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10月10日 A New Musical『ゆびさきと恋々』衛星劇場でテレビ初放送!前山剛久 インタビュー

言葉にできない思いを歌で表現した素敵なミュージカル
揺れ動くいろんな表情を見られるのも映像ならではです

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聴覚障がいのある女子大生・雪と逸臣との恋模様を描いたミュージカル『ゆびさきと恋々』。同名人気コミックを舞台化したこの作品で逸臣を演じたのは、2.5次元の舞台から大作ミュージカルまで幅広く活躍する前山剛久。今回の放送に先駆け、公演当時のエピソードを振り返っていただきました。

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『ゆびさきと恋々』は手話も交えたミュージカルでした。公演を終えた今のお気持ちを教えてください

難しい作品だったなと思います。ヒロインの雪が言葉を話さないぶん、2人のシーンでは僕が一方的に語りかけるだけの時もあり、いつもとはお芝居の作り方やテンポ感がまるで違ったんです。でも、そこが新たな挑戦で、楽しい部分でもありました。それに僕が演じた逸臣も、きっと雪と出会ったばかりの頃は、いろんな戸惑いがあったと思うんです。そうした感情をリアル体験しているようで、役作りにも活かすことができた気がします。

今作は人気コミックが原作で、前山さんが演じた逸臣は王子様キャラでした。コミックのキャラクターを体現する上で、気をつけたことはありますか?

意識したのは相手役に対する行動です。コミックより少しアグレッシブな人物像を目指しました。というのも、これがもし映像なら、原作に忠実にしたほうが役は作りやすいと思うんです。特に逸臣はクールな印象もある男性ですから。でも、舞台でリアルさを出すのであれば、動きを大きくしたり、感情もやや過剰なほうが伝わりやすいのかなと思ったんです。とはいえ、王子様的なお芝居といいますか、女性がキュンとする動きというのは、演出の田中麻衣子さんに全面的にお任せしました。例えば、歌っている雪を逸臣が引き寄せるシーンがあるのですが、田中さんに『もっとグッとしたほうがいいね』とか、『雪が振り向くタイミングで引き寄せてほしい』と言われ、何度も稽古を重ねて(笑)。“そうか、急な感じで引き寄せたほうがいいんだ……”という動き自体は理解できましたが、きちんと胸キュンしていただけたかは最後まで不安でした(笑)

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(笑)。逸臣は意外と積極的な性格でしたよね。

そうなんです。そうした少し大胆な行動に出られるのは、逸臣が海外育ちだからなのかなと感じました。ハグが日常にある世界で生きてきたから、スマートに女性とスキンシップを取れるのかなって。また、彼は知的好奇心が強く、そこに純粋さがあるんです。特に言語に対してはすごく前のめりで、彼自身、英語やドイツ語をはじめ、いろんな国の言葉を話すことができる。そんな彼にとっては“手話も言語のひとつだ”という感覚なんだと思います。だからこそ、雪に対しても、手話のことをもっと知りたいという思いが強く、結果、無意識のうちに行動も積極的になっていったような気がします。

前山さんが逸臣以外で気になった役はいますか?

雪と幼なじみの桜志はちょっとかわいそうな役だなと思いました。昔からずっと雪を見守ってきて、誰が見ても “雪のことが大好きなんだろうな”って伝わってくるのに、雪からはまるで相手にされてなくて(苦笑)。もしこれが現実世界のお話なら、桜志に感情移入する人が多いのではないかと思います。

では、演出面で印象的だったことはありますか?

興味深かったのが、今作は演出の田中さんだけでなく、脚本家の飯島早苗さん、音楽を担当してくださった荻野清子さん、それに振付の前田清実さんと、女性のクリエイターが多い現場だったんです。だからこそ、少女マンガの世界観を崩すことなく、見事にミュージカルとして成立させられたのかもしれません。皆さん、この作品に対してものすごく深い愛情をお持ちでしたし、繊細にシーンの一つひとつを作られていて。僕がこれまで多く経験してきた2.5次元の舞台は“考える前に動け”という根性論みたいなところがあったりも(笑)、すごく新鮮でした。もちろん、根性論も大好きなんですけどね。

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また、オープニングでいきなり展開されるコンテンポラリーダンスも魅力的でした。

今回はいくつかダンスシーンがあるのですが、アグレッシブな動きのものが多くて楽しかったです。音楽自体はおとなしめだったり、可愛い曲調のものが多くて、原作の世界観ともすごくマッチしているのですが、前田さんの振付はそれをいい意味で超えてくる(笑)。また、ダンスの動きがきっかけで、次のシーンのお芝居の演出が決まっていくこともあり、芝居とダンスの両方の視点から総合的にステージ全体を作っている感覚がありました。僕たち役者もみんなでアイデアを出し合って振付を考えて、それを前田さんに見ていただくこともありましたし、すごくクリエイティブな稽古場でしたね。

最後に、放送に向けて楽しみにされている方に見どころをお願いします。

僕は最初に台本を読んだ時、“この作品は映像向きなのでは?”と感じました。セリフでの会話が少ないぶん、雪や、そのまわりにいる人たちの表情のアップで、それぞれが抱く気持ちを届けたほうが伝わりやすいと思ったからです。ただ、そんな心配は、“感情を歌で届ける”というミュージカルの利点を活かしたことでクリアされ、素晴らしい舞台になりました。そして今回、この作品が放送されることで、僕が思っていた顔の表情をじっくりとご覧いただくことができます。まさしく、物語、ミュージカル、映像のすべての良さが詰まった内容になっていますので、ぜひそれぞれの魅力を楽しんでいただければと思います。

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▼プロフィール
Takahisa Maeyama
1991年2月7日生まれ。大阪府出身。2011年、『ミュージカル 忍たま乱太郎』で俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ『仮面ライダーウィザード』、舞台『刀剣乱舞』シリーズ、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』シリーズ、ミュージカル『王家の紋章』など。11月よりミュージカル『マイ・フェア・レディ』が帝国劇場ほか全国で巡演。
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取材・文:倉田モトキ
撮影:宮田浩史
ヘアメイク:小林 純子
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CS衛星劇場にて、A New Musical『ゆびさきと恋々』をテレビ初放送!
放送日:10月10日(日)午後6:30~8:45

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撮影:遠山高広

2021年
[原作]森下suu「ゆびさきと恋々」(講談社「デザート」連載)
[脚本]飯島早苗
[音楽]荻野清子
[脚本・演出]田中麻衣子
[振付]前田清実
[出演]豊原江理佳、前山剛久、林愛夏、青野紗穂、池岡亮介、中山義紘、上山竜治

演劇界が誇るトップクリエイター×次世代を担う若き実力派キャストで贈る胸キュン必至の日本発の新作オリジナルミュージカル。原作は、「第11回ananマンガ大賞」大賞など数々のマンガ賞を受賞し、記録的重版で話題を呼んでいる森下suu作の少女漫画『ゆびさきと恋々』(講談社「デザート」連載)。物語は、聴覚障がいのある女子大生・雪と世界を飛び回る先輩・逸臣のピュアなラブストーリー。逸臣との出会いにより、世界を広げていく雪の前向きな生き方と心情をミュージカルで綴る。主人公・雪役には、2021年1月上演の音楽劇『ピーター&ザ・スターキャッチャー』での天真爛漫な演技が注目を浴びた新進のミュージカル女優・豊原江理佳。逸臣役には、舞台『刀剣乱舞』、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage等の2.5次元作品のほか、『王家の紋章』、『マイフェアレディ』など大劇場ミュージカルへの出演相次ぐ前山剛久。そのほか、林愛夏、青野紗穂、池岡亮介、中山義紘、上山竜治ら次世代のミュージカル・演劇界を担う若き実力派キャストが揃った。

【あらすじ】
雪は生まれつき聴覚障がいがあり、ある日電車で外国人に道を聞かれて困っていたところを、同じ大学の先輩、逸臣に助けてもらう。雪は逸臣と同じ国際サークルに所属する親友、りんから逸臣のことを聞き、逸臣がバイトするカフェ・バー“ロッキン・ロビン”に行くことに。りんもその店の店長で逸臣のいとこ、京弥に想いを寄せていた。勇気を振り絞って、二人はそれぞれ念願の連絡先交換をする。自分を特別扱いせず接してくれる逸臣に雪はどんどん惹かれ恋心を自覚。しかし幼馴染の桜志は、恋に向かって頑張る雪の姿を調子に乗っていると切り捨て、逸臣とも対立する。さらに、逸臣の高校の同級生で逸臣のことが好きなエマと、エマを想い続ける心もそれぞれの思いを胸に逸臣たちと過ごしていた。そんなある日、雪たちはロッキン・ロビンに集まり、海外旅行中の逸臣の話で盛り上がるが…。

(2021年6月4日~6月13日 東京・本多劇場)

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撮影:遠山高広