーズヴェルト・ゲーム』WOWOW『天使のナイフ』、「容疑者は8人の人気芸人」(4月18日放送)
映画 : 『アシンメトリー』『鴨川ホルモー』『コドモ警察』『起終点駅ターミナル』(2015年秋公開予定)など。

公演概要 こまつ座 第108回公演 紀伊國屋書店提携『小林一茶』
作  : 井上ひさし
演出 : 鵜山仁
出演 : 和田正人 石井一孝 久保酎吉 石田圭祐 小嶋尚樹 大原康裕
小椋 毅 植田真介 川辺邦弘 松角洋平 一色洋平 荘田由紀
日程 : 2015年4月6日(月)〜4月29日(水・祝)
会場 : 新宿東口・紀伊國屋ホール
入場料: 7,600円/夜チケット7,000円/学生割引5,500円(全席指定・税込)
◆チケット取扱◆
[こまつ座] 03-3862-5941
[こまつ座オンラインチケット]  http://www.komatsuza.co.jp/
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