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大貫勇輔インタビュー 「この2年で自分が何を学んだか、その経験が舞台の上でどう役立つのか、自分でも楽しみ」 舞台『ねじまき鳥クロニクル』は「見なかったら後悔する作品」になる

村上春樹の代表的長編小説『ねじまき鳥クロニクル』が、豪華スタッフ&キャストで舞台化される。
注目したいのは、ミュージカル「100万回生きたねこ」や百鬼オペラ「羅生門」を手掛け、高い評価を受けたインバル・ピントが、演出・美術・振付を担当し村上春樹の世界へ挑む。そして、NHK「あまちゃん」「いだてん」など映像作品でも広く活躍する大友良英が、音楽から村上春樹作品の世界を支える。
今回、Astageは、インバル作品への出演経験を持つ大貫勇輔にインタビュー。その魅力を教えてもらうと共に、俳優として活躍目覚ましい大貫の意気込みを聞いた。

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―インバル・ピントさんとの本作への出演が決まった時はいかがでしたか?
インバルと一緒にお仕事できるのはミュージカル『100万回生きたねこ』の初演以来で、すごく嬉しかったです。

―どうして嬉しいと思うのですか?
やはり作品が素晴らしかったからです。「あの作品に関わることができてよかった」と思えたことが一番です。

―具体的に教えてもらえますか?
『100万回生きたねこ』でインバルと会ったばかりの頃は、振り付けられたものに乗っかっていきたい…正解を提示してもらってそこへ向かって行きたいと思っていたのですが、インバルはクリエーションの時間をとても大切にしていて、ダンサーみんなと密にコミュニケーションしながらつくりあげていかれる方です。いい意味で、正解を与えてくれない。キャストが自分で答えを見つけるのを待つタイプ。もちろん最終的に「OK! それでいこうね」というのはありますが、最初から明確に「これで」というようなレールを引かないのです。それが自分にとってはすごく貴重な体験になりました。

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―ダンスと聞くと、キャストは決まった振付を与えられるというイメージがありますけれど、全然違うんですね?
こちらからいろいろとアイデアを提示して、それをちょっとずつピックアップして作っていく。時には壊したりもしながら・・・。最初はその作業が難しかったのですが、終わってみてみてクリエーションの時間が重要だと思いました。

―インバルさんは、すごい方なんですね。
すごいのは何でもするところがすごい。絵も描く、デザインもする。何より人を信頼する力が彼女の大きな魅力だと思います。普通、他人を信用しているつもりでも、なかなかすべては委ねられないものでしょう?でも彼女はこちらが「そんなに信用してくれるの?!!」と思うほど信頼してくれる(笑)。許容範囲が広くて、決して怒らないで「そういう可能性もあるよね」とクリエーションを共に楽しめるので、失敗してしまう恐れがなくて、いろいろなことにトライできる。その分、互いに責任が伴うけれど、面白いものが生まれるんです。感謝をしつつ、彼女の期待に応えたいと思います。

―それは、思う存分できるってことですか?
そうなんです。こちらがたくさん引き出しをもっていれば、それだけ彼女も返してくれる。自分でもっともっと能動的に考えて動いていくことで、この作品が良くなっていくと思える。足し算じゃなく掛け算で、突然すごいものが生まれる稽古場なので、楽しみで仕方ないです。

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―その稽古場は、普通の稽古場とは随分違うのでしょうね?
そうですね、ムチャ振りが連発される感じです。(笑) 本作のワークショップでも、始まりは「この女性を操ってみて。はい、どうぞ!」で始まったので、あっけにとられました。でも、それぐらい広い括りの中から始まると、面白いものや予期せぬ良いものが生まれたりする。そこから形を作って制限を増やして…と、その作業もすごく面白かったです。
なので、このタイミングでインバルともう一度お仕事できるのは、運命的なものを感じています。

―今回再会したインバルさんからは、何か言われましたか?
「英語がしゃべれるようになったね」と言われました。(笑) 前回は英語でまったくコミュニケーションがとれなかったので。

―それは英語の勉強をされたのですか?
勉強はしていないのですが、海外の方とお仕事をする機会が増えて、なんとなくコミュニケーションがとれるようになっていました。

―藤田貴大さんと共に脚本・演出をされるアミール・クリガ-さんはいかがですか?
アミールさんとは今回初めてお会いしたのですが、稽古場では日本語、英語、ヘブライ語が飛び交って言葉の壁があるはずなのですが、不思議と「こうやりたいんだ」というのがちゃんと共有できる・共感できるんです。言語を超えてコミュニケーションがとれていることがすごいと感じています。

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―村上春樹さんの原作+インバルさんとアミールさんと藤田さんいうことで、どんな舞台になるのか?…正直、まったく想像つかないのですが、大貫さんはワークショップの時にすでに見えてきたものがあったそうですね?
インバルが担当される一幕の美術の絵コンテを見せて頂いて、大友さんの音楽をちょっと聞いただけで「村上春樹さんの世界とコンテンポラリーがバッチリ合う」と思いました。
今回はコンテンポラリーダンスとお芝居が切り離されることなく、お芝居の中にダンスがあって、ダンスの中に芝居がある。ちゃんと融合したものをお届けしたいと思います。そのあたりはインバルと一度経験しているので、まったく心配はしていないのですが、ただ、綿谷昇という役をどう演じるのが正解なのか…。それが僕の悩みです。

―綿谷昇…主人公・岡田トオルの妻クミコの兄で、経済学者ですね。
カリスマ性がありエゴイストで、どちらかといえば悪の側の人です。お芝居で悪役を演じたことがないので、新しい自分を見つける…ある意味、挑戦だと思っています。現実には綿谷昇のイメージにあてはまる方がちょっと思いつかないので悩んでいますが、彼の一部分だけなら当てはまる人がいそうな気がするので、考えながら作っていければ…と思っています。

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―大貫さんはダンサーとしてデビューされて、たくさんの舞台を経て最近は映像でも俳優として大活躍されています。Astageが前回インタビューさせて頂いたのは、2015年10月。「俳優として頑張る」という決意を語っておられたのですが、それから4年余り。今はどんな景色が見えているのか、教えて頂けますか?
その頃は、まさに俳優に憧れて、ダンスを止めていた時期ですね。俳優の身体になろうとして8カ月ほどダンスを止めていたんです。その後、ダンス公演のためにダンサーの身体に戻すのにかなり大変で3カ月くらいかかりました。その時に「ダンサーにしかできないお芝居がある」ということに改めて気付きました。それまでは当り前にダンサーとしてダンスをしていたから気が付かなかった。もちろん俳優にしかできないダンスも存在します。でもその時に「僕はやっぱりダンサーなんだ」と改めて気が付いたんです。今も俳優へのリスペクトと憧れがもちろんあります。でもダンサーの僕ができるお芝居が存在して、それが僕の強みなのではないかということに気が付けた。だから今はダンサーのトレーニングをしながら、お芝居でもいろんな経験をしながら学んでいます。
さらに映像のお芝居をしていく中で、台本への取り組み方も変わり、役への突き詰め方がより細かくなりました。
いろんな経験をして、今回、舞台『ねじまき鳥クロニクル』でお芝居の舞台に立つのは『メリーポピンズ』以来2年ぶりになります。その間に『ロミオ&ジュリエット』で死のダンサーなどはやりましたが、声を発する作品は約2年ぶり。この2年で自分が何を学んだか、その経験が舞台の上でどう役立つのか…、自分でも楽しみです。

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―では、最後にメッセージをお願いします。
感覚的な表現になってしまいますが、舞台『ねじまき鳥クロニクル』は「見なかったら絶対後悔する作品」になるだろうと思います。原作とキャストはもちろんですが、ダンサー陣も素晴らしい。夢なのか現実なのかわからない幻想的な部分と、大友良英さんの音楽と、演出の藤田貴大さんの日本とインバルとアミールさんのイスラエルの感覚が上手く融合して「今まで観たことない舞台になる!」という予感でいっぱいです。「観なきゃ損しちゃう舞台になるだろう」と思います!

舞台『ねじまき鳥クロニクル』
原作:村上春樹
演出・振付・美術:インバル・ピント
脚本・演出:アミール・クリガー
脚本・演出:藤田貴大
音楽:大友良英

【キャスト】
<演じる・歌う・踊る>
成河、 渡辺大知、 門脇 麦
大貫勇輔、 徳永えり、 松岡広大、 成田亜佑美、 さとうこうじ、 吹越 満、 銀粉蝶
<特に踊る>
大宮大奨、 加賀谷一肇、 川合ロン、 笹本龍史
東海林靖志、 鈴木美奈子、 西山友貴、 皆川まゆむ (50 音順)
<演奏>
大友良英、 イトケン、 江川良子

★東京公演
日程:2020年2月11日(火・祝)~3月1日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
料金:S席 11,000円、 サイドシート 8,500円(税込)

★大阪公演
日程:2020年3月7日(土)~3月8日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
料金:12,000円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可

★愛知公演
日程:2020年3月14日(土)~3月15日(日)
会場:愛知県芸術劇場大ホール
料金:S席12,000円、 A席10,000円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可
▼公演詳細 https://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2020/
▼公式ツイッター @nejimakistage

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