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絶賛上演中!プレミア音楽朗読劇 「VOICARION XVII ~スプーンの盾~」レポート

日比谷シアタークリエにて、プレミア音楽朗読劇 「VOICARION XVII ~スプーンの盾~」が上演されている。最高の俳優・声優が4名日替わりで登場し、シアタークリエでは12月30日(土)まで、大阪公演は2024年1月5日(金)~7日(日)にサンケイホールブリーゼにて上演される。12月15日18時公演を観劇した。(この日の出演は カレーム 武内駿輔 ナポレオン 山口勝平 マリー 三石琴乃 タレーラン 井上和彦。写真は12月7日18時公演。カレーム 朴 璐美、ナポレオン 石井正則、マリー 沢城みゆき、タレーラン 安原義人)

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「VOICARION XVII」は、一流の役者たちが、一人一人に合わせて作られた極上の衣裳を纏い、最高の演奏家による極上の生演奏をバックに、美しい照明・美術のもと、台本を手に物語を紡いでいく朗読劇スタイルの大人気シリーズ。藤沢文翁が原作・脚本・演出を手掛け、様々なテーマを取り上げて2016年から公演を重ねてきた。

「スプーンの盾」は2022年に初演され、今好評を受けての再演。描かれるのは、フランス革命の後、無名から帝王となったふたり男の物語だ。

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客席にはいると舞台周りは、ビロードのゴージャスだがシックなカーテンが迎えてくれる。幕が開けば、舞台後方にはキッチン。その前にはピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルート、パーカッションが控え、豊かな美しい音色が劇場を満たし、きらめく銀のスプーンたちが舞台を彩る。

ミュージカルのように衣裳をまとった4人の俳優が、台本を手に立ち上がる。
語るのは、フランス革命後、ナポレオン・ボナパルトの快進撃と失墜、その後に続く18世紀末~19世紀初頭の物語。

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主たる登場人物は4人。
主人公となるのは、貧困にあえぐ親に10歳でパリの路上にほうり出されるも、努力を重ね運も得て“シェフの帝王かつ帝王のシェフ”と呼ばれるほどに立身出世したカレーム。
もう一人の主人公、ナポレオンの人生の起伏は、どなたもご存じのことでしょう。
3人目は、名門貴族の家柄の出でありながら足に障害があったため聖職者の道に進み、フランス革命をきっかけに政治の世界で活躍することになり、ナポレオンを支え、彼が去った後もフランスを支えたタレーラン。
そしてカレームとナポレオンとの縁深いマリーが狂言回し役も演じる。

美しい照明と美術、ゴージャスな生演奏がシアタークリエを包み、俳優たちの卓越した表現力、そしてその空気感に包まれて、遠い時代の遠い場所の物語に誘われる。ナポレオンはヨーロッパからエジプトまでを駆ける。頭の中でヨーロッパの地図を広げながら、その物語に聞き入る。壮大な物語をたった4人で語りながら、少しも壮大さを損なわないのは、俳優陣の力量と、映画音楽以上に物語に寄り添い、一体となって奏でる音楽の力。

「サン・ベルナール峠のナポレオン」の絵を思い出しながらナポレオンのセリフを聞いていた、その時、タレーランがナポレオンに「肖像画では自分を美化しすぎている」と言うのが聞こえた。ユーモアも忘れてはいない。
そして、観客も音楽に参加できる瞬間もあり!

それぞれの人生と心情を丁寧に描きつつ、興味深い歴史を、フランスを守る争いなき戦いを、豊かな文学として演劇として、極上の音楽と共に体感させてくれる。なんとも楽しい贅沢な時間だった。

物語を語り終わると、俳優陣が素に戻って公演の感想を語ってくれる。この日も昨年の初演でもナポレオンを演じた山口勝平が「12月16日の公演では初めてカレームを演じる」と心配顔をのぞかせた。役替わりが楽しめるのも、新たな組み合わせがあるのも、この公演ならではの楽しみだ。
是非とも、この贅沢な興奮を劇場で体感してみてほしい。

「プレミア音楽朗読劇VOICARION XVII~スプーンの盾~」
東京公演:2023年12月7日(木)~12月30日(土)シアタークリエ
大阪公演:2024年1月5日(金)~7日(日)にサンケイホールブリーゼ
原作・脚本・演出藤沢文翁
作曲・音楽監督小杉紗代
https://www.tohostage.com/voicarion/2023spoon/