Open Close

2020年第33回東京国際映画祭 コロナに負けず新企画【TIFFトークサロン】と合わせて注目のアジア映画紹介【前編】

映画祭といえば、世界各地の最新の映画や日本でなかなか観ることができない映画を観る貴重なチャンス。そして、その映画にかかわった海外からのゲストを目の前にして、その姿を見て生の声を聞くことができるのが、映画ファンの最大の楽しみといえるでしょう。

東京国際映画祭では例年、【Q&A】という映画の鑑賞後にゲストが登場して観客からの質問にスタッフやキャストが答えてくれるコーナーがあります。
正味20分ほどの短い時間ですが、時には突飛とも思える観客の率直な質問に、ゲストがその場で考えて答えてくれます。その回答はもちろん、その時の表情や態度、言葉選びからもその人柄がにじみ出るようで、映像やマスコミの手を経た情報を見るのとは違った楽しさがあります。
また、Q&Aの後には会場のあちこちで、海外ゲストにサインをもらうために並ぶ長い列を見ることもしばしばです。開幕式が映画祭の花なら、こちらは映画祭の実ともいえる、映画ファンには嬉しいイベントです。

残念ながら、今年は感染症拡大の影響により、海外からのゲストの登場を望むべくもなく、それが叶いませんでした。映画が見られるだけで嬉しい、ゲストについては、すべてをあきらめしかないと思っていました。
ところが、主催者はなんと対策として、ネットを通じての【Q&A】を立ち上げてくれました。名付けて【TIFFトークサロン】。
映画の上映とは別の時間に、オンラインでのトークコーナーにゲストが登場、Q&Aを実施。作品の鑑賞チケットをお持ちの方はZoomウェビナーにてゲストへ質問を寄せることができ、映画のチケットを持っていない方も映画祭公式YouTubeチャンネルで同時刻に見ることができ、しかもライブ終了後はいつでもYouTube上で視聴できるという嬉しい試みです。

bnr_square_TIFFTalkSalon

これまでのQ&Aのように、映画祭でのイベントに参加した人だけという希少価値は減りましたが、いつでも誰でも見ることができるのも嬉しいことです。

というわけで、ここでは今年の東京国際映画祭の上映作の中からAstageアジア担当が注目した作品のうち、TIFFトークサロンでの話を聞いて、さらに面白さが深まった中華系3作品をご紹介します。

映画祭で映画は見たけれど、【TIFFトークサロン】は見ていないという方はもちろん、今回の映画祭では見逃してしまったけれど…という方も、動画配信サービスで海外映画を視聴する機会が増えた昨今なので、今後、作品を見る機会もあるのではないかと思います。
記事から興味を持たれたら、映画の鑑賞後には是非TIFFトークサロンもご覧になっていただければと思います。

取り上げる映画は3本。
まず「台湾電影ルネッサンス2020」から、グイ・ルンメイ(桂綸鎂)とトニー・ヤン(楊祐寧)というスターが出演したブラック・コメディ「足を捜して」(原題:腿)

そして、後編として別ページで2作品をご紹介
韓国で暮らす華僑の青年を描いた「チャンケ:よそ者」(醬狗)と、1980年代の中国の若者の恋愛模様を描いた「恋唄1980」(原題:恋曲1980)です。

では、まずご紹介するのは
「足を捜して」(原題:腿)
監督 チャン・ヤオシェン(張耀升)
キャスト グイ・ルンメイ(桂綸鎂) トニー・ヤン(楊祐寧)
https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3304WFC17

2002年に『藍色夏恋~藍色大門』でデビュー以来、トップ女優として活躍を続けるグイ・ルンメイと、台湾から中国映画に進出し、幅広い役柄を演じて活躍中のトニー・ヤンの出演とあって、ゲスト登場無しのコロナ禍にもかかわらずチケットの売れ行きも好調だった人気作品です。

張耀升監督は、昨年の東京国際映画祭で上演され、2019年金馬奨で11部門でノミネートされ最優秀作品賞に輝いたチョン・モンホン(鍾孟宏)監督の「ひとつの太陽」(原題:陽光普照)で脚本を手掛け、本作が監督デビュー作です。
そして今度は鍾孟宏監督が、本作の脚本を張耀升監督とともに担当しています。

(ちなみに映画「ひとつの太陽」は、サスペンス的な展開から思いがけない結末迎える心に刺さる名作です。現在、NETFLIXにて視聴可能。必見です!)

前置きが長くなりましたが、本作の物語は…
敗血症になった夫(トニー)は、命を救うために足を切断したにも関わらず帰らぬ人となってしまいます。夫の切断された足は、その後行方不明に。妻(グイ)は無くなった脚を取り戻すために駆けずりまわります。
二人の出会いから恋模様、そして事の顛末までの波乱万丈な物語を一気に見せて、飽きさせることがありません。サスペンス的な面白さに加えて、人生の悲哀をブラックユーモアでまぶした見ごたえある作品です。

知的で美しいグイ・ルンメイが、コメディに出演というのも意外でしたが、見終わってみれば彼女の知的な美しさこそ、この役にピッタリだったように思います。そしてトニー・ヤン演じる憎みきれないダメ男の悲哀と純情に涙させられました。

では、『TIFFトークサロン』から、印象的な張監督のトークの一部をご紹介しましょう。

「驚かれると思いますが、私の母が、切断された父の足を7日後に見つけて持って帰ってきたという事実から発想を得て脚色しました。
エドワード・ヤン監督のクーリンチエ殺人事件を見て衝撃を受けて、10代の頃から監督になりたいと思っていましたが、手づるもなく、まず小説を書き始め、映画の脚本を手掛けるようになり、やがてテレビ映画やショートフィルムの監督をしながら映画監督の修行をすることになりました。新人監督が本作をつくることができたのは、チョン監督のおかげです」

「出演した台湾のスターのクイ・ルンメイとトニー・ヤンについては、当初、主人公には別の女優がキャスティングされていましたが、クランクインの直前に出演できなくなり、急遽主人公探しが始まりました。主人公はダンスの基礎がある女優でなければならず、気の強い役。グイがダンスを習ったことがあるのを知っていたので、グイを思いつくも、大女優のグイが自分のような新人監督の作品に出演してくれるとは思えませんでした。だが鍾孟宏にも薦められでオファーしてみると、「イメージチェンジのチャンス」と考えたグイは出演を快諾してくれました」

張監督は、撮影現場に現れたグイを見た瞬間に、この役そのものだと感じたそうで、グイのすばらしさを称えています。
トニーが演じた何をやってもうまくいかない、でも天真爛漫で憎まれない男性役については、オーディエンスから面白い観方を提示され、監督も自らの見方や男性観をたっぷり語ってくれているので、映像でも確認してみてください。

結末を知ってからも、もう一度見たくなる作品です。日本での公開を願っています。

この記事の後編はこちら。