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「渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三』」開幕! ゲネプロ&囲み取材

「渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三』」が5月9日に東京・Bunkamura シアターコクーンで開幕。
8日にゲネプロと囲み取材が行われた。

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1994年に十八世中村勘三郎(当時 勘九郎)と演出家・串田和美がタッグを組み、誕生した『コクーン歌舞伎』。その第16弾の新作は、『切られの与三』。
原作は165年前に初演の『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』で、「切られ与三」「お富与三郎」の通称で親しまれる人気作品。
春日八郎が歌った昭和の大ヒット曲「お富さん」は、この美男美女が別れと再会を繰り返す物語を題材にしており、かつては日本人なら誰もが知る有名な物語だ。

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細かなエピソードの多い、九幕十八場という長い芝居のため、現在では全幕上演されることはないという原作を、今回はすべての場面を洗い出し、再構成。それ故に、場面のみの上演と違ってキャラクターや背景描写も織り込まれ、歌舞伎初心者もハンディなく楽しめる。
江戸の大店の息子・与三郎役を七之助、与三郎と恋に落ちる美しいお富を梅枝が演じ、思いがけない恋が変えた与三郎の疾風怒濤の人生を描き出していく。

【囲み取材】

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後列) 中村萬太郎  片岡亀蔵  笹野高史
前列)中村扇雀 中村梅枝 中村七之助 串田和美

「昔は立役が多かったのですが、今になって与三郎をやるとは思わなかった」と言う七之助。「不慣れな立役ですので、どう立っていいのかなど考えながら、皆さんの力を借りながら良い舞台を目指して精一杯やりたいと思っております」「おしりまで白くするとは思いませんでした。そこに抵抗があります」とも話したが、だからこそ貴重な姿が見られそう。

『コクーン歌舞伎』初出演となる女方の梅枝が「不慣れな舞台なもので、右も左もわからない状態で…」と七之助の言葉に重ねると笑いが起きた。「古典のイメージからの脱却が大変」とも語ったが、その梅枝について七之助は「心強いです。全部リードしてくれてやりやすい。改めて女方の大切さや、女方は歌舞伎界の宝で、貴重な存在であることをつくづく感じました」と全幅の信頼を寄せている。
演出する串田も「すごくいい与三郎がどんどん出来上がっています」と太鼓判。そして「コクーン歌舞伎ならではの歌舞伎が再発見できた」と自信を深めていた。

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【ゲネプロ】
物語は、笹野、亀蔵、扇雀扮する講釈師の講談からスタート。
一場「木更津の浜辺 見染の場」の、与三郎とお富が一目で恋に落ちる瞬間の絡み合う視線の強さ、艶っぽさ。そして、その場面をピアノとパーカッション、ベースが盛り上げる。

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「コクーン歌舞伎」ならではの見せる演出では、炎、映像、音楽の斬新さはもちろん、客席通路を存分に使う演出も健在。客席に居ながらクローズアップで見て、ひきで観てと感じられる場面つくりも面白い。
死んだと思っていたお富と再会する「源治店の場」や、島流しにあった与三郎が脱獄を計る「島抜けの場」と見せ場も満載で、2回の休憩をはさむ3時間15分の芝居をまったく長く感じさせない。

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そして何より、恋のために道をたがえ、傷だらけになって暮らしも荒む与三郎役に七之助が体当たりで挑んでいる。運命に翻弄されて次第に心根までも変わっていく与三郎。その姿・表情・オーラに、貴重な立役・七之助を堪能して欲しい。

シアターコクーンでの公演は5月31日(木)まで。http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_kabuki/
その後、6月12日(火)から18日(金)まで「信州・まつもと大歌舞伎」として、まつもと市民芸術館で上演される。